貞操観念逆転で男女比率1:9とかどんな罰ゲームですかね   作:annwfn666

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二話連続更新なので特に

あ、前の話飛ばしてるかもしれませんので、この話から読み始めた方はご注意下さい。


「あ~あ、目覚めちまったか(震え声)」

「どうだった?SOPMOD」

 

トボトボと帰ってきたSOPMODの姿に「余り期待はしないほうが良さそうだ」とは思いつつも一縷の望みをかけるM16。

 

「うん…私達の勘違いだって、指揮官…」

 

だが矢張り、その返事は予想通りだった。そして納得の行かないM4。

 

「そんな!絶対におかしいです、明らかに私達を身辺の任務から外してます!!勘違いなんかじゃあ…私、指揮官に聞きに行ってきます!!」

 

「落ち着きなさいM4、指揮官がSOPMODにそう伝えた以上、それが全てよ、覆らないわ」

 

「それで、それで良いんですかAR-15!それで納得するんですか!」

 

「納得しようがしまいが、それが組織でしょう?それにあの指揮官よ?何か考えがあるのかも…」

 

「何かって…何ですか…もぅ…」

 

力なく崩れ落ちるM4、やっとこの身を預けられる指揮官に出会えたというのに…グルグルとネガティブな感情ばかりが頭を巡る。そんなM4の肩に手がポンと置かれる、M16だ。

 

「確かにこれ以上は不毛だ。気を落とすなよM4、あっちに行って私達の力を指揮官に見せつければ良いのさ。取り敢えず今日は甘いものでも食べて休もう、な?」

 

「そんなこと!…はい…」

 

思わず姉に声を荒げるが彼女が手にしているものに視線を向け、取り敢えずは了承しておく。それは彼がSOPMODに託した紙、表には。

 

『M16へ

 

そして皆へ

 

態度そのまま

 

人目回避

 

音読不可

 

黙読のみ』

 

単語の羅列ではあるが言いたいことは伝わる、矢張り何かあって私達との接触を避けている…まだそう理解できるだけの冷静さがM4にも存在した、ギリギリだったが。早くその中を読みたい、指揮官の心を知りたい。逸る心を抑えAR小隊は割当の宿舎へ向かう、指示通り暗い顔をしていたが、それは演技でも何でもなかった。

 

・・・

・・

 

その晩、AR小隊の面々はジリジリしながらその時を待っていた、あの後、夕食も指揮官と一緒に取れず泣きたくなったが、彼からの手紙にあった希望を胸に、ぐっと耐えた。宿舎へと戻りM16によって開かれたその中にはこう記されていた

 

『今晩、〇一〇〇に宿舎へ伺います

 

そこで理由をお話します

 

明かりは最小限、寝たふりをして音を立てないで

 

僕が合図するまで絶対に音を立てないで下さい、絶対です』

 

こういう状況じゃなければ最後に「PS:フリじゃねえからな!」などと巫山戯て書いたであろう程に、静寂を念押ししている手紙。やはり何らかの理由があったのだ、と少しは安心できた、だがかと言って今度は「今後もこのままで」と言われたらどうしよう、という次の恐怖がAR小隊を襲う。M16も「弱くなったもんだ」等と自重するほどに今までの余裕はない、最近はベッドを無理やりつなげ、皆で身を寄せ合って寝るのが習慣となるほど精神的に追い込まれていたのだ。

 

真ん中にM4とSOPMODがくっつき合い、それを後ろからAR-15とM16が抱きしめる形で。今晩も「説明があるからもう大丈夫」と思ってみたものの、新たな心配から結局、今晩もこの形に落ち着いた。そしてそのまま、書いてあったとおりに静かに、ただ静かに彼の来訪を待ち続ける。

 

「「「「!」」」」

 

約束の時刻、ドアが開いた気配が、外の空気が流れ込む。全員の視線が扉へ向かい…其処にパジャマに何か羽織った姿の彼を確認し、思わず駆け寄りたくなるのをグッと耐える。彼は彼で(ウェイ!?なんか空腹のライオンを前にした生肉の気分が分かったぞ今!!M16もそんな余裕ないの!?そんなにヤバかった…ってM4オオオォ!目がやばい目がやばい!なんか渦巻いてる、なんか薄暗いけど分かるくらいになんかグルグルしてるぅ!?ヤンデレはちょっと…世界はヤンデレを求めてるかもだけど、リアルはノーセンキュウ!!)そのあまりに重い視線に部屋から飛び出したい衝動をグッと抑えていたが。

 

兎に角、自制が効きそうにない彼女等を目の当たりにした彼がすべきこと、は先ず喋っても大丈夫な状態にすることだ。即座に幾つかウィンドウを呼び出し、彼女等に仕込まれているプログラムを無効化する、削除は説明の後だ。プログラムを弄り、夜間は雑音のみを傍受するように設定、昼間はどんな会話も合成した日常的なものに置き換わるように設定する。これで安心、彼はフゥと一つ息を吐き出す。

 

「今晩は、みなさん(ん?これって夜這い?)」

 

「…もう喋って大丈夫なのか?ラン」

 

「はい、M16。もう大丈夫ですよ」

 

「ラン君!!」

 

「ラン!!」

 

「おっと、取り敢えず落ち着け」

 

「二人共落ち着きなさい、ステイ。そんな勢いで飛びついたらランが怪我するでしょう」

 

思わず感情のまま彼に抱きつこうとM4とSOPMODがベッドから飛び出そうとしたが残りの二人に羽交い締めにされ、止まる。

 

「す、すいませんつい…」

 

「なんだよぅ、M16だって余裕なかったくせに~「私も人寂しくなるとこん」ムゴ」

 

「そ、そのことは後にしよう!な!!まずはランの説明を聞こう、説明!」

 

何か言いかけたSOPMODの口を焦りつつ塞ぐM16、何となく普段の様子が戻ってきたようで何より…彼は流石にホッとした、と同時に少し寒さを感じる。夜間は節約のためか暖房は切れているのだ、一応、パジャマの上に何か羽織ろうと着るものを探していたらスプリングフィールドが彼女が普段着にしているカーデガンを貸してくれ、それを着てきてはいるがそれでも肌寒いのは防げない。因みに観察する余裕ができたM4が彼が着ているそれの所有者に気づき、チリっと心に何らかの焔が湧き立ったのは内緒である。

 

「その、色々と心配させてすみませんでした…そちらに行って良いですか?」

 

いい加減寒いし、と彼は怖ず怖ずといった風で質問する。慌ててM4達は彼が入るスペースを真ん中に作る。(皆くっついて寝てたんか…悪い事したとは思うけど、すごく…百合百合しぃです…姉妹でキマシタワーとかもう、ねぇ?)相変わらずの最低な思考をしながら彼は真ん中に入らせてもらう。膝まで布団をかけ、壁を背に。両脇はM4とSOPMODがくっついて手を握ってくる、彼は喜んで握り返した。

 

(しっかし、よく考えたら人形とはいえ美少女4人に囲まれても余り興奮しない件について。いや、嬉しいよ、メッチャ嬉しいよ?でも下世話な話になるが、マイサンが反応しないのよね…ううむ、この若さでEDとか言われるとちょっと泣きそうなんだが)

 

取り敢えず、下半身問題は置いておき、現状の問題解決に勤しむことにする。

 

「改めて、不安にさせて申し訳ありませんでした」

 

「いや、良いさ。こうして話してくれるのは嬉しいし…まぁ察しはついているが何か仕込まれてるな?私達」

 

「はい、ペルシカさんから貰ったプログラムで確認済みです」

 

「ペルシカから?」

 

「恐らく、皆さんになにかされることを予想してたのでしょう、メンテナンスに向かった際に頂いたので」

 

絶句する面々の前にインストールされているプログラム一覧を可視化する、そして通常なら気づかないように隠されている『それ』を表示させて。プログラム名『ディープスロート』、名前からの想像の通り、彼女等の聞いたことをリアルタイムで送信し続ける、24時間。音声のみだがそれを発信していても気づかれないというメリットが有る。これを仕込んだ者の目的は2つ、一つは情報収集、もう一つはバレた場合に彼とAR小隊の間に不和を生む事。知っても外せない、その事も伝えられない、軋轢は増すばかり。そう思ったのだろうが…彼のハッキング能力については知っているはずだが、此処まで器用なことが出来るとは思っていない、否、思えないのだろう、彼が男だから。

 

「これの、せいか…」

 

「はい、悪いとは思いましたが此方の行動が筒抜けになる恐れがあったため、皆さんの前では話せませんでした。気付いてすぐ、アンインストールや今やっているように無力化することも考えましたがそれをすると」

 

「他の手段を取られる可能性があった、そういう事ね?」

 

「…その通りです。必要なこととはいえ」

 

再度、謝ろうとした彼の口をAR-15がM4越しにそっと手で塞ぐ、そして首を振る。謝る必要はないと。

 

「もう分かったわ、貴方も悩んだんでしょう?ならもう謝る必要はないわ」

 

塞いだ手をそのまま上に、彼の黒い癖っ毛をそっと撫でる。その時かすかに感じる違和感、何か頭に乗っているような?

 

「あ、あら、ラン?これ…もしかして」

 

「気づきました?ペルシカさんから貰ったケモミミです」

 

「くぅっ!?」

 

ケモミミの光学迷彩を解除し、その姿を見たAR-15は強力な不意打ちに思わず鼻を押さえる。

 

「え、ラン君、もしかしてずっと装備してるの?」

 

「そうですね、他にも色々と便利なものが入っているので…消せば見えませんし、お風呂や寝る時以外は…」

 

「ふ~ん、ねぇラン、触って良い?」

 

「どうぞ?減るものでもありませんし」

 

「わ~い♪」「じ、じゃあ私も…」「なっ!待ちなさい私だって!!」「お、おいお前たち、あんまり乱暴に…「M16も触ります?」…はぃ、触ります…」

 

しばし、嬉々としたSOPMODを中心にランの耳やら頭を撫で回すAR小隊、彼はそれに揉みくちゃにされながらも色々と堪能していた。しかし、何故こうも彼女等がグイグイ来るのか、近いのか。何とこの男、業務の合間も護衛役の人形を相手にチマチマ作業に勤しみ、倫理コードの解除率を70%台とするまでになっていたのだ。この情熱、本物である。

 

そうされながらも彼は今後、基地内で人目がある場合はそのままだが、こうした所であればこうやって触れ合えると説明した、基地に着いてからの増員の方法も。説明し終えたところでもう寝ることに、よく考えれば深夜なのだ、夜更かしは良くない。全員横になり、今日はそのまま彼の両脇はM4とSOPMOD、残りの二人は明日以降ということに。最小限の明かりは更に暗くされ部屋に静寂が訪れた、かに見えた。

 

「…起きてますか、ラン君」

 

「ええ、まだ(原因、貴方ですけどね)」

 

今、ランの両手はM4とSOPMODに握られており、SOPMODはそのまま幸せそうにスリープモードへ移行したがM4は眠ることなく、彼の手を握ったり擦ったりしてくるのでなんともこそばゆく、眠ることが出来ないのだ。まぁそう言うのは野暮だろうと思う、そう思う彼の前にM4は握った彼の手を移動させ、そっと額を付けた。

 

「怖かったんです」

「ラン君に無視されてると思うと」

「お前はいらない、そう言われてる気がして」

「でも」

 

彼の手をそっと頬に付け、微笑む。彼はその笑みにドキリ、とはまた違った感情を覚えたが。

 

「違ったんですね」

 

「ええ、当然です(な、なんか…う~ん…)」

 

いつもの彼女の笑みとは違う、そうは思うがその違和感を説明する言葉が見つからない。

 

「良かった、もしもそうだったら…私、どうしていたか」

 

先程は冗談のように思った眼の中に渦巻くもの、本当に彼女の瞳の中にあるような気がして彼は戸惑う。それに先程から台詞が、なんともその…背筋に寒いものが走るのを止められない。

 

「ラン君、指揮官…貴方の下でなら何でも出来る気がします、例え腕が吹き飛ぼうとも、足がもがれようとも戦い続けられる」

 

「M4、さん…(いやいやいや、ミーはそんな事望んでないざんすよ!?え、まさかそうなの、そういう事なの!?事態進行早くないですかねぇ!?)」

 

普段と逆にM4から追い詰められてる気がする彼、それがナノマシンの縛りを解いたか眉がへの字になる、それを見たM4はフッと微笑み。

 

「優しいですね、ラン君。でも、そんな貴方だから私は、私達は…全てを賭けて戦えます、だから」

 

彼の手を離し、両手で彼の頬を挟む。

 

「私達から、私から目を離さないでくださいね?」

 

「…分かり、ました。頑張ります(ま、まさかの覚醒!?馬鹿な早すぎる!?ちっとからかいが過ぎたか!?後、それ君の台詞ちゃうやろ)」

 

会って2週間ほどか?それで此処まで?素質があったのか?兎に角にもと、視線だけは外さず真摯に答える、ツッコミも出来る辺りまだ余裕か。その回答に満足はしたのかM4は微笑み、ソっと顔を近づけ

 

「んっ」

 

「…え?(え、アレ?何で?ってオイイィィイイ!?)」

 

「フフッ、次はラン君からしてくれると嬉しい、かな?」

 

「…良く分かりませんが、努力します?(吃らず良く言えた俺えええぇ!)」

 

「楽しみにしてます、じゃあお休みなさい私達の指揮官…」

 

「はい、お休みなさい(私の、とか私達だけの、と言わんだけマシかぁ…)」

 

幸せそうに息を吐き、スリープモードに入ったM4、彼はその寝顔を少し眺め溜め息一つ、天井に視線を移す。

 

(これ、所謂アレですか、ヤンデレですか?そういうのを幾つか読んだが…実際に目にすると迫力が違いますな)

 

どうもペルシカに会いに行く前の晩、M4は夢と思っていた例の件で更に身近に感じていた彼と、今回の仕方ないとは言えやった無視紛いの行為。上げて落とすの落差に耐えきれなかったらしい、少しM4の扉を開いてしまったようだ。基本、ドルフロではヤンデレ扱いされる人形は一定数いるし、彼が最初に目にしたSSもまた完璧さんがヤンデレでゾクゾクしたのを覚えているし、他にもM4やAR、404小隊全員がそうなっちゃってる奴も読んだし好きだった。ただ、まさか自分がその対象になる事になるとは、流石の彼も頭を抱えそうになる。

 

(でもまぁ、責任は取らなきゃなぁ…独占型ヤンデレじゃなければ良いけど。まだ、普通に皆とチームワークが取れているなら大丈夫かな)

 

だが、その情念の凄まじさは既に先程発揮されている。彼はそっと自身の唇を撫ぜた。

 

(だがまさか、まさか自分で倫理コードを半ば捻じ曲げてくるとはな…最終的には90%近くが無効化されてたぞ?70%は既に、とは言ってもこれは…はは…)

 

なんとM4、自力で倫理コードを外し、行為に及んだのだ。もはや乾いた笑いしか出ない。

 

(つまりは90%は外さんとそ~ゆーことできんという訳ね、合体ともなれば…完全?もしくは誓約?ま、その辺りは追々だな)

 

こんな事態になってもその思考、流石である。だが確かにそればかりにかまけている訳にはいかない、まだこの物語は始まってすらいないのだ、M4の物語は。

 

(止め止め、もう寝よ、明日もまた書類という名の敵が俺を待っている)

 

深呼吸、そして彼もまた目を瞑る。寝る時に離したM4が握っていた手を、またM4の手に絡ませながら。

 

「…お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クスッ♪」




やっぱこうなっちゃうんだなぁ…(白目)

多少、早い気もしなくもないですがこの世界観だと執着も一塩、ということで。ただ、普段は発現しません、倫理コードを彼が外す+自力で外すの合わせ技でこうなります。どっちにしろ自分で外すというのも凄いですけどね。

次は404との絡みがあり、そろそろ基地へ…だと思う

人形主観によるお話はあった方が良い?無くても良い?

  • あった方が良い
  • 無くて良い
  • 本文途中で挟む程度で

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