発表祭の当日
プールサイドで水の調度品を作っていた
俺もオーロラで物を引っ張ったりする作業をしてる
これぐらいじゃ貧血にならないから問題は無い
でも別の問題がひとつある
「お客が来ないのは寂しいが……あんまり沢山来られるのも、恥ずかし過ぎる……ッッッ」
「それは確かにそうですね。水着で接客なんて……想像しただけでも、ぁぅ」
そう、千咲ちゃんが提案した水着喫茶もオリジナリティを出すために採用されたんだ
つまり目の保養すぎて問題になってしまってる
まあ定員っぽさを出すためにエプロンはつけているんだが、パッと見裸エプロンみたいでこりゃもうマジい
「ダメだ、別の意味で仕事できないかも」
「馬鹿なこと言ってるな」
「男なら普通だろ?なっ、恭平……いや、恭平は違うのか?」
「なんでそうなるの!?」
さて、馬鹿なコントやったら少し落ち着けた
これから気を引き締めて、護衛と調理に気合い入れてかないとな!
「さてと。それじゃあ形取ったテーブルや椅子を、片付けてしまわないと」
「あ、手伝いますよ」
「大丈夫です。人の手で運ぶには、ちょっと重たいですから。能力で運びますよ」
三司さんはそう言って、手も触れずに元となったテーブルや椅子を空中に持ち上げる
「けど一度に全部って訳じゃないでしょ。俺も手伝うから。まだ準備はあるから、みんなで運ぼうぜ」
オーロラをいくつか出し、物を持ち上げる
ちなみにこのオーロラは所詮ロープとかの役割にしかならないから、物の重さはダイレクトに俺につたわるし、こうやって持ち上げるのも筋力が必要だ
身体を何回も書き換えてるからできるだけ
周りにはオーロラ自体物凄い強度があるから持てるってことで説明してる
『お待たせしました。これより“
「それじゃあまあ、いっちょ頑張りましょうか!」
『おー!』
よーし、やってやるぜ!
俺のスイーツで老若男女、人類問わずあの世に送ってやるぜ!フハハハハ!
「調理始める前に……三司さん、ちょっと」
「何でしょうか?」
「念には念を入れとかないとって思ってね」
素早く獣型と鳥型の2体の魔物を作り、形態を変化させ三司さんの手首に纏わせる
見た感じ髪を止めるゴムとかそういうのにしか見えない
「今作った2体を三司さんにつけといた。危険になったら1匹が君を守り、1匹は俺のところに来るようになってる」
「わかりました。ありがとうございます」
「うん。こいつらを使うことがなければいいんだけど……」
「空君がいるんです。使うことなんてありませんよ」
「……ああ、その通りだな!俺がいるんだ、任せておけ!」
頼られてんだ、これ以上に張り切る要素がどこにあるってんだ
よーし、今日は一日中空さんは最強だぜ!
「焼きそば2つにお好み焼き1つお願いしまーす」
「早速オーダー来たのか!七海、三司さん、仕事開始だ!」
「う、うん!」
「はい!」
開催早々、このオーダーから結構客が集まってきた
厨房からチラッと見てたけど半分くらいは橘花学院の男子生徒が占めていた
まっ、こんな美少女だらけだし水着だからな
気持ちはわからんでもない
それに他の一般の客も来店していてくれてるのも見えた
「すっげー……本当に水なんだ、これ」
「あっ。でも触ることはできないんだね。見えない壁みたいなものがあるよ」
「これがアストラルなのか」
なんて声が聞こえたからどうやら好印象とか与えられてるようだな
これなら発表祭の本懐も果たせているはず
「空君。パンケーキを2つ、よろしく頼む」
「パンケーキ2つっと。アートの希望はないんだな?」
「ああ。何も言ってなかったな」
「りょーかい」
せっかくだしパンケーキ限定でアートはやることにした
よくある店じゃ追加料金とか取るんだろうけどもちろん無料
それにどの絵を描いて欲しいかは希望でっていうことにした
さっきまでに色んなキャラクターやらも描いてた
「七海さん、このお好み焼きの具合はどうです?多分、中まで火が通っていると思うんですけど」
「そうですね。はい、大丈夫です」
「ありがとうございます。お好み焼き2つ、出来上がりました」
七海はもちろんのこと、三司さんもかなり戦力になれてるからバタバタするってことはない状態でいられてる
この調子で終わりまで行ければいいんだけど
「わっ、わわっ!?」
「あぶなっ」
千咲ちゃんが声を上げてたから、確認してみると宙に浮いていた
どうやら人とぶつかったかぶつかりそうになった所を三司さんが能力で宙に浮かせ助けたんだろう
距離的に俺の能力じゃ間に合ってなかったはず
その場の空間で発揮する三司さんの力だからこそ間に合ったんだな
ちょっとしたトラブルもあるけど、みんな楽しそうに働いてる
この様子なら模擬店は成功だろうな、まだ1時間ちょっとしか経ってないけど
「……問題はあれをどうにかしてもらいたいんだがな」
若い男性が一人でいるが、あいつは盗撮してる
対応は暁と恭平がやってくれてるけどプールサイドじゃ壁になるものがないから完全に視界を遮断するってのは無理がある
それに俺は厨房係だから離れるわけにゃならんし……
あれっ、暁と話してた先生が何やら近づいて行って……一瞬でスマホを上着のポケットから取った
あれってミスディレクションだよな。まあ練習すれば誰だって出来るから不思議じゃないか
「空君、パンケーキ焼けました」
「おっけい、問題無し。こっちもクレープ出来たよ」
「わかりました」
「七海、焼きそば2人前頼む。俺はお好み焼きの方をやる」
「わかった!」
想像以上に人が多いな
変な人物がいるかどうかは暁に任せてるが、この人の出入りだと大変そうだな
かと言って俺の方もオーダーを聞きつつ、三司さんを見ていなきゃならない
七海も三司さんを注意深く見てもらっているが、俺と同等の忙しさだから大変なはず
全く、特班の応援は来ているんだろうな?
なんて思ってたら、勘が一瞬危険を察知してた
──誰かこっち来てる?
「お客様、そちらは関係者以外立ち入り禁止となっておりますが」
「ッッ!」
勘に従った方を向くと、男が懐に手を忍ばせてこっちに向かってきてた
「おいっ!」
「止まれ!」
俺と能力を使った暁で男の正面に回り込む
でも男は止まらず、懐から──
「あのっ!写真をお願いできないでしょうか!」
スマホを出していた
「……は?」
「写真?」
「はい。僕、彼女のこと……初めて見た時から可愛いなって思って……ようやく本人に会えると思ったんですけど、注文を取りに来てくれる様子もないから」
「彼女……三司さんのファンか」
「でも、今日は喫茶店なわけで……」
「誠に申し訳ありません、お客様。模擬店は喫茶店となっております。そういったことは、他のお客様のご迷惑にもなりかねません。ですのでどうか、お控えいただけないでしょうか?代わりと言ってはなんですが、ご注文は誠心誠意、気持ちを込めて作らせていただきます」
すっげー……
俺と暁とは全く違い、むしろ慣れてるように対応したよ
どうやら暁もすぐ反応したけど、今日はこういう人もいるから勘が変に動くなこれ
さっきのファンも戻ったし、仕事に戻るか
「あ、それからさっき柿本先生が来た。一件取材が入っていて、三司さんにインタビューをしたいから、職員室に来て欲しいそうだ」
「職員室……でもそれは……」
「わかってる。そこに関しては、こっちで考えるから。1人で勝手に職員室にはいかないようにして欲しい」
「一応三司さんには魔物を付けてあるが……1人で行動はしないで欲しいな」
獣型1匹でも十数人相手できるが武装によっては話が違う
なるべく俺自身でそばにいないと
「三司さんに関しては俺に任せてくれ。職員室に移動の問題は任せていいか?」
「ああ。頼む」
「よっし。じゃあ三司さん、戻ろっか」
「うん。今は喫茶店に集中しないとね」
そういやしれっと普通に居たよな
仕方ない
厨房に戻り、七海に一声かける
「七海、焼きそばかお好み焼きの準備しといた方がいいよ」
「えっ?どうして」
「父さんがいた。きっと七海特性の料理食べたいんだろう」
「わかったよ……って、お父さんがいるの!?」
「まさか父さん直々に来るとはな。対応も暁がしてるから後で聞けばいいさ」
だが、特班の応援が来ていることはわかった
そんなら、俺は俺の仕事をするだけだ
模擬店は大好評
時間が経つにつれて、人が増え忙しさも増えなんと短い行列も出来ちゃってた
ちなみに俺のパンケーキアートなんかは女の子に評判だったぜ
暁から軽く聞いたが、どうやらアストラル技術を盗みに来た産業スパイもいるとか
だがそいつらは三司さんを狙っているわけじゃないから軽く注意しとくって所にしといた
それに客がくるから誰もちゃんとした休憩は取れていないが、午後をある程度過ぎれば空席も出来るようになってきた
「七海、三司さん。空席も出来てきたようだし少し休憩してもいいぞ?」
「わたしは大丈夫。それより空君が休憩した方がいいよ?」
「私も大丈夫ですよ」
「そうか?それじゃあ──」
『2年A組、三司さん。職員室まで来てください。2年A組、三司さん。職員室まで来てください。』
時間を伸ばしすぎたのか、取材での呼び出しだよな?
暁は何か考えついていりゃいいけど……
「取材にしろ、別の要件にしろ、ちゃんと行って確認をした方がいい」
「丁度、休憩の話もしてたことだしね」
「お店のことならお任せあれ。心配はいらないよ」
「ですけど……」
ヤバい、何も思いつかん!
クソっ、悪知恵よ!働け!
「三司さん、それに空。その前にソフトドリンクとかの補充を手伝って欲しいんだが」
「っ!頼み事なら仕方ないなぁ!」
「え?あ、う、うん、わかりました」
「じゃあ補充が終わったら、そのまま職員室に向かってくれていいよ」
「はい、ありがとうございます」
これで俺、暁、三司さんだけ外に出られるのか
いい考えじゃないか、コンニャロー
『さっきの放送は聞いた』
「予定とは違いますが、このタイミングで作戦を開始させてください」
「このままだと、仕込みが無駄になっちまう」
『……わかった。だが一網打尽にするためにも、タイミングはこちらに任せてくれ。もし相手が罠にかかっても、お前たちは無理に動くな。俺たちを信用して欲しい』
「了解」
「ならべく善処する」
信用できてないってわけじゃない
でも、暁と七海と父さん以外には完全に信じれない俺の人間性がまだおかしいだけだ
「というワケだ。事前に話した通り、三司さんはここに隠れていてくれ」
「それはわかったけど……空君が身代わりになるなんて、本当に可能なの?」
「ちゃんと準備はしてあるさ」
ポケットから1枚のカードを取り出す
それは菅英人のアストラルをメモリー繊維に記憶させ、カードに定着させたもの
俺が咄嗟に閃いたアイディアだな
「周囲にいる人間の認識を阻害するものでね、これがあれば俺の姿は三司さんに見えるはず。俺たちは離れるけど、護衛はいるし、その手首に付いてる魔物は三司さんの命令に従うものだから。それからこの通信機も。これで俺たちの上司とも連絡が取れる」
「……うん、わかった。でも……」
「どうした?」
「本当に、この作戦で行くの?」
「何か気になることでも?」
「だって……やっぱり私の身代わりで、空君を危険に晒すなんてこと……」
自分の身代わりになって、その人が傷つくかもしれない
そう考えれば三司さんの気持ちもわかる
けど──
「大丈夫だって。俺は君を護ってみせる、絶対に」
「空君……」
「空の言う通りだ。ここは任せてくれ」
「……お願いだから、無事に戻ってきて。もう、あんなことは……」
「……あんなこと?」
「あっ、いや……なんでもない。とにかく、気をつけて」
「おう!」
俺は三司さんに向けて、親指をたてサムズアップをしてみせる
「では、作戦を開始します」
『了解した』
「カウント始めます。──5、4、3、2、1、今!」
「ミッションスタート!」
アストラルとリンクする。俺の場合は少しばっかし違うが
カードに意識を集中させ、記憶させたアストラル能力を解放した
次回は発表祭の終わりまで書けたらなって思います