リライターと乳部・タイラー   作:シバヤ

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いい所まで書けたので連続で投稿しました


20話

この学院は広いからな

発表祭に来たゲストは研究棟以外なら寮の方まで行ける

だから特班のメンバーが各所に立って、一斉に菅英人の能力を発動させる

1人じゃ無理なら増やせばいいんだよ

1人の範囲じゃたかがしれてるが、特班のメンバーが各所で能力を発動させたから、敷地内にいる全員が在原空の姿を、三司あやせだと“誤解”させることができてる

そっから俺は野生の勘に従い、危険だと感じる方向に足を進めてた

 

「……」

 

やーっと、出てきたやがったか

長身痩躯の優男と、ガッシリした大柄の男

ああ、こいつらから危険って勘告げてやがる

スーツの上からでも、動けるように体が作られてるのがわかるしな

 

「三司あやせさん、だね」

 

前方の優男が、優しく呼び掛けてくる

口調は柔らかいが、目元なんか笑ってないぜ

どうやらミッションはファーストフェイズは終わりでセカンドフェイズに移行だな

 

「抵抗は無駄です。命を無駄に散らしたくもないでしょう。我々と一緒に来てくれますね?」

 

後ろに下がろうとするも、反対側にも男が1人……いや、2人はいるな

これは囲まれてる

特班の動く気配はないし、暁だって1人では動かないだろう

父さんに言われてるし、ここは大人しく従っておくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アストラル使い(ばけもの)が相手だとは聞いていたが……拍子抜けだな、所詮は学生か。この発表祭とやらも、文化祭の延長上のようなものだし。ま、中には気持ち悪い出し物も混じってはいるようだが」

「……」

「……というか、何か返事ぐらいしてくれないかな?俺たちは命を取るような真似、するつもりはないよ」

 

どうだかな……って言いたいところだが、喋る訳にはいかない

喋ったらそこで認識阻害が消え、俺だっていうことがバレてしまう

 

「おい。いい加減黙ったらどうだ、喋りすぎだ」

「へいへい」

「命が惜しければ、さっさと歩け。いくらアストラル使いだろうと、引き金を引く方が早い」

 

やっぱり、下手なことすりゃ撃つ気満々だなこれ

それにこいつの言う通りアストラル使いでも先に撃たれたら最悪死ぬだろうな

でも俺にはそんなもんは効かない

引き金引かれようが、弾よりも速い反射速度があれば避けれる

俺にはそういうふうにできる力がある

けど今は大人しくしとくべきか

 

「警備の方は?」

「問題ない。それに、カメラはマンティスの支配下にある。今もカメラでこちらを監視しつつ、映像を誤魔化しているはずだ。証拠は残らないさ」

「そうか」

 

なるほどね、動かなかったのは当日にセキュリティを誤魔化すためか

それじゃあ七海が調べても何もないはずだ

 

「……」

「……妙だな」

「何がだ?」

「この子、大人しすぎやしないか?」

 

まずっ、喋れないから仕方がなかったものの、何かリアクションしとくべきだったか!

 

「今のセキュリティの話を聞いても動揺しない。そもそも、事情を尋ねてくることすらしない。まるで、こうなることをわかってたみたいじゃないか?」

「何……?」

「それにプールにいた、あの少年2人はどうした?奴らはずっと、彼女を護るような動きを見せていた。なのに、今はどこにいる?何故、彼女を1人にした?」

「考えすぎだ。所詮はガキだぞ。同年代の異性に、いいところを見せようとはしゃいでいただけだろう。三司あやせはここにいるんだ。このまま連れて行けばいい」

「……それはそうだが」

 

確か、暁から能力を聞いたけど疑いを持たれても誤解が溶けるんだっけ……

頼む、気づかれてないでくれ

 

「いや、そうだな。ここで時間を潰している暇はないな」

 

あっぶねぇ。なんとか維持はしているみたいだな

このまま連れ去られるか、父さんたちが動くのを待つか──

 

『こちらマンティス──』

 

これは、こいつらの無線機からか?

本当、俺の耳はいいんだよな

 

『ハーミット、何をしている!』

「こちらハーミット、対象の身柄を確保しました。移動中です。事前の作戦通りに移動していますが、何か?」

『ふざけるな!よく見ろ!そいつは女ですらないじゃないか!』

 

マンティスって言ってたな!

さっきカメラの支配下がどうとかって言ってたからそりゃ敷地の外にいるか!

今の一言でバレるよなぁ!

 

「らぁっ!」

 

一瞬の動きで、相手が気絶するようにちゃんと箇所を決めてそこに重い一撃を食らわせる

リライトで強化されてる俺の攻撃は、軽い一撃に見えるがそれが常人を超えてる攻撃になってる

残りは前の優男と大柄の男

 

「ちぃっ!」

 

大男は戸惑っているが、優男の動きには躊躇いがなく、すでにサプレッサー付きの拳銃が手に握られてる

俺に狙いを定め、引き金を引こうとするが、その発砲よりもはやく、拳銃を下からはね上げる

 

「くそっ!?」

 

バンザイなんかしやがって、無防備だと狙いやすくやりやすいんだ

苦しむ感覚もないように、気絶させる

 

「やってくれたな、ガキがっ!」

「身を守るためだ、当然だろ」

 

大男は銃を俺に狙いを定めているが、撃たれる前に近づきゃいいんだよ

 

「なっ!?」

 

ほぼ瞬時に目の前に来たんだ、驚くのは当たり前

引き金にかかっていた指も止まり、撃たれることはなく反撃できた

そのまま一撃を食らわせてやった

 

「ぐっ!?舐めるなぁ!」

 

俺がリライト能力のせいであえて加減しているとはいえ、その一撃を食らっても倒れないなんて

やっぱり見た目通りタフそうだなコイツ!

 

「いい加減倒れとけ!」

「──ぐは……っ!?」

 

もう一撃を畳み込み、男の手から拳銃が離れた

けど、左足から急な鋭い痛みが走った

 

「──チッ」

 

拳銃を失ったが、代わりにナイフを握りしめてやがった

その刃から、俺の血が滴り落ちてやがる

 

「コイ、ツ……ごほっ。調子に、乗りやがって……タダで済むと、思うなよ……っ!」

 

血に濡れたナイフを突き出すように、大柄な男が腕を振るう

ナイフを避けるが、やっぱり左足が痛い

ここは……あえて腕も切られておくか(・・・・・・・・・・・・)

 

「──つぅ!」

 

狙い通りに腕を切り裂かれ、地面に流れる血の量が増えていく

そっから後ろに飛び、大男から距離を離す

足に力が入らないか、片膝をついてしまう

そこに大男はこっちに向かってくる

 

「死ねぇぇ!」

「──罠にかかったな」

「ぎゃあぁ!?」

 

大男は悲鳴をあげる

そいつは地面から出てきてきた針の山に突き刺さっていた

 

「な、なんだ……っ!これは……!」

「見てわからないのか?俺の血(・・・)だよ」

 

そう、そこは腕を切られ増えた血の量でできた血の溜まり

体内だろうが体外だろうが俺の血は俺の血

ならどこでだって操ることができる

だからその溜まり場を踏んだ瞬間、形状を変え針の山を作った

量が量だから死ぬまでにはいかず、動きを止める程度だけど

 

「く……クソがぁ……!」

 

ナイフを投げようとしたのか、腕を少し動かしたがそれも無意味

何故ならナイフには俺の血がベッタリだ

刃は粉々に砕いておいた

 

「アンタ達の負けだ。命があるだけ幸運だと思え」

「化け物めぇ……!」

「アンタの言う通り、俺が化け物だ。化け物扱いしてた他のアストラル使いなんかと一緒にしないでくれ」

 

リライトなんて能力を手にした時点で俺は人間じゃない

そしてその力があるから他のアストラル使いなんかとは比較的にならないほど強くなれる

能力を解放し、血は元の液体状に戻る

そのまま大男も地に伏せるように倒れる

 

「動くな……と言いたいところだが、もう動けないようだな」

 

父さんが銃を構え、特班のメンバーと共に来る

 

「マンティス……こちらハーミット。作戦は失敗だ……」

『あー、あー、聞こえる?マンティスはすでに無力化、他の連中も拘束した。アンタたちも大人しく投降しなさい。繰り返す、大人しく投降しなさい』

 

外の方もすでに終わってるのか

これでもう一安心ってやつだな

 

「レヴィ8!大丈夫か!?」

「おーさと……じゃなかった、レヴィ6。モチのロン。俺を誰だと思ってるよ」

「だがかなり血を流してるし……」

「知ってるだろ?怪我をすればするほど色んな事が出来る能力なの」

 

ちーっとばかし痛みを伴うが、死ななきゃ十分

生きてりゃ痛いことだってあるんだからねぇ

 

「すまない。敷地の外の連中の特定に手間取ってな……間に合わなかった」

「いやいや、謝ることじゃないって」

「危うく殺されるところだったみたいだが……本当に良かった」

「俺が殺される?そんな寝言言わないでよ」

「無事……とは言い難いな。傷の具合は?」

「2箇所切られたけど止血はもうしてある。その部分は便利なんだよね」

 

一定量の血を流したら止血は直ぐにした

これが暁だったら今も血を流してたりでやばかったかもな

 

「そのままだと戻ったら騒ぎになるな。七海に来てもらおう」

「止血はできるけど傷跡は治せなないからな。ということで暁、七海呼んできてくれない?」

「わかった。それから室長は早く撤収してください。見つかると厄介なことになる」

「……わかった。すまないが、そうさせてもらう」

「生きてるし五体満足なんだから気にしないでって。報告等は後でな」

「ああ。任務ご苦労だったな、空、暁」

「はい」

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「空君!」

「ゴメンな、こっちまで来てもらって」

「空君、血が!」

「三司さんまで」

 

というか俺の姿酷いな

いくら止血はしたからって言っても血が垂れた後が残ってる

そりゃ怪我しましたーって証拠残してるもんか

 

「だって、切られて怪我をしたって聞いたら、心配になりますよ!」

「暁、お前大袈裟に言ったな?」

「誰だって切られたって言われりゃこうなるだろ」

「そうだよ、空君!それで……怪我の具合は?」

「あとは傷口を塞ぐだけ。頼めるよね?」

「う、うん。すぐに治すから」

 

七海が両手で、傷口の付近に触れる

全身に温もりが広がって、痛みが取れていくのがわかる

止血だけじゃなく、傷口も塞ぐことできりゃあまり心配かけずにすむんだけど

 

「すごい……本当に、治るんですね」

「ありがとう。七海のおかげでもう大丈夫」

「まだダメ。ちゃんと治さないと」

「もう治ってると思うんだけど、そんなに力使わなくても──」

「お兄ちゃん!」

「はっはい!」

「わたしの能力は、あくまで自分の治癒力で怪我を治すだけなんだよ?今回だって、少しずれてたら……わたしじゃどうしようもなかったかもしれなかったんだから……」

「そうなっても、また書き換えれば」

「そうやってなんでも力を使おうとするな。あれは危険すぎるんだから」

 

ぐっ……確かに、万能と言え使用の代償が命となりゃ危険すぎるはず

だからといってこんな姿を見せるわけにゃいかんし

 

「……ゴメンな、それに心配もさせたんだよな」

「そうだよ、心配したんだよ。全然戻ってこないし……怪我をしたって暁君から聞いて……すごくすごく心配したんだから!……お兄ちゃんのバカ」

「そうだよな。俺自身のことも考えないとだよな。なるべく気をつけるようにする」

「……そんなこと言って、結局怪我ばっかりするんだから」

「次はないようにする。それといつもありがとうな、七海。もちろん暁も」

 

やっぱり俺はこの2人にとっても救われてる

だからその分本当に心配かけないようにしねぇとな

ちっとばかし難しそうだけど

 

「……」

「ん?どした?」

「3人だと、そんな雰囲気なのかと思って」

「いつもの感じとは随分違って、優しいというか、甘いんですね、空君。それに暁君と七海さんも」

「そっ、それは……ち、ちがうんです、わたしは別にっ」

「別に照れなくても。兄妹、仲がいいのは素晴らしいことですよ」

「へへっ、俺たち3人仲が良いもんな」

「そうだな」

「〜〜っ!は、はい!これでおしまい!もう平気だよね?」

「ああ、ありがとう。お疲れ様、七海」

「……お兄ちゃんも、お疲れ様」

 

どこか不満げながらも、そう答えてくれた

 

「それから三司さんもありがとう」

「え?なにが……?お礼を言うのは私だと思うんですけど」

「無事でって祈ってくれただろ?ああいうのがあったから頑張れたんだ」

「あんなの……気休めですらないことです」

「気休めだろうと、俺にとっては重要な事だったんだ。だからありがとう」

 

あんな生活を送ってきた俺だから、人に無事を祈られたことなんてない

だから、ほんの少しだけでも、あの時の三司さんを見て嬉しかったんだ

 

「さってと、そろそろプールに戻ろっか。調理担当が3人ともここにいちゃってるんだからな!」

「あっ!そうだった!」

「大丈夫なのか、それ」

「念のためにみんなにレシピ覚えてもらってるから大丈夫なはず!ちなみに暁以外のメンツな!」

「なんで俺以外には教えてるんだ!」

「急ぎましょう、七海さん」

「はい!」

「待てよ空!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『16時になりました。これにて“星幽発表祭”を閉幕致します』

 

遠くから聞こえる拍手の音

こうして発表祭は、俺の活躍なんて誰にも知られず大成功

もちろん表でも活躍して大成功!今回は大手柄じゃないかな?

それはそれとして、今回捕まえた相手は特班で取り調べられるだろう

それも1人や2人じゃないから誤魔化しきることもできないはず

後は父さんに任せておけばいいかな

 

「いやー、全部上手くいって良かった良かった」

 

喫茶店は大成功し、犯人たちは捕まえることが出来た

こうしてドタバタした発表祭は、幕を閉じることになった





これにて共通ルートは終わりです
次回はあやせルートに入る帰り道でのお話です
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