アイツ、また勉強してやがるぜ?
お〜、いい子ちゃんだなぁ
根暗ってのはアイツのためにある様な言葉だよな
『・・・五月蝿い』
あれじゃあパートナーになるポケモンが可哀想だ
ホルマリン漬けにされたりするんじゃね?
ぎゃははは!そんときゃ国際警察でも呼んでやるか!
『黙れ・・・!』
きゃはは!アイツ、ちょっと色目使ってやったら、気持ち悪いくらいキョドってたわよ!
おいおい俺の彼女になにしてくれんだよ!
『黙れ、消え失せろ!!』
『皆、皆いなくなれ!』
「・・・最悪な目覚めだ」
嫌な過去を夢でみた
僕がスクールに通ってた頃の・・・。
「う〜・・・」
僕は奴らに対する殺意と自分に対する不甲斐なさに、自分の身体をベッドのシーツに包み隠す
「ぬにゃあ」
そんなことをしていたら、ニャースが僕を起こしに来てくれた様だ
「・・・ごめん、後にしてくれないかな」
僕がそう言うと、ニャースは青い薬瓶を僕に手渡した
「・・・『ねむけざまし』か」
さっさと目を覚ませと、彼は言っているのだろう。
「・・・分かったよ、起きる、起きるさ」
僕はニャースを抱き抱えてリビングに出る、そこには買い物を終えた母さんが立っていた
「あら、リヒトおはよう。時差ボケは治った?」
「なんとかね」
僕が遅めの昼食を摂り、母さんが買ってきた色がドギツいトロピカルジュースを飲んでいると、リビングにインターホンが鳴り響いた
「あら、誰かしら」
「お邪魔します!」
勢いよく勝手に開かれた扉からは、裸白衣なんて相変わらず変態チックなスタイルのククイ博士が気持ちのいい笑顔を浮かべて入ってきた
「あらククイ博士、こんにちは」
「こんにちは、お母さん。そして改めてこんにちは!リヒト君!」
「こ、こんにちは」
テレビ電話ではなく、直接話すことは僕にとってかなりの疲労感を与えてくる
「リヒト君!僕は嬉しいよ、君がアローラに来てくれたこと、しまめぐりに参加してくれる事に!」
「い、いえ・・・別に。」
「ん?どうしたんだいリヒト君!あのテレビ電話で見せてくれた饒舌な君は何処へ行ってしまったんだい!?」
あ、暑苦しい・・・!?直に話すとこんなに暑苦しいのかこの人・・・!
「まぁいいさ!時差ボケとかで疲れているだろうし。それで早速なんだけどねリヒト君、君に来て欲しい場所があるんだ!」
疲れている云々の話しはどこへ!?ま、まぁいいや、そんなことより・・・
「場所、ですか?」
「ああ、ここからそう遠くない『リリィタウン』という場所でね!そこでしまキングに会ってほしいんだ!」
ちょ、ちょっと待って情報量が多すぎる。えっと、リリィタウンに・・・?
「しまキング、とは?」
「しまキングは言うなれば、このメレメレ島で1番強いポケモントレーナーさ!」
なるほど、あっちでいうジムリーダーとかその辺の役職なのだろうか
「そこで、君に渡すポケモンも・・・おっと、ちょっと失礼するね」
ポケモンセンターで聞いたことがある有名な効果音が鳴り響いたと思ったら、どうやらククイ博士の携帯端末の着信音だったらしい。
「やぁリーリエ、どうしたんだい?」
ククイ博士は『リーリエ』という名の人物からの連絡に少し焦りを見せ始めた
「あー、えっと、それはだねリーリエ?僕とイワンコにはこれっぽっちも悪気は・・・はい、すみませんでした、お金は僕が出すので・・・はい。」
何かあったのだろうか、冷や汗をかきながら平謝りしている大の大人がそこにいる
「え?新しい人?・・・ああ!そうそう、リヒト君ね!いま話していたところだよ、うん、分かったよ。それじゃあ、また後でね。」
どうやら会話は終わったらしい、ククイ博士は数少ない上着のポケットに端末を仕舞う
「いや申し訳ない、僕の助手からの連絡でね・・・で、話を戻すけど、リリィタウンに僕と一緒に着いてきてくれないかい?」
「はい、分かりました」
「じゃあ、新しく買った帽子とバックパックを持っていかないとね!全部リヒトの部屋にあるから!」
「うん、準備してくる」
僕は席を立ち、自分の部屋に入る。部屋の片隅にはまだ片付けていないダンボールがあり、そこの上に新品の帽子とバックパックがあった
僕はクローゼットを開き、軽い格好からそれなりの重装備に着替える
まぁ、重装備なんて大げさだが。
黒の日焼け防止の長袖のインナーに、その上に白の半袖のパーカー、下も黒の日焼け防止のタイツの上に白の半ズボンを履き、ブーツは防水性に優れた分厚いのを履く。
最後に、前つば付きの白黒のモンスターボールのデザインで出来てる帽子を被り、これまた日焼け防止にフードを被り、バックパックを背負い、最後には指が全部空いたグローブを付けて終わりだ。
・・・うん、わりと不審者だけど、こうでもしないとまだ僕にアローラの日差しは厳しいものがある。
え?グローブがなんでわざわざ指部分が空いてるのか…?察してよ、それぐらい。
最後に鏡でチェックする。フードを被り帽子を深く被って黒髪は完全に見えなくなり、目元もあまり見えなくなっている。
だがそれでも、僕の最大の特徴である赤い瞳はギラギラと煌めいていた。
・・・カラーコンタクトにでもして黒にしようかなぁ。あんまり好きじゃないんだよねこの瞳。なんか怖いじゃん?
バックパックの中身を確認する。モンスターボールの技術が応用されたこのバックパックは見た目より遥かにものが入る割とお高めの物である。いつかこれを上回るプレゼントをしなきゃ。
「モンスターボールに・・・キズぐすり・・・あと、状態異常を治す諸々の薬品・・・うん、大丈夫そうだ」
準備が終わった僕は、扉を開けてリビングに戻る。
「あら終わっ・・・もう、リヒト。そんなに深く帽子を被ったら可愛い顔が台無しじゃない」
「・・・別にいいよ」
大体カッコイイならまだしも男に可愛いは無いでしょ
「おっ、いい帽子だね!でもお母さんの言う通りだぜ?せっかくのカッコイイ顔が見えないじゃないか!」
・・・この人は、もう。
「別にいいですって、ほら、さっさとリリィタウンに行きましょうよ。」
僕は気恥ずかしさから、少しぶっきらぼうな態度になる。
「ははは!ではお母さん、リヒト君お借りしますね!」
「はーい、行ってらっしゃいリヒト」
「行ってきます」
僕は扉を開け、少しだけ整備された道路に出る
「・・・暑っつい」
外は思った以上に暑く、今すぐにでも服を脱ぎたいところだが・・・それでは肌が日に焼けて大変なことになってしまうので断念した。
「よぉしリヒト君!リリィタウンまで少し掛かる、その間この辺りのポケモンの分布の話をしよう!」
急に博士らしいことを元気よく宣言した博士は、僕に手招きしながら歩き出した。
着いてこい、ということなのだろう。
「この辺りは主にむしタイプとひこうタイプ、あとはノーマルタイプのポケモンだね!ほら、あそこを見てごらん!」
博士が指さした方向には、本で見たことの無いポケモンが木に向かってくちばしを突き立てていた
「あれは『ツツケラ』と呼ばれるポケモンでね、ああやって木を突っついて巣を作るんだ!」
なるほど、ポッポやオニスズメとは全然違う巣の作り方なのか。あっちは木の上とかに木の枝を唾やドロで固めるタイプの巣だし。
僕はポケットからメモ帳とペンを取り出し、博士の言った事を記録する。
「次は・・・あれだね!」
またもや見たことの無いポケモンだ、見た感じオオタチやマッスグマに似た形をしている
「あれは『ヤングース』だね!あの長い胴体の大半は胃袋で、いつも腹を空かしているんだ」
確かに、あのヤングースは一心不乱に木の実らしきものを食べている
「さぁ、着いたよリヒト君、ここがリリィタウンだ!」
どうやら目的地に着いたらしく、ポケモン講座は一旦幕を閉じた
少し歩くと、とても大きなステージがある広場に着いた
「あれ?ハラさん確かここで待ってる話なんだけど・・・」
どうやら待ち人がいないらしい。ククイ博士はあたりをキョロキョロと見渡している
「うーん…リヒト君、僕は民家の方を見てくるから君はあっちの方を見に行ってくれないかい?」
ククイ博士が指さした方向は、日陰になっている山道の入口の様な場所だった
「分かりました」
僕はパーカーのポケットに手を突っ込み歩き出す。中に保冷剤を入れているので手が冷っこい。直ぐに溶けてしまうだろうけど・・・まぁいいさ。
山道は日陰になっているので、多少涼しいでも結構斜面が厳しい。足が砕けそうだ
少し歩いて、太陽が顔を出している坂を登った先にいる誰かの顔が、鮮明に見えた
透き通った金色の髪の少女が、そこにいた。
これが、僕と彼女の、ファーストコンタクトである。
全ての物語は、ここから始まったんだ。
オチがちょっと弱い様な・・・まま、ええわ
感想、ご指摘、よろしくお願い致します