~同日 4月14日(日) 夜 寮棟1階 食堂~
経介(……明日は、人形探しか……)
夜なのに加え、人が少ないためか、静かな食堂の中で経介は一人、そんなことを考えていた。
食堂内は涼しく、考え事をするには最適の場所なのである。
経介(まぁ、でも実際どうなんだろ、今の時点では不確定要素が多すぎるし、まだ人形探しに踏み込むのは時期尚早な気もするけどな……)
経介はウォータークーラーで汲んできた水を飲みつつ、少し響香と祥子のことを考えた。
経介(……やっぱり、今後のゲームの展開は、みんなの命は、僕らの占いにかかってるんだよね……。僕は、自分には到底背負いきれないほどの大役を与えられたんだ。でも、必ず職務を全うして見せる。小春のため、桜のため、みんなのために。……そして、同じ大役を与えられた人が、僕の他にもう一人いる。それに加えて、偽物も一人いる。彼らのどちらが本物でどちらが偽物なのか、今は分からないけど、事態を誤った方向に持って行かれる前に、この偽物がどちらなのか、必ず暴かなくちゃいけない。じゃあ、僕が次に占うべき相手って……?)
経介がちょうど、そのことに頭を悩ませていた時だった。
桜「あ、きょーちゃん」
経介「……桜!」
幼馴染の桜が食堂に入って来て、経介に声を掛けた。どうやら2階の自部屋から降りてきたらしい。
経介「どうしたの?何か眠そうだけど……?」
桜「んー、ちょっと勉強しててね。眠たくなってきたからコーヒー買いに来たの……」
経介「あっ、そうなんだ!ごゆっくり……」
桜は経介にそう言われるよりも早く、食堂の隅にある自販機の方へと向かって行った。
経介(勉強か……、桜は偉いな。四宮さんが言ってたことも最もだけど、僕も勉強とゲームを両立させなきゃな……)
そんなことを思っていた時、彼の頭にふと、ある疑問が浮かんできた。
そして経介は自販機から戻って来た桜にこう尋ねた。
経介「……ねぇ、桜」
桜「ん?どしたの……?」
経介「桜はさ、誰が怪しいと思う……?」
桜「ん……」
経介「あっ、人形ゲームの話ね!」
桜「……」
桜はその質問にすぐに答えることはしなかった。それは考えていたからなのか、単に眠たくて頭がはたらかなかったからなのか、それとも別の理由があったからなのかは定かではないが、桜は少し経ってからこう答えたのだ。
桜「……特には、いないかな」
経介「……そっか!」
ある程度予想はできていた答えだった。彼はそれでも、何かのヒントになればと思い、桜にそう問い掛けたのであった。
桜「……きょーちゃんは、本物の占い師なんだよね」
経介「えっ?」
唐突の質問に、経介は間の抜けた声をこぼした。
経介「あぁ……うん、そうだよ」
経介(そっか、まだ僕が占い師だって確信は持てないもんね。幼馴染だからなんだか安心してたけど、僕のことを信用しきれないのは桜だって同じなんだ……)
桜「……そっか」
経介「あ、もしかして……、疑ってる?」
桜「ううん。別に」
経介「……そう、なら良いんだけど……」
経介(今日の桜、どこか素っ気ない感じがするな……)
桜「……」
経介(まぁ、気のせいかもしれないし、気にしない方が良さそうかな……)
経介「そう言えば、小春はどうなんだろね。怪しいと思ってる人とかいるのかな?」
桜「……さぁ。気になるんだったら聞いてみたら?」
経介「あ、うん。そうだね」
経介がそう言われ、何となく辺りを見回した時だった。
経介「……あれ、今の小春じゃない?」
桜「ん?小春ちゃんいたの?」
経介「うん。今そこの前を通ったと思う!」
経介はそう言って食堂の正面入り口を指さした。
桜「そっか……」
経介「僕、ちょっと行ってくるね!」
桜「あ、うん。……私もう戻るね。勉強の続きしなきゃだし」
経介「分かった!時間割かせてごめんね!」
経介はそう言って桜と別れると、急ぎ足で食堂を出た。
経介「小春は……」
経介は食堂から差し込む光を頼りに、暗闇の中目を凝らして小春を探した。
経介「……いなさそうだな……ん?」
小春を探す経介の目に、ふと建物の角に立つ誰かの姿が映った。
経介(あれは……、誰だろ……?)
その姿は暗くてよく見えなかったが、幼馴染の経介にはそれが小春ではないことは分かった。
経介(あの人、あんなところで何してるんだろ……?まぁいいや、小春を見なかったか聞いてみよう)
経介「あの!ちょっといいですか!」
経介がその人物にそう呼び掛け、駆け寄って行こうとした、その時だった。
経介「あ……」
その人物は経介の声に反応し、建物の影へ消えてしまったのである。
経介「どっか行っちゃった……。でも今、消えたタイミング的に完全にこっちに気付いてたよね。……一体、何をしてたんだろ……?」
その後、経介は小春を探したが、既に部屋に戻ったのか一向に彼女は見つからなかった。
探し疲れた彼は小春にゲームのことを尋ねるのを一旦諦め、自部屋に戻ってお風呂を済ませた後、眠りについた。彼の部屋の時計は23:40を指していた。
~同刻 ??? ???~
生徒X「人形探し、明日だよ。**ちゃん」
生徒Y「うん。そうだね」
生徒X「そうだねって、分かってるの?明日また、誰かが死ぬかもしれないんだよ?」
生徒Y「うん。分かってる」
生徒X「はぁ……。頼むから、ヘマだけはしないでね。あなたの命、あなただけのものじゃないこと、しっかり頭に刻んでおくように」
生徒Y「うん」
生徒X「……全く、先が思いやられるわ。それじゃあね。私もう寝るから」
生徒Y「……」
バタン
生徒Y(この命は、私たちの命……)
私がここに来てからもう15日が経つけど、未だに彼女の言うその言葉がしっくり来ない。
私が彼女のことを信頼していないから?……分からない。……誰も信頼できない。
いや、忘れている気がする。人形ゲームが始まった、あの時からずっと。
私は信頼できる何かを、忘れてしまっている気がするんだ。
~翌日 4月15日(月) 10:00 教室~
碧「は、マジ……?」
怜菜「……意外ね」
経介(……マズイ。まだ、僕は……)
~数秒前 教室~
明『えー、完全匿名での多数決の結果……』
明『只今から多目的棟2階会議室にて、第1回人形探しを開催することが決まった』
響香『……!!』
祥子『……!!』
まずはここまでのご精読ありがとうごさいました!次回、初めての人形探し回となります!果たして、対象に選ばれてしまうのは誰なんでしょうか?理央殺害の真相には迫ることができるのでしょうか?それでは皆さん、また次話でお会いしましょう!