明『只今から多目的棟2階会議室にて第1回人形探しを開催することが決まった』
響香『……』
祥子『……』
経介(……マズイな。僕はまだ……)
碧「っ先生!それ、本当なんですか?」
明「あぁ、もちろん本当だよ。言ったろ、嘘はつかねぇって」
碧「……でも、じゃあ!!」
恵「うん。ここにいる半分以上の人が、人形探しの開催に賛成したってことになるねぇ」
経介(そう、恵くんの言う通りだ。これには正直驚いた。ここにいる半分以上の人は、一体どうして人形探しの開催に踏み切れたんだろう……?いや、それよりも今考えなきゃいけないことは……)
柚季「大丈夫だよ、響香ちゃん!」
瞳「そうだよ!私たちがなんとかするから!」
響香「……」
美咲「祥子ちゃんは絶対大丈夫!この機会に誤解解いとこ?」
唯「そうだよ、美咲ちゃんが言うみたいに大丈夫だから!安心して!」
祥子「……」
経介(……)
明「そういう訳だ。さぁ、会議室に移るぞ」
彩「あ、私鍵開けて来ますね!」
明「ん、お願いします」
彩「すぐ開けられるから、みんなは先に行っててね!」
有悟「……っ承知しました!みんな、会議室に移動しよう!」
凉太「はいよ~」
真琴「移動ダルすぎっしょ。次ここでやんない?」
青葉「……有悟くん!」
有悟「ん?どうした、栄さん」
青葉「私たち、ちょっと遅れて行ってもいいかな……?」
有悟「ム……」
柚季「私からもお願いできる……?」
美咲「あ、それやったらうちらもお願いしたい……!」
有悟「……うむ、君らそれぞれ思うところがあるのは承知しているつもりだからな、オレはそれでも構わないのだが……」
有悟はそう言うとチラッと明の方を見た。
明「……ん?あぁ、それは別に構わないよ。そこまで焦る必要も無いしな。ただ、決まったことは決まったことだ。他の生徒を待たせることにもなる。15分までには会議室に来るようにな」
青葉「……はい!ありがとうございます!」
美咲「ありがとうございます!」
有悟「では、残る者らはまた後でな」
柚季「うん」
有悟「それ以外の者は、一足先に行くとしようか」
菜華「……そうだな」
こうして、それぞれがそれぞれのペース、それぞれの足取りで人形探しが行われる会議室へと向かって行った。
経介(僕も、時間までここに残ろう……)
~同日 午前10:15分 多目的棟2階 会議室~
ガララッ
有悟「ム、来たか」
経介「わ!広い」
僕らが教室に残った数名と会議室に行くと、既に他のみんなは席に着いていた。
また、会議室は他の部屋に比べて広く、生徒たちはみな、部屋の真ん中を中心とする円を描くように、ずっしりとした鉄でできた椅子に座らされていた。
明「さぁ、お前らも自分の席に着いてくれ。席は男女混合の名前の順だ。全員が席に着き次第、人形探しを始めるぞ」
僕らは先生に促されるがまま、各々の席に腰掛けた。
鉄でできた椅子は、僕らの中にある不安の心を煽る冷たさをしていた。
明「よし、全員席に着いたな。彩先生、説明の方を頼みます」
彩「はい!えー、人形探しは30分間の話し合いと処刑者決定投票の2つに分かれています!話し合いは時間一杯使わなくても、こちらが話し合いの結論がひっくり返らなそうだと判断した場合、途中で終了させることが可能です!その場合は私か明先生に誰でもいいので申告してください!話し合い開始から30分経過で大きな音が鳴る仕組みになっているので、時間超過の心配は要りません!また、最後に行われる投票は全員一斉の指さし形式です。自分が処刑したいと思う人を指さしてください!もし不正が見られたり、投票をしなかったりした場合には、その生徒は強制処刑となるので注意してくださいね!あと、原則として人形探しが始まってから終わるまで、この会議室から出ることは禁止です!説明は以上です!何か質問はありますか?」
「……」
明「……よし、質問は無いな。それでは、只今から第1回人形探しを開催する!!」
彩による人形探しの説明が終わり、たった今、明の口から人形探しの開催の合図が出された。ついに始まってしまったのだ、犠牲が約束された、生徒39名による命懸けの投票会議が……。
有悟「……さて、黙ったままでは時間が勿体ない。人の命を奪う会議となるとやはり、気が引けるところがあるが、これは自分たちのための会議でもある。話を進めよう」
恵「ま、そうだねぇ。それが良いと思うよ~」
風里「……」
菜華「まずは、ここまでの振り返りでもするか?」
怜菜「そうね。これまでのことを纏めておくのは会議をスムーズに進める上で大切なことだと思うわ」
有悟「同意だ」
菜華「……分かった。では、ここまでを軽く振り返ろうか」
数名の同意の下、菜華による振り返りが始まった。
菜華「まず、事件が起きたのが4月10日。額から血を流して亡くなっている枷田さんの遺体が南西の海岸にある崖の上で発見された。この事件の容疑者は2名。一人は崖の上で凶器と思われる血の付着した尖った石を隠そうとした、枷田さんの親友である泡瀬さん」
響香「……」
菜華「もう一人は遺体の第一発見者であり、占い師候補の相沢くんと高穂くんから黒判定を受けている自称騎士の姫野さん」
祥子「……」
菜華「明確な手掛かりは今のところ見つかってはいないけど、目の前が海であるにも関わらず凶器が崖の上に放置されていたことから、この犯行は計画的なものでなく衝動的なものであったことが推測できる……。今分かっていることはこれくらいか?」
恵「うんうん、大まかな流れとしてはそんな感じかな~」
和奏「んー、二択かぁ……」
雪紀「もうちょっとヒントが欲しいところだよね」
蓮「あぁ。でもあれ以降ヒントらしいヒントは見つかってねぇし、何かいい方法はねぇかな……?」
手掛かりの少なさにみんなが頭を悩ませていた時だった。
航「……今、占い結果どうなってるっけ」
航が一言、そう問い掛けた。
経介「占いは……僕が担城くんを白、姫野さんを黒。相沢くんが姫野さんを黒、等野さんを白。冷音くんが穂乃香さんを白、姫野さんを白判定だね」
航「あぁ、そうだったね。ありがと」
凉太「それがどうかしたのか?」
航「いや、ヒントが少ないなら少しでも信頼できる人の意見を聞いた方がいいんじゃないかなって思って」
縁「確かに、そうですね!」
茜「んー、まぁまだ占い師がこの人だって確証はないけど、この場合だとそれが最適かもね」
白夜「私も賛成です……!」
有悟「うむ。ではまずはオレから意見を言わせてもらうぞ。オレは前から言っている通り、泡瀬さんが怪しいと思っている」
響香「……!」
有悟「理由は前にも言ったが、咄嗟に凶器を隠そうとしたからだ。本人はあの行動を下手に疑われることを避けるためと説明したが、あれでは返って疑われてしまうからな。オレはその説明は凶器を隠し忘れたことに対する苦し紛れの言い訳だと考えている」
響香「違う!あれは本当に疑われたくなかったから咄嗟に隠しちゃっただけ!信じられないかもしれないけど、本当のこと!!」
柚季「響香ちゃんがあんなに仲の良い理央ちゃんを殺害するなんてこと、有り得ないです!!」
瞳「私もそう思います!!」
青葉「私もです!!」
有悟「……」
舞人「……まぁ、実際はどうだったのか知らねぇけど、誰の目から見ても怪しかったのは事実だよな……」
秋子「そうだねぇ……」
有悟「……等野さんはどうなんだ?」
美咲「!うちは……、どっちかって言われると響香ちゃんが怪しいかなぁ」
響香「……」
美咲「有悟くんが言ってたみたいに、凶器隠そうとしたのもそうやけど、うちは祥子ちゃんがあんなことする人やと思えやんからさ。これは柚季ちゃんとかが響香ちゃんのこと怪しくないって言ってるのと同じ理由やけど、祥子ちゃんは他に騎士とも言ってるし。黒判定がいくつか出てるとは言え、疑われても役職を言わない響香ちゃんよりは祥子ちゃんの方が信用できるって思ってます……!」
桜「そう言われると確かに、響香ちゃんは祥子ちゃんに比べて余裕が無いようにも見えるね」
恵「んー、その響香ちゃんは実際、何の役職なのかなぁ?」
響香「私は人間だよ。言ってもそんなに影響ないと思ってたから伝えるの忘れてた、ごめんね」
恵「人間かぁ……。確かに、言ってもそんなに影響なさそうだねぇ」
菜華「そうだな。それで疑いが晴れることはなさそうだ」
美咲「……」
有悟「最後、穂乃香さんはどうなんだ?」
穂乃香「んー、私は……」
穂乃香は少し悩んだ後、こう答えた。
穂乃香「私は正直、どっちとも言えないかな……」
有悟「……なるほどな」
穂乃香「うん。響香ちゃんの言ってることは本当かも知れないし、自称占い師の3人だって全員が正しいこと言ってる訳じゃないから、祥子ちゃんの黒判定だって正しいかも分かんない。正直、人形探しが開催されたこと自体意外で、どっちが怪しいかなんて見当もついてないのが現状です……」
経介(……そうだよね、僕だって同じだ。穂乃香さんの気持ちはよく分かる。きっと他にもそういう人がいるはず……)
銘「んー、今3人に聞いた感じだと、響香ちゃんが怪しいって思ってる人の方が多いみたいだね」
響香「……」
有悟「あぁ、そう言えば泡瀬さんと姫野さん以外に、怪しいと思っている人物は居たりするか?みんなの様子を見るに特にそういった人物は居なさそうではあるが、念のため確認しておきたい」
真琴「いないんじゃね?どう考えても犯人はこの2人のどっちかでしょ」
蓮「どうだろな。オレは居ねぇけど」
梢「私も……」
誰からも意見が挙がらず、話し合いが次に進もうとしていたその時だった。
雪紀「あの……」
有悟「ム、どうした?双葉さん」
雪紀「えと、怪しいって言うか、気になってる人が一人居るんだけど、いいかな?」
有悟「もちろんだ。して、その人物は誰なんだ?」
雪紀「風里ちゃん、なんだけど……」
風里「……私?!」
有悟「ほう」
雪紀「うん。みんなも見てたと思うんだけど、祥子ちゃんが騎士ってカミングアウトした日に、風里ちゃんが何か言おうとしてたの覚えてる?」
千優「あ、玉川くんに問い詰められてたやつですかね……?」
雪紀「そうそう!」
友輝「おー、それならオレも覚えてるぞ」
菜華(あの時のアレか……)
雪紀「その時なんて言おうとしてたのかがずっと気になってて──って話です!」
有悟「なるほど。その話に関してはちょうどオレも気になっていたところだ。答えてくれるか?鰆居さん」
風里「あ……、うん。別に大した話じゃないから、大丈夫……」
風里はそう答えると、ゆっくりと説明をし始めた。
風里「少し説明し辛いけど、あの時凜堂さんが言った騎士を失うとダメージが大きいってセリフが気になって。みんな同じ重さの命なのに、人形ゲームに毒されてきてるのが悲しいなって思っただけです。でも、真剣な話し合いの場だったから、ただでさえ役に立てない自分が真剣な話を邪魔をする訳にはいかないなって思って、話すのをやめました……」
雪紀「そう言うことだったんだね……」
菜華(……なるほど。あの時感じた視線はそれだったのか……)
菜華「……その節は済まなかったな。ただ、人形ゲームに参加している以上、そうした言葉が出ることは必然だ。これからもきっとそうした言葉を使う場面が何度も訪れるだろうから、表現には気を付けるようにするよ。改めて謝罪する、済まなかった」
風里「あ、いや、こちらこそ細かいこと気にしてごめんなさい……」
こうして、風里が抱えていた問題は双方が謝るかたちで終わりを迎えた……。
有悟「うむ、謝罪とはやはり素晴らしいものだな。……さて、もう他にそうした意見はなさそうだ。今回の人形探しはこの2人が対象ということで間違いはないだろう。とりあえずオレを含む白判定をもらった3人の意見が出たが、他のみんなはどう考えているんだ?」
太一「オレはまぁ、泡瀬が怪しいかな……。やっぱ凶器隠したのは怪しいし」
航「オレもどっちかと言うと泡瀬かな……」
秋子「私も……」
響香「私は本当にやってない!!信じて!!」
恵「んー、僕は祥子ちゃんの方が怪しいと思うんだけどなぁ」
怜菜「私も同じね。食堂でのあの泡瀬さんの反応が嘘だったとは思えないわ」
暦「……わっ、分かります……」
菜華「私は単純に2人から黒判定を受けていることを考えると、泡瀬さんよりも姫野さんの方が怪しいと思う」
祥子「私は違いますよ!本当に騎士なんです!!」
凉太「そもそもよ、枷田が殺された日、何でお前は一人で島探索に出掛けたんだ?」
祥子「え……?」
凉太「お前はいつも等野や沖鳥と一緒にいるだろ?それなのに、なんでお前はわざわざ殺されるかも知れない危険な日に一人で出掛けたんだって言ってるんだよ」
祥子「それは……」
経介(……確かに、姫野さんはいつも人形ゲームに怯えてるイメージが強いだけに、あの日一人で行動したのは不思議だな……)
祥子は少し困った様子を見せてこう答えた。
祥子「それは……、特に理由はありません」
凉太「……は?」
祥子「あの日は結構な人数の生徒が外に出ていましたし、朝という状況も相俟って、本能的に外で一人でいることが危険だとあまり思っていなかったのかもしれません。まぁ、強いて言うのでしたら一人の方が自由に島を探索できるという理由がありますが、これと言った明確な理由はありません……」
凉太「はぁ、よく分かんねぇことを言うんだな」
祥子「……すいません……」
初「ん~、むっずかしーな~……」
晴「どうしよ……」
これまでのことを受け、自分の1票を誰に投じるべきか、みんながそのことに頭を悩ませていた時だった。
ビーーーッ
経介「!!」
会議室に大きな警告音のような音が鳴り響いた。
経介(これは……!!)
彩「時間です!30分が経過しました!話し合いはそこまでにしてください!」
鳴り響いたのは話し合いの終わりを告げる音だった。
初「えぇ!?私まだ決まってねーぞ~!!」
明「以降、話し合いは禁止だ。それでは、処刑者決定投票に移るぞ」
恵「んー、意外と票が割れそうだねぇ」
茜「……そうみたいだね」
響香(これ、もしかしたら……!!)
祥子(神様、どうか……!!)
次回、判決の刻……。
まずはここまでのご精読ありがとうございました!次回で人形探しを書き終えれたらなって感じです。果たして処刑されてしまうのは誰なんでしょうか!そして理央を殺害した犯人は?それでは皆さん、また次話でお会いしましょう!