双子島の影人形   作:小匣めもり

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皆さんこんにちは、めもりです!中2日の投稿となりました……(笑)それほど早く見せたかった話なので、ゆっくり楽しんで行ってください!それでは第16話「束の間の離別」スタートです!


第16話 束の間の離別

明「それでは、処刑者決定投票に移るぞ」

 

 

 

話し合い開始から30分が経過し、明の口から投票開始が告げられた。

 

 

 

明「と言っても、すぐに投票に移る訳ではない。今から1、2分ほど時間を取る。その間に今の話し合いを踏まえて考えを整理してくれ。投票はそれから行う」

 

 

初「あ、そーなのか。つっても、そんなちょっとの時間で決めきれっかな~」

 

 

経介(1、2分か……)

 

 

彩「あ、投票本番もそうですけど、この時間も他人との会話は禁止なので注意してくださいね!不正は許される行為ではありませんから!なので投票の際に後悔の無いよう、今の内にしっかりと投票先を考えておくことをお勧めします!」

 

 

明「……と、言うことだ。また時間になったら知らせる。各自考えの整理に移ってくれ」

 

 

 

こうして、僕らに自分の考えを纏める数分間の猶予が与えられた。

 

 

 

経介(時間は1、2分、ほんの僅かな時間だけど、設けてくれるだけ有難い)

 

 

 

僕は一度、少しうつ向いていた顔を上げ、他の生徒を様子を確認した。

 

 

 

経介(やっぱり、僕以外にも悩んでいる人は何人もいるみたいだな……。でも、それとは対照的に、既に投票先が決まっている人の方が多いみたいだ。……さっきの話し合いを聞くに、票数に偏りが生まれる確率は低いはず。一体何を根拠として、投票先を決めているんだろう……?)

 

 

 

この疑問が浮かんできたのは何回目だろうか。

 

 

 

経介(……いや、今考えるべきことはそれじゃない。僕が今考えるべきなのは、自分の投票先のことだ)

 

 

 

僕は答えの出ないこの疑問を頭から振り払い、意識を自分に集中することにした。

 

 

 

経介(まず、投票先としての候補は2人。泡瀬さんと姫野さん。僕は悪目立ちしないためにも、ほぼ投票されることが確定しているこの2人のどちらかに票を入れなきゃいけないんだけど……正直な話、僕視点どちらが怪しいというのは無い。だからこそ悩むんだ。票が僅差になりそうなこの状況であるからこそ、尚更。……でも、怪しくないと言える人ならいる。もう片方の人もそうなんだけど、この人に対しては確信を持って言えるんだ。また、僕がもう片方の人に投票するメリットだってある。今後のことも考えるのであれば、僕はその人に投票するべきなのであろう。ただ、だからといって特に怪しいとも思わない人に投票するのは……。)

 

 

 

僕はちらっと、その人の方を見た。

 

 

 

経介(……いいのか?本当に……)

 

 

 

僕が罪悪感と葛藤していた、その時だった。

 

 

 

明「そろそろ時間だ。どうだ?考えは纏まったか?」

 

 

 

明によって1、2分の時間がもうすぐ経過することが伝えられた。

 

 

 

経介(……もう、時間が無い。僕は、僕は……)

 

 

 

僕は時間に追われ、罪悪感と向き合うことをやめざるを得なかった。しかし、目を背けただけでそれが取り除かれるはずもなく、僕は罪悪感を引きずったまま投票に臨むこととなった。

 

 

僕は、この重い重い一票を彼女に投じることに決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「さて、時間だ。考えが纏まった者、そうでない者、どちらもこの場所には居るだろう。だが、そのどちらであれ、お前らは絶対にその一票を誰かに投じなければならない。これは義務であり、投資でもある。お前らの未来のためのな。そうしなければ、道がひらかれることはない」

 

 

碧「……ハッ、どうだかね」

 

 

明「絶対に、後悔のないようにな……」

 

 

経介(始まる……!!)

 

 

明「……それでは、今から処刑者決定投票を行う。全員、オレが合図を出したら一斉に投票したい人物に指さしをしてくれ。次に、指をさしたらそのまま動かずに暫く待っていてくれ。票数のカウントを行うからな。それが終われば為すべきことを為して、人形探しは終わりだ」

 

 

響香「……」

 

 

祥子「……」

 

 

 

2人は手と手をギュッと合わせ、強く祈っていた。

助かりますようにと、強く。

 

 

 

彩「それじゃ、始めましょうか!」

 

 

明「……あぁ、そうだな」

 

 

 

緊張で硬くなる者、恐怖で震える者、悪を裁くことを誇りに思う者、彼らの中には様々な人間が居た。ただ、想いは違えど為すことは同じ。彼らは拳を握り締め、明の合図を待った。

 

 

 

そして、その時は訪れた。

 

 

 

明から合図が出された。彼らは一斉に指さしという形で票を投じた。

 

 

 

経介(……これは……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介(……どっちだ……?)

 

 

 

一斉に指された指は、2箇所に満遍なく分散されていた。

彼らはそのことに驚いた様子を見せるでもなく、明による集計が終わるのをただただ待った。

投票が終わっても、響香と祥子は祈ることをやめなかった。

 

 

会議室は驚くほど静かだった。

 

 

 

 

 

突然、明の声により、その沈黙は破られた。

その声はこうだ。

 

 

 

明「……集計が完了した。得票数、21対18で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「泡瀬の処刑が決まった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響香「……え?」

 

 

祥子「……!!」

 

 

響香「今、何て……」

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

響香「……?」

 

 

 

その音が聞こえたと同時に、私は自分の手足が動かせなくなっていることに気が付いた。

 

 

 

響香「何これ、手錠……?」

 

 

 

見ると、私が座っていた椅子から手錠のようなものが伸びて、私の手足を捕らえていた。

 

 

 

明「……そうさ。そしてこれが、その椅子に大電流を流すスイッチだ」

 

 

 

先生はそう言うと教卓からスイッチを取り出し、私に向けた。

 

 

 

響香「あ……」

 

 

 

私は、何も言うことができなかった。

 

 

 

 

 

柚季「先生!!やめて!!!」

 

 

瞳「待って下さい!!!」

 

 

 

 

 

完全に固まってしまった私の耳に、先生を止めようとする柚季たちの声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

彩「……!先生方!抑えて下さい!」

 

 

 

 

 

柚季「やめて下さい!!離して!!!」

 

 

青葉「先生!!お願いだから!!やめて!!!」

 

 

 

 

 

明「……最後に何か、言い残すことはあるか?」

 

 

 

 

 

次に私の耳に飛び込んできたのは、そんな言葉だった。

 

 

 

響香「……」

 

 

 

私は今、死の淵に立たされて、分かったことが一つある。

あの時、おじさんの言葉が心に引っ掛かった理由。

それは簡単で、私自身が生きる希望を捨てずとも、心のどこかでは分かっていたからなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私がもう、助からないってことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、それを理解した瞬間、体が軽くなったような気がした。

 

 

さっきまで固まって動かせなかった場所が、動かせるようになっていた。

 

 

そして、私は軽くなった首を捻り、先生の体で隠れて見えなくなっていた柚季たちに一言、こう伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんな、ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那、先生の指がスイッチに触れたのが見えた。

会議室中に誰かの声がこだました。

 

 

 

果たして、その声は私の断末魔の叫びだったのか。それとも、友が私の名を呼ぶ声だったのか。

 

私の身体はもう、それを知ることすらできなくなってしまった。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!ついに2人目の犠牲者ということで、またゲームが進みましたね!人がいなくなるごとに罪悪感を覚えるのですが、それに負けず頑張って行こうと思います。それでは皆さん、また次話でお会いしましょう!

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