双子島の影人形   作:小匣めもり

20 / 24
皆さん明けましておめでとうございます!めもりです。前回投稿から暫くの期間が開きましたが、新しい年の始まりと言うことで急ピッチで仕上げて参りました!今年も変わらず楽しく投稿して行こうと思っているので、皆さまも楽しく読んでいただければ幸いです!それでは長くなりましたが、新たな年の始まりと共に、第18話「強さはここに」スタートです!


第18話 強さはここに

経介「確か、この辺りだったよな……」

 

 

 

16日朝の会議終了後、彼は構内のとある場所に来ていた。

 

 

 

経介「何か手掛かりみたいなのがあればいいんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

 

 

経介「んー、やっぱり何も見つからないか……」

 

 

 

そう呟くと彼は探す手と足を止めた。

 

 

 

経介「まぁ、もう2日前のことだし無理もないかな」

 

 

 

そう、彼が来ていたのは2日前の夜、小春を探していた時に見かけた怪しい人物がいた建物の近辺だった。

 

 

 

経介「でも困ったな、占い先の決め手が見つかればいいなと思ったんだけど、これじゃ誰を占えばいいのか決められない。このままじゃマズイし、また小春とかに怪しい生徒がいないか聞き回るか……?」

 

 

 

そんなことを考えていた時だった。

 

 

 

舞人「ん、そんなとこで何してんだ?」

 

 

経介「え?」

 

 

 

たまたま通り掛かった舞人が経介に声を掛けた。

 

 

 

経介「あ、小牧くん、えーっとね……」

 

 

 

経介は事の経緯を舞人に説明した。

 

 

 

舞人「なるほど、怪しい人影ねぇ……」

 

 

経介「うん。まぁ、怪しいと言っても気のせいかも知れないんだけどね」

 

 

舞人「……オレ、もしかしたらそいつの正体知ってるかも」

 

 

経介「うんうん。……へ?」

 

 

 

舞人の口から飛び出した思いがけない一言に、経介は間の抜けた言葉を零した。

 

 

 

経介「それ、ホント?!」

 

 

舞人「ん、まぁ心当たりがあるってだけで間違ってるかも知んねぇけどな」

 

 

経介「それでもいいよ!詳しく教えて欲しい!!」

 

 

舞人「ああ、いいぜ───」

 

 

 

 

 

 

 

~同刻 寮棟1階 食堂前~

 

 

 

縁「……はい。いつもの」

 

 

真琴「ん。さんきゅ」

 

 

 

彼女らは食堂前に設置された自販機の前にいた。

 

 

 

真琴「あー、やっぱ喉乾いた時はこれに限るわ。まじ回復」

 

 

縁「……」

 

 

真琴「……何?こっちじっと見て何か用?言っとくけどあげないからね」

 

 

縁「あ、うん。別にそういう訳じゃないから大丈夫だよ……」

 

 

真琴「……じゃあ何よ。何かあるんでしょ」

 

 

縁「え、まぁ、その……」

 

 

 

縁は少し躊躇った後に、こう口にした。

 

 

 

縁「……あんなに臆することなく、人のことを守れるのって凄いなって思って。何と言うか……色々と意外だったから……!」

 

 

真琴「ん、あー……さっきのか。あんま思い出したくないわ。腹立つし」

 

 

縁「あ、それはごめんね……」

 

 

真琴「まぁアレよ。あたしは別に誰が影人形だとか、誰が占い師だとかなんてきょーみ無いけど、あーゆーのは何か許せないんだよね、って話」

 

 

縁「……!」

 

 

真琴「……何でちょっと嬉しそうな顔してんのよ」

 

 

縁「え!」

 

 

真琴「それに意外とか失礼じゃね?ってか縁そんなこと言って来るタイプだっけ?」

 

 

縁「や、えと……そっ、そろそろ授業だから戻るね!!」

 

 

真琴「は?ちょっ、おいって!!」

 

 

 

そうとだけ言い残すと縁はさっさと教室に戻って行ってしまった。

 

 

 

真琴(何か変じゃね?今日のあいつ……)

 

 

 

 

 

 

 

~同日 教室棟1階 教室~

 

 

 

彩「はい!今日の授業はここまでです!皆さんよい昼休みを~!」

 

 

友輝「あ“~、やっと終わった~」

 

 

雪紀「白夜ちゃん、ご飯いこ!」

 

 

白夜「うん!おっけ!」

 

 

梢「茜、ここ教えて~(泣)」

 

 

茜「ん、どこどこ」

 

 

 

授業終わりの教室にはそんな声が飛び交っていた。

 

 

 

小春「経介!私たちも食堂いこ!」

 

 

経介「……」

 

 

小春「……?おーい、経介ってば!」

 

 

経介「えっ、何なに!?あっ、もしかしてお昼のこと?!」

 

 

小春「そうだけど……、もしかして考え事でもしてた?だったらごめん!」

 

 

経介「まぁ、ちょっとね。別に謝んなくていいよ!……でも確認したいことがあるから先に行っといてくれる?すぐ行くから!」

 

 

小春「確認……?まぁいいや。分かった、先行って席取っとくね!」

 

 

経介「うん!ありがと!」

 

 

 

経介が一言お礼を言うと、小春は約束通り食堂へと向かって行った。

 

 

 

経介(さて、僕も人探しをしないと……)

 

 

銘「……」

 

 

怜菜「……?銘、どうかしたの?」

 

 

銘「ん!ううん、何でもないよ!」

 

 

怜菜「そう……?」

 

 

 

 

 

 

 

経介(多分、ここかな……?)

 

 

 

経介は構内を探して回った結果、目当ての人物の部屋の前に来ていた。

 

 

 

経介(用事で構外に出たならここにはいないだろうけど、彼を探してる途中寮の方へ向かったって情報を貰ったから、いるはずだよね。朱谷くん……)

 

 

 

そう、経介が立っているのは航の部屋の前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数時間前~

 

 

 

経介『そのことについて、詳しく……!』

 

 

舞人『そうだな、あれは2日前だったな。ちょっと喉が渇いて下の自販機に飲物を買いに行った帰り、航が部屋を出てそこに向かってくのを見たんだ。結構遅い時間だったし外に出てる奴もほとんど見かけなかったから、それで間違いないと思うぜ。責任は取らねぇけどな!』

 

 

経介『ホント!?ありがと……!』

 

 

舞人『おう、役に立てたなら幸いだぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介(間違っていてもいい。今は動こう。前に進むために……!)

 

 

 

経介は壁に取り付けてあるインターホンに手を伸ばし、ボタンを押した。

 

 

 

経介「……」

 

 

経介(……いないのかな……?)

 

 

航「……誰?」

 

 

経介「!」

 

 

 

突然、インターホン越しに航の声がした。

 

 

 

経介「……僕です!同じクラスの高穂です!突然ごめん……」

 

 

航「あぁ……。で、何の用?」

 

 

 

突然の来客にも変わった反応を示すことなく、航はいつものトーンでそう尋ねた。

 

 

 

経介「えーっと、2日前の夜のことなんだけど……」

 

 

航「2日前の夜?」

 

 

経介「うん!」

 

 

経介(入れてはくれないのか……(汗))

 

 

 

経介は少し戸惑いつつもインターホン越しに要件を伝えた。

 

 

 

航「……なるほどね」

 

 

経介「うん。その付近に朱谷くんがいたって情報はあるんだけど、どうかな」

 

 

航「……多分、オレで間違いないよ」

 

 

経介「……!」

 

 

 

航の口から発せられたのは期待通りの言葉だった。

経介は着実に前に進むことができているという喜びを感じた。

 

 

 

経介「……じゃあ!」

 

 

航「でも」

 

 

経介「……?」

 

 

 

しかし、前進とはそう簡単にできるものではなかった。

 

 

 

航「でも、オレは声なんて聞こえなかったし、ましてや逃げてなんかいないよ」

 

 

経介「え、でも……」

 

 

航「オレがその時その場所に居たことは認めるよ。高穂が見た人影ってのもオレで間違いないと思う。でもオレは考え事をするために空気の綺麗な外に出ただけ。疚しいことなんて何一つしてない」

 

 

経介「……待って、じゃあ何で……」

 

 

航「要件はそれだけ?じゃあもう切るよ。オレ、ちょっと忙しいから」

 

 

経介「あっ、ちょっと……!!」

 

 

 

航はそうとだけ言い残すと、さっさとインターホンを切ってしまった。

 

 

 

経介(……おかしい。あの時の人影は明らかに足早に建物の影に消えて行った。考え事をしていただけならそう急ぐ必要もないはず。……これ以上朱谷くんに聞き込みをしても、恐らく考え事をしていただけの一点張りだろうし、一先ずは食堂に行くか。お腹も減ったし、小春も待たせてるしな。今日は考えることが多くなりそうだけど、取り敢えずは朱谷くんが次の占い先で決まりだ……!)

 

 

 

経介は確かな収穫を得たことを確信し、小走りで食堂へと向かって行った。

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

この時既にその身が静かに迫る悪意から守られている状況下にあることなど、今の彼にはもちろん知る由もない……。

 

 

 

航「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同日 夜 寮棟1階~

 

 

 

経介(今日も色々あったな……)

 

 

 

僕は寮棟1階の廊下を歩きつつ、そんなことを考えていた。

 

 

 

経介(投票結果から新しいことも分かったし、怪しい人も見つかった。まだまだ真実にたどり着くには遠いけど、焦らずに一歩ずつ進んで行こう……!)

 

 

 

構内の部屋の明かりも徐々に消えて来た、時刻は21:00頃であった。

 

 

 

経介(後はどうやって信用してもらうかだよな。どれだけ的確に占いをしても、本物だって信用してもらわなきゃ意味ないからなぁ……)

 

 

 

 

 

??「おーい」

 

 

経介「……?」

 

 

 

僕がちょうど自分の部屋の前に着いた時だった。後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

泰斗「これ、落としたぞ」

 

 

 

その声に反応して振り向くと、そこには飯野くんが立っていて、手には僕の役職が書かれたカードが握られていた。

 

 

 

経介「あ、ホントだ。全然気が付かなかった、ありがとう!」

 

 

 

僕はポケットからカードが無くなっていることを確認してからそれを受け取った。

 

 

 

泰斗「しかしまぁ、本当に何も見えねぇんだから困ったもんだよなー」

 

 

経介「え?あぁ、これのことか……」

 

 

 

僕は一瞬理解に困ったものの、すぐにカードのことだと理解した。

 

 

 

泰斗「そうそう。オレにもそれが見えたらなぁ。心強い味方ができてたかも知れないのに」

 

 

経介「心強いってことは、飯野くんは人間側の役職ってことかな……?」

 

 

泰斗「そうだぞー。って言ってもまぁ、オレが高穂の占い師を信用し切れないのと同じで、そっちも信用し切れないんだろうけどな……」

 

 

 

飯野くんは少しうなだれてそう話した。

 

 

 

泰斗「まぁでも、本当に占い師なんだったら応援してるし、頼りにしてるぜ。頑張れよ!オレも頑張る!」

 

 

経介「うん、頑張るよ。今朝の担城くんや加古川さんみたいに、前に出て頑張ってくれてる人がいるから、尚更頑張ろうって思える……!」

 

 

 

僕らがそんな会話をしていた時だった。

 

 

 

「あ、いたいた!経介くん!」

 

 

 

今度は別の方角から僕を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

泰斗「あ、加古川じゃん」

 

 

 

僕が振り向くと、そこには車椅子に座った加古川さんが一人で居た。手には見覚えのあるものが握られていた。

 

 

 

銘「ごめんね、遅くなって。今朝はありがと!これ、返しに来た!」

 

 

経介「あ、そう言えば……」

 

 

 

銘の手に握られていた見覚えのあるもの、それは経介がみんなの投票先をまとめたノートであった。

 

 

 

経介「ありがと!でも、どうして加古川さんが?確か担城くんが持ってたはずじゃ……」

 

 

銘「私が借りたノートだからね。有悟くんも自分が返しに行くって言ってたけど、ちゃんと感謝も伝えられてなかったからさ!まぁ、経介くん昼間は考え事で忙しそうだったから、返すのがこんな時間になっちゃったんだけどね……」

 

 

 

銘は少し苦笑いをしながらそう話した。

 

 

 

銘「……ところで、さっきちらっと私の名前が聞こえたようだけど、お二人は何の話をしてたのかな?」

 

 

経介「え……」

 

 

 

突然の質問に、僕は少し驚いた。先ほどの会話がどうやら加古川さんの耳にも少し届いていたらしかった。

 

 

 

泰斗「今朝の話だよ。加古川、凄かったじゃん」

 

 

経介「うん。凄い観察力だよ!あぁして担城くんや加古川さんみたいに皆の前に立って頑張れるのって凄いよねって話をしてたんだ」

 

 

銘「なるほど、そう言う……!まぁ、情報の共有は大切だからね。今朝みたいに私にしか見えないことがあるってことは、私以外にしか見えないこともあるってことだから」

 

 

経介「うん。でも、加古川さんは本当に凄いよ!身体が弱いのに、あぁもしっかりと発言して話を進めて行けるんだもん。特に不自由のない僕でさえ、占い結果の発表の時は上手く喋れないこともあるって言うのにさ……。……!」

 

 

 

僕が話し終わって加古川さんの顔を見ると、彼女の顔が少し曇っていることに気が付いた。

 

 

 

経介(そんなつもりじゃなかったけど、ちょっとマズイ言い回しだったかな……)

 

 

銘「……まぁ、そうなっちゃうか……。ある種、そう言われたくないから頑張ってるっていうのもあるんだけどね……」

 

 

経介「……っごめん!そう言うつもりじゃ……」

 

 

 

銘「いや、気にしなくていいよ!経介くんがそう言うつもりじゃないのも、私を褒めようとしてくれてるのも分かってるから。……それに私、周りの人にそう思わせたくないから、ここに来るちょっと前から毎日、ある努力をしてるんだ……!」

 

 

 

そう言うと銘は徐に手すりに手を掛けた。そして、そのまま……

 

 

 

泰斗「え……!」

 

 

経介「あれ、加古川さんって……」

 

 

 

僕らが驚くのも無理はなかった。そこには危なっかしさこそあるものの、手すりを持たずに自立している加古川さんの姿があったのだから。

 

 

 

銘「うん。2人も知っての通り、この足は歩くことができない。とても残念なことだけどね。でも、ちょっとずつ身体を支えることはできるようになってきたの!……って言っても、今はまだ数分で筋力の限界なんだけどね……」

 

 

 

驚く僕らに加古川さんはそう話した。

 

 

 

泰斗「すげぇや……!成果もそうだけど、自分の病に正面から立ち向かう姿勢、本当に尊敬するよ!」

 

 

銘「ありがと!そうも褒められると少し照れちゃうけどね……」

 

 

泰斗「いやいや、本当に!」

 

 

銘「……」

 

 

経介(……?)

 

 

 

少し、加古川さんの雰囲気が変わったような気がした。

 

 

 

銘「これも全部、梢のお蔭なんだよね」

 

 

泰斗「厘伶の?」

 

 

銘「そう。あの子のお父さんがリハビリトレーナーをやっててね、あの子が小さい頃からよくお父さんの仕事姿を見てた影響で、リハビリの基礎が頭に染み着いちゃったみたいでね。ここに来てからそれを続けられるのはその手伝いをしてくれるあの子のお蔭なんだ」

 

 

経介「へぇ、そうなんだ!」

 

 

経介(気のせいだったかな……?)

 

 

銘「私は梢のことをとても尊敬してるし、感謝してる。こんな私でさえも見捨てずに、嫌な顔一つせず手伝ってくれる。医者も。親でさえも。誰もが匙を投げた身体をした私なのにさ。本当に、感謝してもし切れないよ……」

 

 

経介「……!」

 

 

泰斗「……!」

 

 

 

暫時、静かな時が流れた。

僕らの立つその廊下には、誰もいないような気さえした。

 

 

 

銘「……ちょっと、余計なことを言っちゃったかな。ごめんね。私も少し疲れてるみたい」

 

 

 

そう言うと加古川さんは先ほどまで座っていた車椅子に腰掛けた。ほぅ、とついた彼女の一息が掠れて消え、それがどこか淋しさを醸し出していた。

 

 

 

銘「……でも、こんな身体だからこそ、頑張れるのかも知れないね。こんな身体に産まれたから、梢だけじゃなく、怜菜や茜にも本当に手間をかけさせてる。だから私は会議で見せたみたいに私の得意な面で貢献して、少しでも3人の脱出の役に立ちたいって思える!これはこんな立場に立った私だからこそ思えることだし、これが今の状況下で私にできる精一杯の恩返しだって思うんだ」

 

 

 

僕はこの話を聞いて、だからこの人はあんなにも堂々と胸を張って頑張れるんだと理解した。そこには人間一人一人が持つ、強さというものが確かに存在していた。

 

 

 

泰斗「なるほどな。友達想いで、良い理由だと思うぜ」

 

 

銘「うん。まぁそれに、ただでさえ身体の弱い私は狙われやすいだろうから。強い人間だって印象付けておかないとだからね。ま、それが返って脅威として捉えられて、より狙われやすくなるかも知れないんだけどね……」

 

 

 

そう語る銘の横顔が二人にはとても悲しそうに見えた。定められた運命の輪からは逃れることのできない人の無力さと儚さが、その横顔からひしひしと伝わってくるようだった。

 

 

 

泰斗「……そんな悲しそうな顔すんなよ。まだオレたちは生きてる!一緒にここを出ようぜ。高穂も、厘怜たちも勿論、少しでも多くの生徒と一緒にここを出よう!」

 

 

銘「……そんなの、当たり前だよ。私だって死ねない理由がある。少しでも早く、ここを出ないと」

 

 

経介(……理由か。……いや、そうだよね。死にたくない以外にも皆それぞれここを出たい理由があるんだよね。当たり前すぎて忘れてたけど。……そっか……)

 

 

経介「それって?」

 

 

 

検討するより先に、口が動いていた。しかし、興味の気持ちが勝ったのか、その発言をしたことに後悔はあまり無かった。

 

 

 

銘「ん、あぁ。昔、お姉ちゃんと約束をしたんだ。私なんかとは比べ物にならないくらいよくできた、お節介なお姉ちゃんでね。私はお姉ちゃんに会いに行かなくちゃいけないの」

 

 

経介「お姉さんに……」

 

 

銘「そう。事の経緯を話すと長くなっちゃうし、あまり話したくはない過去だから、そこは伏せさせてもらうね」

 

 

経介「あぁ、いや、大丈夫だよ!無理はしないで欲しいし!」

 

 

銘「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」

 

 

経介「うん」

 

 

経介(……本当はちょっと、聞きたかったんだけどな……)

 

 

 

話が一段落ついたと全員が思っていた時、腕時計に目を落とした銘が言った。

 

 

 

銘「……うん。今日はもう遅いし明日も授業があるから、私はこの辺で失礼させてもらうね」

 

 

経介「そうだね。これ、わざわざ届けてくれてありがとね!」

 

 

銘「こちらこそありがとう。じゃあ、明日からまた、一緒に頑張ろう」

 

 

経介「うん!」

 

 

泰斗「おう!」

 

 

経介「僕らも、部屋に戻ろっか」

 

 

泰斗「そうだな。もうカード落とすなよ!」

 

 

経介「うん。気を付ける!」

 

 

 

こうして、偶然生まれた集いは解散となり、二人はそれぞれの自室へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

経介「……さて、僕もさっさと寝る準備をしなくちゃな……」

 

 

 

経介がそう呟きながら玄関を上がった、その時だった。

 

 

 

経介「うわっ!」

 

 

 

経介は足元に置いてあった鞄に躓き、そのまま小物の置いてあるテーブルに向かって倒れ込んだ。

 

 

 

経介「いてて……」

 

 

「……には注意が必要ですね」

 

 

経介「……ん?」

 

 

 

部屋から何かの声がしたと思い、そちらを見るとテレビからニュース番組が放映されていた。どうやら転んだ拍子に誤ってテレビリモコンの電源をつけてしまったらしかった。

 

 

 

「……次のニュースです。昨日午後6時頃、行方不明になっていた女子中学生が山小屋で遺体となって見つかった事件で、近くに住む31歳の女性が逮捕されました」

 

 

「……また若い子ですか。この間も同じくらいの女の子が波に攫われ、遺体となって見つかった事件がありましたよね」

 

 

「はい。どちらも救えた可能性のある命であっただけに、とても残念に思います……」

 

 

 

経介「……救えた、命……」

 

 

 

偶然目の当たりにしたニュース番組を見て、僕は思ったことがある。僕の前には今、たくさんの危険に晒された命がある。それもまだ生きている、救うことのできる命だ。そして僕は今、その命を救える場所にいて、それに適した役職も持っている。果たして、このゲームが最後まで続けられるのか、はたまた添田くんの言うように途中で助けが来て終わりを迎えるのかは分からないけれど、僕は皆が解放されて笑顔になれるその時まで、自覚と責任を持って頑張らなくてはならない。頼りにしていると言ってくれた人たちのためにも、加古川さんに負けないくらい、強く。

 

 

 

経介「僕は、僕にできる最大限のことを───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同刻 ??? ???~

 

 

 

生徒Ⅹ「あんな感じで心配だったけど、人形探し、何とか乗り切ったわね」

 

 

生徒Y「うん。そうだね……」

 

 

生徒X「はぁ……」

 

 

 

彼女は一つため息をつくと、いつもの調子でこう言った。

 

 

 

生徒X「……あなたは相変わらずの様子ね。いい?あなたがそんな様子のままで乗り切れるほどこのゲームは甘くないの。この前も言ったでしょ?あなたの命はあなただけのものじゃないって。そりゃ私とあなたの役職を取り換えてしまえるのなら、今すぐにでも取り換えたいわ。でもそれはできない。そんなこと、あなただって分かってるでしょ?」

 

 

生徒Y「うん……」

 

 

 

私に対して彼女がしつこく言って来るのには、とある理由があった。

 

 

 

生徒Ⅹ「この島にいる限り、どこまで行こうとこの事実は変わらないの。あなたが死ねば私も死ぬ。それがこのゲームの決まり。それが私たち……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒Ⅹ「密猟者と密猟支援者の運命なんだから……」

 

 

 

生徒Y「……」

 

 

 

冷たい言葉、冷たい使命、冷たい狙撃銃。そこに暖かさなんてものは無かった。身体を優しく包み込む春の暖気でさえも、彼女の皮膚を劈いた。それは夜の帳が下りたせいなのか。はたまた虐げられた未来のせいなのか。彼女の昏く淀んだ瞳は、その答えの全てを物語っていた……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!今話では名前の伏せられ続けて来た謎の生徒たちの役職が明らかになりましたね!私自身、謎が紐解かれて行く過程を見るのが好きなので、今話はいつもよりも書いていて楽しかったです!さて、気になる次話では二度親友を失った彼女らの元に、再びあの人が訪れる様ですよ。一体何をするんでしょうか?楽しみにしていて下さい!それでは改めてここまでのご精読ありがとうございました。また次話でお会いしましょう!
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