双子島の影人形   作:小匣めもり

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皆さんお久しぶりです、めもりです。そろそろ定期的投稿にシフトしたいので書き溜め作業を決意しました()まだノーストックではございますが、とりあえず19話が仕上がったので楽しんで行ってください!それでは第19話「はじまりの種ベスパ」スタートです!


第19話 はじまりの種ベスパ

 

~翌日 4月17日 朝 教室~

 

 

 

有悟「おはようみんな!」

 

 

経介「おはよう、担城くん!」

 

 

恒也「おはよっすー、今日も元気だな」

 

 

有悟「一日は朝の挨拶から!元気があって当然だろう!!」

 

 

初「あー、お前ちょっとうるせーぞー!眠いのに寝れねーだろー!」

 

 

有悟「ム、それはすまない。しかしそろそろ授業が始まるぞ!おはよう、小越さん!」

 

 

初「ん。おやすみ~」

 

 

有悟「おやすみ?オレはおやすみではなく、おはようと言っているん……」

 

 

初「だー!もー、うるせーって!!」

 

 

有悟「なっ!?オレはただ挨拶を……」

 

 

暦(2人共、かわいい……)

 

 

 

 

 

そんな普通の学園生活を思わせる朝のやりとりが行われている一方で、教室の隅ではこんな話をしている生徒たちもいた。

 

 

 

蓮「なぁ凉太、お前あのままでいいのかよ」

 

 

凉太「……」

 

 

蓮「もっと他にやり方があったんじゃねぇか?」

 

 

凉太「……仕方ねぇだろ、あぁでもしないと誰も信じてくれねぇんだからよ……」

 

 

蓮「仕方ないって言ったって、流石にちょっと度が過ぎてたと思うぞ。考えなんて人それぞれなんだしよ」

 

 

凉太「……」

 

 

碧「蓮の言う通りだ。必死だったのは分かるけど、あんなやり方じゃ信用を勝ち取るどころか敵をつくるだけだぞ」

 

 

 

凉太は窓の外に顔を向けたまま、返事をしなかった。

 

 

 

碧「……本当は後悔してるんだろ。一時の誤った判断で行動してしまったことをよ」

 

 

凉太「……」

 

 

蓮「何だよ。そう言うことなら四宮や等野のとこに謝りに行こうぜ。オレらも付いてって一緒に謝ってやるからよ。あれからそんなに時間は経ってないし、今ならまだ間に合うだろ」

 

 

凉太「……うるせ。余計なお世話だっての。……ほら、授業始まるぞ」

 

 

 

凉太はそう言って肩を叩く蓮の右手を軽く払った。

 

 

 

蓮「んだよ……」

 

 

 

ガララッ

 

 

 

明「おはよ~。今日は寒いな~」

 

 

有悟「先生!おはようございます!!」

 

 

明「はいおはよ。そこー、そろそろ席着けよ~」

 

 

蓮「はーい」

 

 

 

明は教室に入って来るなりいつもの調子で挨拶をし、生徒の出欠確認を始めた。

 

 

 

明「……さて、今から授業を始めるが……神薙たちは今日も休みか」

 

 

太一「……ホントだ。でも、無理ないよな……」

 

 

穂乃香「昨日の朝の会議には来てたけど、大丈夫かな……」

 

 

 

教室には青葉、柚季、瞳の3人の姿が無かった。彼女らが学校を休むのは昨日に引き続きこれで二度目だった。

 

 

 

明「……言いづらいかも知れないが、機会があればお前たちの方から授業に出るよう声を掛けてやってくれないか?オレも鬼ではないから無理に出席しろとは言わないが、学びの方も大切にしてもらいたいからな」

 

 

有悟「分かりました!」

 

 

経介(神薙さんたち、どこで何してるんだろ。心配だな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し時は流れ、同日、昼前

 

 

 

~ 寮棟2階 ~

 

 

 

柚季「ん……」

 

 

 

気付くと、外には陽の光が照っていて、小鳥がさえずりをしていた。

 

 

 

柚季「あ、もうこんな時間……」

 

 

 

部屋にある掛け時計はとうに授業が始まっている時刻を示していた。

 

 

 

柚季(昨日はどうしてたんだっけ……)

 

 

 

眠る前の記憶も思い出せないまま、柚季は布団から出て疲れの見える顔に冷たい水を浴びせた。

 

 

 

柚季「授業、そろそろちゃんと受けないとな……」

 

 

 

そう溢した後、柚季はしばらくの間洗面台に立ち尽くし、鏡に映る世界をぼーっと眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ 昼過ぎ 島内 とある路地 ~

 

 

 

水路を流れる水の音や、喧嘩をする猫の鳴き声が聞こえてくる狭い路地を青葉は一人、どこかに向かって歩いていた。

 

 

 

青葉「……」

 

 

 

黙々と歩き続けて少し経つと、路地を抜けてひらけた場所に出た。

そこには田園風景が広がっており、目的の場所は目視できるまでに近づいてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

囁くような木々のざわめきは、その場所に着いた青葉を迎え入れているようだった。

 

 

その場所には今日も暖かな木漏れ日が差し込んでいた。青葉が向かっていたのは前に響香たちと4人で訪れた公園だった。

 

 

 

青葉「……あれ?」

 

 

 

公園に足を踏み入れるや否や、青葉は木の下に置かれているベンチに見覚えのある人物が座っていることに気が付いた。

 

 

 

青葉「……瞳ちゃん?」

 

 

瞳「え……?」

 

 

 

そう、そこにいたのは青葉の親友の瞳だった。

 

 

 

瞳「あれ、青葉ちゃん?どうしたの……?」

 

 

青葉「え、いや、別に……。瞳ちゃんこそ、ここで何してるの……?」

 

 

瞳「何って、特には何も……」

 

 

 

青葉がこの公園に向かっていたのには、理由なんてものは無かった。ただただ、彼女の足が彼女をここまで運んだのである。しかし、それは青葉だけに限ったことではなく、先にこの場所に来ていた瞳にも言えることであった。

 

 

 

青葉「……隣、いい?」

 

 

瞳「うん。いいよ」

 

 

 

青葉が瞳の隣に腰掛けると、2人はそれ以上の言葉は交わさず、ただただ流れて行く時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少し経ってのことだった。

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

また聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

 

瞳「……あ」

 

 

柚季「2人とも、こんなとこで何してるの……?」

 

 

 

その声の正体はまたも、彼女らの親友の柚季であった。

 

 

 

瞳「特には、何も……」

 

 

青葉「私も別に……。柚季ちゃんこそどうしたの?」

 

 

柚季「え、いや、どうしたって言われても、別に……」

 

 

 

柚季もその質問には特に思い当たる答えが見つからなかったようで、偶然にも3人は公園に集合する形となった。

 

 

 

瞳「柚季ちゃんも座りなよ」

 

 

柚季「あ、うん。ありがと」

 

 

 

その一言と共に再び静かな時間が流れ出した。3人は何をするでもなく、公園のベンチに座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、君たちは……」

 

 

 

次に気が付いたのはそんな声が聞こえた時だった。

 

 

 

柚季「あ……」

 

 

 

声のした方を見ると、そこには見覚えのある人物が立っていた。

 

 

 

おじさん「やっぱりこの間のお嬢さんたちじゃったか!こんにちは」

 

 

柚季「花宮さん……、こんにちは」

 

 

青葉「こんにちは」

 

 

 

彼女らに話しかけてきたのは、前に公園に訪れた時にお世話になった花宮というおじさんだった。

 

 

 

おじさん「今日は学校は無いのかい?」

 

 

瞳「……いえ」

 

 

おじさん「そうかい……?」

 

 

柚季「……」

 

 

おじさん「今日はここで何をしてたんじゃ?」

 

 

青葉「特には、何も……」

 

 

おじさん「そうかい……?」

 

 

おじさん(……?)

 

 

 

本来の彼女らを知るおじさんは、彼女らの口から繰り返されるどこか捉えどころのない返事に違和感を覚えていた。

 

 

 

おじさん(どうしたんじゃろうか……?)

 

 

 

そう思い、おじさんが3人の様子をもう一度窺ってみると、また別の違和感があることに気が付いた。

 

 

 

おじさん(……あれ?そう言えば……)

 

 

おじさん「今日は響香ちゃんはいないのかい?」

 

 

 

 

 

おじさん「……」

 

 

おじさん(これもダメかの……)

 

 

 

ついに返って来ることすら無くなった返事に諦めがつき、たまたま立ち寄った公園をそっと去ろうとした時、おじさんはポケットにあるものが入っていることを思い出し、去ろうとする足を止めて振り返った。

 

 

 

おじさん「そう言えば、お嬢さんたちに渡したいものがあるんじゃっ……た……」

 

 

 

突然、目の前に飛び込んできた光景に動揺し、一瞬全身が固まってしまった。

 

 

 

3人の目からは絶えず、静かに涙が流れ出していた。

 

 

 

おじさん「どっ、どうしたんじゃ?!一体何が……」

 

 

柚季「……響香ちゃん……?」

 

 

おじさん「……ん?」

 

 

瞳「響香ちゃんは……」

 

 

 

3人は何かのフィルターが剥がれたように、今度は声を上げて大粒の涙を流し出した。

 

 

 

おじさん「……そうかい……」

 

 

 

おじさんはそれ以上何も言わず、泣きじゃくる3人の背中を優しくたたいた。

この場所に3人が集まったのは決して偶然なんかじゃなかった。脳がどれほど記憶を遮断しようとしたって、忘れられるはずなんてなかったんだ。3人の泣く声は公園周囲に広がる田園にまでは到達することはなく、騒がしくなった木々のざわめきがそれを遮った。行き場を失ったその声は、響香だけがいない公園に淋しく響き渡っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の上から照っていた陽も傾き始め、島内南に吹いていた風も落ち着いてきた頃、公園内から聞こえる音はぽつぽつと途切れるすすり泣く声だけになっていた。

 

 

 

おじさん「……だいぶん落ち着いたかい?」

 

 

 

おじさんの優しい声に3人はびしょ濡れになった袖で涙を拭いながらこくりと頷いた。

 

 

 

おじさん「……災難じゃったな。その一言で片づけていいものではないし、その時のお嬢さんたちの気持ちはワシなんかが推し量れるようなものではないが、ワシからの彼女に対する思いも含めてそう言わせてくれ」

 

 

 

3人が理央を失った時のつらさは完璧には分からずとも、響香を失った時のつらさは4人が一緒に居た時の様子を知るおじさんにも自分のことのようによく分かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

おじさん「……あぁ、そうじゃった。お嬢さんたち、これを受け取ってくれんかの?慰めにはならんじゃろうが、ワシからの気持ちじゃ」

 

 

 

突然、おじさんはそう言うとポケットから小さな袋を取り出し、柚季に渡した。

 

 

 

柚季「……何ですか?これ……」

 

 

 

柚季が受け取った小さな袋の口を開けると、中から小さな植物の種が6つばかり出てきた。

 

 

 

おじさん「それは「ベスパ」と言うこの島特有の少し成長の早い花の種じゃよ。花屋を閉める時に婆さんと育てようと取っておいたんじゃが、気が変わって次にお嬢さんたちに会った時に渡そうと考えておったんじゃ」

 

 

柚季「ベスパの花……。青葉ちゃん知ってる?」

 

 

青葉「ううん、初めて聞いた」

 

 

瞳「私も……」

 

 

おじさん「まぁ、知らないのは無理もないことじゃ。じゃが、ベスパはいい花じゃぞ。その香りには心を安らがせる効果があると言われておる」

 

 

柚季「心を……」

 

 

おじさん「うむ。それにその花はお嬢さんたちにとてもよく似ておる」

 

 

瞳「……?どういうことですか?」

 

 

おじさん「ん?あぁ、その花はお嬢さんたちに似て───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仲睦まじ気にあたたかく咲くんじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人「……!!」

 

 

 

それは彼女らにとって正直、何よりも嬉しい言葉だった。

 

 

 

おじさん「植える場所に困っておるなら、ここから東に行った高台付近にワシの所有する花壇があるからそこを使ってくれればよい。世話をする道具も高台にある小屋に全部揃っておる。……どうじゃ?お嬢さんたち5人を例えるには1つばかり多いが、受け取ってくれるかの?」

 

 

 

質問の答えは簡単だった。

 

 

 

柚季「……多く、ないです」

 

 

おじさん「……ん?」

 

 

柚季「ありがとうございます!大切にします!!」

 

 

青葉「ありがとうございます!!」

 

 

瞳「ありがとうございます!!」

 

 

 

3人はそう言い残すと脇目も振らずに東の方へと駆けて行った。

 

 

 

おじさん「もうそろそろ日も暮れる!先生方やクラスメイトも心配しておるじゃろうから早く戻るんじゃぞー!!」

 

 

 

後ろから微かにおじさんの声が聞こえる。でも私たちは振り返ることも返事をすることもしなかった。駆け出した勢いでまつ毛に絡まっていた涙が飛び出して頬を伝う。私たちはそれを振り払いながら固く誓った。もう泣くのはやめにしよう。響香ちゃんだってそんなこと望んでなんていないはずだ。それにきっとこの花がお兄ちゃんと皆で過ごした楽しい毎日を生き続けてくれるから。だから、だから私たちは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この花が明るくあたたかく咲くように、とびっきりの笑顔で世話してやろう

 

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!おじさんの口調で書くのはやはり難しいでございます。他にも私の技術だと字では表現しにくいシーンがあって日々頭を悩ませております。やれば慣れるの精神なのでこれからの成長にご期待ください(?)それでは改めてここまでのご精読ありがとうございました!お疲れ様でした!
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