チュンチュン
経介「ん……」
小鳥のさえずりが聞こえる。窓から差し込んだ日の光が、彼に朝の訪れを告げていた。
経介「あれ、もう朝か……」
経介はそう言うとベッドの上で一つ、伸びをした。
経介「そっか、僕は昨日疲れてベッドで横になって、そのままずっと寝ちゃってたんだな……」
ふと、部屋にある掛け時計に目をやると、時計の針は7時50分を指していた。
経介「いけね、8時30分から入学式があるんだった!早く朝ごはん済まさなきゃ!」
経介は立て掛けてあった鏡の前で身だしなみを整え、寮棟1階にある食堂へと急いだ。
ガチャッ
食堂の扉を開けると、ほとんどの生徒がそこに集まっていたようで、とても賑やかな雰囲気が漂っていた。
泰斗「お、高穂じゃねぇか!おはよう!こっち来いよ、一緒に食べようぜ!」
有悟「おはよう高穂君、こっちの席が空いているぞ!」
経介「あ、飯野くん、担城くん、おはよう!」
泰斗「朝ご飯まだだろ?あっちで注文できるぞ~!」
経介「あっ、本当?ありがとう!」
僕は飯野くんに食堂の仕組みを教わり、注文した焼き魚定食を持って2人の待つ席に戻った。
経介「お待たせ!」
泰斗「お!来た来た」
有悟「高穂君は焼き魚定食にしたのか!そう言えば白米が好きと言っていたな」
経介「あ、覚えてくれてたんだ…!そういう担城くんはサンドウィッチなんだね!」
有悟「あぁ、オレは朝はパンと決めているからな!」
泰斗「オレは特にこだわりはねぇかな~…、ま、そんなことはどうでもいいんだ。さっさと食おうぜ、入学式に遅れちまう!」
経介「そうだったね!」
有悟「遅刻するのはいけないな、早めに食べ終わらなくては!それでは、いただきます!」
2人「いただきま~す」
僕らはそう言うと、少し急いで朝食を取り始めた。
経介「ん!この魚美味しい!」
有悟「このサンドウィッチも美味しいぞ!トマトやチーズ、ピーマンの彩りも美しいな!」
経介(ここのご飯美味しいなぁ…。あ、そう言えば小春たちはもう食堂にいるのかな?まだ寝てなきゃいいけど…)
僕は確認のため、辺りの席を軽く見回してみた。
すると、少し離れたテーブルで食事を取っている2人の姿が見えた。
経介(あ、2人ともちゃんと起きてるな。って、あれっ?小春が食べてるのってもしかして…)
小春「う"っ!!」
桜「わっ!びっくりした…、どうしたの?小春ちゃん。この世の終わりみたいな顔してるけど……」
小春「このサンドウィッチ、ピーマン入ってる……」
桜「あ~…(笑)」
小春「こんなもの栽培する人の気が知れないよ、全く!」
経介(…あっちも元気そうだな(笑))
泰斗「あ、やべ、もう15分じゃん」
有悟「本当か!食べ終わったならそろそろ移動を始めた方が良さそうだな!」
経介「そうだね、じゃあ移動しよっか!」
そんなこんなで僕ら3人は朝食を終え、入学式が行われる体育館へと向かった。
~体育館~
経介「っと、間に合ったかな……?」
有悟「恐らく大丈夫だろう。体育館は食堂からそう遠くはないからな!」
泰斗「それに、体育館に来てる生徒もまだ少ないみたいだしな」
経介「だね!ありがとう!」
僕らが体育館に着くと、前の方に40人分のパイプ椅子が5×8列で並べられており、何人かの生徒が既に席に着いていた。また、体育館には10人ほどの教師の姿があったが、明先生の姿は見当たらなかった。
彩「飯野くん、高穂くん、担城くん、おはよう!」
経介「彩先生!おはようございます!」
2人「おはようございます!」
彩「はい、おはよう!そろそろ入学式が始まるから、あっちの席に出席番号順で座っておいてね!」
有悟「了解しました!」
僕らは彩先生の指示に従い、指定された席に座って入学式が始まるのを待った。
しばらくして、生徒全員が体育館に集まった。
時刻は8時30分。ちょうど入学式の開始予定時刻だ。
僕はそわそわしながら、入学式が始まるのを待った…。
すると、彩先生がマイクを持って立ち上がり、僕らに向かってこう告げた。
彩「これから双子島学園の入学式を行います!」
経介(始まった…!)
彩「まず、学園長の挨拶です。学園長、延山先生。お願いします!」
明「はい」
青葉「え、延山って…!」
凉太「あの人学園長だったのか~(笑)」
僕らが驚きを隠せずざわつく中、舞台袖からマイクと一冊の本を持った明先生が現れた。
明「えー、改めまして新入生の皆さんどうも、学園長の延山です」
美咲(なんか、似合わんなぁ…)
明「いきなりですが、君らに入学記念品として銀のリングをプレゼントしたいと思います。彩先生、お願いします」
彩「はい!」
真琴「銀のリング?何それ、ちょーオシャレじゃん!」
経介(変わってるなぁ…)
彩「それじゃあ今から銀のリングを配るから、もらったら首につけていってね!それがこの学園の生徒証明道具になるから!」
響香「これが証明道具になるの?変なの…」
理央「でも響香こんな感じの装飾品好きそう!」
響香「…まぁ、嫌いじゃないよ(笑)」
梢「先生、一つ余りました」
彩「あっ、ごめんね!」
そんなこんなで僕らは配られた銀のリングを首につけた。
明「よし、みんな身につけたな!それでは改めて40名の生徒のみんな、入学おめでとう!今日から君らは晴れてこの学園の生徒だ!」
彩「おめでとう!」
教師たち「おめでとう!」
明「我々教師一同は君らの入学を心から歓迎するぞ!」
ここまで、僕はとても気分が良かった。新しい、楽しい学校生活の幕開けを身に沁みて感じることができたから。
でも、僕らが今日、ここに集められた本当の理由は「入学式を行うから」なんて単純なものじゃなかったんだ。
明先生がおかしなことを言い始めたのは、この辺りからだった。
明「さて、君らは今、この瞬間からこの学園の生徒となったわけだが…」
航(だが…?)
明「今日から君らには、あるゲームをしてもらう!」
銘(ゲーム!)
秋子「ゲーム?何それ!楽しそう~♪」
明「…楽しそう。か。まぁ、今そう思えるのは無理もないかも知れないが、実際に楽しめる奴はいたとしてもごく少数だけだろうな…」
秋子「?」
明「…遠回しに言っても仕方がないから、単刀直入に言わせてもらうぞ」
経介「…?」
一瞬、先生の表情が曇った気がした。
明「…今日から君らにやってもらうゲームは、君らの生き残りをかけた、サバイバルゲームだ」
初「…は?」
友輝「え、今生き残りとか言ったか?」
泰斗「いや、オレもそう聞こえたけどまさか…な」
明「いいや、聞き間違いじゃねぇぞ。君らには今日からサバイバル、いや、殺人ゲームをしてもらうんだ」
太一「いや…、ハハッ、流石に冗談きついっすよ先生~(笑)」
和奏「そうですよ!冗談でも言っていいことと悪いことがありますよ!」
明「釧路、百瀬。…冗談なんかじゃねぇよ」
菜華「先生、そろそろ本当のこと言ってください。いい加減怒りますよ?」
明「…まぁ、君らがオレの話を冗談に捉えるのも無理はない。だがオレは嘘はついていない。」
先生の目は、本気だった。
明「…彩先生、アレの用意をお願いします」
彩「分かりました」
そう言うと彩先生は予め用意されていたらしいプロジェクターを舞台にセットし始めた。また、舞台の上からは巨大なスクリーンが下りてきた。
経介(何が、始まるんだ…?)
彩「用意できました!」
明「ありがとう、彩先生」
明先生はそう言うと小さく深呼吸をして、先ほどの続きを話し始めた。
明「…これから君らに見てもらうのは過去にこの場所で行われたゲームの一部始終だ。あまり気分のいい映像じゃないんで、一度しか流さないからな。しっかりと見ておけよ」
みんなが不安そうな表情で見つめる中、映像の投影が始まった。
晴(…誰だろ…?)
パッ、と。巨大なスクリーンに映し出されたのは、見知らぬ一人の男子生徒の姿だった。僕らと同じ制服を着て、首には同じ銀のリングをつけている。でもその表情は張り詰めていて、何かを強く警戒しているように見えた。
それからしばらくの間、同じ映像が続いた。
冷音「…なんだよ、何も起きねぇじゃねぇか」
明「……」
冷音「…下らねぇ。茶番はもう終わりでいいか?式が済んだならオレは一足先に教室に戻らせてもらうぜ」
冷音がそう言って席を立とうとした、その時だった。
碧「うおっ!」
暦「ひいぃっ!!」
「ぐ…あ……っ」
スクリーンに映っていた男子生徒が突然、苦しみながら吐血したのだ。
ドサッ
男子生徒はそのまま床に倒れ込み、二度と起き上がることはなかった。
それだけで十分、衝撃的な映像だった。
でもそこには、もっと衝撃的なものが映っていたんだ。
白夜「なんでしょう、あの黒いのは…?」
そう。倒れた男子生徒の後ろに、人の形をした黒い何かが立っていたのだ。右手に、血の付いたサバイバルナイフを持って……。
明「と、映像はここまでだ。どうだ?これでオレが嘘なんてついてないって信用してもらえたか?」
千優「うっ…」
桜「千優ちゃん、しっかり!」
経介(今の映像、血が苦手な西木さんには相当ショッキングなものだっただろうな……。でも、流石に作られた映像だよね……?)
初「…いや、信用するも何も、今のは作った映像だろ?あんな黒いわけ分かんない奴の存在を認めろって、流石に無理あるだろ!」
経介(やっぱり、そうだよね。みんなも同じことを思ってるよね)
明「ん?あぁ、あれの存在が信じられねぇのか?あれならすぐ出せるぞ」
初「は?」
明「ほいっ」
経介「え…」
明はそう言うと、自分の体から、先ほどスクリーンに映っていた黒い人の形をした何かを出現させた。
初「……」
僕が見ているのは幻覚ではないらしく、小越さんや他の生徒全員にもそれは確かに見えているみたいだった。
恵「…ねぇ先生、それ本物なの?」
明「ああ、もちろん本物だし、確かにここに存在しているぞ」
そう言うと明はその黒い人の形をした何かに、先ほど僕らに配った際に一つ余った銀のリングを取りつけた。
銀のリングはその黒い人の形をした何かを透過することはなく、首と思われる部分に留まったままであった。
どうやらそいつは、本当にそこに形を持って存在しているらしかった。
明「どうだ、これでいい加減信用してもらえたか?」
恵「…」
明「あ、オレは嘘なんてついてないって言ったけど、この学園が創立一年目ってのだけは嘘だからな。そうでも言わないと上の学年がいないのは不自然だもんな」
僕らはもう、何も言うことができなかった。
明「…もういいなら説明に入りたいんだが、大丈夫か?」
明がそう言い出した、その時だった。
蓮「待てよ」
突然、宿井くんが立ち上がってそう言った。
碧「どうした?蓮」
蓮「逃げようぜ、みんなで。こんなふざけたゲームなんかに付き合う必要なんてねぇよ!!」
明「…」
友輝「でも逃げるったってここは離島だぞ、逃げるには海を渡らなきゃいけねぇ」
太一「そうだぞ。それに、泳いで渡れるような距離じゃねぇよ」
蓮「そのことなら大丈夫だ。だから諦めるな!オレは船の操縦ができるんだ!」
凉太「まじか!」
蓮「あぁ、本当だ!それに港にでけぇ船が泊まってたことも確認済みだ。アレなら40人全員が乗れるはずだ!」
有悟「素晴らしいぞ!宿井君!!」
蓮「それに人数だってこっちが有利だ。全員で協力すれば大人にだって勝てるはずだ!」
菜華「いい案だな、確かにそれなら成功するかも知れない!」
美咲「うんうん!蓮くんナイスって感じやね!」
経介(これは、いける……!!)
僕らはこの時、このゲームから逃れられるかも知れないという希望を抱いた。
でもその希望は、すぐに打ち砕かれてしまうことになる。
ピッ
ドカァァン
突然、何かのスイッチを押した音と共に、凄まじい爆発音が館内に鳴り響いた。
泰斗「何だ?!」
どうやらその爆発音は明先生のすぐ隣で鳴ったらしく、その場所からは煙が上がっていた。
小春「あの煙が上がってる場所って、黒いあいつがいた所だよね……?」
碧「一体、何が起きたんだ……?」
そんな添田くんの問いに、明先生がこう答えた。
明「オレが起爆したのさ。さっきあいつにつけた、銀のリングをな」
経介「銀のリングを、起爆…?」
僕らが黒いあいつの首もとに目をやると、確かに首につけてあったはずの銀のリングが無くなっていた。
太一「ホントだ、無くなってる…!ってかあの黒い奴、無傷じゃねぇか!」
明「…まぁ、こいつが無傷なのはさておき、今見てもらった通り、君らの首につけてある銀のリングには爆弾が仕込まれている」
生徒「!!!」
祥子「私たちがつけているコレも、あのリングと同じだと言うことですか……?」
梢「……多分。今爆発したリングはさっき私たちに配られてたやつの余りだと思うから、私たちがつけてるこのリングも、あのリングと同じものでほぼ間違いないと思う……」
祥子「……」
銀のリングの正体に戸惑いを隠せない僕らをよそに、明先生は淡々と話を続けた。
明「そして、その首輪が爆発する条件は、3つだ。1つは、この島から一定の距離以上離れること。1つは、オレが今持っている起爆スイッチのボタンを押すこと。そして、もう1つは……」
初「ふ…ふざけんなよ!こんなもの無理矢理……!!」
明「…そのリングを無理矢理、外そうとすることだ」
初「うっ……」
蓮「なんだよ、それ……」
こうして僕らの希望は、一瞬にして打ち砕かれてしまった。
明「…もう分かっただろう?君らはこの島から、このゲームから逃げることはできないんだ。最も、一部の人間を除けば、このゲームから逃げる理由なんてないと思うがな……」
経介(ん?どういうことだ……?)
恒也「…くそっ……、なんで!なんでこんなことするんだよ!!オレたちに普通で楽しい学園生活を過ごす権利はないのかよ!!」
碧「恒也……」
明「落ち着け、日野。今はその問いに答えることはできないが、ここだって学園だ。授業もあれば、イベントだってある。ただそこに、ゲームが介入しているだけだ」
恒也「そのゲームが必要ないって言ってるんだよ!!」
明「必要だ!!」
恒也「!!」
今までの先生の声とは打って変わって、その声には気迫がこもっていた。
恒也「…な、なんだよ。突然でけぇ声なんて出してよ……」
明「必要なんだよ。このゲームは、お前らの内のほとんどの奴にとってな。それに、オレたちが、お前らがどれほどこのゲームを拒もうと、このゲームは絶対に開催しなけりゃならねぇ。だから!だからお前らは、一人でも多く生き残って、この島を出ろ!!それがオレたち教師、全員の願いだ!!!」
明先生の顔は、必死だった。
恒也「……なんだよ。もう、わけが分かんねぇよ……」
明「…オレの口から伝えられるのはここまでだ。後はこの島を出て、自分の目で真実を確かめろ。ゲームが終わればそのリングも外してやる。だからそれまでは、自分が生き延びることだけを考えていてくれ……」
そう言う先生の目は、どこか悲しそうに見えた。
明「……それじゃ、ゲームについての説明を行うぞ」
そんな明の言葉に抗おうとする生徒はもう、誰一人として存在しなかった……。
まずはここまでのご精読ありがとうございました!次回こそゲーム開始となりますので、楽しみにしていただけると嬉しいです。また、第3話の制作はルールブックの制作と平行して行っているので、次話の投稿がかなり遅れる可能性があることを理解しておいて下さるとありがたいです。