~教室~
カタッ
太一「……おい、ペン落ちたぞ」
友輝「んあ、わりぃ」
太一「……」
友輝「……」
経介「……」
入学式兼ルール説明会を終え、教室に戻った僕らはみんな、不安そうな表情を浮かべたまま、何も喋ろうとしなかった。
しかし、その沈黙は長くは続かなかった。
冷音「……っあ"ー、イライラする!!」
太一「うおっ!」
恵「……びっくりした……、突然どーしたのさ」
冷音「どうしたもこうしたもねぇよ!お前らはまだあんな話を信じてるのか?!」
経介(……!)
恵「……いや、それは……」
僕らは答えに困った。確かに、冷音君の言ってることはおかしなことではない。むしろ冷音君が言っていることの方が普通だと思う。けど、僕らは先生が嘘をついているとは思えなかった。ましてやあの黒い人形を見て、役職のカードを手にした今では。
冷音「……じゃあよ、全員持ってるカードを表にして、役職を公開しちまおうぜ。そうすりゃお前らが怖がってるこのゲームの開催が本当だとしても、簡単に終わらせることができんだろ」
生徒「……!」
経介(確かに、そうすればゲームが簡単に終わる。でも、もしそんなことをしたのが先生にバレたら……)
冷音「なんだよ、何とか言えよ。あぁ、もしかしてそのことが先生にバレて、この首のリングを爆破されるのが怖いのか?そうなんだったら先生の目が届かない夜にやろうぜ。あとはそのことがバレないように自然にだな……」
冷音君がそう提案していた時だった。
ガラッ
明「すまんすまん、ちょいと遅くなっちまった」
経介(あ、明先生……)
冷音(……今の、聞かれてねぇよな……)
明先生はそう言って教室に入ってくるなり、教卓の前に立ち、僕らに話をし始めた。
明「よし、とりあえずみんな、長い時間お疲れ様!突然のことでまだ気持ちの整理がついてないと思うから、今日は少しだけ連絡をして、解散にしようと思う」
理央「……ねぇ先生」
明「ん、どうした?枷田」
理央「やっぱり、あのゲームの話って本当なの……?」
明「……あぁ、本当だよ」
理央「……」
明「まぁ、今はまだ実感が湧かないかも知れないが、すぐに本当のことだって分かるよ」
生徒「……」
明「……それと」
経介「……?」
明はそう言うと教卓を離れ、凉太の席の前まで移動した。
凉太「……何ですか?先生」
明「……」
スッ
凉太「あ!ちょっと、何するんですか!」
経介(あれは、相沢君のカード……?)
明は突然、凉太の胸ポケットに入っていた役職カードを抜き取った。そして……
明「ほらよ」
凉太「えっ」
なんと明は、そのカードの表側をみんなに向けて、見せたのだ。
碧「!!」
凉太「は?いやいや、それはダメでしょ!!」
碧「……えない……!」
凉太「え?」
碧「……見えない……!」
凉太「見えないって、どういう意味だよ……?」
碧「……カードは見えるのに、何が書かれてるのかがくすんで見えねぇんだよ……」
添田くんと同じように、僕にもカード自体ははっきりと見えているのに、その表側はくすんでいてよく見えなかった。
凉太「どういうことだよ、思いっきり役職が書いてあるじゃねぇか……?」
泰斗「いや、字がくすんでてよく見えねぇな……」
航「……オレにもくすんで見える。どういうことだ……?」
凉太「お前らもかよ……、他のみんなもそう見えるのか……?」
美咲「うちにも、くすんで見えるなぁ……」
風里「私も同じだよ~」
他のみんなも僕と同じで、そのカードの表側はくすんでよく見えないみたいだった。
僕らが不思議がる中、明先生がこう言った。
明「と、このように、君らが持っているカードは少し特殊なもので、カードの表側はそのカードの所有者にしか見ることができないんだ」
冷音「……!」
有悟「……信じ難い話だが、それならこの状況も説明がつくな……!」
明「だから全員がカードの表側を公開しても、リングの爆破はしないし、公開しても見えないから夜に集まる必要もないぞ」
冷音「……チッ、聞こえてたのかよ」
明「……まぁな、みんな考えることは同じなんだよ。あ、相沢ごめん。カード返すな」
凉太「……なぁ、先生」
明「ん?」
凉太「……ずっと気になってたんだけど、先生はオレたちの敵なのか?それとも、味方なのか……?」
菜華「……そこ、私も気になります。私たちに殺人ゲームをしろと言ったり、一人でも多くこの島を出ろと言ったり、正直な話、先生がどちらの立場で、何がしたいのかが理解できません」
経介(……僕もそこは気になってたんだ。これまでの先生の発言や行動からは、敵味方どっちとも言い切ることができない。だから、今この機会にちゃんと知っておきたい……!)
明「……オレは……」
明はその問いに少し困った表情を浮かべた後、ゆっくりと、こう答えた。
明「……オレは、お前らの味方であり、敵だよ」
恵「……どっちつかずじゃなくて、どっちなのかを知りたいなぁ」
明「……すまないが、これは君ら自身の問題なんだ。オレからは敵味方どっちとも言えないし、どっちかも分からないんだよ……」
恵「……ふーん」
そう答える明先生の顔は、説明会の時と同じように、どこか悲しそうに見えた。
明「……まぁ、この話はこれくらいにして、明日の連絡をするぞ。明日は火曜日で、人形探しも黒い侵攻もないから、8:30から授業を行うぞ。時間割りは~……」
その後は先生による授業の連絡が続いた。(割愛)
明「あと、放課後とか授業ない日の服装は自由だからな。それじゃ、今日はこの辺で解散!」
そう言うと明先生は、そそくさと教室から出て行ってしまった。
教室の時計の針は13時30分を指していた。
友輝「んあー、太一!秋子!飯食いに行こ!飯!」
太一「……あぁ、そうだな」
秋子「行こ!行こ!」
理央「うちらもご飯食べに行こ!」
柚季「そうだね~!」
瞳「もうお昼かぁ、早いね……」
青葉「うどん食べよ!うどん!」
響香「あ、青葉それ賛成!」
瞳「私も賛成~!」
理央「じゃあうどんに決定~!」
恵「ばなな~、カフェ行こ~」
菜華「そうだな、行こうか。あとばななって呼ぶのやめてくれって言っただろ……」
恵「いいじゃんいいじゃん、今更変えるのも変だって~(笑)」
菜華「全く……」
美咲「今から祥子ちゃんとご飯食べに行くんやけど、唯ちゃんも一緒に行かん?」
祥子「行きませんか!!」
唯「あ、うん。嬉しい!」
祥子(沖鳥さん、相変わらず笑顔が眩しいです……)
美咲「……?」
経介「……」
そわそわ
泰斗「どうした?高穂、そわそわして」
経介「あ、いや、特に何も!」
そわそわ
小春「経介!桜ちゃんとご飯行こ!」
経介「行こ~♪」マッテマシター
泰斗(あいつ……(笑))
有悟「飯野君、少しいいかな?」
泰斗「ん?どうした?」
有悟「いや、確認したいことがあってな 」
泰斗「……?」
先生からの連絡が終わり、僕ら生徒は街へ繰り出したり、ご飯を食べに食堂へ向かったりと、それぞれが別の行動を取った。
僕は小春と桜とご飯を食べた後、長い間おしゃべりをして、寮にある自分の部屋に戻った。
~寮棟、経介の部屋~
経介「あぁ、やっぱり二人と話すのは楽しいや!もうこんな時間だ……(笑)」
部屋の掛け時計の針は、19時40分を指していた。
経介「……でも、ゲームの話は一度も出なかったな……。二人はこのゲームのこと、どう思ってるんだろ……?」
経介がそんなことを考えていた時だった。
ピーンポーン
部屋に取り付けてあるインターホンが鳴った。
経介(誰だろ……?)
経介「今出ます!」
ガチャッ
そう言って部屋の扉を開けると、そこには一人の生徒が立っていた。
経介「……あれっ、担城くん!」
有悟「あぁ、突然すまないな」
経介「ううん、大丈夫だよ!それで、どうしたの?」
有悟「確認したいことがあってな。少しだけ、スマートフォンを貸してもらってもいいか?」
経介「……スマートフォンを?別にいいよ……?」
僕は、この時、担城くんがそう要求する意味がよく分からなかった。
有悟「すまない、恩に着るよ」
有悟はそう言って、経介からスマートフォンを受け取ると、経介の前で何かを黙々と調べ始めた。
それから少しして、調べものが終わったらしく、忙しく動かしていた手を止めた有悟が、こう呟いた。
有悟「……やっぱりか」
経介「……やっぱりって、何を調べてたの?」
有悟「あぁ、そのことを説明するのをすっかり忘れていたな。すまない。オレが今調べていたのは、この学園と島についてのことだ」
経介「この学園と、島について?」
有悟「そうだ。だがやはり、どれだけ調べてもこの学園や島のことは出て来ないんだ」
経介「え……?僕のスマートフォン、壊れてるのかな……?」
有悟「いや、恐らく正常だよ。オレも自分のスマートフォンが壊れているだけかと思い、飯野君のスマートフォンを借りて調べてみたんだ。でも、結果は同じだった。高穂君のスマートフォンでも、結果は変わらずだ。つまりこれは機械の故障が原因じゃないということなんだ」
経介「でも、そんなはずないよ!僕はネットでこの学園のことを知ったんだ!それなのに検索しても何もヒットしないって、絶対おかしいよ!」
有悟「……実は、オレもネットでこの学園のことを知った。そこにはゲームのことなんて、一つも書かれていなかった記憶がある。だからもう一度学園のことを調べたんだ。けど、何度検索しても何もヒットしなかった。それに、連絡先を見てみてくれないか」
経介「連絡先を……?」
僕は担城くんに言われた通り、自分のスマートフォンに入っている連絡先を確認した。
すると、本来そこにあるべきものが、無くなっているのが分かった。
経介「あれ、どうして……?」
有悟「……やはり、高穂くんもか」
経介「クラスのみんな以外の連絡先が、消えてる……!!」
そう、確かに入っていたはずの両親や旧友の連絡先が、一つ残らず消えていたのだ。
有悟「それに、ネットから情報を拾って来ることは可能なんだが、こちらから情報を発信することは出来ないようになっているみたいなんだ」
経介「……何か、意味がありそうだね……」
有悟「あぁ、学園の紹介文にゲームのことを記載していないのはまだ分かるが、学園や島のことを検索してもヒットしなかったり、島の外部との連絡が全て遮断されているのはどう考えてもおかしい。明先生の言動もそうだが、このゲームには間違いなく裏がある。高穂君のスマートフォンを借りて確信したよ」
経介「……ただの悪趣味なゲームってわけじゃなさそうだね……!」
有悟「どうやらそうみたいだな。突然の願いを聞き入れてくれてありがとう!オレはこのことをみんなにも伝えるよ!」
経介「あ、うん……!」
有悟は経介から借りていたスマートフォンを経介に返し、自分の部屋へと戻って行った。
経介「このゲームの「裏」か……。考えもしなかったなぁ……。担城くん、頭がキレるんだな……」
僕はこの時、ある不安を感じた。
経介(担城くんがもし敵陣営だったら、厄介なことになりそうだな……)
そう思った僕は、部屋にある掛け時計に目をやった。
時刻は、20時を越えていた。
経介「……20時って確か、ゲームの時間だったよね……。そして、このゲームの開催が本当なら、僕の能力は……」
このゲームの開催について半信半疑だった僕は少し、試してみる意味も込めて、こう言ったんだ。
経介「……担城くんを、占います」
すると、どこからか不思議な声が聞こえてきて、僕に一言、こう告げた。
「担城有悟は「白」です」
経介「今、確かに……!!」
~同時刻、教室~
生徒x「ねぇ、**」
生徒y「……どうしたの?」
生徒x「**は、何の役職だった……?」
生徒y「私は、人間だったよ!**はどうだったの?」
生徒x「私も、**と同じだったよ!」
生徒y「ホント?嬉しい!!」
生徒x「……私たちきっと、この島から出られるよね……?」
生徒y「……うん、絶対出られるよ!安心して!私がずっと、側にいるから!島を出た後も、ずっと、ずーっと一緒だよ!あの時二人で、約束したもん!そうだよね?私の大好きな……」
生徒y「お姉ちゃん!」
まずはここまでのご精読ありがとうございました!今回でも新しい謎が出て来ましたね!果たしてこれはどんなゲームで、最後の2人は誰なんでしょう?また、経介くんと有悟くんの今後の活躍にも期待です!