口が悪くて仲のいいアイドルたち。   作:しましか

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Pの財布が無くなる小話。その1

 事務所

 

奈緒「プロデューサーさんの財布が無くなったあ!?」

 

響子「はい……今朝プロデューサーさんとお話してて、昨日の夜くらいから見当たらなくなったって……」

 

奈緒「マジかよ……警察とかには?」

 

響子「伝えてないそうです。運良くカードはポケットにあったから入ってないって」

 

奈緒「不幸中の幸いってやつか」

 

響子「ちなみにプロデューサーさんの財布には、お家の合鍵が毎日入っているんです」

 

奈緒「やばいやつじゃねーか」

 

響子「この事実は私とまゆちゃんで触れ回ってた時期があるので事務所公認なんです」

 

奈緒「ええ……」

 

響子「はい」

 

奈緒「それで、プロデューサーさんは?」

 

響子「今は昨日の夜の行動を振り返るって駆け回ってますね」

 

奈緒「駆け回る」

 

響子「夕方くらいから同じ行動を取ってみるって」

 

奈緒「仕事は?」

 

響子「さあ?」

 

奈緒「そういうとこ抜けてんだよなあの人……」

 

響子「悪口ですか♡」

 

奈緒「まさか」

 

響子「命拾いしましたね」

 

奈緒(だから言わねーんだよ)

 

響子「それでですね。まだこの話は奈緒ちゃんにしかしてないんですよ」

 

奈緒「何でまた」

 

響子「1番ヘタレですから」

 

奈緒「は?」

 

響子「あ?」

 

奈緒「ごめん」

 

響子「そういうとこですよ」

 

奈緒「お前は本気でなんかやりそうな目してるから……」

 

奈緒(とは言えない)

 

響子「そういうとこですよ♡」

 

奈緒「読心術やめろ」

 

響子「プロデューサーさんには言ってませんけど、財布は誰かが盗ったと思ってるんですよね私」

 

奈緒「その心は?」

 

響子「鍵目的ですよ」

 

奈緒「ああ……」

 

響子「プロデューサーさんのお家も皆さん知ってます。基本的に接触云々の類は私かまゆちゃんが守っているのでありえませんが……」

 

奈緒「鍵さえ持ってりゃ仮に深夜帯だろうが忍び込めるってハナシか」

 

響子「可能なら毎日24時間体制で見張っておきたい所ですが……。物理的なものには逆らえませんから」

 

奈緒「っていうか、プロデューサーさんの家はタブーって決めただろ?」

 

響子「それはあくまで個人的な要件に限った話です。仮に深夜忍び込むところを捕まえたとしても、財布を渡しに来たという大義名分があればギリギリセーフです」

 

奈緒「深夜帯の時点で充分アウトだろ……」

 

響子「セーフです」

 

奈緒「お前が言うならそうなんだろうよ」

 

響子「ということでへたれ奈緒ちゃん」

 

奈緒「うるせえ」

 

響子「私と一緒に犯人探ししましょう」

 

奈緒「盗まれたの確定してくのかよ」

 

響子「当然です」

 

奈緒「っていうか夜に見当たらなかったっていうなら、プロデューサーさんの家じゃないのか?」

 

響子「いえ、無くしたことに気が付いたのは事務所らしいです。その日はそのまま事務所で泊ったとか……ああ、可哀想なプロデューサーさん」

 

奈緒「可哀想なのは確かだけど。犯人捕まえたらどうすんの」

 

響子「しばらく藍子ちゃんと智絵里ちゃんとのお仕事に同行させます」

 

奈緒「うわ」

 

響子「プロデューサーさんに苦痛を味合わせた分胃をキリキリさせてあげますね」

 

奈緒「……あたしじゃないぞ」

 

響子「知ってますよ。奈緒ちゃんが人の物盗めるわけないじゃないですか(笑)」

 

奈緒「なんか腑に落ちない」

 

響子「一応ある程度の目星も付けてあるんです」

 

奈緒「というと?」

 

響子「当然、昨日事務所に来てた子たちですよ」

 

奈緒「まあそうなるか」

 

響子「奈緒ちゃんは助手です。ワトソンくんですね」

 

奈緒「はあ」

 

響子「お手」

 

奈緒「はあ?」

 

響子「ワトソンくんってなんか犬みたいな響きじゃないです?」

 

奈緒「わからん」

 

響子「音楽性の違いですね……」

 

奈緒「解散してもいいぞ」

 

響子「しません」

 

奈緒「っていうかさ、思ったんだけど」

 

響子「はい」

 

奈緒「落とし物の可能性もあるなら、芳乃か茄子さんにも手伝ってもらえばいいじゃん」

 

響子「駄目です」

 

奈緒「何で」

 

響子「そんなのオチ担当だからに決まってるじゃないですか」

 

奈緒「オチってお前」

 

響子「今回は私が主人公なのでチートの使用は許可しません」

 

奈緒「お前もしかして最近唯と遊んだりしたか?」

 

響子「お泊りしましたね」

 

奈緒「なるほど」

 

響子「?」

 

奈緒「いや」

 

響子「というわけで行動開始です。まず1人目ですね」

 

奈緒「事務所には文香とみくがいるな」

 

響子「あ、二人とも昨日事務所に顔出してますね!」

 

奈緒「そうなのか」

 

響子「丁度いいです、みくちゃんにお話を伺うことにしましょう」

 

奈緒「乱暴はすんなよ」

 

響子「当たり前じゃないですかあもー。おーい、みくちゃーん!」

 

みく「んー? どうしたの響子ちゃに゙ゃ゙ーーーーー!?」

 

響子「 は や く だ せ 」

 

みく「なんにゃーーーーーっっ!!??」

 

奈緒「乱暴はすんなって!!??」

 

みく「乱暴とかいうレベルじゃないにゃ! ソファで転がってたら真横に包丁が飛んできたんだけど!?」

 

響子「みね打ちです♡」

 

みく「先端にみねはないにゃ!!」

 

響子「うるさいですねえ。黙って隠してるものを差し出せばいいんですよ」

 

みく「何!? 何なの!? 何の話!?」

 

響子「次はその喧しい舌にぶっ刺しますよ」

 

みく「ひぃぃぃぃいいい!?!?」

 

奈緒「ああ……。押し倒したーーー!! うわーーー! 包丁構えたーーー!!!」

 

響子「カウントダウンします。隠すと身になりませんよ。3、2、1……さよならみくちゃん」

 

奈緒「振り下ろしたーーー!!!」

 

みく「ぎゃーーーーーー!!!!!」

 

みく「ーーーーっっ!!!!」

 

みく「………………」

 

みく「…………う」

 

みく「あれ……?」

 

響子「残念です、ハズレみたいですね」

 

奈緒「みたいだな」

 

みく「なに……? なになに??? みく、生きてるの……?」

 

響子「さすがにあれだけされて何にも出してこないなんて考えにくいですからねー」

 

奈緒「次は文香か?」

 

響子「文香ちゃんは外面内気文学少女その癖クソレズなのでありえないでしょう」

 

奈緒「それもそうだな」

 

響子「押し倒しても包丁構えても恍惚としてそうで怖いですし」

 

奈緒「(笑)」

 

文香(全部聞こえてるんですけどね)

 

響子「というわけで次の容疑者が来るのを待ちましょう」

 

みく「おいこら説明しろや!!!!」

 

響子「あれ、まだいたんですか」

 

みく「まだいたんですか。じゃないにゃ!!! こちとらいきなり死に掛けて訳わかんないんだけど!?」

 

響子「うるっさいですねえ。当てないに決まってるじゃないですか」

 

みく「そういう問題に見える!!??」

 

響子「見えます」

 

みく「節穴が!!!」

 

奈緒「まあまあ一旦落ち着けって。あたしが説明してやるから」

 

みく「はー、はー……! 納得いかなかったら1発ぶん殴るにゃ……」

 

響子「殴られたくはないので、お願いしますね、ワトソンくん♡」

 

奈緒「それやめろっつうのに」

 

 

      *

 

 

奈緒「というわけだ」

 

みく「犯人探しぃ……? たしかに昨日はみくも事務所入りしたけど……」

 

響子「疑われる理由としては充分ですよね???」

 

みく「まあ理由としては……」

 

奈緒「最初は何やってるんだと思ったけど途中で分かったから止めなかった」

 

響子「奈緒ちゃん偉い」

 

奈緒「へへ」

 

みく「へへて」

 

響子「ちなみに早く出せって言うのは財布の話ですよ」

 

みく「知ってる」

 

響子「なんと」

 

みく「ところでみくのこのやり場のない感情はどこへ向けりゃいいの」

 

響子「文香ちゃんでも叩いて発散させればいいのでは?」

 

文香「えっ」

 

みく「なるほど」

 

文香「えっ」

 

スパーン!

 

文香「あ゙っ♡♡♡♡♡」

 

奈緒「いい音したなあ」

 

みく「とりあえずはこれで良しとするにゃ。ありがとね文香チャン」

 

文香「ありがとうございます……♡♡ ぐふ」

 

奈緒「お礼にお礼で返すっておかしくね」

 

響子「でもさすがにあの方法は乱暴すぎるかなと思いました」

 

みく「あと数分早く思って欲しかったにゃ」

 

奈緒「普通に犯罪沙汰だしな」

 

響子「でも暴力はいけませんし」

 

みく「あれは暴力じゃない……?」

 

響子「それで、みくちゃんは何か心当たりとかありますか?」

 

みく「え? うーん」

 

奈緒「昨日誰かと一緒にいるところを見たとか」

 

みく「誰かと……ああ、直接見た訳じゃないけど、昨日の夜の最後のお仕事は子どもたちと一緒だったらしいよ」

 

響子「子どもたち……。ああ、桃華ちゃんたちですか?」

 

みく「うん。夜は危ないから送ってくためにって」

 

響子「ロリコンという噂は本当だった……?」

 

奈緒「普通のことだろ」

 

響子「あーなるほど。つまりあの子たちがプロデューサーさんの財布を盗んだと」

 

奈緒「それはないな」

 

みく「ないにゃ」

 

響子「さすがにないですね」

 

奈緒「その仕事、他に誰かいなかったのか?」

 

みく「えーっと……たしか幸子チャンと唯チャンだったかな」

 

響子「ふむふむ。段々真相に近付いて来ましたね。いいですねいいですねえ」

 

奈緒「ホントかよ」

 

響子「ふふ、まあ見ていてください。このあと事務所入りするのは幸子ちゃんなんですよ」

 

奈緒「みたいだな」

 

響子「その時にこう、ちょちょっと」

 

奈緒「ちょちょっと」

 

みく「言っとくけど、刃物は駄目だよ。普通にショック死するレベルにゃ」

 

響子「えー」

 

みく「えーじゃないの」

 

奈緒「いくら幸子に対してもやっていいことと悪いことがあるんだぞ」

 

響子「?」

 

奈緒「いやその、何言ってんのこいつ。みたいな顔はやめろ」

 

響子「へタレというだけでなく観察眼も甘いですねえワトソンくんは」

 

奈緒「うるせえ」

 

響子「やっていいことと悪いことの区別くらいは付いてるつもりですよ」

 

みく「どの口が言うのにゃ」

 

響子「みくちゃんにもやっていい範囲しかしてませんもん。ほら、現時点で私怒られてないでしょ?」

 

奈緒「その代わりそこで文香が伸びてるけどな」

 

文香「(ちーん)」

 

響子「幸せそうじゃないですか」

 

みく「幸せそうならいいっていう発想が怖いにゃ」

 

響子「私のことも殴ります?」

 

みく「遠慮しとく……」

 

響子「ほーら怒られない」

 

奈緒「果たしてこの横暴ぶりを許していいものか」

 

響子「横暴とは聞き捨てなりませんね」

 

奈緒「横暴じゃないと???」

 

響子「違いますよ」

 

みく「どの辺りが」

 

響子「プロデューサーさんに刃物を向けたことはないです」

 

みく「そりゃそうにゃ」

 

奈緒「そりゃそうだ」

 

響子「なんていい子……」

 

奈緒「刃物キャラは色々とヘイトを集めやすいから気を付けろよ」

 

響子「はーい」

 

みく「キャラって」

 

奈緒「どうも今事務所ではゲームが軽いブームを起こしてるらしい」

 

みく「ふむ」

 

奈緒「ギャルゲーだぞ」

 

みく「ええ……」

 

響子「どうも姉の方が隠し持ってたのを妹に見つかって、それを唯さんがやったら一気にぶわーと」

 

奈緒「せめて名前を呼んでやれ」

 

響子「姉ヶ崎」

 

奈緒「間違ってはないがな……」

 

響子「ぺっ」

 

奈緒「なあみく」

 

みく「なんにゃ」

 

奈緒「何で美嘉はいたる所でこんな扱いを受けてんだ」

 

みく「知ったこっちゃないにゃ」

 

響子「相性が悪いだけですよーだ。おやおや? この音は」

 

みく「さあ来たね。下がってるにゃ」

 

奈緒「あたしもそうする……」

 

 

 

幸子「おはようござぁぁあああーーーーーーっっっ!!!!????」

 

響子「 は や く だ せ 」

 

幸子「なななななんですか!!?? 何なんですかぁぁ!?!?」

 

響子「今ならまだお説教くらいで許してあげますよ? さあ、さあさあさあ!!」

 

幸子「包丁ーーー!!!?? お母さーーーーん!!!!!!」

 

響子「私がお母さんですよ~~♡♡♡」

 

幸子「うわああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

みく・奈緒「「………………」」

 

みく「こういう感覚、なんて言うんだっけ」

 

奈緒「既視感、デジャヴ」

 

みく「それそれ、デジャブ」

 

奈緒「デジャヴな」

 

みく「デジャブ」

 

奈緒「デジャヴ」

 

みく「デジャヴ」

 

奈緒「よく出来ました」

 

みく「やっぱり響子チャンは怖いね」

 

奈緒「激しく同意しとく」

 

みく「そうして事務所には、幸子チャンの悲しい悲鳴が轟いたのであった」

 

奈緒「ちなみに言っとくけどまだ終わんねーぞこれ」

 

みく「えっ」

 

奈緒「響子様が満足してねーからな」 

 

みく「えっ」

 

 

 

みく「えっ」

 

 

 

 

 

 

 


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