プロダクション・中庭
志希「前川さん前川さん」
みく「……」
志希「前川さん前川さん」
みく「……」
志希「前川さん前川さん」
みく「……」
志希「まえか」
みく「うっざいにゃいつまで続くの!」
志希「にゃはは。今やめようと思ってた」
みく「白々しい。で、何」
志希「ん? 特に何も無いよ」
みく「嘘つきは泥棒の始まりだよ。何」
志希「のんのん。志希ちゃんギフテッド。のっと泥棒」
みく「っざ」
志希「みくちゃんの表情から苛立ちを感じる……。何かやな事でもあった?」
みく「一ノ瀬志希という存在」
志希「名前呼ばないで濡れちゃう」
みく「早く要件言ってよ面倒臭い」
志希「嫌悪感を丸出しにされるの嫌いじゃないよ志希ちゃん」
みく「あっそ」
志希「志希ちゃん催眠術覚えたの」
みく「てめえ科学者だろ」
志希「で、被検体を探してたワケ」
みく「やだよ」
志希「被害者とも言う?」
みく「ちょっとは隠す努力をしてほしいにゃ」
志希「みくちゃんあたしとキャラ被ってるからさー」
みく「後発組の癖に何を」
志希「だからあたしの代わりになってもらう。あたしのことは大丈夫。何があっても隠蔽工作は完璧だから」
みく「てめえの心配なんて1ミリもしてないにゃ」
志希「いざとなったら高飛びするし」
みく「今からして」
志希「海外ツマンナイ」
みく「日本は楽しいの?」
志希「アイドルは中々興味深いよネ」
みく「ちょっとまって何その吊るされた5円玉」
志希「催眠術の道具」
みく「ばっかじゃないの?」
志希「頭はいいよ?」
みく「そういう返事するやつを馬鹿って言うんだよ」
志希「鹿をさして馬という」
みく「は?」
志希「馬も鹿も賢いのに馬鹿。その漢字の意味が納得いかなくて調べたことあるんだけど、諸説あって面白いからみくちゃんもまた検索してみてね」
みく「頭良さ気なこと言っといてぐーぐる頼りって」
志希「やふーでもいいよ」
みく「はいはい」
志希「キミは段々眠くなる……キミは段々眠くなぁる……」
みく「ウソやろ」
志希「ほんとだよ」
みく「昨日は何時に寝たの」
志希「志希ちゃん寝てない」
みく「何やってんの」
志希「ちょっと思い立ったから人が夢見るプロセスについて考えてたら止まんなくなっちゃった」
みく「ほんと何やってんの」
志希「だからもう眠くて眠くて。限界。おやすみ。ばたんぐー」
みく「おやすみにゃ」
事務所
みく「………………」
志希「何読んでるのー」
みく「ネコチャン雑誌。は〜〜〜、もう可愛いにゃ〜〜〜♡」
志希「志希ちゃん分類的にはヒトだけど多分猫だよ。ほら撫でて」
みく「10分以上二足歩行するネコはいらない」
志希「ごろーん」
みく「媚びてくるネコもいらない」
志希「フッ、フッ」
みく「全長161cmのネコもいらない」
志希「どうしろと?」
みく「早く立て」
志希「まだ眠い」
みく「本気で寝てたもんね」
志希「真冬に芝生で女の子放置するとかみくちゃん酷い」
みく「みくも暇じゃないにゃ」
志希「暇そうに雑誌読んでたじゃん」
みく「これも仕事なのー」
志希「生産性の無い仕事」
みく「ほっといて」
志希「ねーねー、まだ催眠術の続きがあるんだけどー」
みく「一発ネタじゃなかったの……」
志希「志希ちゃんはいつでも大まじめ♡」
みく「催眠術なんてかかる訳ないでしょ」
志希「最近だとそれもう掛かってる人の台詞らしいよ? 平気?」
みく「中々訳わかんないこと言うよね志希チャン」
志希「フレちゃん程じゃないよ〜♡」
みく「比較対象が間違ってるにゃ」
志希「次の催眠は聴覚に訴えます。これ着けて」
みく「アイマスク」
志希「今から志希ちゃんが生声でみくちゃんの鼓膜を揺さぶるから安心して絶頂してね」
みく「絶対嫌にゃ」
志希「ちなみにそのアイマスクには猫が好きな匂いが含まれてたりするよ」
みく「ホントに!?」
志希「ホントの反対の反対の反対」
みく「あったま悪い発言はいい加減控えるにゃ」
志希「えー、何で返すのー」
みく「利点が見つかんないもん」
志希「ぶーぶー」
みく「志希チャンお仕事は?」
志希「もーちょっとー」
みく「ふーん」
志希「志希ちゃん今日のお仕事はちょっと楽しみなんだよね」
みく「珍しい。槍が降るにゃ」
志希「にゃはは」
みく「ちなみに何で?」
志希「みくちゃんと一緒だから」
みく「は???」
志希「みくちゃんと一緒だから」
みく「…………マジで?」
志希「マジだよ〜。みくちゃんが予定把握してないなんて珍しいね?」
みく「目眩がしてきたにゃ……」
志希「ちなみに分かってると思うケド、宿屋のロケだから1日一緒だよ」
みく「吐き気を催しそうにゃ……」
志希「更に寝る部屋は一部屋らしいよ♡」
みく「ヴォえッ!」
志希「みくちゃん顔やばーい」
みく「朝っぱらから出会っただけでも胃もたれしそうだったのに……」
志希「にゃはは、今日は1日一緒だよー」
みく「……」
志希「?」
みく「――あ、もしもし響子チャン? うん。いきなりごめんね、ちょっとお願いがあるんだけど」
志希「ちょ」
みく「今日のお泊まりロケ変わって貰うことって出来る? え! ほんと!?」
志希(無言で消える)
みく「お泊まりロケなんだけど、あー。明日は朝からお仕事かあ……」
志希(帰って来る)
みく「うん、うん。分かった。全然平気にゃ、いきなりごめんね、またー」
志希「あー残念、残念だなー。響子ちゃんと一緒にお仕事シタカッタナー」
みく「今失踪しかけた癖によく言う」
志希「電話相手がピンポイントすぎない?」
みく「それくらい嫌ってこと伝わってくれると嬉しいにゃ」
志希「志希ちゃん悲しい」
みく「何で服脱いでるの?」
志希「悲しくなってつい」
みく「何で服脱がせようとしてるの?」
志希「籠絡させようかなってつい」
みく「ついじゃねーよ手離せ」
志希「くんかくんか」
みく「顔も近づけんにゃ!」
志希「朝から思ってたんだけど、やっぱみくちゃんいい匂いする。撮影だから気合入れてきた?」
みく「へ。特に何もしてないケド。いつも通りだよ」
志希「知ってた。何も変わってないもん。ツマンナイ」
みく「殺すぞ」
志希「経験として死ぬのもアリかなー。でも生き返れないしなー」
みく「ナシだよ」
志希「やっぱり?」
みく「死ぬとか言うな。悲しくなる」
志希(殺すって言うのは良いんだ)
みく「は〜〜〜〜〜……。言ってもPチャンが取ってきてくれた仕事なんでしょ。今日1日だけ我慢するにゃ」
志希「にゃはは」
みく「ってことでお仕事行くよ。みくの長い長い1日の始まりにゃ」
志希「はーい」
志希「………………」
お仕事場
みく「……」
みく「…………」
みく「………………」
みく「………………で」
みく「アイツはいったいどこ行ったのにゃ!!!!!」
みく「ちょっと油断したらこれだ! ふざけんにゃ!!」
みく「ったくもーーーーっ!」
みく「――――もしもし!!??」
志希『もしもーし』
みく「どこにいるんにゃ! もうお仕事始まる時間だよ!」
志希『あたし志希ちゃん。今みくちゃんの後ろにいるよ』
みく「はァっ!?」
志希「はろはろ〜♡」
みく「どこに行ってたの!」
志希「にゃはは、なぁんかいい匂いする方にふらふらしてたら美優さんを見つけちゃって。嗅いでた」
みく「美優さん……? ホント?」
志希「ホントホント。プライベートだったらしいよ」
みく「そっか……でもそれとこれとは別にゃ! 危うく撮影に遅れるところ!」
志希「も〜怒りっぽいなあ。間に合ってるでしょ? ちなみにさっきのは嘘だよ」
みく「コイツ……」
志希「お仕事のコトになると頭に地が上りやすくなっちゃうのはみくちゃんの悪いとこだよ? もっとリラックスして生きよ〜」
みく「それとこれとは別にゃ……」
志希「そしてみくちゃんに朗報! あ、悲報かな?」
みく「なに」
志希「なんと撮影機材にトラブルが発生! お昼しかやってないお店を回るってことで、撮影は明日に延期です!」
みく「はぁぁぁぁあ!?」
志希「ってわけで今日は自由行動! 探索するなり借りてるホテル使うなり自由にしていいんだって!!」
みく「ちょ、そんな無理矢理な設定……! え、何、マジなの!?」
志希「マジも大マジ。志希ちゃん嘘つかない♡ ほらほら早くホテル行こっ」
みく「今さっき嘘ついてたじゃ……待って! 全然脳が理解できてないんだけど〜〜〜っ!!」
ホテル・客室
みく「本当に来てしまった」
志希「ここが今日寝泊まりする部屋か〜。ん〜。高級な刺激の弱い芳香剤がフレグランス」
みく「機材トラブルは本気だったみたいだけど……何かしたの志希ちゃん」
志希「まさか。志希ちゃん気まぐれ天才だけど人を困らせることはしないよ。アレは天災。天の災い」
みく「どうだか」
志希「ん……? でもこの匂い……。気をつけてみくちゃん。そのベッドの上で前のお客さんがセックスしてるよ」
みく「え゛っ!?」
志希「迂闊に寝たら孕んじゃうかもネ。まあ当然精巣から溢れて外気に触れた精子に生殖能力なんてないけど」
みく「……分かったからやめるにゃ。うう」
志希「ちなみに、多分男同士」
みく「えぇ……」
志希「志希ちゃんたちもヤっとく?」
みく「その手つきやめるにゃ」
志希「志希ちゃん的にはそのボディ味わえるなら処女ぐらいあげてもイイって思ってるんだけど♡」
みく「奪う手段がないにゃ」
志希「おや。ツッコミどころはそっちなんだ。指があるよ?」
みく「もうなんかもう疲れた」
志希「そんなキミに志希ちゃん特性催眠術!」
みく「まだやるのそれ」
志希「催眠術って要するに思考回路の制圧、または征服だからさ。上手いこと使えば疲労も無かったことに出来ちゃうかも」
みく「ふーん」
志希「疑いの眼差し」
みく「そりゃそうなるでしょ」
志希「密室、催眠術、女2人……。何も起きないはずはなく」
みく「何も起きないよ」
志希「催眠術って言うと聞こえが悪いのかな? 1種のリラクゼーションだと思えば警戒心の強い猫ちゃんもきっと分かってくれるはず!」
みく「それ、施行した回数は?」
志希「ぜろ」
みく「いつ思い付いたの」
志希「今さっき」
みく「吹き飛べ。ふにゃあ」
志希「やや。眠そうだねみくちゃん」
みく「んー……なんか、何だろ。疲れちゃったみたい」
志希「もしかして志希ちゃんのせい?」
みく「9割ぐらいは」
志希「しゅん」
みく「今日はもうお仕事ないんでしょ? 晩ご飯まで寝ることにするにゃ……」
志希「志希ちゃん抱き枕になるよ!」
みく「は?」
志希「しゅん」
みく「……お願いするにゃ」
志希「♡」
みく「勘違いしないでよね。みく、何か抱いてないと寝れない体質なだけだから」
志希「うんうん。分かってるよ〜」
みく「撫でるな」
志希「くんくん」
みく「嗅ぐな」
志希「それは無理」
みく「でしょうね」
志希「志希ちゃんもおねむ」
みく「……昨日寝てないんでしょ。一緒に寝よ」
志希「ん。寝る」
みく「おやすみ、志希チャン」
志希「おやすみ、みくちゃん♡」
みく「……」
志希「……くー」
みく「……ふふっ。こう見れば、志希チャンも可愛いもんにゃ」
*
みく「…………」
みく「…………ん」
みく「……アレ、志希チャン……?」
みく「ふにゃあ……。まあいいや。顔だけ洗お……」
みく「…………ぺっ」
みく「…………」
みく「…………っ!」
みく「……いい話だったのに」
みく「アイツ顔に落書きしてきやがった!!!!」
みく「子どもかーーーーーっっ!!!」
???
志希「……にゃはは。やっぱアイドル、たーのし♡」