遥花星空
不思議な夢を見る。
ボクは“ナニカ”の中にいた。
そこに4人の何者かが現れた。
1人は体格が大きいガウンを着て、サンタさんが被るような帽子を被り、手に木でできた大槌を持った青いペンギンの様な者。
1人は一頭身で仮面を付け、更にはマントをつけて金色の剣を持った者。
1人はさっきと同じ様に一頭身で橙色の身体、頭に青いバンダナを被り手に槍を持った者。
そして、最後の1人は、ピンク色にまん丸とした体。その目に強い意志を持った青い瞳。
まるで、希望を具現化させたかのような者だった。
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「起きろー!遥花!」
「ひゃい!?」
突如として聞こえた大声にガタンッと音をあげて起き上がった。
その声に周りにいた数名の人はこちらに視線を向けた。
私は何が起こったのかがわからず、キョロキョロと周りを見渡す。
「やっと起きたか、
声がした方に視線を向ければ制服の上にダボダボの白衣を纏った小学生位の女子がいた。
その少女は目をキッと鋭くさせてこちらを見ていた。
その少女を確認すると起き上がった少女は机に突っ伏した。
「なんだひなのちゃんか〜。いきなり苗字で呼ばないでよー。まだ授業中なのかと思ってビックリしたよ。」
「どんなに呼んでも呼んでも起きなかったお前が悪いだろ。」
「おっしゃる通りです……。」
『星空』と呼ばれた少女がそう言うと『ひなの』と呼ばれた少女は「ハァ…」とため息をついた。
それを見ていた周りの生徒がクスクスと笑っていた。
「お前が呼び掛けにも答えず、寝言無しにも寝ているのは珍しいな。何時もは声をかければ直ぐに起きるし、寝言では何時も「もっとご飯頂戴」とか言ってるのな。」
「ボク普段そんな寝言言ってるの?」
「言ってるぞ。」
「そ…そうなんだ……。」
その言葉に星空は苦笑いをしながら、先程見ていた夢の内容をひなのに話した。
それを聞いたひなのは若干、呆れたような声で星空に言った。
「……なんだその内容は…」
「え…えぇと……さぁ?」
ひなのの質問に内容を伝えた本人でさえも疑問を浮かべた。
それを見てひなのは再びため息をついた。
「あれ?そう言えばひなのちゃんはボクになんか様なの?この後予定あったっけ?」
「お、お前な…」
星空の質問にひなのは頭に手を当てて呆れながら言った
「今日期間限定のジャンボパフェを食べるって言って忘れるやつがあるか?」
「…………………………ぁあ!?そうだった!!」
ひなのの言ったことに星空は徐々に顔を青ざめて思い出したかの様にガタンッと音をあげて立ち上がった。
「い、急がなきゃ!!じゃあね!ひなのちゃん!!」
「あ、おい!星空!バック!バック!!」
「そ、そうだった!!ありがとう!ひなのちゃん!!」
慌ただしく教室を飛び出して行った星空を見てひなのはやれやれと呆れた後、帰り支度を始めた。
☆
「いや〜良かった〜。間に合って」
あの後星空は急いで期間限定のジャンボパフェが売っている店に向かい、店員にジャンボパフェがあるかとたずねた。
どうやらジャンボパフェは残り一つだったらしく、星空はそれを聞いて冷や汗を流し、心の中で起こしてくれたひなのに感謝をしてジャンボパフェを頼んだ。
「まだかな〜♪まだかな〜♪」
星空は左右に揺れながらジャンボパフェが来るのを待っていた。
それを見ていた周りの客や店員は微笑ましく見ていた。当の本人はジャンボパフェの事で頭がいっぱいになって気づいていなかった。
「お待たせ致しました。ジャンボパフェです。」
「やったー♪頂きまーす!」
星空がそう言うとすぐ様スプーン持ってジャンボパフェのクリームを口に運んだ。
「ん〜〜♪美味し〜♪」
まさに至福と呼べるような味に(星空にとって)頬を緩ませて感想を述べた。その美味しさに星空は次々とジャンボパフェを食べていった。
「ねぇねぇ『口寄せ神社』って知ってる?」
「え?何それ?」
「んむ?」
ふと、近くの席からそんな話が聞こえ星空は(食べながらも)その話を聞き入った。
「なんでもそんな噂があるみたいだよ?」
「また噂?最近多いよね。」
「………」(コクコク)
星空はその話を聞いて頷いてみせた。
ここ、神浜市と呼ばれる場所では噂話に尾ひれが付いて広まりやすい風土がある。
傭兵や花裂け女、絶交ルールなどの噂が広がっている。
星空はそんな事を考えながら(そして食べながら)近くの席にいる少女達の話を聞いていた。
「それ、どんな噂なの?」
「えっとね……」
▽
アラもう聞いた?誰から聞いた?
口寄せ神社のそのウワサ
家族?恋人?赤の他人?
心の底からアイタイのなら
こちらの神様にお任せを!
絵馬にその人の名前を書いて
行儀良くちゃーんとお参りすれば
アイタイ人に逢わせてくれる
だけどだけどもゴヨージン!
幸せすぎて帰られないって
水名区の人の間ではもっぱらのウワサ
キャーコワイ!
▽
「ちょ、ちょっと待って!なに、その喋り方!」
「笑わないでよ!そういう喋り方だったの!」
(そんな噂があるんだ……。)
彼女の話した噂に星空はある事を考えていた。
それは先程見ていた夢。その中に出ていた4人、主にピンク色の体に真ん丸者。その者を見た時、星空は不意に『会いたい』と思っていた。何故、会いたいと思ったのかは分からない。自分自身とその者に接点など関係などない。そもそも会ったことすら一度もない。否、“記憶”がない。
「………………」
星空はそんな事を考えながら黙々食べ進めた。
☆
「ありがとうございましたー。」
あの後ジャンボパフェを食べ終わり、会計を済ませた。腕時計を見ればそろそろ帰らなければ行けない時間だったため、星空は帰る場所へと向かった。
(口寄せ神社か……。)
星空は歩いている間、先程彼女たちが話していた口寄せ神社の噂を思い出していた。
(もし叶うのなら夢に出てきたあの子に会ってみたいなぁ…。いやでも、名前知らないしそもそも人ですらないし…。それにどうして会いたいのか分からないし…。と言うか帰れないって言ってたし。)
星空はあれこれ考えながら帰る場所へと向かう。
その間、何度かぶつかりそうになったがどういう訳か星空は考えながらも避けて行った。
(閑話休題)
しばらく考えて、最終的には噂に関わらない方がいいという結果になり、歩くスピードを早めた。
その時だった。
「っ!」
気配を感じた。何か不吉で嫌な気配がこの付近から感じた。
「この気配……まさか!?」
その気配に心当たりがあるのか、星空はスマホを取り出し何かを打つとポケットにしまい気配の感じた方へと急いで向かっていった。
☆
「確かここら辺に……」
星空は気配がした場所に着くと左手を目の前に突きだした。
その瞬間、左手の中指に付けられていた指輪の宝石が光出した。すると目の前に何かが現れた。まるで、何かの“入口”のように。
「やっぱり…!それに……他の子達の気配も3つ……。」
星空はそう言うと再び指輪の宝石が光出した。否、それだけではない。今度は星空の全身が輝きその姿を変えた。
先程の制服の姿とは違いピンクを主にしたフリフリの服。胸には指輪の宝石と同じ色の星型の宝石が付けられていた。頭には星型の髪飾りと赤いリボンが着いていた。手には先端に星が付いた赤と白で彩られたステッキを持っていた。
『魔法少女』
絶望を振り撒く悪しき存在、『魔女』を倒す希望を振り撒く存在。
彼女、『
星空は魔法少女へと変身すると目の前にある、『魔女の結界』の入口に飛び込んだ。
☆
魔女の結界内では3人の魔法少女達が目の前にいる『立ち耳の魔女』と戦っている。
1人は銀色の髪でアイドル衣装の様な姿で棒の両端に蝶の羽根型の刃が付いたナギナタに似た武器を持った魔法少女。
1人は黄色の髪で銀髪の少女と同じアイドル衣装の様な姿で斧に似た独特の形状の武器を両手に持っている。
1人はピンク色の髪でこちらも同じ様にアイドル衣装の様な服で弓のような形状の巨大な斧を持っている。
並ぶとまるでアイドルグループの様な3人は現在苦戦を強いられていた。
何時もは短時間で終わる魔女退治だが最近、魔女がやけに強くなっており倒すのが1人では中々に困難になっていた。
「…くっ。」
「ちょっとこれは…キツイかな……?」
「あ、あちし……もうダメ……。」
既に彼女たちの体力は限界に近づいていた。
特に最後に言葉を発した少女は体力が限界だった。
当然、魔女はその隙を逃さず体力が限界の少女に向けて攻撃を仕掛けた。
「「あやめ!!」」
「!?」
2人が彼女の名前を叫ぶも既に体力が限界のため動けなかった。
死ぬ恐怖に彼女は思わず目を瞑った。
まさに絶体絶命とも呼ぶべき状況……だったが。
《ドゴォォォン!》
「!?!?!?!?!?」
「「「!?」」」
突如、星型の弾幕が直撃し魔女はバランスを崩し倒れた。
3人は突如飛んできた弾幕に驚き、飛んできた方向へと視線を向けた。
そこには白髪赤眼(所謂アルビノ)にピンクを主とした服を纏った少女が先端に星が付いたステッキを魔女に向けて立っていた。そう、先程魔女の結界に入った遥花星空だ。
星空は魔女が倒れたのを確認すると3人の元へと駆け寄った。
「大丈夫!?」
「う、うん…」
「キミは…?」
黄色の髪の少女が星空に誰なのかと問いかけた。星空は腰に手を当て、元気よく自己紹介を始めた。
「遥花星空!南凪自由学園高校三年生!好きなことは食べる事!宜しくね!」
笑顔で自己紹介を終えると3人の前へと立ち、次の攻撃が出来るように構えた。
「とりあえず君達は下がってて!」
「ちょ、ちょっと待って!1人で戦う気!?無茶だって!さっき私たちでも叶わなかったのに!」
「でも君達そろそろ体力の限界でしょ!?そこの子に関してはもう体力の限界だし!」
「まだ私たちは戦える!」
「無理!禁物!!絶対!!!良いね!?」
「け、けど!」
「!危ない!」
星空と黄色の髪の少女が言い争ってると立ち上がった魔女が星空に向けて攻撃を仕掛けた。銀髪の少女がいち早く気づき星空に向かって危険を知らせる。が。
《ガシッ》
「あーもう!今話してるのー!」
《ブンッ》《ドゴォォォン》
「!?!?!?!?!?」
「「「えっ……」」」
星空は魔女の耳を掴むと壁に思いっきり叩きつけた。
3人はその小さな体格とは裏腹の怪力で魔女を叩きつけた事に唖然とした。
星空は3人の方へと振り向き腰に手を当てて言った。
「君達は休んでて!良いね!?」
「け、けど私たちは…」
「良・い・ね?」
「「「……はい。」」」
星空の気迫に押されて3人は了承せざるを得なかった。
星空は3人が了承したのを確認すると頷いて黄色の髪の少女によって頭に触れた。
「えっと…何を?」
「…………よし!」
星空の行動に疑問を持った銀髪の少女は星空に訪ねるが星空は立ち上がり魔女へと向いた。
魔女はふらつきながらも立ち上がり自身を壁に叩きつけた星空に視線を向けた。その目はまるで睨んでいるかのように。
「後は任せて。」
その言葉と共に星空は光に包まれる。
光が収まると星空の服は先程の服とは変わっていた。
アイドル衣装の様な服装で両手には斧に似た独特の形状の武器を持っていた。
先程の黄色の髪の少女と同じ服装へと変化していた。
唯一違う所といえば、黄色いラインではなくピンク色のラインへと変わっていること。胸の下にあるソウルジェムが黄色の五枚花びらではなく、ピンク色の星型に変わっている事。
「う…うそ……。」
「私と…同じ格好!?」
「ど…どうなって……。」
「行っくよー!」
驚く3人を他所に星空は一気に魔女まで近づき、両手に持った武器で斬りつけた。
「!?!?!?」
「まだまだー!」
状況を把握できない魔女を無視して連続で斬りつける。魔女のカウンターもあったが星空は俊敏に避けて攻撃を続ける。
流石の魔女も攻撃され続ければ力尽きる。当然星空はその隙を逃さず一気に魔女との距離をあける。そして武器を高く上げてその武器に雷を纏わせた。武器はバチバチと鳴り、それを見た星空は構える。後は、必殺の一撃を放つのみ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。」
狙いをしっかり定め、手に力を込める。魔女は流石に不味いと思ったのか、なんとか立ち上がり逃げようとする。が、それを簡単に逃がす星空では無い。
「サンダァァァァ・トレントォォォォォ!!」
必殺の一撃、『サンダー・トレント』を魔女に向けて放つ。それは魔女がのみ込まれるほどの大量の電気を本流の如く魔女に放出させ焼却する。魔女はその一撃に耐えきれず断末魔をあげることも出来ずに消滅した。
それと同時に魔女の結界は崩れていきやがて元いた場所へと戻っていた。
「やったー!大勝利!」
星空は喜びながら魔女の落とした戦利品回収した。
その様子を遠くで見ていた三人は絶句していた。
あれ程までに苦戦した魔女を彼女はたった一人で、しかも黄色の髪の少女の“力”までをも利用して魔女を倒した事に驚くしかない。
そして思った。
彼女はある意味恐ろしい存在だということに。
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