亜空の使者 ートラックに轢かれた運命は通りすがりの救世主ー 作:豚野郎
時は少し遡る。
暗い部屋の中、水瓶に浸った水面を眺め、腕を振り上げたり、声を出すヒキニートの影が一つ。
その形は面妖で、背中からは後ろから見た胴体を隠す程の翼が生えている。少年だ。
水瓶に浮かんでいるのは巨大スタジアムの中央、マリオとカービィが繰り広げている戦闘を上空から見ている映像だ。
やがて、戦闘は集結し、黒い霧でスタジアムが見えなくなる。
状況を理解できていない少年の背中に、眩い光輪が現れ、やがて女性の陰を作る。
『いつまでヒキニートをしているんですか。早く自分の役目を果たしに行きなさい』
———女神パルテナ。彼女を前にし、少年は素早く跪く。
パルテナは少年の頭上に片手を晒し、掌から一つの太陽にも似た輝きを放つ球体を生み出す。それはたちまち変形し、蒼の弓へと変わる。
手渡す女神と受け取る天使。
『さあ、御行きなさい。親衛隊隊長、ピット』
少年ははじかれた様に部屋を飛び出し、雲海の彼方へと消えて行った。
☆
「あいつ、ちゃんと逃げられたんですかね?」
「ええ、きっと大丈夫ですよ。そう信じておきましょう」
「小生、丸くて滑りやすいですから、もっとちゃんと掴まないとワープスターから落ちますよ」
身体に伝わる力が一層強くなる。ひゃっほぅ。
今、ワープスターに乗って行く当ても無く雲の上を走ってる訳だが、とにかく一旦落ち着ける所に降りたいな。
「すこし、雲の下まで降りますからね」
「わかりました」
白い雲を通過している最中、目に映る色が変わった。
これは………。
「あら、この雲、赤くてオシャレですわね」
「しまった!」
雲を抜けた先、真横に戦艦ハルバートがいた。
必死に旋回するが、巨大な戦艦の速度に勝てる訳もなく、装甲に接触するや否や、ワープスターから投げ出された。
「いでっ」
幸か不幸か、遥か下方の地面ではなく、ハルバートの甲板に二人揃って落ちる。ワープスターだけは戦艦に擦りもせずに下界へと落ちて行った。つまり逃げられない。
何も襲って来ないと言うことは、向こうはまだこちらに気づいていないみたいだ。
「ピーチ様。向こうに見つかる前に、早いとこ———ありゃ?」
後ろにいたはずのピーチ姫はいつの間にか、デッキの奥の方へと離れている。なんでこう、危機感が湧かないのかね……。
「………たく、目を離すとすぐウロチョロと………!」
全く天然な女に憤りは覚えるが、相手が相手なので余計なことは口に出来ないのが悲しい所。
今は彼女の背中より下あたりの、二つのふくらみを追うことしか出来ない。———へへへ、相変わらず良いケツしてやがるぜ………。
「姫様、あんまりウロチョロしてると××××しますよ?」
「…………………」
おっと、考えていることより先に劣情の方が口に到達してしまった。カービィちゃんうっかり☆
まあ、どうせこのアマは腐女子だし、大した反応は———
「……………………(ツカツカツカツカ)」
「あっ、ちょっと待ってくださいよ!姫様〜!」
腐女子だろうが一般人だろうが、普通は引くと言うことに思考が追いつかなかったのは、長年アイドルやっていて人との関わりがあまりなかったからに違いない。うん、きっとそうだ。
「…………………ヒトケがありませんね」
「……ああ、言われてみればそうですね」
戦艦なら何かしらイキモノがいるはずなのに、人どころか虫一匹見当たらない。
「変ですね…………中に入ってみましょうか」
「おいおい、さらっと怖いこと言わないでくださいよ〜」
てくてくと当ても無く歩き出すピーチの目の前で、爆発が起きた。
「…………あなた………!」
「………あ、あぶねぇ!」
なんとか保ったな!
すぐさま『ストーン』を解除し、彼女を物陰へと押し込む。
「畜生、バレたか!?」
とにかく索敵だ!辺りを見回す…。
ある音を聞いた。
すぐ近くから、鼓膜をふるわす甲高い音が聞こえてくる。
その正体は、青と白の鳥の様な———
「戦闘機?どうして………」
間違いない。さっきの爆撃はヤツのだ。
しかし、考えている暇は無かった。戦艦の甲板が動き出したのだ。
デッキの中から、機銃やら大砲やらと、物騒な物が現れ、砲撃を開始する。
「ややや、なにやら大変なことになってきましたわねぇ」
「なんで出て来てるんですかぁ———!?」
爆風にスカートを揺らして物陰からピーチが現れたと同時に、戦闘機が爆弾を投下し、飛行戦艦が大型クローを発射した。
それぞれ、互いをかすめ合い、爆弾は小生達の横に直撃し、クローは戦闘機の左翼を根こそぎ持って行き、雲の下へと沈んで行った。
ついでに爆風に飛ばされた小生達も雲の底へと消えて行く。
「ぎぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
☆
「んんん〜、来たは良いけど、何からしようかね……」
所変わって森の中。絶賛直進中。付け足すと若干迷い気味。
というか、本当に直進しているのかもはなはだ怪しい……。
確か、この森で誰かと会えるはずなんだが、如何せん、昔の記憶なのではっきりとは覚えていない。
「…………………」
そして、さきほどから感じている何者かの気配…………。
たまに、不自然に草むらが動くことがある。姿は見えないが、何かがいることは確実だ。
そして、歩くこと体感半日、やがて明らかな人工物の元へと訪れた。
白いレンガで出来た門…………。
「遺跡………か」
中に入ろうとした矢先、目の前に風に乗って木の葉と共に、布切れが落ちて来た。
———いや、ちがうな。
布切れに見えた理由は、視認するにはあまりにも細すぎる手足がそれだ。
良く見れば、くたびれボロついているが、いっぱしの服だ。そして、その服に至極なじんでいるのは小柄な少年———に見える人形だ
「オレの後をつけていたのはお前か」
漂う異形の気配からして、疑問ではなく確信だ。
とんがり帽子のつばの下から光る双眸がこちらを見据える。集中線が合いそう。
「フゥ…………………」
人形は懐からトランペットを取り出し、息を吸い込むと、大気に向けて一気に吹き鳴らした。
———気配が増えた。
「………クッ!」
ほぼ状況反射で身を横に転がす!コンマ2秒、オレがいた所を、無機質な掌が通り過ぎる!顔を向けるとそこには、木彫りのマネキンが無数にいた。どうやら、今の合図で召還されたみたいだ。マネキン共は、次々と両手を振り回してくる。
やめてください捌き切れません。
「物量でごり押しかよ畜生!」
得物が大剣で良かった。デカい一振りで二、三体を一気に叩き伏せられる。それでも、限界がある。たちまち距離を詰められ、マネキン共を呼んだ少年の人形からどんどんと離れて行く。
「ケケケ!近かったが、アンタはどうやらハズレなみたいだな。この『森の聖域』を見た以上、生きて返すわけにはいかないんでね。ここでくたばってもらうぜ!」
そう言い残し、人形は木枯らしと共に、森の中に消えた。
「あ!待ちやがれ!」
繰り出される無数の手を大剣でガードし、隙を見ては大剣を横に一薙ぎする!
だが、敵の数が多過ぎてこちらが攻めに入る機会がだんだん減って、次第に後ずさることしか出来なくなる。
———このままじゃぁ、ジリ貧だな…………なら、
「あばよっ!」
身を翻し、地を蹴る。ち、違うから!逃げるとかじゃないんだからね!相手の数が多いから、たまたま背を向けて走ってるだけなんだからね!
「チッ、まだ来るかよ!」
逃げる(あっ、逃げるって言っちゃった)こちらの背中を、無数のマネキンは必要に追ってくる。一体何が気に食わなかったのか?あの人工物は、見るからにただの手入れの行き通っていない廃墟だった。ふと、あの三角帽子の人形の言葉が脳裏をよぎる。
———この『森の聖域』を見た以上、生きて返すわけにはいかないんでね。
森の聖域?それはどこかで聞いたことがあるような………勿論、前世での話だ。たしか、オレが相当やり込んでいた『何か』の中で出て来たはずだ。なんだろう、記憶がやたらとぼやけていて思い出せない。しかし、聖域と言うからには、何かがあって、向こうもそれに触れて欲しくないのだろう。ならば、一体それはなんなのか。あの黒い粒子を纏った化け物や、スペースパイレーツ共と関係があるのだろうか?だとしたら、あそこにはなんとしてでも侵入せねければならない。
そんな事を考えながら走っているうちに、追っ手はいつの間にか消えていた。
とりあえず、長いため息を一つ。
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜………………やっとこさ一息つけるぜ……」
知らないうちに森の中で、結構開けた平地に出ていたようだ。その中央には、いつの間にか傾いていた太陽のオレンジを受けた建物が一つ建っている。丁度良い。あそこに一晩泊めてもらおう。
「…………森の洋館?」
看板にはそう書いてある。どうやら宿みたいだが、こんな人気の無い森の奥で、このような大層な建物が建っている事自体おかしいハズなのだが、今のオレはそれに気づけない程疲労困憊していた。
前書きの通り、少々立て込んでおりまして、投稿がビックリする程遅れてしまいました。これからはいつものペースに戻ると思いますのでよろしく御願します。
あと、私のニンテンドー知識は結構ゼルダの伝説に偏っているので、この物語もゼルダの伝説の内容が濃くなるかもしれません。