亜空の使者 ートラックに轢かれた運命は通りすがりの救世主ー 作:豚野郎
ホラー参戦。
・マリオ
・ゼル伝
・ポケモン
・呪怨
・イケニエノヨル
・シークレット
マネキンには追いかけ回されるし、大剣は振り回すし、走り回るし、もう、なんだか眠い。とにかく眠い。心の底から眠い。書いてる本人も眠い。だって夜中の三時だぜ?調子こいて夜更かししてるテンションで書いてるんだぜこれ?
ああ、もう、とにかく洋館の中に入れてもらおう。そして寝よう。もう今日は頑張らないぞ。
———とか言うオレのだらけた意思が物理的な効果をもたらしたのか、目の前の館の大きな扉がひとりでに開き始めた。様に見えただけ。ちゃんとメイドさんが二人掛かりで開けてくれました。いや、別にそんなホラーな展開は期待してないから。オレはただ休みたいだけだし、なんか出ても気づかないで爆睡するだろうし。
「旅の方ですね?お疲れでしょう。この洋館でどうか一晩御泊まりになってください」
「食事などはこちらで用意させて頂きます。さあ、どうぞ中へ」
メイドさん二人に促されるまま屋敷の中に入る。
全然関係ない話だが、メイド服のスカートはやはりロングに限るだろう。ミニよりロングの方が落ち着いた雰囲気があるし、ミニの『どうぞめくってみてください』みたいな安っぽい臨場感より、ロングの難易度の高いめくれ方の方が興奮するし、超低空から見上げるメイドさんの下乳もまた格別だ。あと、髪はロングとショートどちらも合うと言うのもまた良い。それプラス眼鏡や前髪のヘアピンなどのオプションがついても違和感がないどころか萌え度が嵩ましされるのもメイド服故の特殊性だろう。
メイドさんの横を通り過ぎる時にそんな思考をコンマ一秒で済ませ、エントランスへと出る。
凄く立派な建物だ。天井にぶら下がる大きなシャンデリアにちりばめられた色とりどりな装飾はきっと宝石だろう。足にふわりと吸い付く絨毯と言い、高級そうなソファーと言い、こんなオレには似合わないくらいの高級物件だ。
ふと、視界内で黒い陰が動いた。エントランスの奥の、廊下へと繋がる入り口の向こうに一匹の黒猫を見つけた。猫はこちらの視線に気づいたのか、オレを一瞥すると廊下へと消えてしまった。ここで飼われているのだろうか?
建物の雰囲気を見る限りここも、今は宿なのだろうが、もとは誰かが使っていたお屋敷なのだろう。
「お部屋はこちらでございます」
メイドに連れられて、さっきネコがいた廊下に出て左に曲がり、突き当たりをまた右に曲がり、その一番奥の部屋に案内された。やたらと離れた所に案内されたなぁ…。他に人の気配を感じなかったし、泊まってる人間も少ないだろう。それにこんな森の奥だ。オレ一人だって事もありえる。何故だと言う思考も部屋に入ってベットを見つけた途端、眠気に襲われ、半自動的に疑問を放り投げてベットにダイブした。
「お食事の時間になりましたら、御呼びに参ります」
そう言ってメイドさんは出て行った。
眠気に身を委ね、まぶたを閉じようとした時、扉の隣のタンスから、わずかだが物音がした。
気になって立ち上がり、タンスの扉を開ける。
「…………………」
「…………………(バタン)」
見知らぬ全裸の子供(♂)が体育座りをしていた。
えっ!?何!?なんでガキがいるの!?ここオレの部屋だぞ!?これじゃぁまるでオレが子供の服を剥いでタンスに閉じ込めてるみたいじゃないか!ちょ、読者の皆様も引かないで!オレはショタコンじゃないから!オレの趣味は断固姉系巨乳キャラだから!あ、ちょっ、行かないでお願いだから!まてまてとりあえず落ち着くんだオレ!こういう時は素数を数えて気を落ち着かせるんだ!1!4!6!8!9!10!よし落ち着いた!うん、とにかくどうしよう!そうだ、アレはきっと見間違いだ!まさかオレの部屋に全裸の子供がいるわけないよね!姉系巨乳キャラだったら襲いかかってたけど!まずはもう一度ドアを開けて確かめるんだ!
「にゃぁ〜」
「……………………」
それはただの黒猫だった。
部屋のドアを開けると黒猫は出て行った。きっと疲れているんだ。そうに違いない。だってオレ、ショタコンじゃないし。
改めてベットに横になり、シミ一つない天井を見ているうちに自然と、意識は遠のいて行った。
☆
いつの間にか、真っ白な空間にいた。ため息が出る程の白。他には何もない。唯一あるとすれば、オレの存在と、
『やあやあ!ひっさしぶりぶりぶり〜!』
このやけにテンションの高い女の声だけだ。
『元気してたぁ〜?私はいつでも元気だからあとで一緒にベットに寝ようね〜!』
「寝るか!つーか誰だアンタ!」
そう、オレはこの女を知らない。
しばらくの間、空間に沈黙が訪れる。ふと、少し低くなった女の声が響く。
『………なるほど、ね』
「何がだよ?」
『覚えてないんだよね?』
「だから、何がだよっ」
女の言っていることが意味不明過ぎて、ムッとなってしまう。
『間違いないね。君、前世の記憶が飛んでるよ』
「前世の記憶?何言ってんだあんた」
『……そうだね、君、自分の名前がわかるかい?』
「あたりまえだろ。オレの名前はデスティニー………」
名前を言い切る前に、頭に冷水をかけられたような刺激が脳に直接伝わる。何か、とても、致命的なことを忘れてる気がする……。名前……?いや、それ以前に、オレの存在を示す何かが、欠けている…。
オレは果たしてデスティニーガンダムなのか?違う……オレの名前は………
「名前……は……」
『多少の名残はあるみたいだね。ちゃんと思い出せてるわけじゃないんだろうけど』
何かに突き動かされる様に、ふと、視線を落とし、自分の手を見た。そして、驚愕した。
「なん……だよ…これ………!」
目に映ったのは、柔らかみを感じさせる、柔軟性のある物質の上に薄く皮が張り付いていて、それぞれ長さの違う五本の突起物が出ていて、表面には隈無く細かいシワが入っている。そして、ほのかな暖かみを感じさせる薄い赤色は、血が巡っている証拠……。人間の掌だった。
「これは…………」
はたと、脳の映写機に一つのイメージが映写される。雨の降る中、見通しの悪い十字路を、注意する風もなく通ろうとするオレを襲ったのは、耳をつんざくクラクションと、四角から滑り込んで来たトラックだった。
いつの間にか、視界は空を見上げ、異質な浮遊感と、体中の骨が軋む音だけが感覚を奪っていた。
「そうだ………オレは、前世で跳ねられて、一度ここに来て…………そうだ!思い出したぞ!」
『へぇ〜、神様驚いちゃったよ。別の世界で前世を忘れた者は、基本、前世のことは思い出せないのにね〜』
冷静さはとうに取り戻していた。
「で、何の用だよ。まさか、ただの夢じゃないだろうな?」
『もちろん、用があって呼んだんだよ〜。本人が思い出したから、手っ取り早くて助かるね、うん。……今回は警告をしに来たわけなのよ』
「警告?」
『そう、警告。今回みたいに、君が自分を忘れない様にってね。———と言おうと思ってたんだけど、君がそうそうに自分を忘れててビックリしちゃったよ〜』
「そんなこと言われても困るぜ。オレだって忘れたくて忘れてるわけじゃないんだから」
『いやいや、君が悪いんだよ。忘れるスピードは、本人がどれだけその世界に馴染んでるかに寄るんだから』
「世界に馴染んでいるか…?」
『そうだよ。流石に、君のスピードは異例だけどね』
「つまり、オレがこの世界を楽しんでいると?」
『というよりか、本職だねこりゃ。君、こっちの世界に来て正解だったみたいだね。ようするに、適正があるわけだから、ぶっちゃけまた自分を忘れてもクリアに支障は出なさそうだね』
「そんな無責任な」
『んじゃ、君の本体がいろいろ危ないから、そろそろおいとまさせて頂くよ〜』
「は?危ないって———」
☆
意識が戻った。
一番最初に目に入ったのは、すすけた天井と、顔を青白くさせた半透明な人間だった。
次回からホラー回!主人公は館から抜け出せるのか!?