境界線上のIRON BLOODED(※リメイク作品あり)   作:メンツコアラ

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今月二回目の投稿。
いやぁ……時間がかかったなぁ。
遅くなってすいませんでした。

え? 上のサブタイトルについて?
まあ、読んでくれれば分かりますよ。







#14 高嶺の鉄華

 ホライゾンを助けるための臨時生徒総会。相対二戦目は聖連側の勝利となってしまったが、無事に武蔵の騎士達を引き込むことに成功したトーリ達。

 最後となる相対で正純と相対するのはトーリだった。

 相対内容は『討論』。そこで彼はあろうことか聖連側の意見を述べ始めたのだ。正純は勿論、三日月たちや通神を通じて見ていた者達も大いに驚いた。だが、正純は切り替え、時折ピンチに陥りかけたものの見事勝利を納め、ホライゾンの救出を正当化したことにより三回戦は引き分けという形になった。

 だがしかし、そんな彼らの相対に、K.P.A.Italia総長イノケンティウスの指示を受けた副長『ガリレオ』が乱入してきた。ウルキアガ、ノリキの二人が迎撃しようとするが、ガリレオの術式と彼が持たされた大罪武装『淫蕩の御身』の前に敗れ、ガリレオは間髪入れず正純に襲いかかる。しかし、そんなガリレオの拳を弾き返す者が()()いた。

 一人は迎撃に向かわず、いざというときの為に待機していた三日月。もう一人は、

 

「あれ? あんた、槍のおじさんの……」

 

「極東警護隊総隊長本多・二代だ。はじめましてだな、葵・三日月」

 

「おいおいッ! もしかして、ミカの知り合いかッ!? ブラザーも隅に置け「トーリ、うるさい」(´・д・`)……」

 

「二代? 二代なのか?」

 

「正純か? 久しいな。中等部以来でござるな。さて……───」

 

 二代は自身の武器である神格武装『蜻蛉切』を構え、ガリレオを睨み付ける。

 そんな時だった。階段下から見守っていた民衆がざわざわと騒ぎ始めた。無理もない。何せ、あの男がやって来たのだから。

 

「おいおい。麻呂に麻呂嫁じゃねぇか。こんなところまで散歩か?」

 

「不敬な口を聴くなッ! 麻呂は武蔵王 ヨシナオであるぞッ! 御主らの暴挙を止めに参ったッ!」

 

 そこには教導院教頭ではなく、『武蔵王』としてのヨシナオが立っていた。ヨシナオは通神越しにこちらを観察していたイノケンティウスに話しかける。

 

「教皇総長。ガリレオ殿にはお帰り願いたい」

 

『ほぉ。では、どうすると言うのだ? 貴様は学生ではない故、この相対に参加する権利は無いはずだが?』

 

「問題ありません。そこにいる本多・二代は麻呂の警護隊隊長であります。本多・忠勝の薫陶を受け、大罪武装の試作品である神格武装『蜻蛉切』を持っております。この者に勝てる猛者が武蔵にいるかどうかをもって諌めようかと」

 

『その者と武蔵の学生とがグルでない証明はどうする?』

 

「おい、おっさんッ! 俺たちとコスプレボッチの麻呂を一緒にすんなよッ!」

 

『…………グルでは無さそうだな』

 

「…………分かっていただき、何よりです」

 

「し、しかし、ヨシナオ王ッ! 二代の実力は本物ッ! 私たちの中で渡り合える者など───」

 

 いや。一人だけいる。彼女の父親である忠勝でさえ勝てなかった男が一人。

 

「…………俺がやる」

 

「三日月……だが、お前は……」

 

「やらなきゃいけないんでしょ? だったらやる。槍のおじさんと同じなら分かる。それに、おじさんよりも弱いでしょ、あんた?」

 

「……確かに、拙者は父と比べるもおこがましい実力。しかし、嘗められるのも癪にさわる」

 

「じゃあ、やろっか。真喜子、試合の準備をお願い。智も薬を何時でも承認出来るようにしておいて」

 

 両者共にヤル気満々。

 浅間は嫌々承認の準備をし、三日月と二代が構えるのを確認したオリオトライが試合開始を宣言しようとする。

 ……がしかし、

 

「はい。ストップ」

 

「あ───」

 

 三日月の体が引っ張られ、抱き止められる。三日月は視線を上にあげ、自分を抱いている者の顔を見た。

 

「何するの、喜美」

 

「それはこっちのセリフよ。あんた、愚弟とは違うんだから後の事を考えなさい。ここで薬を使って、ホライゾン助けるまで体がもつわけないでしょう?」

 

「じゃあ、どうすればいいの? あいつ、槍のおじさんより弱いけど、結構強いよ」

 

「あら、そんな事も分からないの、賢弟? 目の前にいるじゃない」

 

「……まさか───」

 

「そのまさか。ダメな愚弟と賢弟と愚衆の為に私が一肌脱いで上げるッ! それにしても、一肌脱ぐって結構エロいわね」

 

 驚くような表情を向ける三日月に喜美は笑みを浮かべ、彼を離して自身が前に出る。無論、三日月も最初は反論しようと思ったが、相手は喜美。なら、恐らくは大丈夫だろうとトーリと共に皆の元に戻る。正純も彼らの後ろを着いていぐが、彼女が非戦闘系で無いことを知っている為に不安になる。それはヨシナオも同じ。

 

「(武者対変な女……勝負になるの───「おーい、マロマロッ!」)いい加減にしろッ! 麻呂は武蔵王 ヨシナオであるぞッ!」

 

「そんなことどうでもいいからさぁ、ねぇちゃんが勝ったら俺に王の座譲ってくんね?」

 

「はあッ?! 何故貴様なんぞに王の座を譲らねばならんのだッ! 麻呂がどんな思いで王になったかを知らぬ貴様なんぞに……ッ」

 

 ヨシナオはかつて、小国の領主であった。しかし、聖連に武蔵の王にならなければ領地を文字通り潰すと脅され、民を守るために断腸の思いで武蔵王になったのだ。その領地に住んでいた民も時間が経つに連れて各国に流れていき、かつての面影も無くなってしまったが……。

 

「貴様は王になってどうするのだ?」

 

「俺? そんなもん、俺のせいで奪われたホライゾンの全てを取り戻したいだけさ」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 可憐であり 誰よりも美しく

 選ばれし者だけが触れる事の出来る華は高嶺

 

 ───なら

 

 決して枯れず 決して散ることの無い華は

 

 

 配点《◯華》

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「……さて───」

 

 二代は自身の相対する敵を見る。明らかに鍛えてはいない体。本当に戦えるのかと疑いたくなる。一方の喜美は構えもせずに腰に手を当て立っているだけ。

 

「その格好から察するに白拍子でござるか?」

 

「んふふ。芸を知らないつまらない女ね。大方、私が戦えるのか心配しているんでしょうけど、意味は無いわよ。だって、私には秘密兵器があるんだから。───ウズィ、出なさい。それと『アレ』も持ってきて」

 

 喜美の呼び声にハードポイントから術式が展開され、彼女をそのまま二頭身に縮めたような走狗があるものを持って姿を現す。

 

「この子は芸能系の神であるウズメの走狗。あぁ、言っておくけど、私の術式ってエロ系とダンス系だけだから。そして、これが私の秘密兵器」

 

 それは一領の羽織だった。少し暗い緑色。

 彼女はウズィから羽織を受けとり、袖を通す。そして、トーリたちに露にされる背中の刺繍。

 

「あれは……華、でござるか?」

 

 そのマークを見て、正純たちが真っ先に連想したのは『華』だった。

 

「え? そうなの? 俺、てっきり魚かと思ったわ」

 

「あんなの何時作ったんだい?」

 

「さあ? 俺だって、あんなの持ってるの初めて知ったんだぜ。ブラザーはどうよ───て、ブラザー?」

 

「なんで……なんで、喜美が……ッ?!」

 

 三日月はそのマークを見て目を見開く。見間違う筈がない。あのマークは彼と最も因縁深い物だったのだから。

 

  

 喜美は二代に背を向け、羽織の刺繍を彼女に見せつける。

 

「はい。ここで武蔵一冴えない女のあなたに質問。このマーク、何に見える?」

 

「華、でござるか?」

 

「半分正解で半分残念。正確に言うと、これは鉄の華よ」

 

「鉄の華?」

 

「そうよ。ここで追加質問。あなたは鉄の華をどう思う?」

 

「拙者、芸能を嗜む心を持ち合わせておらぬのだが……あえて言わせてもらうと無骨。華やかさの欠片もない。華とは呼べぬ物かと」

 

「はい、残念ッ! あなたは何も分かっていないようねッ!」

 

「今の質問に外れも当たりもないと思うのでござるがな───ッ!」

 

 足に力を入れ、二代が仕掛ける。術式で強化された脚力は疾風のように速く、すれ違う瞬間に槍を振るうのだが、

 

「───無粋な女ね」

 

「な───ッ!?」

 

 振り返れば、ステップを踏みながらユラユラと体を揺らす喜美の姿。

 

(まさか幻覚ッ!? いや、そんな筈は───)

 

「驚いているわねぇ。速さが泣いているわよ」

 

「───ッ、笑止ッ!」

 

 再び加速する二代。しかし、結果は先ほどと同じ。喜美は相も変わらずステップを踏み、二代を真っ正面から見ていた。

 

「……何の術式でござるか?」

 

「何って、言ったじゃない。エロ系とダンス系だって」

 

「ならば───結べ、蜻蛉切ッ!」

 

 蜻蛉切の刀身に喜美が写され、『割断』の術式が喜美を襲う。

 ───だが、彼女の身には何も起きなかった。

 

「なにッ?!」

 

「無粋ねぇ。華は刈り取るモノじゃなくて愛でるものでしょう? 私の高嶺舞は私の体に無粋なものが触れないようにする術式。この人になら枯らされても本望だと思う人にしか触れさせないの」

 

「だとしても蜻蛉切の割断が防がれるなど───まさか……」

 

「あら? 気づいちゃった? 答え合わせしちゃう? でも、残念ッ! あなたが答える前に私が答えちゃうッ!

 言ったでしょう? この羽織が秘密兵器だって。正確にはこの背中の刺繍が秘密兵器なの」

 

「鉄の華……」

 

「ええ。そうよ。これは鉄の華。あなたが言った通り、華やかさの欠片が微塵もない鉄の華。

 だけどね、この華は枯れないの。散らないの。華としては随分と矛盾した存在なのに誰よりも誇らしく咲き続ける。それが鉄の華。高嶺と遠くかけ離れた存在。

 ───でもね、高嶺の華も変わらないの。散ったとしてもその人の心には残り続ける。

 人も同じ。肉体は滅んだとしても心は、魂は高嶺の如く、鉄の華の如くあり続ける。もし、そんな高嶺の鉄華になれたら最高にカッコいいじゃない?

 

 

 

 

 

 さあ、舞が奉納される限り、私は高嶺の鉄華であり続ける。刈り取れるものならやってみなさい」

 

 

 

 

 




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心からお待ちしております。





トーリとホライゾンの対話までキング・クリムゾンしていい?

  • 問題なしd(^-^)
  • ダメです(ヾノ・∀・`)
  • いいからバルバトスをよこせ

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