境界線上のIRON BLOODED(※リメイク作品あり)   作:メンツコアラ

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 ……一昨日、たった二話でランクインしたことに未だ驚いているメンツコアラです。
 たった数日でお気に入り登録者が百人越え。
 改めて言わせてください。

 ありがとうございましたm(_ _)mッ!!!!
 これからも境界線上のIRON BLOODEDの応援をよろしくお願いしますッ!



 あと、シンフォギアゴーストとハイスクールGEEDもお忘れなくッ!
 それでは本編どうぞッ!





#3 葵・トーリ

◇◆◇午前9時00分 品川暫定居住区 ヤクザ事務所前◇◆◇

 

 

 

 

「───で、品川は貨物艦で、暫定移住区って名前の『市場街』があるの。管理もざるだからヤクザとかの自由業もあって───て、こらこらッ! 後からやって来て、勝手に寝ないッ!」

 

(((鬼畜だこの教師……ッ!)))

 

 誰もが心の中でそう叫ぶなか、梅組の生徒は力尽き、倒れ伏していた。

 戦闘系ではない生徒はもちろん、ほぼ全員が息を切らしている。もっとも、ここまでの約30分ずっと全速力でオリオトライについて走っていたのだから無理もなかった。

 

「まったく……残ってるのは二人だけ?」

 

 オリオトライが視線を向けたのは、他とは違い、呼吸が乱れていない者二名。そのうちの一人だった鈴が『私は運んでもらってたから』と否定するが、オリオトライは『それが「チームワーク」なんだから大丈夫』と教える。

 そして、オリオトライは生き残っていたもう一人に視線を移す。

 

「───で、三日月。あんた、なんで生きてるの?」

 

「? ダメだったの?」

 

「いや、そうじゃなくてね。私、結構マジで蹴ったから、少なくとも肋七本くらいは折れてると思ってたんだけど……」

 

 オリオトライは三日月が側に置いていた、刀身が折れたソードメイスを見る。それだけでもオリオトライの蹴りがどれ程の威力だったのかが分かるだろう。

 

「聞いたでござるか、ウッキー殿。この教師、ガチでミカ殿を殺すつもりだったでござるよ」

 

「まさに鬼畜の所業。リアルアマゾネスは伊達ではなかったか」

 

「そこ、聞こえてるわよ」

 

 点蔵たちを睨み付け、後でお仕置きすると決めたオリオトライは三日月に生きている理由を聞いた。

 

「多分、武蔵。受け止めてくれたとき、治療もしてくれたんだと思う」

 

「あなたの師匠は過保護ねぇ。

(まあ、()()()使()()()()()()から良しとしますかね)」

 

 オリオトライの視線が自然と三日月の背中。正確には、その一部を覆うカバーに向けられる。

 そんなとき、事務所の扉が勢いよく開き、中から四本腕の巨人……つまり、魔神族が姿を表した。

 

「うるせぇぞッ! 何処のどいつだッ!」

 

「ふひぃッ!?」

 

「あらあら魔神族も落ちたものねぇ……て、三日月? あんたは手を出さなくていいわよ」

 

「……分かった」

 

「それじゃあ皆ッ! 今から実技を始めるわよ。魔神族の倒し方、よぅく見てなさいッ!」

 

 そう言ったオリオトライは魔神族の前まで歩き、その巨体を睨み付け、一方の魔神族も負けじと睨み返した。二人は互いに歩み寄り始める。

 

「なんだ、てめえ? うちの前で遠足か?」

 

 ───互いの距離 三メートル。

 

「この前の高尾の地上げ、覚えてる?」

 

 ───二メートル。

 

「はぁ? そんなの何時ものことで覚えちゃいねぇな」

 

 ───一メートル。

 

「理由も分からずに殴られるのって大変よねぇ」

 

 明らかな挑発。それにキレた魔神族はオリオトライに殴りかかった。

 放たれた拳は右側二つ。その丸太並みの太さを持つ腕の力はかなりのもの。そんな魔神族の拳を、オリオトライは軽々と避けて見せた。

 

「野郎ぅッ!」

 

「野郎じゃないでしょ? こんな乙女に対して何を言ってんだか」

 

(((乙女? ……誰が?)))

 

 大半の生徒がオリオトライの言葉に疑問を持ったが、口に出せば自分達の首が飛びかねないので絶対に言わない。

 

 オリオトライと魔神族。二人が暴れるにつれて品川に響く騒音に、品川の住人たちが集まってくる。

 やれ『ぶっ飛ばせ』だの『なにやってんだよ』だのと野次が飛んでくるなか、オリオトライは生徒に魔神族の倒し方を説明し始める。

 

「いい? 生物には頭蓋があり、脳があるのッ! 頭蓋を揺らせば、同時に脳が揺れ、脳震盪を起こすわッ! で、魔神族の頭蓋の揺らし方は───こうねッ!」

 

 ガツンッ、とオリオトライの刀が魔神族の左角をとらえ、

 

「そんで対角線上を素早く打つッ!!」

 

 勢いよく振り上げられた刀は先程オリオトライが叩きつけた箇所の対角線上を正確に打ち付け、魔神族は白目を向いてその場に倒れ伏した。

 オリオトライはスッキリしたと言わんばかりの笑顔で生徒たちの方を向き、

 

「じゃあ、今度は皆がやってみよ───」

 

 バタンッ、とオリオトライの言葉を遮って、事務所の扉が閉まり、更には施錠までされた。

 

「あら? 警戒されたかしら? それじゃあ───」

 

 『ぶち破ってカチコミしますか』とオリオトライが続けようとしたとき、それを遮るものが野次馬たちの奥から現れた。

 

「おいおい皆。こんな所でなにやってんの?」

 

 オリオトライ、梅組全員。そして、野次馬の視線がその者、葵・トーリに集まっていき、住人たちは自然と左右に別れて道を作っていく。トーリは周りから聞こえる『武蔵の生徒会長』だの『不可能男(インポッシブル)』と自分を呼ぶ声に答えながら、出来上がった道を堂々と歩いていき、梅組とオリオトライの間で立ち止まり、梅組の生徒たちと向き合った。

 

「なんだよ皆? そんなに呼ばなくても俺、葵・トーリはここに居るぜ?

 しっかし、皆、奇遇だな。やっぱ皆も並んだのかよ?」

 

 そう言って、トーリが脇に抱えていた紙袋を皆に見せが、彼らはそれを見ていない。なにせ、彼らはトーリの後ろで怒りのオーラを放つオリオトライしか見えていなかったのだから。

 

「……で? 授業サボって堂々とエロゲ買いに行った子が、今さら何のようかな? ねぇ、トーリ?」

 

 生徒や住人たちには、オリオトライの背後に阿修羅が見えているが、トーリは見えていないのか、涼しい顔でオリオトライと向かい合う。

 

「先生、知ってたのかッ!? 俺がエロゲを買いに行ったのッ! やっぱ俺たち一心同体なんだなッ!」

 

「ハッハッハッッ! もしそうなら、君、今すぐフルボッコにされてピーーーを潰された後、武蔵から紐無しバンジーをすることになるんだけど?」

 

「おいおいッ!? いくらなんでも俺の息子を機能停止させるとか酷すぎねッ!? ならせめて先生のオパーイを揉ませてくれよッ!」

 

「オイコラ。目腐ってんの?」

 

「そんなことねぇよ。いまだってちゃんと───これが見えてるし」

 

 ───ムニュリ、と幻聴が聞こえそうなほどしっかりと、トーリはオリオトライの胸を鷲掴みした。

 

「な───」

 

『『『───』』』

 

「───あれ? これって攻撃が当たったことに?」

 

 ハイディーがそんな事を言っているが、オリオトライを含めた梅組の生徒たちは誰も聞いちゃいない。

 

 教師の……いや。オリオトライの胸を揉むという、先に死しか待っていないトーリの行動に畏怖する梅組の生徒たち(シロジロや三日月等のごく一部の生徒は『なにしてんだ?』とでも言いたげな視線を向けている)。

 

 予想していなかった行動に硬直してしまうオリオトライ。

 

 たっぷり十数秒。オリオトライの胸を堪能したトーリは梅組の方を向き、

 

「あのさぁ。皆、ちょっと聞いてくれ。前々から話してたと思うんだけど

 

 

 

 

 

 ───明日、コクろうと思うわ」

 

 

 

 

 

 

 

『『『……………………………………え?』』』

 

「フフフ愚弟? いきなり出てきてコクり予告とは、エロゲの包みを持ってる人間の言う台詞じゃ無いわね。もしかして、その相手って今持ってるエロゲのキャラ? だったら、コクる相手が画面の向こうにいるんだったらズッキャーンをコンセントにぶっ刺して感電して痺れ死ぬといいわッ! 素敵ッ!」

 

「おいおい姉ちゃんッ! これはエロゲ卒業の為に買ってきたんだぜ? 明日コクるんだから、エロゲからおさらばしないとなッ!」

 

「じゃあ愚弟、その相手とやらをさっさとゲロっちゃいなさいッ! さぁッ!」

 

「何を言ってんだよ。知ってるだろ?」

 

 

 ───ホライゾンだよ。

 

 

 そのトーリの言葉に、あるものは息を潜め、またあるものは『やっぱりか』と小さくため息をついた。問い掛けた喜美も何時もの余裕たっぷりの笑みではなく、優しく、しかし、哀れみの笑顔を向けた。三日月も少しだけ悲しそうな表情で話し掛ける。

 

「……トーリ。ホライゾンは───」

 

「知ってるよ、ブラザー。ホライゾンは十年前に、あの後悔通りで死んだ。親父たちが墓も作ってくれた。それは分かってる。

 ───だからこそ、その事からもう逃げねぇ。コクった後、皆には迷惑かけると思う。俺、何も出来ねぇしな。それに、その後やろうとしてることは世界に喧嘩売るような話だもんな。

 ……明日で十年目なんだ。ホライゾンが居なくなってから。だから、明日コクってくるッ! もう逃げねぇッ!」

 

 その目は何時もの何処か抜けた御調子者の目ではなく、決意を固めた男の目だった。

 その決意が揺らぐことはない。そう分かった喜美は静かに問い掛けた。

 

「じゃあ愚弟、今日は色々準備の日よね。そして、今日が最後の普通の日?」

 

「安心しろよ、姉ちゃん。俺、何も出来ねぇけど、高望みだけは忘れねぇからッ!」

 

 親指を立てて笑顔で答えるトーリに、何処か安心感を覚える梅組のメンバーたち。

 

 ……しかし、忘れてはいないだろうか? この男が、つい先程恐るべき所業をしたことに。

 

 ポンポンとトーリの肩が叩かれ、トーリが振り返ると、そこには俯いて、うっすらと笑みを浮かべるオリオトライの姿があった。フルフルと震えているのは先程胸を揉まれた事の恥ずかしさ……だけではない。

 

「ん? おお、先生ッ! 今の聞いてたかよッ!? 俺の恥ずかしい話ッ!」

 

「……人間って怒りが頂点に達すると音が聞こえなくなるんだけどぉ……」

 

「おいおい先生。もう一度だけ言うぞ? 今日が終わって、無事に明日になったら、俺、コクるんだ」

 

「あっそう───死亡フラグいただきぃぃぃぃぃッ!!!」

 

 ───教師オリオトライ。本日二度目の生徒をマジ蹴り。そのまま回転を加え、トーリを後ろのヤクザ事務所まで蹴り飛ばした。

 トーリは『ゴボォッ!?』や『ギャインッ!?』などの悲鳴を上げながら地面をバウンドし、そのまま事務所を貫通。裏にあった倉庫のシャッターで前衛的アートとなった。

 

「よっしゃああぁぁぁッ!」

 

『『『いやいやいやいやいやッ!!?!?』』』

 

「賢弟。愚弟を回収してらっしゃい」

 

「うん。分かった」

 

 こうして、梅組の一限目の授業は終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《おまけ》

 

『トーリ、大丈夫?』

 

「お、おーう……なんとか……」

 

『今から助けるからじっとしてて』

 

「……なあミカ。我が弟よ。何でお前の声が後ろから聞こえるんだ?」

 

『前から引っ張り出すよりも後ろから叩き出すのが早いって真喜子が教えてくれた。……それじゃあ、いくよ』

 

「待て待て待て待て待てッ! 『いくよ』が『逝くよ』にしか聞こえねぇよッ! 前から優しく引っ張り出してええぇぇぇぇんッ!!?!?」

 

 

 その後、事務所に新たな出入り口が出来たとか。

 

 

 

 

 




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 心から御待ちしておりますッ!
 
次回『食事場の清純者』







トーリとホライゾンの対話までキング・クリムゾンしていい?

  • 問題なしd(^-^)
  • ダメです(ヾノ・∀・`)
  • いいからバルバトスをよこせ

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