境界線上のIRON BLOODED(※リメイク作品あり) 作:メンツコアラ
◇◆◇午後7時53分
武蔵アリアダスト教導院◇◆◇
普段、日中は生徒の声や授業の内容が聞こえてくるのだが、今この時間に限っては、
『ゴヨー! ゴヨー!』
『フフフ! この包帯をどうして欲しい!? 落ちたくなかったら全力で私を崇めなさい! さぁッ!』
『止めんか、貴様ら! 経費がいくらかかると思っているんだ!!?』
爆発音と肝試しを楽しむ少女たちの高笑いで満たされ、何処からか守銭奴の悲鳴が聞こえてくる。
原因はトーリの仕込み……もとい、トーリが頼んだ者の仕込みである。爆発から逃げていく様は正に百鬼夜行を思わせ、精神的正常な者たちも二次被害を受けないために中庭へ避難していた。
「小生が思いますに、これ全部総長の仕込みなんでしょうなぁ」
「まったく……トーリくんはいつもいつも……一体何を考えて……」
既に気疲れにより、肩で息をしている浅間。その近くでは組だったアデーレ、直政、三日月、鈴の姿もあった。
「わ、わたし、水、取ってき、ます」
浅間を気遣って水を取りに行こうとする鈴だったが、急ぐあまりに、自分の近くに来た
「いったい何の騒ぎだ、これはッ!」
「ヒッ……───」
騒音を聞きつけて来た彼……ヨシナオが怒りの叫びと共にやって来る。偶然にも彼のすぐ近くにいた鈴は盲目で代わりに聴力が良いため、大きな音には弱い。驚きのあまりに、その場で固まってしまう。
だが、運悪く、彼女の顔の向きがヨシナオの方へ固定されてしまった。
「何かね? 言いたい事があるのならハッキリと言いなさい」
威圧的なヨシナオの態度。もし、それが気弱な鈴に向けられればどうなるか、答えは火を見るよりも明らかだった。
「ひぁああぁぁぁ!」
「な───ッ!?」
文字通りの号泣。
流石のヨシナオも彼女の涙を止めようとするのだが、突然、背筋を突き刺すような殺気がヨシナオを襲った。振り返ろうとしたその瞬間、首元に鋭利な物が添えられた。
「───何やってるの?」
「み、三日月、くん……!?」
何処に隠し持っていたのか、三日月の持つフォールディングナイフが首元にある。その恐怖で言葉が上手く出ないヨシナオだったが、三日月にとっては関係ない。今の彼は
「なぁ……何やってんd───」
「いい加減にするさね、この慌て者」
ヨシナオの首にナイフを押し付けようとした瞬間、その腕を直政が止めた。彼女の隣には既に泣き止んだ鈴の姿もある。
「わたし、驚い、ただけ、だから……」
「えっと……じゃあ、俺……」
「カッとなるとすぐにこれさね。気をつけな」
「ごめん、直政」
「謝る相手が違うだろ」
直政に言われ、三日月はナイフから解放されたヨシナオに謝罪するが、ナイフを向けられ、それを謝罪だけで許すほど人が良い者はそうそういない。
「えっと……すいませんでした」
「すいませんでしたじゃないッ! 葵・三日月ッ! 君の仲間思いな人格は称賛に値するッ! しかし、もっと周りを見て行動しないかッ! だいたい、貴様ら葵姉弟はいつもいつも────」
「おおっと!?
「葵・トォォォリィィッ! また貴様かッ! いつもいつも騒ぎを起こしおってッ!」
教導院の窓から頭を出すトーリにヨシナオの怒りの矛先が向けられるが、当の彼はヘラヘラと聞き流そうする。そんなとき、彼の耳が何か爆発する音を捉えた。
「およ?」
顔を上げれば、遠方で煙が上がり、その発生源では炎が夜の闇を照らしていた。
その煙は彼の下にいた者たちにも視認できた。
「あの辺りは確か、聖連の番屋があるはず。事故でもあったのかな?」
「……商工会に問い合わせたが、連絡が取れん状態だ。どうなっているんだ?」
「よーし! 続きは今度にして、今日は解散!」
『Judgement!』
「賢弟。鈴を家まで送ってあげなさい」
「分かった。鈴、バイク取ってくるから此処で待ってて」
「J、Jud. あり、がとう」
三日月は皆の元を離れ、後悔通りの途中に停めている愛車の元に向かった。他の皆もその場を立ち去ろうとするのだが、突然、鈴が小さな悲鳴を上げた。彼女を見れば、ある一点を指差しながらガクガクと怯えているではないか。
原因はなんだ? その場にいた皆が鈴の指差す方に視線を向けると、
『────』
「あの、皆……? なんで、余の顔を見るなり顔を青くするんだい?」
鈴に指差されていた東は顔を青くした皆を見て首を傾げるが、皆を代表して御広敷が震えた声で教えた。
「あ、東殿、し、ししし、し下……!」
「下? 下に何かあるのk───」
気になって顔を下に向けた瞬間、彼は後悔した。
何せ、
『パパ……どこ……? パパ、いないの……』
次の瞬間、暗闇に包まれた教導院にトーリたちの悲鳴が響き渡った。
その頃、後悔通りを歩いていた三日月は足を止めた。
トーリたちの叫び声を聞いたから……という訳ではない。確かに聞こえはしたが、声音からすぐに大丈夫だろうと判断したのだ。
では、何故足を止めたのか。その理由は、
「───ねぇ。あんた、誰? さっきから俺の後をつけているのバレてるよ」
三日月が振り返り、暗闇に向かって声をかけると、その奥から胸の高さまで上げた掌の上に通神を開いた一体の自動人形が姿を表した。その通神に写されていたのは、数時間前に見た顔だった。
『やぁ。初めまして、葵・三日月くん。知っているとは思うが、私が松平・元信だ。
君がこれを見ているということは、後数秒で始まるといったところか』
「始まる? 何g───」
三日月が通神に写った元信に問いかけようとした瞬間、夜の闇が圧倒的な光で塗り潰された。
「───ッ!?」
振り返ってみれば、三河の方角に夜の闇を照らす光の柱が聳え立っていた。
『スゴいだろう? あれが予告していた三河の花火さ』
「花火? あれが?」
『そう。世界救済に必要な花火だよ。先生はこれから最後の授業を行う。その前に、君の顔を見てみたくてね……うん。いい目をしている。目的を見つめ、それを成すための道を真っ直ぐ進む者の瞳だ。
そんな君に、一つだけ依頼したいことがある』
「俺に?」
『……いや。正確には君……葵・三日月ではなく、
「───ッ!!?」
三日月はすぐさま臨戦態勢に入り、何時でも
一見冷静に見えるが、今の彼は激しく動揺している。何せ、この世界の誰もが知るはずのない自分のもうひとつの名前を出されたのだから。
『そう警戒しなくてもいい。先生は君の敵じゃない』
「じゃあ、なんで俺の名前を知っているの?」
『それは今知るべき事じゃない。今、君がするべき事は武蔵の進むべき道を切り開くこと。私からの依頼はそれだけだ』
通神が終わり、自動人形はその場を去っていく。三日月はすぐさま追いかけようとするが、自動人形は木々の影に消えていった。
「逃がした、か……」
三日月の心が疑問という名の闇で覆い尽くされる。
そんな中、松平の言う『最後の授業』が遂に始まるのだった。
花火、遂に始まりましたね。
しかし、花火とは昼夜を逆転させるほどの光を放つとは。
……あれは花火ではない? 正純様。なら、あの光は一体───? あれは、松平・元信公?
次回、境界線上のIRON BLOODED
『私のして欲しいこと』
感想、評価、お気に入り登録。
心から御待ちしております。
トーリとホライゾンの対話までキング・クリムゾンしていい?
-
問題なしd(^-^)
-
ダメです(ヾノ・∀・`)
-
いいからバルバトスをよこせ