Sword Art Online Irregular Soldier   作:コジマ汚染患者

4 / 4
オデノカラダハボドボドダァ!(0w0)


第4話 はぁーるばる来たぜ〜箱だけ〜♪

薄暗い部屋、パソコンの光のみが照らす中で、その男は画面を凝視しつつ様々なサイトを開いていく。全てに共通しているのは、『死銃』に関する情報を扱うサイトであること。その中から、『死銃情報まとめ』と題されたサイトをアクティブにする。管理人の更新はなく、掲示板にはいくつかの新規ログがある。

 

『結局のところ、ゼクシードもたらこも出てこないな』

 

『引退ドッキリだろ?BoB近いし、もうすぐ戻るだろ』

 

その他、様々な意見があるが、共通してどれもドッキリや引退の記念企画のようなものとして捉えていた。そのことに歯噛みする男。と、そんな中、ログをたどり、BoBに関する意見の1つが目に入る。

 

『で、今回のBoBに鴉が出るって情報はマ?』

 

「・・・っ!」

 

鴉。その言葉に、ただの名称が出ただけで底知れない憎悪を燃やす男。男の計画では、死銃の力に怯えた多くのプレイヤーがこの時点で引退するという想定だった。しかし現実は、ユーザー総数に変化はなく、このサイトのように冗談めいたやりとりばかりが繰り返される。死銃の事件は、それなりに大きな話題となった。しかし、死銃の犯行が始まったその2日前から、唐突に現れた鴉。その圧倒的かつ異常なプレイヤーの出現に、瞬く間に注目を取られていたことが、死銃の計画に少なからず影響を及ぼしていた。

 

『本気らしいぞ。情報屋曰く、本人の口から出たことらしい』

 

『どっちにしろ、予選で落ちるだろ』

 

『鴉考察スレ見てないのか?やってることまとめただけにしてもだいぶイカレてるぞこいつ』

 

『いやいや、今回の優勝は闇風さんで決まりでしょ』

 

『AGI型が勝つ時代はもう終わったんだよ』

 

その後も、終始鴉やBoBの話題ばかりが取り上げられ、そんな些細なことが男の気に触る。即座にブラウザを閉じ、別のファイルを開く。そこにはゲーム内で取られたと思われるスクリーンショットが8枚。そのうちの2つ、ゼクシードとたらこの写真には赤い✖︎印が刻印されている。その中には、唯一の女性プレイヤーとして、シノンの画像もある。しかし男はそれを無視して1つの画像を拡大する。最大望遠で超遠距離から撮影されたと思われるその画像には、どこか近代的な形状のメガネを指で押し上げ、レンズ越しにこちらを睨む軍服型コンバットスーツに暗い緑色のコートを羽織った男が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・迷った」

 

多層構造の複雑な街並みの広がる首都、SBCグロッケンの中、美少女・・・いや、美青年が一人、ため息をついていた。その正体は、何を隠そうキリトである。ALOからキャラをコンバートし、GGOの世界へと降り立った彼は、予想外の事態(ぱっと見美少女化)に見舞われつつも、本日行われるBoBへとエントリーするため、会場を探していたーーーーーそしてあっけなく迷っていた。

 

「・・・ええい、ままよ!あのーすいません、道を聞きたいのですが・・・」

 

そう言って話しかけ、相手が振り返るとキリトはしまった、と思った。振り返ったのはどう見ても女の子であった。ナンパと間違われてはまずいと慌てていると、そんなキリトの予想外にも、その女の子は微笑を浮かべていた。

 

「・・・このゲーム初めて?どこに行きたいの?」

 

はて、なんでだろうと思考するキリトは、己が今美少女(っぽい)であることに気づく。一瞬誤解を正そうか迷うも、結局は悪いと思いつつ黙っていることにし、その女性プレイヤー・・・シノンについて行くことにしたのだった。

 

 

 

 

 

「・・・来ない」

 

一方、グロッケンの初心者が出てくるドーム、その前にある広場のベンチでは、鴉ことミツヤがじっとドームをにらんでいた。目的は当然、キリトとの接触である。SAO時代には一切接点を持てなかった相手ではあるが、せっかくなので一目見る、あわよくばお近づきになって案内をして、ゆくゆくは友人に・・・という邪?な考えではあるが。

 

「なんでだ?BoB当日にコンバートしてくる、筈なのに・・・」

 

すでにキリトはログインしていることに気づくことなく、その後もミツヤはドームをガン見して、周囲から変なものとして見られているのだった。

 

 

間抜けな鴉がいまだにドームで張り込んでいるとき。シノンとキリトはグロッケンのマーケットの1つでキリトの装備を整えていた。初期資金のみではまともな装備など揃えられなかったであろうが、キリトは持ち前のプレイスキルでもって、ミニゲームで資金を荒稼ぎしていた。

 

「シノンさん、この銃はどんなやつなんですか?」

 

「・・・弾道予測線を予測とか・・・ありえない。でも実際にやってる。判断力?思考スピード?分からない・・・」

 

「あ、あのー、シノンさん?」

 

「え?あ、ああ、その銃はね・・・」

 

途中、シノンが思考の深みにはまり、戻ってこなくなることもあったが、その後滞りなくキリトの装備は整えられていった。

 

「いやー、まさかあのミニゲームをクリアするだけで『九十万』も手に入るとは思わなかったです」

 

「普通はあんなのクリア出来ないわ。最後のインチキレーザーを見たでしょう?それに『15発』連続かつ時間1秒未満のクイックリロードをなんで避けれるのよ。あなた見かけによらずとんでもないわね」

 

「あはは・・・」

 

驚くと言うより、むしろ呆れたと言うようなシノンの言葉に苦笑いをこぼすキリト。そんなキリトに再度ため息をこぼしながら、ふと時計を見て固まるシノン。

 

「・・・っ!?やばっ!エントリー受付時間もうすぐ終わっちゃう!」

 

「ええっ!?」

 

こうして、ドッタンバッタンしつつ、2人は急いで会場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

「・・・ああっ、時間ねぇ!?ヤッベ行かなきゃ!?」

 

一方、間抜けな鴉もようやく動き出していた。

 

 

 

 

 

 

会場内には、物々しい空気が立ち込めていた。いたるところに銃をぶら下げたいかつい男たちが睨みをきかせている。おっかなびっくり歩くキリトとは対照的に、堂々と前を向いて歩くシノン。2人はあの後、必死に走りながら見つけたバギーにより、ギリギリで間に合っていた。好奇心で向けられる視線に辟易としながらどうにかエレベーターまでやってくると、シノンがため息とともにつぶやく。

 

「まったく、やんちゃなだけのやつらがうっとおしかったわね」

 

「え!?あの、めっちゃ見られてたんですが・・・」

 

「わざわざ予選前から武器を見せびらかすような奴ら、雑魚以外の何物でもないわよ。対策してくださいっていってるようなものじゃない」

 

そう言ってまた黙るシノンにすごい胆力だなぁ、と思うキリト。エレベーターが止まりドアが開くと、その先では上階以上にいかつい男たちがひしめき合っていた。そんな中をまたしても堂々と歩いていくシノンについて行くと、個室の1つへと入る。そこに入るや否やアバターの衣装を解除するシノン。ギョッと目を向いているキリトに、キョトンとし首をかしげるシノン。

 

「?どうしたの?早くしないと」

 

「え、あ、う・・・ご、ごめんなさい!」

 

「きゃっ!?な、なに・・・え?男?」

 

高速で頭を下げ、ネームカードを提示するキリトに困惑するシノン。しかし、その困惑は別のモノへと変わる。ネームカードには、キリトという中性的?なアバターネーム。そして、メイルと書かれた性別欄・・・male(男)?

 

「あ・・・あ・・・あ・・・」

 

言葉にならない、と言った風に絶句するシノンを前に、ばつが悪そうに顔を上げたキリトが見たのは、涙目で拳を振りかぶるシノンの姿だった。

 

 

 

 

 

 

一方、どうにかこうにか、AGIステータスをフル活用して登録に間に合ったミツヤは、控え会場をうろついていた。

 

「あー、間に合ったぁ〜。もう少しで終わるとこだった」

 

「なんで?」

 

「そりゃお前、キリトが来るってんだから待ち構えて・・・ん?」

 

独り言に対して答えてきた何かに、疑問を覚え後ろを向くと、脊髄反射で拳を振り抜く。

 

「おっと、危ないなぁ。ミっちゃん、ちょっと怒ってる?」

 

「ああ、今この瞬間に怒りの頂点だよボケが、あとミっちゃんとか呼ぶな!!」

 

ミツヤ渾身の一撃をひらりとかわし、ニヤニヤ笑うのは、顔の半分が刺青に覆われた女性プレイヤー。名を毒鳥(ピトフーイ)。ピトフーイはチッチッと舌を鳴らしながら指を立て揺らす。

 

「やだなぁ、お互い知らない仲じゃないんだし、ピトって呼んでよ」

 

「誰が呼ぶか、お前なんざクソ鳥で十分だボケが」

 

心の底から嫌悪が顔に出ているミツヤに、あははと笑うピトフーイ。全く応えていない。

 

「で、なんであんたがBoBに出ることにしたの?前に会った時は公式の大会に興味ないって言ってたじゃない」

 

「事情が変わったんだよ。お前こそ、スクワッド・ジャムの準備で忙しいんじゃなかったのか」

 

「そりゃ、あんたが出るからよ」

 

その言葉に顔をしかめるミツヤ。それを見たピトフーイは、ニヤリと笑い自分の考えが当たっていることを確信する。

 

「ルール無用の戦いしか興味ないあんたがわざわざ公式の大会にでるなんて、依頼を受けたか、若しくは『何か面白いことがあるから』だと思うのよねぇ。そして情報屋から最近あんたが依頼を受けた形跡がないことは確認済み。とくれば、後はもう・・・分かり易いわねぇ」

 

自身の推理、とも言えないような憶測をつらつらと述べるピトフーイ。しかしミツヤの表情がその考えが当たっていることを教えていた。

 

「・・・俺にとって面白くても、お前にとって面白いとは限らねぇだろ」

 

その言葉に満面の笑みで答えるピトフーイ。

 

「何いってんの、あんたと私は『同じ』。敗北者であり、そして狂っているもの同士である私達の感覚が、違うわけないじゃない」

 

そう言って笑いかけるピトフーイに、ミツヤは険しかった表情をすっと引っ込め、ピトフーイを睨む。

 

「・・・まあ別にいいさ。もう言葉はいらない」

 

「・・・?」

 

「あとは戦場で鉛玉ぶち込んで教えてやるよ」

 

そう言ってブロック表を指差すミツヤ。その先を見て、さらに笑みを深めるピトフーイ。そこには、「予選第一回戦:ミツヤ vs ピトフーイ」と出ていた。

 

「あはっ、ほぉらやっぱり。面白くなってきたじゃない」

 

「はぁ・・・とりあえず」

 

「ええ、まずは」

 

「「お前(あなた)から殺そうか」」

 

その言葉を最後に、2人を含めたプレイヤー達は、予選へと転移していった。

 

ーーーBoB予選、開幕ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少々遡り、数分前。会場の一角の座席に、2人の美少女が座っていた。一方は怒りの表情を浮かべ瞑想をしている水色の髪の、ネコ科を思わせる少女シノン。もう一方は、そんなシノンの顔色を伺いつつ、ビクビクしながら座っている少女・・・もとい男性アバター、キリト。あのあと全力の拳をもらったキリトは、ダメージこそなかったがものすごい勢いでぶっ飛ばされ、シノンに謝る機会を失っていた。一方のシノンも、騙されたことに関しては自分の油断、と割り切っていた。・・・だいぶキレているが。

 

「・・・あの、シノン・・・さん?」

 

「話しかけないで」

 

「アッハイ」

 

猛烈な殺意を向けられますます縮こまるキリト。と、その時2人の元へ話しかけてくるプレイヤーがいた。

 

「やあ、シノン。遅かったね。・・・そちらの方は?」

 

「シュピーゲル。ちょっと、色々あってね。こいつは・・・」

 

「どーも、キリトです」

 

「あ、ど、どうも」

 

にこやかに挨拶するキリトに、戸惑いつつ答えるシュピーゲル。そんな2人を見て、不機嫌げにシノンはキリトを睨む。

 

「気をつけて、こいつ男よ」

 

「・・・え?」

 

目を丸くするシュピーゲルを見ながら、キリトは改めて挨拶する。

 

「あー、改めて、キリト、男です」

 

「は、はぁ」

 

突然のことに戸惑うシュピーゲルにあははと苦笑するキリト。その姿を見ながら、ため息をこぼすシノン。そんな中、キリトはシノンへと話しかける。

 

「あ、そうだ。出来れば、この大会のルール教えて・・・」

 

「規約くらい読みなさいよ。さっき送られてきてたでしょうが」

 

「・・・いや、英語あったし・・・」

 

すまなそうにそう言うキリトに、本当にこの男は、とため息を再度つくシノンであった。

 

 

一通り規約について話し終えたシノン。するとやや離れたところで、プレイヤーの人だかりができていた。

 

「・・・なんだアレ?」

 

「さあね」

 

『おい、あそこ見ろよ!毒鳥と鴉が睨み合ってるぞ!』

 

『まじかよ、あの基地外どもが来てんのか!?』

 

「「っ!?」」

 

聞こえてきた言葉に思わず反応するキリトとシノン。突如席を立った2人に、戸惑うシュピーゲル。そんな中シノンがその人垣の向こうへと歩き出したその時、

 

「っ、もう・・・!?」

 

シノンとキリトの体が転送され始めていた。なんだこれ、と驚くキリトを尻目に、シノンはなおも人垣の向こうをにらみつつ呟く。

 

「・・・次会ったら殺す。絶対に・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予選会場の1つ、廃れた遺跡のようなエリア。キリトが現在飛ばされ、餓丸による洗礼を受けているのとは別の会場。そこでは、異様な光景があった。ピトフーイは武器を持ち、安全装置も解除済み。にもかかわらずミツヤの方は何も持たず、無手で無造作にゆっくりと歩いて距離を詰めている。ピトフーイとミツヤのその光景をモニターで見た他のプレイヤーは、「何をしているんだ?」と困惑する。そんな中、2人の距離はどんどん近づき、遂にはほぼ肉薄していると言っていい距離になる。

 

「・・・おい、撃てよ」

 

「あんたこそ、ひょっとして遠慮してる?」

 

軽口を叩く2人の姿に、モニター前のプレイヤー達はヤジを飛ばす。

 

「なんだよ、さっさとやれー!」

 

「おいおい、ひょっとしてヘタれてんのかー?」

 

「所詮噂は噂でしたってことかよ!」

 

本人達に聞こえていないのをいい事に、重い思いのヤジが飛ぶ。と、その時、2人は同時に動いた。

 

「っ」

 

「よっ」

 

ピトフーイが構え、ミツヤが武器をお披露目する。お互いに持っている武器を即座に相手へと向け、同時にバックステップで急激に距離を取る。ようやくか、とプレイヤー達は思う。しかし、次の瞬間驚愕が走る。

 

「「なんだよあれ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

遺跡での戦闘開始と共にお互いの武器のネタバラシをしたピトフーイは、ミツヤの武器を見て引きつった笑みを浮かべる。メインアームの魔改造済みAKを持つ手が動揺からか震える。

 

「・・・いちおー聞くんだけどさ。それ、何?」

 

その視線の先、ミツヤの構えた腕に持っていたのは、ピトフーイが初めてミツヤと交戦した時に装備していたレバーアクション式散弾銃ウィンチェスターM1887/1901でも、シノン達を屠ったパイルバンカーでもなかった。ましてや、銃ですらなかった。

 

「見てわかんねーか?銃剣だよ、銃剣。AKMとかにつけるアレ」

 

そう言って量の手に持つ『ソレ』を軽く回してみせるミツヤ。しかし、ピトフーイは笑いながらも未だ震える声で訂正する。

 

「いや、あんたのソレはAKMって言うより、M1905のもんでしょ。明らかにでかいわよ。何より

 

普通ソレ、銃につけなきゃ使えないんじゃないの?」

 

このGGOは驚くほど忠実に現代の実銃をデザインしている。しかし、それ故に奇をてらった行動や装備は出来ない。ゲームなんだから現実では出来ないことをしようとしても、サイレンサーを付けつつマズルブレーキを付ける、なんて言う矛盾した装備は出来ない。ある意味でゲームらしくない、ひどく現実的な仕様となっている。

 

ゆえに、ミツヤのソレは異質だった。

 

「まあンなことはいいさ。これはただの抜け道(ズル)だからな。さて、毒鳥よぉ」

 

のらり、と銃剣を体の前で交差し、構えるミツヤ。

 

「首、置いてけや」

 

まるで十字架のように交差する銃剣の刀身の向こう、鴉の眼光が嗤っていた。




鉛玉ぶち込むとか言いつつ銃剣を使っていくスタイル。
どこぞのCV.若本かお前は。

Q.なんでキリトがやったミニゲームの賞金が増えてるの?

A.ミツヤが暇つぶしで遊びまくってるから。

Q.ガンマンの性能が高くなってるのは?

A.ミツヤが最初の設定で鼻歌交じりにクリアして運営がブチギレたから。

結論:だいたいミツヤのせい。

シノン「鴉死すべし、慈悲はない」

ピトフーイ「やっぱサイコーだわミっちゃん!」

鴉「エ“ェェイ”メ“ェン”!!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。