不敗の魔術師が青春するのはまちがっている。 作:佐世保の中年ライダー
自分の文才と構成力の無さが恨めしい。
「ほう、ヤン殿が其処まで評する人物で在るのか、そのラインハルトと云う御仁は!」
「あぁ、彼は正に天才と呼ぶに相応しい人物だよ、この時彼は若干二十歳の若さで帝国軍上級大将に地位に就き、2万隻の艦隊を率いて同盟領へ侵攻してきたんだ。」
ラインハルトの台頭を快く思わない、門閥貴族達の企てによりリークされたであろう情報をフェザーン経由で入手した、同盟軍は第2、第4、第6の三個艦隊からなる、艦艇約4万隻の部隊を編成、これを迎え撃つ。
帝国軍艦隊に対し、前方に第4艦隊、右翼後方に第6艦隊、左翼後方に第2艦隊を配置、3方向から包囲殲滅せんと部隊を展開した。
ヤンはバッグからノートを取り出し、大雑把に図に記してその時の状況を説明した。
「…まぁ、これが拙かったんだ。」
「…ヤン殿、一体この状況の何処がまずいのであるか、3方向から敵軍を袋叩きに出来る様に我には思えるのであるのだがな?」
「材木座、俺にはこの状況態々戦力を
分散している様に思えるんだがな、4万対2万なら、正面から一方的にボコれんじゃねぇの。」
「そうだね私も八幡と同意見だよ、狭隘な谷間の様な場所に相手を追い込めたならいざ知らず、この場合の戦場は広大な宇宙空間で、包囲網が完成しているとはいえない状況だ、だからローエングラム伯はこれを包囲殲滅の危機とは捉えずに、寧ろ各個撃破の好機と捉えそれを実行したんだ。」
そしてヤンの口より語られるアスターテ会戦の推移。
帝国軍は自軍の前方に位置する、最も数の少ない第4艦隊を急襲これを撃破、
次いで右翼に位置する第6艦隊を続いて撃破、ヤンはその攻撃で第6艦隊に勤務していた士官学校時代からの友人で在った『ジャン・ロベール・ラップ』少佐を永遠に失った(但し、ヤンはラップについて八幡達に話してはいない、彼の婚約者で在ったジェシカ・エドワーズのその後の運命をも含め、話す事が躊躇われたのであろう。)
その間ヤンは第2艦隊司令『パエッタ中将』へ打開策を献策するも、却下され続けた。
そして、その時が来た。
第4、第6、両艦隊を連戦の上撃破した帝国軍艦隊が第2艦隊を急襲。
先手を取られた同盟軍は敵の猛火に晒される。
「智将と呼び、猛将と呼ぶ、それらの区分を超えて部下に不敗の信仰を抱かせる者を名将と呼ぶ、私は正にこの時、名将の誕生の瞬間に立ち会っているのではないかと軽く興奮を覚えたよ。」
帝国軍の猛攻の中、旗艦『パトロクロス』が被弾、司令官パエッタ中将が負傷する事態が発生し遂に。
「負傷したパエッタ司令から指揮権を引き継いで、私が艦隊を指揮する事になったんだ。」
「オオオッ!何とここで遂にヤン殿が艦隊を!何とも胸熱の展開であるな。」
遂に、ヤンが艦隊の指揮を執る、ここ迄ヤンの話を聞き続け、物語に引き込まれていた四人の期待は否が応でも盛り上がろうと言うものだ。
材木座の様に、大袈裟に声は出さないが内心は早くその後の展開を知りたくてウズウズしていた。
「元々の数が少なかった上に、先手を取られ更に戦力を撃ち減らされたんだから、同盟に勝ち目は無い。」
ヤンは開戦間もなく、同盟軍及び第2艦隊が、この状況に陥る事を予測していた。
だから予め、コンピューターに戦術プログラムを入力し、各艦にそのデータを開く様に指示した。
「2個艦隊を殲滅し、我々の艦隊に対しても先手を取った、勝ちを確信したローエングラム伯はおそらく中央突破を試みるだろうと予測してね、だからそれを逆手に取る事にしたんだ。」
帝国軍は紡錘陣形を取り、同盟第2艦隊に対しヤンの予測通り、中央突破すべく前進してくる。
それに対し第2艦隊は、あたかも帝国軍により陣形を分断された様に見せ掛ける、中央突破成功を確信した帝国軍であったがラインハルトはそれに違和感を覚えたと云う。
帝国軍により分断された同盟第2艦隊は、高速で逆走し帝国軍艦隊の後方に食らいついた。
「これはもしや!勝てる、勝てるのではないかヤン殿!」
椅子の上に立ち上がり、右手を天に突き上げ、左腕を折り曲げ拳を肩口辺に持ってくる、所謂ウルトラマンの登場シーンのポーズを取り、材木座は興奮に鼻息を荒くまくしたてる。
「いやいや、敵の指揮官はローエングラム伯だ、そう甘くは行かないさ。」
帝国軍は高速で時計回りに旋回移動、更に同盟艦隊の背後に食らいつこうと移動を始める。
そして三十分後。
両軍の陣形はリング状になっていた。
「要するに2匹の蛇が互いの尻尾に食らいつき飲み込もうとしているのさ。」
「…おいヤン、それって最期は両者共倒れ…いや数が多い帝国軍が若干有利じゃないかよ。」
「あぁ、その通りだよ八幡、私の狙いは消耗戦に在ったんだ、ローエングラム伯は凡百の指揮官では無い、間違い無く名将と呼ぶに相応しい人物だ、だからきっと私の狙いを理解し対応してくれると確信していたし、実際彼は其処で退却と云う選択をしてくれたしね。」
ヤンの確信通りラインハルトは軍を引き帝国領へと帰還してゆく。
ここにアスターテ会戦は終結した、同盟軍はこの戦いで200万人以上の犠牲を出す結果となった。
「…何てか、規模が異常過ぎだよな、千葉市の人口の2倍以上の人間が一度の戦いで死んじまうなんて……。」
「…そうだね、何かヤン君が軍隊が嫌いって気持が分かるってか、なんか嫌だな。」
「こんな仮定は無意味かも知れないけれど、もし第2艦隊の司令官がヤン君の提案を採用していたらどうなったのだろうかと、考えずには居られないわね。」
「…うむぅ、確かにヤン殿とラインハルトの戦いに血湧き肉踊る思いはあるのだが、犠牲が大き過ぎるのであるな。」
アスターテ会戦についての、皆のそれぞれの感想、それはヤンにとっては喜ばしい意見であった。
皆概ね戦争に対して否定的な意見を語った事に、戦争の悲惨さ残酷さが、多少なりとも彼等に伝わった事に、話した甲斐があったと、少しだけホッと胸を撫でおろす。
「…皆が戦争に対して否定意見を述べてくれて私としては嬉しい限りなんだけど、その後も戦争に軍隊に関わり続け血を流し続けた私は、それについて余り偉そうな事は言えないのかも知れないな。
この後ハイネセンに戻った私を待っていたのは、エルファシルに続いて二度目の、英雄として祭り上げられると云う事態だったんだ、理由もエルファシルと一緒だよ敗戦という不都合から民衆の眼を反らす為だ。」
が、戦没者慰霊集会において、当時国防委員長で在った『ヨブ・トリューニヒト』のアジ演説に大人気なく(笑)賛同しなかった事により、『憂国騎士団』の襲撃を自宅官舎で受けるも撃退。
「親父の遺品で唯一本物だった、万歴赤絵も壊されてしまって、部屋中がゴミだらけになってしまい、掃除を手伝おうかと思ったんだが返って邪魔になるから黙って座っている様に言われて、でも座れそうな所も無いと言ったら、テーブルの上に座る様に言われてね…。」
「「「……………。」」」
「なあヤン、お前に専業主夫無理なんじゃね?」
雪ノ下、由比ヶ浜、材木座の三人がヤンの生活者としての無能振りと大人気の無さに呆れ無言となる中、八幡はヤンに対して重い現実を突き付ける。
どう考えてもその体たらくでは、家庭内を支えて行くには無理が有ると断じられたのだ。
「…どうやら、その様だね…私自身内心では解っていたんだ…ははは…。」
同日夜、ヤンは統合作戦本部長『シドニー・シトレ』元帥に呼び出しを受け、少将への昇進と新設される第13艦隊司令官就任の内定を言い渡される。
本来同盟軍では艦隊司令官の任は中将を充てるのであるが、アスターテ会戦に於いて壊滅した第4、第6両艦隊の残存兵力に新兵を加えた艦艇数約6千4百隻将兵70万人と、通常の半分の兵力で在った。
「そして、その最初の任はイゼルローン要塞の攻略だった…。」
「しかしヤン殿、イゼルローン要塞はこれ迄に何万隻もの艦隊を何度も動員したのに落とす事は叶わなかったので有ろう、それをたったの6400隻で落とせなど無理難題であろう!そのシトレ元帥は何を考えその様な無謀な命令をしたのだ。」
「まぁ、シトレ校ちょ、本部長も組織のトップに居る訳だし、権力争いだとか面倒事も抱えて居ただろうし、私にも思惑が有ったからね、取り敢えずやって見る事にしたんだ。」
「ヤン君、貴方そんな簡単に取り敢えずだなんて言っているけれど、もしそれが失敗してしまったらどうするつもりだったのかしら。」
「そうだね…その時は、頭を掻いて誤魔化したかな。」
「…はぁ、全く貴方という人は…。」
「アハハ、なんかヤン君らしいね。」
「冗談はさておき、土台が無謀な作戦なんだ、失敗してもシトレ本部長が辞表を提出して、私という作られた英雄の名声が地に堕ちるだけだよ、私に取っては虚名なんだが。」
「なぁヤン、ちょっと考えて見たんだけどよ、これ迄万単位の艦隊で攻略出来なかった要塞を、6千ちょいで陥とすなんて正攻法じゃ無理だよな、だとしたら考えられるのは…攻略は内側からだと思うんだが、どんな手を使ったかは解んねぇけど違うか!?」
八幡の問い掛けにヤンは軽い驚きと感嘆の思いを抱いた。
八幡はほんの少しの説明で、その答えに行き着いたのだ、自分の目の前の撚てはいるが、不器用な優しさを持った少年の洞察力にユリアンに通じるセンスを見出す思いだった。
「あぁ、八幡…君の言う通りだよ、私が取った策は正に内側からの攻略さ。」
「ヒッキー凄い!良く解ったね。」
「べっ、別に単なる消去法だ、外が駄目なら内から、スパイなりなんなりを潜り込ませて陥落させるって思い付いただけだっての…。」
更に八幡の見解を聞き、正解を言い当てた彼にヤンは思わずにはいられなかった。
あの時同盟に八幡の様な人材が居てくれればと、尤も仮に彼が居たとしても、きっと自分と同じ様に軍上層部や政治家連中には嫌われたであろうと予想出来てしまえるのだが。
「何と…味方に一人の死傷者も出さずに攻略してしまうとは、ヤン殿の策略、正に鬼謀であるな。」
イゼルローン要塞攻略のあらましを語り終えたヤンに材木座が賛辞を送る。
200万の人命を失ったアスターテ会戦と違い、一人の犠牲も出さなかったと言うイゼルローン攻略戦に対する感嘆の念を材木座に限らず皆が抱いていた。
「この後私は、奇跡のヤンだの魔術師ヤンだのと言われる様になるんだが、私自身に言わせると、詐欺師かペテン師位が良いところさ。」
「ヤン君、貴方は先程思惑があって、要塞攻略に臨んだと言ったけれど、その思惑とはどうな物だったのかしら、差し支えが無ければ教えてもらいたいのだけれど。」
ヤンの言った思惑とは何か、それは雪ノ下だけでは無く他の者も気になっていた事柄だろう、材木座などは雪ノ下の言葉に大きく頷き、八幡もじっとヤンに視線を向けている。
紅茶を一口啜り、頭を掻いてからヤンはその答えを皆に伝える。
「…それは単に私が軍を抜けられる状況を作る為だったんだ…イゼルローンの攻略事態はまぁ何とかなるだろうと考えていたし、攻略が成れば少なくとも帝国軍もこれ迄の様に頻繁に軍を動かしては来れないだろう。
その間に同盟は時間を掛けて失った戦力、国力の回復に務められる、兵役に取られている働き盛りの世代を大勢社会復帰させる事が出来る訳だ。
少なくとも同盟から帝国へ逆侵攻等と馬鹿な考えを起こさなければね。
それに、イゼルローン要塞の存在をチラつかせれば、帝国との間に和平に向けた働き掛けを行う事が出来るのではないかと思っていたんだが、残念な事に同盟政府はその馬鹿な事を閣議決定してしまったんだ。」
同盟政府の閣議により決定した、帝国領への侵攻作戦、この計画に同盟軍は、中将へ昇進し、第2艦隊の残存兵力を加え正規の一個艦隊へと編成されたヤンの第13艦隊を加えた計8個艦隊を投入。
艦艇総数20万隻以上、参加人員3千万人以上を動員。
イゼルローン要塞を橋頭堡として、帝国領侵攻が開始された。
「まるで無人の野を征くが如く、と云う感じで同盟軍はまたたく間に帝国領の辺境の星系広くに進軍して行ったんだ、それが帝国のローエングラム伯が仕掛けた壮大な罠だとも知らずにね。」
「その罠とは一体どの様な物なのかしら。」
一堂を代表する様に雪ノ下はヤンへ質問する、壮大なと表現されたそれがこの場に居る皆が気になるポイントで有ろう事、疑い無しである。
「広大な帝国領、それそのものが罠だったんだよ。
ローエングラム伯は意図的に各星系の戦力を引き上げ、そのうえ住民から物資も徴発していたんだ…同盟は解放軍を謳っているからね、当然住民に物資を分け与える使命がある訳さ。」
「…おいヤン、それってもしかして、焦土作戦ってやつか、住民に物資を分けたら当然同盟軍の懐具合は悪くなっちまうよな、そうなると本部に補給を依頼するだろうし、そこを狙って帝国軍が補給部隊を襲撃する、お前が士官学校のシミュレーションでやった戦線と補給線を伸ばさせるってやつ、それを帝国軍にやられてるんじゃねえか?。」
「いやいや、八幡、君は全く大した奴だよ。
その通り、私もそれに気づいて占領地を放棄して撤退しようと、第10艦隊の『ウランフ』提督とも相談して、司令部への進言を第5艦隊の『ビュコック』提督にお願いすることにしてね。
しかし司令部の見解は一戦も交えずに撤退などもっての他、だとさ。」
結果、八幡が言った通り補給部隊が叩かれ、ローエングラム伯の配下の艦隊による反撃が開始され、同盟軍は各地で敗走或いは壊滅、最終的に司令部は残像兵力をアムリッア星域に終結そこを決戦の地とする。
「しかし其処に艦隊を維持しつつ終結出来たのは私の第13艦隊、ビュコック提督の第5艦隊、アップルトン提督の第8艦隊の3個艦隊と僅かな各艦隊の残存兵力だけだった…艦隊の総数は4〜5万隻位かな、対する帝国は全面に7万隻後背から別働隊3万隻、我々は艦隊の後背に4千万個の機雷を配置所謂背水の陣をもってこれに相対したんだ。」
帝国軍の猛攻により第8艦隊が壊滅、第5、第13両艦隊も善戦するが、後背の機雷原も『キルヒアイス』提督の艦隊が指向性ゼッフル粒子を使用し孔を穿たれた事により、後背よりの進軍を許す結果となった。
「残像兵力をビュコック提督に託し私の艦隊が殿を努め、何とか帝国軍の包囲網を突破出来たんだが、その際私の艦隊も3割の損害を出し、ビュコック提督の艦隊も5割の損害を被った。
最終的に同盟は、この一連の帝国領侵攻作戦で2千万人を死なせ全兵力の4割を失う結果となったんだ。」
「「「「…………。」」」」
言葉が出なかった。
2千万人と云う死者の数に、誰も軽口も叩けなかった。
暫しの沈黙の後、雪ノ下が意を決した様にヤンに対し意見を述べた。
「…ヤン君、貴方には悪いけれど、自由惑星同盟は滅びるべくして滅んだと言わざるをえないのではないかしら。」
「ゆきのん!」
「良いんだよ由比ヶ浜さん、雪ノ下さんの言う通りさ、同盟は政治は腐敗し汚職は蔓延り、支持率を得る為に安易に無謀な出兵を決め軍部も…これは私にも責任が有るのだろうが、イゼルローンを無血開城させた事により軍事的勝利は斯くも容易く得ることが出来ると錯覚させ、国内の世論までもがそう思ってしまったんだろうが、私は時々考える事が有るんだ、もし私がイゼルローンを落とせなかったら、もし落とせたとしても多大な犠牲を出した上での事だったら、帝国領への出兵など行おうなどと思わなかったのではないかとね…。」
言っても詮無い事だがね、最後にそう付け加えヤンは静かに眼を閉じ語りおえる。
ハイネセンへの帰還後、暫しの休暇の後ヤンは大将への昇進と新たな赴任先が決定する。
「イゼルローン要塞及びその駐留艦隊司令官の辞令が降ったんだ。」
「おお、それではヤン殿は一国一城の主と成ったのであるな、いやはや大したものだなヤン殿は。」
「いや、材木座君それは少し大袈裟だよ、イゼルローン要塞の居住者は軍民合わせて約5百万だから、精々県知事位なものだよ。」
材木座の称賛の言葉にヤンは謙遜するのだが、イゼルローン要塞は5百万からの人口を有する一大都市と言っても過言では無いだろう。
そのイゼルローン要塞を預かるのだから材木座の云う一国一城の主との認識は強ち間違えでは無い。
「イゼルローン要塞は人工天体だから当然全てが作り物なんだが、内部に一応公園等も有ってね、作り物だから味気無いかと思っていたんだが、自然と違い良い所も有ったんだ。」
皆の期待を煽るかの様に、一旦間を置きイゼルローン要塞内の公園について説明をするヤン。
「自然と違って蚊が居ないんだ、なので私の趣味の昼寝が捗る事捗る事、いやぁ、あれは私にとって正に至福の時間だったよ。」
勿体つけて紡ぎ出されたセリフがそれかよ、聞いていた四人は若干呆気味の視線をヤンへ向けるのだが!当の本人はまるでどこ吹く風と云う態度だ。
奉仕部の三人と材木座は知らぬ事であるが、ヤン・ウェンリーと云う男は履歴書の趣味の欄に昼寝と書く様な変人なのだ、それについて他者に呆れられる事など彼にとっては今更の事であった。
ヤンがイゼルローン要塞司令官の任に付いて間もなく、銀河帝国より使者が来訪、捕虜交換を打診してきたのだった。
「なんせ、捕虜を食わせるにも金が掛かるし、先の戦いで大勢の戦死者を出したんだから、政府にしたら願ったり叶ったりだろうね。
それに捕虜には選挙権が無いが帰還兵にはそれが有る、2百万人の有権者だ、この存在は大きいだろう。」
人命の扱いが多分に打算が含まれた物だと語るヤン、そんな薄ら寒い自由惑星同盟と云う国家に所属していたであろう彼に同情の念が禁じ得ない、四人はそう感じていた。
「しかしなヤン殿、もし我がその帰還兵の一人だったとして、いくら帰還が叶ったからとは言え、そのような政府に票を投じよう等とはとは思わないのであるがな。」
「私も君に同感だよ、何で私の貴重な選挙権をトリューニヒトの野郎とその下っ端どもに……。」
材木座の意見に同意するヤンで有ったが、その口調が些か口汚くなっている事を自覚し女性の前だと言う事に今更ながら思い至り発言を控えるのだが。
「アハハ、ヤン君って意外と毒舌家なんだね…。」
由比ヶ浜に迄そう言われる始末であった。
「おっ!偉いぞ由比ヶ浜、良く毒舌家なんて言葉知ってたな。」
「ちょっ!酷いヒッキー、あたしだってそんくらい知ってるんだからね、ちゃんと勉強して総武に入学したんだし!」
キイーと怒ってますアピールをしながら由比ヶ浜は、八幡の腕をポカポカと叩く、当の叩かれている八幡はこいつうぜぇと言う表情を出そうとしているのだろうが、由比ヶ浜流のコミュニケーションに満更でもないとの思いが有る様で、少しニヤケ気味である。
斯様に、思春期男子の心情は複雑なようである。
「おっ、お前な俺だけじゃ無いからなそう思ってんの、材木座だって雪ノ下だってそう思ってるからね、なぁ材木座、だろ。」
「うむ、スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃とは、正にこの事よな!ムハハハハッ!」
「中二黙るし!!」
「………ハイ。」
「偉いわよ由比ヶ浜さん、貴女もしっかり成長しているのね、私も嬉しく思うわ。」
「あ〜ん!ゆきのんまでぇ!」
八幡から離れ、次は雪ノ下へと抱き付き由比ヶ浜はその身体を揺さぶる。
その様子を八幡と材木座は、『ゆるゆりいただきました。』『尊い。』と口には出さず、心中思いながら二人の女子を生暖かな眼差しで愛でていた。
イゼルローン要塞にて、帝国軍を代表しラインハルトの腹心である『ジークフリード・キルヒアイス』上級大将と同盟軍を代表しヤン・ウェンリーとの間で恙無く捕虜交換の調印は作された。
「可笑しなものさ、味方の政治家には不信感や嫌悪感ばかり抱くのに、敵の将軍には好感を抱いてしまうんだからね、
そしてこの時私は思ったんだ、彼なら同盟と帝国の共存の架け橋になってくれるのではないかとね。」
その願いが叶うことは無かったんだがね…とヤンは述べる。
この捕虜交換の裏にある物をヤンは洞察していた。
「ローエングラム候の狙いは自分が帝国を平定する迄、同盟に帝国に手出しが出来ない様にする事にあるんだ、帰還兵の中にスパイを潜り込ませ、トリューニヒト政権に不満の有る軍高官に接触させクーデターを起こさせる。
それにあたりローエングラム候は一見かなり高度なクーデター計画を立案してみせた事だろう、クーデター派はそれとは知らず帝国の策略に踊らされる羽目になるんだからね、だけどローエングラム候にして見ればクーデターの成否などどうでも良いんだ。」
「同盟が混乱して帝国にチョッカイ掛けられなくする、それだけで充分ってかよ、それにまんまとハマるクーデター派も憐れだよな、そういった奴等って自分の正義ってのを盲目的に信じてんだろうし。」
「そうね、叶いもしない専業主夫などと云う妄想を何時までも持ち続ける誰かさんの様にね、妄想ヶ谷君。」
「…人の野望にケチつけんの止めてくれる、あと勝手に人の姓を改名させんのもな。」
「あら私は部員の将来を心配して忠告をしたまでよ、現実が貴方にとって厳しいからと眼を背けていてはいけないと、貴方がしっかり前を向いて人生言うレールを歩んで行くことが出来る様に、敢えて口を酸っぱくして、心を鬼にして忠告しているのよ、それを……」
「解ったから、もう良いこれ以上は俺の人生がここで終わっちまうから、その辺にしといてくれ。」
「そう、本当はまだ言い足りないのだけれど、何時までもヤン君の話の腰を折る訳にはいかないから、この辺りにしておくわ。」
調印式の終了後ヤンはハイネセンへ赴き、極秘理に宇宙艦隊司令長官ビュコック大将と接触、クーデター発生の可能性を示唆し調査を依頼、同時に発生した場合のこれに対する鎮圧、平定の為の出兵の許可を得る。
ビュコック長官の捜査にも関わらず、クーデター派の実態は掴めず、遂にその時が訪れた。
統合作戦本部長『クブルスリー』大将暗殺未遂事件を皮切りに、同盟国内4つの惑星で叛乱が勃発し、ヤンは本部長代行『ドーソン』大将より4箇所全ての叛乱の鎮圧を命令される。
「4箇所全てとは随分と無体な命令であるな、ドーソンとやらはヤン殿になんぞ含む所が有るのだろうかな。」
「…ユリアンが言うには年下の私が同格で有ることが、彼の不興を買っていたらしいとのことだそうたよ。」
「「…あぁそう言う事。」」
叛乱鎮圧の命令を受けて間もなく、ハイネセンに於いてクーデター発生の報が届く。
ビュコック長官等の調査も虚しく、クーデターは発生し、ビュコック長官始めドーソン代行、その他クーデター反対派は拘束されてしまったのだ。
その中で最高評議会議長トリューニヒトはクーデター派の手を逃れ姿を消すのだが。
クーデター派の声明が同盟全土に駆け巡る、それはヤン曰く。
「5百年前にルドルフが言っていた事と何ら変わらない物だった、クーデター派は自分達を正当化する為にルドルフの死体を墓場から掘り起こした様な物さ、ルドルフの帝国の政治体制に対するアンチテーゼとして生まれた同盟がそのルドルフの体制を敷こうと言うのだからね、皮肉も此処に極まれりさ。」
だが其れよりも、衝撃を受けたのはクーデター派の『救国軍事会議』の主導者の正体だった。
元同盟軍参謀総長、帝国領侵攻の失敗により査閲部長へ左遷させられていた。
ヤンの副官『フレデリカ・グリーンヒル』の父親である『ドワイト・グリーンヒル』その人であった。
「…なんか、可愛そうだよねフレデリカさん…お父さんと敵になっちゃうなんて……。」
「…ヤン君、まさか貴方は其れを理由にフレデリカさんを冷遇したりなどしていないでしょうね。」
「いやぁ私はそんなに信用が出来ない人間なのかな…私は物覚えも悪いしメカにも弱い、彼女程有能な副官に辞められたら私の仕事は滞ってしまうよ。」
「ヤン、お前も素直じゃねぇな。」
宇宙暦797年4月20日、イゼルローン要塞の指揮権をキャぜルヌ少将に預けヤンはクーデター鎮圧に出撃する。
4箇所全てを平定し、最終的にはハイネセンを目指し。
順調に各惑星の叛乱を鎮圧し、ハイネセンへ向け進軍するヤン艦隊の元にクーデター派からの脱出者『バグダッシュ』中佐が投降してくる。
「彼はクーデター派のスパイでね、我々に偽の情報を掴ませ、あわよくば私の命を奪う腹積もりだったんだが、シェーンコップ准将が其れを察知し対処してくれたんだ。」
「…処刑したのであるかヤン殿?」
材木座の質問にヤンは首を横に振り否定する、シェーンコップは薬でバグダッシュを眠らせ、クーデター派の第11艦隊との戦いが終結する迄起きない様にしていただけであった。
事が終わり目が覚めたバグダッシュ中佐は、クーデター派から正式にヤンの配下へ転向を表明しヤンもこれを受け入れた。
「…お前正直言って、危機感なさ過ぎじゃね!?よくそんな危険分子を身近に置けるよな。」
八幡の発言は最もで有ろう、現にユリアンはバグダッシュを危険視しヤンへ彼を排除する様に促したのだから。
「バグダッシュはちゃんと計算が出来る男だったからね、私が勝ち続ける限りは裏切ったりなどしないと確信していたからね。」
ヤンの判断は正しかった、バグダッシュはヤンの死後もユリアン達に従い、イゼルローン協和政府の一員として戦い続けたのだ、それはヤンの知らぬ事であるが。
同年5月18日ドーリア聖域にてクーデター派の第11艦隊との会戦。
「この会戦を前にちょっとした演説を行ったんだけど、それが後々厄介な事になるんだがそれは今は少し置いとこうかな。」
第11艦隊との戦いは事前に情報を掴んでいたヤンの采配により一方的にヤン艦隊の勝利に終わる。
最後まで自説を曲げず、降伏勧告も聞き入れず第11艦隊は文字通りの全滅を遂げた。
同盟にとってはアムリッアの会戦で失った兵力に加え更に戦力を減らすだけの虚しい結果となった。
ドーリア星域での虚しい勝利の後、ヤンの元に訃報が届く、後に『スタジアムの虐殺』と呼ばれる事になる事件。
実質クーデター派に対する反対集会である市民集会に武装したクーデター派が乗り込み解散させようとするも、やがてそれは暴動となり多大な犠牲者を出す結果となった。
市民側の犠牲者は2万人を超え、クーデター派の兵も千5百名の死者を出す結果となった。
この事件によりクーデター派の求心力は完全に失われ、第11艦隊の壊滅と合わせ実質的にこの時点でクーデターは失敗したと言って良いだろう。
「だが、まだ完全に勝った訳では無いんだ、ハイネセンには『アルテミスの首飾り』があるからね。」
首都星ハイネセンを守る12機の防空衛星、アルテミスの首飾り、クーデター派の最期の拠り所であるそれをヤンはこれ以上は無いと言う程の演出で持って無効化する。
「国父ハイネセンの故事にあやかって巨大な氷塊に推進エンジンを取り付け、12機の衛星全部に同時にぶつけたんだよ、氷の質量に加え加速を付けることによって、相対性理論に従いその質量は更に増す訳だ。」
同時にバグダッシュ中佐にクーデターが帝国のローエングラム候によって画策された物で有ると同盟全土に向け演説させ、クーデター派に正義は無いと宣言。
それにより救国軍事会議のクーデターは終結した。
クーデター派代表代行として『エベンス』大佐により降伏を受諾する旨が告げられる。
そのエベンス大佐により、代表であるグリーンヒル大将の自決が告げられた。
「…………何とも後味の悪い話だな、誰一人報われた人間も居やしねえじゃねぇかよ。」
「…ぐすっ、フレデリカさん可愛そうだよ…そんなの無いよ……。」
悲しい結末に、由比ヶ浜は嗚咽を漏らし雪ノ下はその彼女を宥める。
この虚しい結末にやるせない思いを抱いたのは彼女も由比ヶ浜と同様なのである。
ヤン艦隊の兵士達を中心にハイネセンの治安回復に務める中、ユリアン・ミンツが思いがけない人物と遭遇する。
自由惑星同盟最高評議会議長ヨブ・トリューニヒトであった。
「式典であの男と握手をした時、私は薄ら寒さを感じたんだ、あの男は自分で騒乱を呼び込んで置きながら、自分はその間身を潜めておいて、それが過ぎ去ってからのこのこと巣穴から出てきやがったのさ、そして思ったんだこんな男に権力を与える民主主義とは何なのだろうかとね。
民主主義回復の為に、地下で戦ったなんて言ってはいるが本当に戦ったのはスタジアムの虐殺に於いて犠牲になった市民だろう。
奴は騒乱か終わって、安全が確認出来てから漸く姿を現し美味しい所だけをかっさらっていく禿鷹の様な男だよ、否それは禿鷹に対して失礼だな。」
斯様にヤンのトリューニヒト嫌いは、筋金いと言う他無い。
何も得る事なく終結した同盟のクーデター、その中で届いたのは帝国の宿将として知られる、『ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ』上級大将の亡命の報である。
ヤンは彼をイゼルローンに於いて賓客として、客員提督として遇する。
そしてもう一つ、ジークフリード・キルヒアイスの訃報である。
「彼の訃報を知り、私は長年の友を失った様なそんな気持ちにさせられたよ。
たった一度の出会いだったけど、彼の佇まいには人に信頼感を与えるに足る風格の様な物を感じずにはいられなかったからね。」
私でさえそうなのだから、長年の友人であったローエングラム候の喪失感は如何ほどの物だろうか、ヤンはキルヒアイスに対する思いをそう結んだ。
宇宙暦797年は自由惑星同盟と銀河帝国の二国に於いて戦火が交えられる事なく両陣営が内乱に終始して終わった、珍しい年であった。
イゼルローン要塞帰還後、人事移動によりヤン艦隊に所属するベテラン兵士の多くが移動、代わりに送られて来たのは新兵ばかりであった。
明けて翌年、宇宙暦798年。
新兵訓練と哨戒任務に就いていた、アッテンボロー少将の艦隊がイゼルローン回廊帝国側に於いて帝国軍の艦隊と遭遇し戦闘状態に陥る。
この哨戒任務には、軍属となったユリアン・ミンツが宇宙戦闘艇『スパルタニアン』のパイロットとして同行していたのであった。
その報に、ヤンは客員提督メルカッツの意見を採用、イゼルローン駐留艦隊全軍を以てアッテンボロー艦隊の救援に向う。
ヤン艦隊到着を以て帝国軍の艦隊は退却、この意図せぬ遭遇戦は終わりを告げる。
この戦いが初陣となったユリアン・ミンツは帝国軍の戦闘艇『ワルキューレ』3機撃墜、巡行艦一隻を撃破と言う武勲を飾る。
「…あまり危ない真似をしちゃいけないと常々言っていたんだけどね。」
「厶ハハハッ!ヤン殿は案外過保護である様だな。しかし初陣で武勲を挙げるとはユリアン殿も大した御仁の様であるな。」
材木座の過保護と言う発言には、奉仕部の三人も頷かざるをえなかった。
「ヤン君てさ、多分すっごく優しいお父さんに成りそうだよね、女の子だったらきっと甘々だね。」
「そんで娘が大きくなったら、邪険に扱われるんだよな、娘の塩対応に涙で枕を濡らす日々が続くんだよ多分、家の親父の様にな、知らんけど。」
「あらそれは比企谷家に置ける日常的な風景なのかしら、小町さんが貴方や御父上に対してその様な対応をされているのね。」
ユリアン・ミンツが初陣を飾った遭遇戦よりしばし後、ヤンに対して同盟政府より出頭命令が届いた。
査問会への出廷を命じる物である、しかし本来同盟憲章に査問会等と言う物は明記されて居らず。
「意図して仕組まれた物だろうねどの辺りの勢力が企図したかは兎も角、私に精神的にリンチを加える為の物だったのさ。」
ハイネセンへ到着すると同時にヤンは身柄を拘束され、副官フレデリカ・グリーンヒル、護衛として選ばれた『ルイ・マシュンゴ』准尉達と引き離されてしまう。
「そして査問会が開始されたんだ、どうでも良いだろうに、私の経歴確認から始まり士官学校時代の成績、入隊後の勤務態度や戦歴迄細く披露される始末さ。
若くして高い地位に付けて羨ましいだのと宣いやがるんだが、私としては彼等が望むのなら何時だってその地位をくれてやっても一向に構わないってのにさ。
そして本格的に査問が開始され、アルテミスの首飾りを全て破壊した事や第11艦隊との決戦を前に行った発言が問題視されたんだ。」
一つ一つの質疑に正論を以て解答してゆくも、その正論は彼等の望む答えでは無くヤンに対する悪感情は、募るばかりであった。
「要は彼等の望みは私が正論を述べる事では無く、彼等に対して大人しく忠誠を誓う事に在ったんだろうね。」
「しかし、親は無くとも子は育つと言う言葉も有る、それを置き換えると国は無くとも人は育つ、とも我は言えると思うのであるが、確かに社会基盤やインフラ整備等大規模な事業を行う為に、国家と言う物がある方が便利な側面も有ろうが、先ずは人が有りてこそ国は成り立つものであろうにな。」
「だな、国なんて入れ物が有っても、中身が無くちゃ、何の意味も為さないなんて学生にだって理解出来る程度の事だよな、実際この日本だって若い世代の人が見切りをつけて海外に出て行ったりしてるしな、この場合の中身ってのは人だけどな、由比ヶ浜。」
「ちょ、またヒッキーはあたしの事引き合いに出して!あたしの事馬鹿にしすぎだし!」
その無意味な査問会の終結は意外な事態がもたらした物だった。
帝国軍のイゼルローンへの侵攻の報が齎されたからである。
「帝国はガイエスブルク要塞にワープ用推進エンジンを取り付け、要塞まるごとイゼルローン回廊へ移動させて来たんだ。」
ガイエスブルク要塞はイゼルローン要塞より一回り程小さいがその戦力はイゼルローン要塞にほぼ拮抗している。
「おかげて私は、胸にしたためていた辞表を提出するタイミングを逃してしまったんだがね。」
ヤンが直ぐにハイネセンを出立したとしても、イゼルローンへの帰着には一ヶ月余りの時間が掛かってしまう。
「敵の指揮官は移動要塞を自軍の根拠地として使用する事に囚われていた様だからね、戦況は膠着するだろうと推察出来た。」
「だけど、折角持って来た要塞だろ根拠地として使うのは当然じゃねえの。」
八幡はヤンの言葉に感じた疑問を問いかけてみた。
「この件で、推進エンジンを取り付ければ要塞規模の物体もワープさせられるだけの技術が有ると立証されたんだよ、だったら何も要塞の運用に拘らず、要塞その物を質量兵器としてイゼルローンにぶつけてしまう、と云う手段も取れるんだ。
その後で改めて別の要塞をイゼルローンへ持ってくる事も可能だろう。
要塞をぶつけるのが勿体無いのなら、それに近い質量の小惑星にでもエンジンを取り付けてぶつけると云う手段もあるね。」
帝国軍の指揮官がその発想に至らなかったのが、今回は救いになったのだ。
そのお陰でヤンは援軍を率いイゼルローンへ到着する事が出来た。
それにより形勢が完全に不利になった帝国軍は遂にガイエスブルク要塞をイゼルローン要塞にぶつけると云う、思考に至る。
しかしそれはもう遅かった。
「12機のエンジンを完全に連動させる事で、要塞を直進させられているんだよ、ならばその内の一つを破壊すれば連動は崩れ要塞はバランスを失いイゼルローンへの衝突は避けられるだろう。」
バランスを失い目標から遠ざかるガイエスブルク要塞をイゼルローン要塞主砲トールハンマーにより砲撃。
ガイエスブルク要塞は永遠に宇宙より失われた。
「…これでまた私を家族の敵と恨む遺族が増えたわけさ、一度や二度死んだ位では私の罪は拭えはしないだろうね。」
イゼルローン要塞とガイエスブルク要塞とによる、戦史上類を見ない戦いの顛末をヤンはそう締めくくった。