不敗の魔術師が青春するのはまちがっている。   作:佐世保の中年ライダー

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それぞれの帰り道。

 

 サイゼリヤでの奉仕部の四人と比企谷八幡の妹小町、そしてヤン・ウェンリーの婚約者であるフレデリカ・グリーンヒルの計六名は会合を終え、皆それぞれに帰宅の途についた。 

 比企谷八幡と小町の兄妹二人は夕暮れの薄暗い路地を彼等の自宅へ帰るべく肩を並べ歩いている。

 サイゼリヤの前で皆と別れ、歩き出した二人であったが始めの数分間は互いに口を開かず無言で歩いていたのたが、妹の小町が八幡に確認するかの様に先の会合に集った者達の事を話題に語り掛けてきた。

 

 「ねぇお兄ちゃん、小町さ最近は割と安心してるんだぁ、奉仕部に入ってからのお兄ちゃんは雪乃さんや結衣さんと出会って、それから戸塚さんとか大志君のお姉さんとか色んな人と関わって、前よかちょっとだけ、本当にほんのちょびっとだけ前向きになったかなって思ってたけど…ヤンさんが転校して来てからさ、またちょっとマシになったよね!

 それまではさ、何か変に意地張って屁理屈ばっかっり言って本当に駄目駄目なゴミぃちゃんだったのに、今は小町的に割といい感じになったと思うよ、あっ今の小町的にポイント高い!」

 

 家族として、妹として誰よりも一番に兄を、それこそ仕事の為にほとんど家に居ない両親よりもずっと長く見守り続けて来た小町だからこそ、兄八幡の小さな変化に気が付いたのだろう。

 自転車を押しながら歩く八幡は、妹が下した自身の評価に対し微妙な、不本意そうな表情を作り答える。

 

 「ハァ…お前ってさ俺の事褒めるにしても何処かしらディスって来るよな、まぁアイツらと居るのも悪く無いとは思ってるし、ヤンと居るのも変に気を使う必要も無いって感じでなんか楽なんだよなぁ、まぁそんなんでお前から見て多少なりとも変わって見えるとしてもだ、俺の本質は何も変わりゃあしないないんだけどな、むしろ変わらな過ぎる自分を褒め称えたい程迄ある。」

 

 「あぁ、ハイハイ……でもさ、小町はさっき初めて会ったばっかりだけどヤンさんってホント何かさ、う〜ん上手くは言えないんだけど良いよね。

 優しい人ってのもあるかもだけどさ、叱る時はさっきのフレデリカちゃんみたいにきちんと叱るけど、何かガミガミ言わないでえ〜っと何だっけこう…う〜ん何てんだろ?」

 

 あまり語彙が豊富では無い小町は、右手の人差し指を下唇にあてながらヤンの事をどの様に評するべきかと考え込んでしまった。

 その様子から八幡はそれを察し、此処は教えるべきかどうかと判断に迷う、今年中学三年生であり年明けには受験が控えていて、しかも進学校である総武高校への入学を志望する妹に対し簡単に助け舟を出さずに己で試行錯誤しながら答えに辿り着かせる事も必要なのではないかと判断したからなのだが。

 

 「う〜ん…分かんないやパスパス!」

 

 結局小町はあっさりと思考を放棄してしまい、答えにたどり着く事が出来なかった、ハァとため息を吐き受験を控えながらのこの体たらくぶりを見せる妹に、一抹どころでは無い不安感を抱きつつも結局八幡は答えを述べた。

 

 「この場合は理を説いて諭すだな…てか小町さんやそんな事でお前さん受験は大丈夫なんだろうな、お兄ちゃんはそんなお前が心配で夜しか眠れないよ。」

 

 「そうそうそれそれ!てか寝れてんじゃん普通に、けどヤンさんて結局お兄ちゃんの何処が気に入ったんだろうね、お兄ちゃんってさ屁理屈ばっかの捻くれ者で相手してて面倒臭いのに、ホント何処が良いんだろう、あっでもそれ言ったら結衣さんもなんだけどね。」

 

 小町は口では兄の事を落としている様な物言いをして入るがその表情には、兄を思いやる優しさを感じさせる様な笑みをたたえている。

 そして彼女もまた八幡の様に他者の事をよく見ていた、なんだかんだと言いながらも小町はこの捻くれ者の兄の事を大切に思っている事には違いなく、その兄に幸せになって欲しいと心から願っているのだ。

 なのでそんな中、兄が高校二年生に進級し平塚教諭により奉仕部に強制的ではあるが入部し、他者との関わりを持ち始めた兄とその周りの変化に、それとはなしに気が付けたのだろう。

 そして殊、同性である由比ヶ浜の態度の変化、以前会った時とは彼女の兄に対する対応等がどこかが違う様に小町には思えた。

 

 「おい小町ちょっと待ってくれ、ヤンは兎も角としてだが、何で此処で由比ヶ浜の名前が出て来るんだ、意味が分からないんだが。」

 

 にも関わらず、当の本人たる兄八幡はこの様に述べるのだ。

 

 「あのさお兄ちゃん、それ本気で言ってんのかな、何か小町には分かってて誤魔化してるみたいに思えるんだけど、ほら何日か前お兄ちゃんに何かあったのって小町が聞いた事あったじゃん。」

 

 「お、おう…そうだったか?」

 

 「そだよ、小町がそう聞いたらさ、結衣さんが入学式の日の事故の事きちんと話してくれてさ、そんで謝ってくれてお礼も言ってくれたってお兄ちゃん言ったよね、あの時のお兄ちゃんの顔凄く嬉しそうだったよ。」

 

 あの日ヤンに感化され己の行動を顧み反省した由比ヶ浜から八幡は正式に謝罪とお礼の言葉を受け取り、そして彼女は八幡に対し友達になりたい、なってくれと言ってくれた、その事が八幡自身意識してはいなかったのかも知れないが、その嬉しさが顔に出ていたのだろう。

 『それでな、由比ヶ浜が俺と友だちになりたいってそう言ってくれたんだよ、まぁ、アイツはアイツなりにケジメって奴をつけたかったんじゃねぇの、知らんけど。』と八幡は小町に由比ヶ浜との経緯を語ったのだった

 

 「ハァ…もうこう言うところはホントに変わんないね、このゴミぃちゃんは、女の子がそこ迄言ったんだよ!もう本当に察しなよ。」

 

 「……………………。」

 

 中学時代のトラウマ故か八幡は事異性に対して警戒心が強く働くのだろう、それは言い方を変えるならば臆病になっていると断じてよいのかも知れない。

 実のところ八幡も最近の由比ヶ浜が自身に向ける屈託の無い気持に気が付きている部分も在りはするのだが、それ故に今はその想いに蓋をしているのだろう。

 

 「はぁ…まあ良いや、でもさお兄ちゃん今は良くても何れはきちんと答えを出さなきゃなんない時が来るだろうから、その時は覚悟を決めなよ……えぃ!」

 

 自身の心の内と向き合い、いずれは確りと答えを出す様に兄へ促すと、小町はこの話は取り敢えずこれで終わりだよ、とばかりに八幡の左腕に飛び付き己が腕を絡めて、上目遣いに兄の顔を見つめ悪戯っぽく『ニシシ』と笑うと。

 

 「たまには良いじゃん、こういうのもさ、ねっお兄ちゃん…駄目かな。」

 

 突然の妹のアクションに虚を突かれ驚いた八幡であったが、基本的に妹のお願いには弱いお兄ちゃん気質の八幡は、一言小町に文句を言おうかとは考えたのだが結局はため息を一つ吐いただけで「まぁたまにはな…。」と呟き、妹のスキンシップを受け入れ兄妹仲良く家路へと向う。

 

 「…どうでもいいが、何か歩き難いんだがな小町さん。」

 

 しかし幾らも歩かないうちに、自転車を押しながら歩くいている八幡にはこの体勢は歩き難く、その口からは早くもぼやきがこぼれ出てしまう。

 

 「もう、少しは頑張りなよ男の子でしょお兄ちゃんは。」

 

 「うわっ、出たよ必殺の男の子でしょ発言!男女平等とか同権とか言っておきながらも都合がいい時はこれなんだよなぁ…。」

 

 「あっお兄ちゃんほら見てあれ!あれって一番星だよね、あんまり明るくないけどさ。」

 

 兄のぼやきを黙殺し、話を変えるべく小町はさして関心を持っているでもない薄暮れの空の小さな星明りを指し示し、兄の気をそちらへと誘導しようと試みるのだが、そんな稚拙な誘導など当の八幡にはお見通しであった。

 しかし、此処で更に何事か八幡が述べようとも、小町がそれを取合う筈もないだろうと予測が付く為、八幡は最早何も語らず妹のやりたい様にやらせる事にし己もまた小町の指し示す空の一角に視線を向けた、諦めの溜息を一つ吐いて。

 どうせ我が家迄の道程はあとほんの僅かな距離なのだから、もういいやと。

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣は、サイゼリヤでの会合を終え二人で帰宅すべく夕焼けの紅から濃紺、そして黒に変わりゆく空の元雪ノ下が暮らすタワーマンションへと向い歩いている。

 

 「もうホントにさヒッキーってば何時っも何か一言多いんだから!」

 

 由比ヶ浜は先程、解散し皆と別れたサイゼリヤの前で八幡に言われた一言にお冠であった。

 

 『じゃあな由比ヶ浜、雪ノ下を送ったらお前も真っ直ぐ家に帰れよ、知らない人に着いて行っちゃ駄目だからな、あと雪ノ下も野良猫を見掛けても着いて行くなよ、ただでさえお前は方向音痴なんだからな。』

 

 等と八幡は由比ヶ浜と雪ノ下の二人をまるで小学生の小さな子供であるかのような物言いで以て、別れの挨拶としたのだった。

 当然ながら二人も八幡に対して反撃を繰り出したのだが、弁がたち更に負けず嫌いな気性の雪ノ下は兎も角ボキャブラリーの乏しい由比ヶ浜は大した反論も出来なかったのだが。

 

 「まっ、全く彼と来たら自分の家にはカマクラさんと云う愛らしい猫さんが居るからと言って、私に対してマウントを取ったつもりなのかしらね…本当に困った部員だわ。」

 

 由比ヶ浜が先の別れを思い出し軽く憤慨する様に、相槌をうつが八幡が猫を引き合いに出し彼女の方向音痴をディスるかの発言に、雪ノ下自身認めたくは無いのだが事実の一端を言い当てられてしまっていた為、彼に対する反撃は無理筋と言う物であった。

 『彼には分からないのね、町中で新たに出会う猫さん達との邂逅にまさる幸せなどこの世に存在しない…と言うのは言いすぎかしらね。』口には出さず雪ノ下は心の中でそう呟く。

 

 「…ねぇゆきのんリカちゃんってさ凄い可愛い娘だったよね、本当にヤン君の事が大好きなんだなって伝わって来ちゃったよ、それにヤン君もリカちゃんの事大切に思ってるんだろうね、注意とか叱り方も何か優しい感じだったしさ、何か良いよねあの二人ってさ、何かこう二人を見てるとポカポカした気持になっちゃうよ。」

 

 由比ヶ浜は先のサイゼリヤに於いて、ヤンがフレデリカに彼女の行いにを諭すヤンの言動に厳しさ以上に温かさを感じ取ったようであった。

 基本的にヤンは他者に対して声を荒げ恫喝したり暴力に訴える様な事は無い、宇宙暦の時代に於いても感情を昂ぶらせ人前で大きな声をあげた事はほとんど無かったし、また部下に暴力を振るう指揮官を更迭したりとその辺りは徹底していた。

 ヤンが感情を顕に、彼としては比較的大声で怒りを顕にしたのは、彼を知る宇宙暦の世界の人達とてイゼルローン要塞の攻略戦に於いて、降伏勧告を出したもののそれを受け入れず部下達を道連れに玉砕などと言う馬鹿な返答をしたゼークト提督に対した時くらいではなかっただろうか。

 もっともその事をこの西暦の世界に存在する雪ノ下や由比ヶ浜が知る由など無いのではあるが。

 

 「…え、ええそうね、彼女はまだ中学生なのにヤン君より余程しっかりしている様に見受けられたわね…。」

 

 由比ヶ浜にヤンとフレデリカの関係に付いて振られた雪ノ下は、その様に答えたのだが、由比ヶ浜はその雪ノ下の返答の仕方に常の彼女とは違う迷いの様な感情を感じ取り、心からの心配を寄せるのだが…。

 

 「あたしさ、二年生になってヒッキーと同じクラスになれたけどさ…事故のこともあってヒッキーに声を掛ける勇気が持てなくて…それで平塚先生に奉仕部の事教えてもらってさ、そこにゆきのんとヒッキーが居てさ…ゆきのんもヒッキーも凄い楽しそうで、あたしもゆきのんとヒッキーと一緒に楽しく過ごしたいなってそう思ってさ、それで奉仕部に入って三人で過ごす毎日が楽しくて、ヒッキーとゆきのんの事大好きになって…それからヤン君が奉仕部に来てもっと毎日が楽しくなって、ゆきのんが淹れてくれた紅茶を皆で飲んで、ゆきのんとヒッキーとヤン君が本を読んでてそれで、自分が読んだ本の話をしてあたしはゆきのんに勉強を教えてもらって、でもあたしはあんま本とか読まないから皆の話の中に入れなくて…そんでさあたしも入れる話を振って、ヒッキーがちょっと費捻くれた事言って、あたしが怒ってゆきのんが突っ込んでくれて、ヤン君が歴史の人の話とかお酒の話とかしてゆきのんがヤン君に呆れて………えと。」

 

 「…由比ヶ浜さん…。」

 

 雪ノ下には感じられた、由比ヶ浜がたどたどしくも懸命に真摯に自分の思いを伝えようとしている事が。

 だから雪ノ下もその彼女の言葉を真摯に受け止めようと、静かに耳を傾けている、その由比ヶ浜はスクールバッグのショルダーをギュッと右手で握りしめ、真に言うべき事、語るべき事を伝える決意を固め口を再び開いた。

 

 「……あたしね、ゆきのんの事大好きだよ、それからヤン君の事も、そしてヒッ…ヒッキーの事も!あたし奉仕部が大好き、でもねその中でもね…ゆきのんとヤン君に対する好きと、ヒッキーに対する好きはちょっと違うんだ。

 えっとね違ってたらごめんね、ゆきのん、ゆきのんはさ…ううんゆきのんもヒッキーとヤン君の事好きだよね!?」

 

 由比ヶ浜の自身の気持ちの告白と、彼女の雪ノ下のヤンと八幡への気持ちを問い、それを受けて雪ノ下は。

 

 「由比ヶ浜さん…私は…。」

 

 「ゆきのんってヒッキーとヤン君の二人と話している時ってすっごい楽しそうだなって、何か他の男子と話している時と全然違うなって思うんだ。」

 

 ヤン・ウェンリーと比企谷八幡、奉仕部の部員である自分と同じ年齢の同級生男子、確かに雪ノ下はその他の男性と比して二人に対して気安く接する事が出来ていると思わないでも無い。

 

 「ヒッキーとヤン君とはさ、きっと二人共ゆきのんと同じ位のレベルで話が出来てるしさ、ヒッキーの場合は変な事とかムカつく事言って、あたしたまにカチンと来るけど口じゃ勝て無いし、でもさ優しいところも沢山あるんだよね。」

 

 「そうね…理屈を捏ねさせる事に於いて彼の右に出る者は居ないかと思っていたけれど、ヤン君も案外比企谷君に負けていないのよね、しかも彼の場合は歴史上の人物や事象についての造詣が深いものだから、彼の論は比企谷君のそれよりも説得力があるわね。」

 

 「だよね、何かヤン君って色んな事を沢山知ってて、それを丁寧に教えてくれてさ何か同じ歳なのにお父さん、は違うかな、お兄さん?みたいな感じがするんだよね、だからさゆきのんがヤン君とヒッキーに惹かれるのも分かるなって思うんだ。」

 

 「なっ…何を言うの由比ヶ浜さん、私は決してそんな事は…。」

 

 由比ヶ浜の話を聞き終え雪ノ下だが、雪ノ下自身はおそらく未だ自分自身の気持に気が付いていないのかも知れない。

 反論しようと試みるもののそれもままならぬ様で、やがて軽く俯き考え込む雪ノ下、彼女の抱える迷い逡巡もまた解消されてはいない様で、由比ヶ浜は静かに彼女を見守る。

 

 そして待つことしばし…ついに意を決したのか、雪ノ下はその顔を上げ由比ヶ浜へと向き直りその口を開く。

 

 「私は、由比ヶ浜さん…貴女に話さなければならない事があるの…いいえそうでは無いわね、貴女と比企谷君に対して話さなければいけないの。」

 

 「うん、話してゆきのん!あたしちゃんと聞くからさ。」

 

 雪ノ下から語られるであろう話し、由比ヶ浜はそれがどんな話しであろうときっと確りと効いてくるだろう、雪ノ下にはそう確信出来る。

 

 「ありがとう由比ヶ浜さん、では月曜日に部室で。」

 

 「うん!」

 

 由比ヶ浜は雪ノ下の要望に笑顔で応えてくれた、その笑顔は同性の雪ノ下から見てもとても柔らかく可愛らしく見え、一瞬雪ノ下はその笑顔に見惚れてしまった。

 自分に向けられたなんの打算も、下心も無い心からの笑顔、思えば彼女は何時も自分にこの様な態度で接してくれていたのではなかったか。

 

 『ありがとう由比ヶ浜さん、私も貴女の事が好きよ、けれど今の私にはそれをはっきりと口に出す資格が無いの、だから私はきちんとけじめを付けて貴女にそれを言える様にならなければね、貴女の気持に応えられる様に、そして…。』

 

 そしてその時こそ自分は彼女の真の友人となれるのではないか、雪ノ下はそう思っているのではないだろうか。

 頑なだった自分の殻を初めて外側から破り、己のテリトリーへと入って来てくれた初めての同性の友人、彼女は変わった、否変わり始めた。

 

 初めて出会った今年の春先、他者の顔色を伺い周りに合わせて自分を出す事の出来なかった由比ヶ浜が奉仕部に関わり雪ノ下の毅然とした態度に憧れ、心中密かに想っていた男子である比企谷八幡とも漸く話をする事も出来た。

 

 それから暫く後総武高校へ転入し奉仕部の新たな部員となったヤン・ウェンリー。

 

 一年前の入学式の事件、その後の対応を誤った彼女は八幡に対して、謝罪の機会を伺っていたが彼女自身の勇気の無さと八幡の普段の態度からそれが上手く行かずにいた。

 そんな時にヤンが奉仕部へ入部し部活動にて共に時間を過ごし、しだいに彼の為人を知って行った。

 普段は静かに本を読んで過ごしているが、彼もまた八幡とは多少違うが中々の問題児の様で、平然と酒を飲みたいだのと口にするし、案外面倒臭がりだという事も分かって来た。

 しかし一端何事かを引き受けると、口ではぼやきながらもそれに対し真摯に向き合い、解決への糸口を提示する事が出来る。

 

 材木座のライトノベルの件がそうであった、その件を間近で見ていた彼女はそれによって、初めて己の行動を鑑みる事が出来た。

 部活に対しても、八幡に対しても自分は真剣に向き合えていなかったのだと。

 

 「あっ!ゆきのんほら見て、星が出てるよ。」

 

 由比ヶ浜が左手を上げて指し示す方向には、確かに微かに見える光点が確認出来た。

 頼り無く小さく薄い光、夜でも明るい都会では地方の様に満天の星空を見る事など望め無いが、それでも見える星はある。

 この頼りなく見える星の輝きも、或いは郊外で見ればそれなりに力強く光り輝いて見えるのではないかと、雪ノ下は何となくその様な事を思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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