目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第9話『黄金の鷲の回想』

僕はデビッド・イーグル。

 

今年15歳のアメリカ人だ。

 

僕は今年からアマチュアボクシングを始めたのだが、今年の18歳未満のアマチュアボクシング州大会で優勝を果たした。

 

どうやら大会にはアマチュアボクシング界で有名な選手がいた様なのだが、その選手にRSCで勝った事で僕は大会後にマスコミから取材を受けた。

 

そして後日、オリンピック委員会からアマチュアボクシングの強化指定選手に指名をされた。

 

それからの僕はオリンピック委員会から派遣されてきたスタッフと共に、日々のトレーニングに励んでいたのだが、そんな僕の元に一本の電話が掛かってきた。

 

電話の相手は…ミゲル・ゼール。

 

5人のボクシング世界チャンピオンを育て上げた彼は、アメリカのプロボクシング界では『名伯楽』と呼ばれ、ボクシングを始めたばかりの僕でも知っている様な有名人だ。

 

スタッフにゼール氏から電話が来たと聞いた僕は、彼の指導を受けられるのかと喜んだのだが、彼から聞いた言葉は想像とは違った。

 

『私のボクサーとスパーリングをしてみないかね?』

 

ゼール氏からこの言葉を聞いた次の瞬間、僕はスパーリングをすると答えていた。

 

一言も相談しなかった事でスタッフから小言を言われてしまったが、これは仕方ないだろう。

 

僕のスケジュールを組み直さなくてはならないのだから。

 

だが、後悔していない。

 

ゼール氏が『私のボクサー』と呼ぶ者に興味を持ってしまったのだから…。

 

 

 

 

ゼール氏のボクサーとのスパーリングが決まってから、スタッフは直ぐに動いて相手の情報を集めてくれた。

 

優秀なスタッフばかりでとても助かっている。

 

彼等に応える為にも、僕は次のオリンピックで金メダルを勝ち取る事を約束する。

 

だが、今はゼール氏のボクサーとのスパーリングが優先だ。

 

スタッフからゼール氏のボクサーの情報を聞いていく。

 

相手の名はブライアン・ホーク。

 

ニューヨークのスラム出身で、10歳から14歳までの4年、喧嘩で負けなし。

 

そしてゼール氏にボクシングに誘われてからの1年、数多くのボクサーとスパーリングをしてダウンはおろか、一発もクリーンヒットを貰っていないそうだ。

 

正直に言って信じ難い情報だった。

 

これを聞いた僕はますますホークに興味を惹かれた。

 

その日からスパーリングの日まで、オリンピックの事が完全に頭から抜けてしまった程にだ。

 

一度ホークのボクシングを見ておきたかったのだが、どうやらホークのスパーリングを記録した映像は手に入らなかった様だ。

 

残念だが仕方ない。

 

ならばリングの上で、ホークのボクシングを体験するまでだ。

 

僕はホークとのスパーリングの日にコンディションのピークを合わせるべく、スタッフと共に入念に調整をしていくのだった。

 

 

 

 

ホークとのスパーリング当日、ジムの前にはテレビクルーの姿があった。

 

どうやら今日のスパーリングを僕のドキュメントの1つとして撮影するらしい。

 

名伯楽にスカウトされたホークとのスパーリングは絵になると判断した様だ。

 

僕はテレビクルーとの打ち合わせやゼール氏への挨拶もそこそこに、ホークとのスパーリングに向けて入念なアップを始めた。

 

いったいホークはどんなボクシングをするのだろうか?

 

そんな事を考えながらアップをしていると、僕のアップを眺めていたゼール氏がどこかに行くのが目の端に映った。

 

彼の行方を目で追うと、そこには金髪の黒人男性の姿があった。

 

ゼール氏と親しく話しているところを見るに、彼がブライアン・ホークなのだろう。

 

驚いた顔をしたり不敵な笑みを浮かべたりと表情が豊かだ。

 

バンテージを巻き始めたホークを見て、彼もアップを始めるのだと思ったが違った。

 

なんと、彼は汗一つ流さずにリングに上がったのだ。

 

呆然とする僕を、彼はリングの上で待ち受けている。

 

「イーグル、彼は彼、君は君だ。君は十分にアップをしてからリングに上がればいい。」

 

スタッフに声を掛けられて気を取り直した僕はアップを再開する。

 

(過程は問わない。リングでの結果が全てだ…。)

 

そう思い直した僕は入念なアップを終えると、ホークが待ち受けるリングへと上がったのだった。




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