目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第22話『ホーク、異国の地へ』

世界タイトルマッチからおよそ2週間後、俺は飛行機に乗ってオリンピック開催国にやってきた。

 

デビッドの試合を見る為というのが表向きな理由なんだが、実はデビッドのドキュメントを撮影している連中からの依頼なんだよな。

 

プロボクシング史上最年少の世界チャンピオンになった俺がデビッドの応援に来る…っていうのは、ドキュメントとして映えるそうだ。

 

まぁ、ファーストクラスのチケットに加えて宿泊先も用意されたんじゃ仕方ねぇよな。

 

しかし…ミゲルはいつの間に俺のパスポートを用意してたんだ?

 

聞けばコネを使って用意させたって言ってたが、深く考えるだけ無駄だな。

 

さて、オリンピック開催国に来たらデビッドがわざわざ出迎えてくれたんだが、一緒にいたデビッドのスタッフは顔をしかめていた。

 

ミゲルが事情を聞いてみると、どうもアウェーの洗礼を受けているらしいな。

 

宿泊先のシャワーが使えないのは当たり前で、練習場に行くための足もまともに用意が出来ないそうだ。

 

まぁ、開催国以外の国はどこもそんな扱いらしい。

 

デビッドが『御世辞にも良い練習環境とは言えない。』と言っている辺りから、くそったれな練習環境だってのがわかるってもんだ。

 

「ブライアン、一つ頼みがあるんだがいいだろうか?」

「なんだ?」

「減量は順調なんだけど、調整はいまいちなんだ。世界タイトルマッチを終えたばかりですまないが、僕のスパーリングパートナーを引き受けてもらえないだろうか?」

 

…デビッドの表情を見るに、これはドキュメントの筋書きじゃなくて本当に困っているみてぇだな。

 

デビッドのスタッフが話を補足したんだが、なんでも予め用意していたスパーリングパートナーはアウェーの洗礼に耐えかねて帰国しちまったらしい。

 

「オーケー、引き受けてやるよ。」

「ありがとう、ブライアン。とても助かるよ。もちろん、いつも通りに報酬は払わせてもらう。」

「その報酬なんだが、今回はデビッドが金メダルを取るって事でどうだ?」

 

俺が不敵に笑いながらそう言ってやると、デビッドは爽やかな笑みを浮かべた。

 

「ありがとう。君の期待に必ず応えるよ。」

 

そう言って手を差し出してきたデビッドと、力強く握手をしたのだった。

 

 

 

 

時差ボケを抜くために1日休んでから練習場に行くと、そこには大勢の開催国の連中がいやがった。

 

見渡せば窓から俺達を覗き込んでいるのもいやがる。

 

「おいおい、今日はこの練習場を貸し切っていたんじゃなかったのか?」

「これで十分だよ。なにせ先日は練習出来るスペースすら無かったんだからね。」

 

デビッドのスタッフが言うには、各国からの苦情が相次いでこれでもマシになったんだとさ。

 

「スタッフが得た情報では、審判が買収されている可能性もあるらしいね。」

「端からわかってりゃ問題ねぇだろ。」

「そうだね、RSCで勝てばいいだけさ。うん、シンプルでいい。」

 

残念だったな。

 

この程度の逆境じゃあ、デビッドは崩れねぇよ。

 

「そんじゃ始めるとするか。リクエストはあるか?」

「いつも通りに華麗なディフェンスをお願いするよ。それが僕の中の挑みの血を、一番熱くさせてくれるからね。」

 

リングすら無い練習場だが、俺とデビッドは準備を終えると向かい合う。

 

開催国の連中の多くがビデオカメラを回し始めるが関係ねぇ。

 

よく見とけよ。

 

金メダリストになる男のボクシングをな。

 

こうして俺とのスパーリングで調整を終えたデビッドは、万全の状態でオリンピックの開会式を迎えたのだった。




次の投稿は13:00の予定です。

大人の事情で開催国名を明記していません。

また、拙作はフィクションです。

アウェーの洗礼はあくまで拙作世界内での事と御理解ください。

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