目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第31話『名トレーナーと黄金の鷲の出会い』

side:ホーク

 

 

デビッドのプロデビュー戦に続いてマイクのプロデビュー戦も観戦してから10日後、俺はジュニアミドル級で試合をする為にトレーニングと減量を始めた。

 

そんなある日の事、見事な髭をたくわえたじいさんが俺のトレーニングを見学していた。

 

「おい、ミゲル。あのじいさんは誰だ?」

「彼はダン…浜 団吉という日本人で、アメリカでボクシングのトレーナーをしている男だよ。」

「ハマ・ダンキチ?」

 

ミゲルに疑問の声を上げると、舌が回らずに独特なイントネーションの日本語になってしまった。

 

俺が難しい顔をしていると、ミゲルがお手本とばかりに日本語で浜 団吉の名を口にする。

 

「浜 団吉。」

「ハマ・ダンキチ。」

 

うへっ、やっぱり舌が回らねぇ。

 

まぁ、8年も英語だけで暮らしていたから仕方ねぇか。

 

「ふむ、ホークが興味あるのなら後で日本語を教えるかね?」

 

聞き取りは問題ねぇけど、話すと片言になっちまうから教えてもらった方がいいか?

 

いや、待てよ。

 

今生の俺はアメリカ人なんだ。

 

別に日本語を話せなくても問題ねぇだろ。

 

習うならスペイン語の方がよくねぇか?

 

…まぁ、どっちでもいいか。

 

「まぁ、暇な時にな。」

 

俺がそう答えると、ミゲルはニコリと微笑む。

 

なんで嬉しそうなんだ?

 

まぁ、いいか。

 

デビッドがスパーリングの準備をしてる事だし、俺も早いとこ準備をするかね。

 

 

 

 

side:浜 団吉

 

 

儂はブライアン・ホークのトレーニングを見学してため息が出そうになった。

 

あれ程の体躯でありながら、軽量級と遜色がない程に動きにキレがあるのだからな。

 

まるでその動きのキレは猫田を彷彿とさせるものだった。

 

それも鴨川との試合で壊れる前の猫田のだ。

 

奴の動きを捉える為に、若き日の儂は左を磨き抜き『飛燕』を編み出した。

 

この顎が今少し丈夫であったならば、奴ともっとしのぎを削り合えたのだが…。

 

そこまで考えて儂は首を横に振る。

 

この顎で勝つために、若き日の儂は空間を制するべく左を磨いたのだ。

 

そうでなければ儂は猫田と鴨川の好敵手となれなかっただろう。

 

そう思い己の気持ちを納得させた儂はリングに目を向ける。

 

うむ、ラッキーだ。

 

今日はアメリカの若き英雄デビッド・イーグルとのスパーリングの日だったか。

 

じっくりと勉強させて貰おう。

 

そしてブライアン・ホークとデビッド・イーグルのスパーリングを見ていくと、儂の心は『惜しい』という感情で占められていった。

 

何故なら儂の目にはブライアン・ホークが若き日の猫田の姿と被り、デビッド・イーグルが若き日の儂の姿と被ったからだ。

 

非常に優れた身体能力と野性でセオリーに縛られず自由に戦うホーク。

 

そんなホークに基本のパンチで立ち向かうイーグルの姿を見て、儂は拳を握り締めてしまう。

 

…惜しい。

 

何度も思ってしまう。

 

戦略や駆け引きは見事なものだ。

 

だが、それだけでは奴の様な種類のボクサーを追い詰めるには『手札』が足りん。

 

…なるほど。

 

まんまとミゲルに一杯食わされたわ。

 

儂がこうなる事を想定しておったな?

 

その証拠に儂が目を向けると、ミゲルは不敵に笑いおった。

 

ふんっ!今回は貴様の思惑に乗ってやるわ。

 

ミゲルに不敵な笑みを返すとリングに目を戻す。

 

そしてトレーニング終了後に、儂はデビッド・イーグルに話を持ち掛けたのだった。




次の投稿は11:00の予定です。

イーグルの梃入れは出来たけど…鷹村はどうしよう?

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