side:ホーク
浜 団吉ことダンがデビッドのトレーナーになった。
ダンはアメリカのボクシング界では有名なトレーナーらしく、デビッドは知っていたそうだ。
そんなダンからトレーナー契約の話を振られたデビッドは二つ返事で受け入れていた。
まぁ、それでデビッドのスタッフが苦笑いをしていたがな。
さて、ダンをトレーナーとして受け入れたデビッドなんだが、ダンの指導を受けて少し変わった事がある。
それは左のパンチのバリエーションが増えた事だ。
左ジャブのダブル、左ジャブからの左ショートフックといったコンビネーションパンチは以前から使っていたんだが、そのコンビネーションの繋ぎが独特になったんだよな。
ミゲル曰く『飛燕』というパンチらしい。
なんでも第二次世界大戦後の日本のリングで、ダンが使っていたパンチなんだとさ。
まだ完成したわけじゃねぇみたいだが、この『飛燕』ってやつは間違いなくデビッドの武器になるだろうな。
スパーリングでその『飛燕』を体験したんだから間違いねぇだろ。
でもよ、その『飛燕』を全部避けていったらダンのやつが…。
『ヌシを見ていると、かつての好敵手を思い出すわい。』
って、仏頂面で言ってきやがった。
誰の事を言ってんだろうな?
原作キャラか?
まぁ俺は原作の事は少ししか知らねぇし、考えても意味ねぇか。
さて、減量を続けるかね。
◆
side:イーグル
新しくトレーナー契約を結んだダンの指導で身に付けた『飛燕』に、僕は手応えを感じている。
これは間違いなく今後の僕の戦略の要となるパンチだ。
「ありがとう、ダン。貴方と契約を結んで本当によかった。」
「ふんっ、教え子が優秀過ぎると教えがいが無いわ。」
ダンが小さく息を吐きながらそう言うと、僕は思わず笑ってしまう。
「デビッド、ヌシが行こうとしておる道は苦難の道のりだと理解しておるか?」
不意に告げられたダンの言葉に僕は強く頷く。
その事は誰よりも僕が理解している。
だからこそ挑みがいがあるという事もだ。
「もちろんさ。それよりも、『飛燕』について何かアドバイスはあるかい?」
「後はフォームチェックをして熟せばよい。が、強いて言うならば通常のコンビネーションと使い分けるんじゃな。」
なるほど、確かにその方がより戦略が広がる。
流石は幾人も世界ランカーを育て上げた名トレーナーだ。
勉強になる。
「『飛燕』をものに出来たその時には、もう1つの武器を教えてやろう。」
「もう1つの武器?」
僕が疑問の声を上げると、ダンは不敵な笑みを浮かべる。
「さよう。リングの上に燕は二羽おる。もっとも、こいつはホークに対して使える様な場面はほとんど無かろう。じゃが、ヌシのボクシングの幅を広げる事は確約する。」
そう言ったダンは、ゼール氏と談笑するブライアンへと目を向けたのだった。
◆
side:浜 団吉
儂はミゲルと談笑するホークを見て鼻を鳴らす。
奴め…まだ未完成ではあったが、デビッドの『飛燕』を初見で全て避けおった。
ミゲルが気に入ったという逸材だけはある。
並みのボクサーではパンチを当てる事すら困難だろう。
そう思った儂は若き日の事を思い出す。
儂と猫田の持って産まれたものの違い…才能の差というものを痛感したあの時の事をだ。
「…ふんっ!」
確かにボクシングに限らず、スポーツの世界は残酷なまでに才能が物を言う世界だ。
だがボクシングにおいて強さとは反応や足の速さ、そしてパンチの強さといった身体能力だけではない。
戦略や駆け引きも間違いなくボクシングにおける強さなのだ。
儂とデビッドのボクシングがあやつらに通じるかは正直わからん。
だがいつの日か、必ず挑戦状を叩きつけてやろう。
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