side:ホーク
今日はジュニアミドル級で初めての試合の日だ。
相手は世界ランク2位。
ボクサータイプのボクサーで、総合的な評価は高いんだとさ。
さて今日の試合なんだが、ミゲルが言うには世界前哨戦だそうだ。
なんでもジュニアミドル級現世界チャンピオンと俺のタイトルマッチは、まだ発表していないだけで既に内定してるんだとさ。
でも、俺が負ければそこで終わりの話なんだけどな。
しかし…何度も思ったが、ミゲルはよくそうポンポンとマッチメイク出来るな。
まぁ、いいか。
さっさと試合を終わらせてステーキハウスに行くとしよう。
◆
side:ホーク
ジュニアミドル級に階級を上げて初めての試合だが、ウェルター級の防衛戦の時よりも身体が軽く感じる。
いつもの感覚で踏み込むと半歩ぐらい大きく踏み込んじまったり、相手のパンチの引き際に合わせて踏み込もうとしたらまだ相手のパンチが打ち終わってなかったりして、色々とズレちまっている。
減量が楽になった影響か?
感覚のズレに少し戸惑ってたら1ラウンド目が終わっちまったぜ。
「ホーク、何か問題があったのかね?」
「ちと身体が軽すぎてな。感覚のズレに慣れるのに手間取っちまった。」
俺がそう言うとミゲルが頷く。
「ホーク、慌てる必要は無い。ゆっくり感覚の変化に慣れなさい。」
「もう問題ねぇよ。次のラウンドで終わらせてくる。」
俺はそう言うと椅子から立ち上がる。
「では、私は帰る準備をしておくよ。」
「おう!」
◆
side:ミゲル
感覚のズレ…か。
ホークはその理由を減量に見出だしている様だが、私の目には数年に渡るトレーニングによる成長が原因だと映っているのだがね。
ホーク、知っているかね?
これでも最近はマッチメイクをするのに一苦労しているのだよ?
君との戦いを避ける相手は多いが、それと同じぐらい君との戦いを希望する相手も多い。
だがそんな者達の中から、君に相応しい相手を見つけるのは非常に困難なのだ。
トレーナーとしてはとても誇らしい事だけどね。
さてダニー、帰る準備をしてくれ。
そう時間は掛からずに試合が終わるからね。
◆
side:イーグル
「デビッド、ホークはあれほどに速かったのか?」
「ノー。僕が知っているブライアンよりも、間違いなく速くなっている。」
ジュニアミドル級に階級を上げたブライアンの試合をダンや婚約者と一緒に見ている僕だが、リングでのブライアンの動きを見て驚いていた。
ダンに答えた通りに、ブライアンはウェルター級の時よりも速くなっている。
あの速さは軽量級の世界レベルと同等…いや、それ以上かもしれない。
「すごい…ジュニアミドル級の選手で、あんなに速く動ける選手は見たこと無いわ。」
婚約者の驚きも無理は無い。
ブライアンの速さはボクシングファンの常識を覆す程のものなのだから。
「デビッド、あれを見てもヌシの心は変わらんかね?」
僕はダンの目を見て強く頷く。
「もちろんさ。僕はブライアンのライバルなのだから。」
「クックックッ、その意気やよし。」
ダンと僕はリングの上で勝ち名乗りを受けているブライアンに目を向ける。
「当代最高峰のボクサーの一人に挑むか…楽しめそうじゃな。」
そう呟いたダンは席を立って歩き出す。
僕は婚約者と顔を見合わせて肩を竦めると、ブライアンに惜しみない拍手を送る。
そして2ヶ月後、ブライアンはジュニアミドル級の世界タイトルマッチを1ラウンドKOで制し、2階級制覇を成し遂げたのだった。
次の投稿は15:00の予定です。