目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第3話『勝利報酬は10ドル』

俺がブライアン・ホークとして転生してから1年が経った。

 

今のところ五体満足にスラムで生き抜いている。

 

この1年で俺はスラムではちょっとした有名人になった。

 

『10ドル(テンダラー)ホーク』

 

こんなニックネームで呼ばれる様になったんだ。

 

そう呼ばれる様になったのは、俺が喧嘩で勝った際に相手から10ドルだけを頂戴するからなんだよな。

 

普通は有り金全部を貰うらしいが、それは俺の思惑に合わないのでやってない。

 

思惑ってなんだって?

 

簡単な事だ。

 

喧嘩で勝つしか金を得る手段が無いからだ。

 

まず俺の年齢なんだが、今は11歳。

 

そして両親はいなくて、金を払えないから学校にも行っていない。

 

これで誰が雇うと思う?

 

売り上げを盗まれる事を危惧して誰も雇っちゃくれねぇよ!

 

まぁ、自由業の方がそれとなくスラムの連中に仕事を斡旋してくれようとしているのを見たことがあるけど、俺は全力で避けたね。

 

だって、ムキムキマッチョな国家公務員がピストル片手に自由業の方を追い掛けるのを見ちまったからな。

 

他にも肌の色が原因で雇って貰えないなんて問題も時にはある。

 

スラムの連中が言うには、この問題は一昔前に比べてマシになったそうな。

 

それでもまともに仕事を貰えない以上、俺が金を稼ぐ手段は喧嘩しかないわけだ。

 

そこで俺は『俺が勝ったら10ドル貰う』って俺ルールを作って喧嘩をする様になったわけだ。

 

生かさず殺さず…っていったら言葉は悪いが、ある程度安定した収入にするにはこれが一番だって思ったんだ。

 

最初の3ヶ月は俺の方からワルガキ達に喧嘩を売っていた。

 

それで一度も負けずにいると、今度は腕自慢のワルガキの方から俺に喧嘩を売ってくる様になった。

 

鉄パイプ、ナイフなんて道具は可愛いもんで、時にはピストルを持ち出してくる奴もいた。

 

それでも…俺は喧嘩に一度も負けなかった。

 

そして少し前から『10ドルホーク』って呼ばれる様になったのさ。

 

さて、そろそろ行くか。

 

今日もしっかりと稼がないとな。

 

 

 

 

スラムにあるちょっとした広場に足を運ぶと、そこで俺を見付けた少年が白い歯を見せて微笑む。

 

「ヘイ、ホーク。挑戦者が待ってるぜ。」

 

親指で相手を示すこの少年の名前はダニー。

 

俺の初めての喧嘩相手だった三人の内の一人だ。

 

あれから数回喧嘩してからは、こうして普通に話す仲になっている。

 

俺は今日の最初の相手に目を向ける。

 

入念に準備運動をしているところを見るに、相手は何らかの経験者ってとこか?

 

俺の疑問を察したのか、ダニーがそれとなく耳打ちをしてくる。

 

「なんでも、ハイスクールでレスリングの州3位になったって話だぜ。」

 

つまり今日の最初の相手は高校生ってことか。

 

俺はまだ11歳だぜ?

 

小学生相手に高校生が出張ってくるとかどうなのよ?

 

まぁ、ここはスラムだ。

 

年齢制限だの体重制限だのといった細かいルールは無い。

 

あるのはただ一つ。

 

オールオアナッシングだけだ。

 

たっぷりと汗をかいた対戦相手が俺の前にやって来る。

 

「ボーイ、今日で無敗の看板は下ろしてもらうぜ。」

 

身長差もあって相手は俺を見下ろしてくる。

 

ハッ、上等だぜ!

 

「ちゃんと10ドルは持ってきたのかい、ブラザー?」

 

俺が問うと、相手はズボンの尻ポケットからクシャクシャの10ドル札を取り出した。

 

「オーライ、それじゃ始めようぜ。」

 

俺と相手が適当に離れて向き合うと、ギャラリーが俺達を中心に輪になる。

 

ふと見渡すと、輪の外では俺達の喧嘩で賭けが始まっている。

 

ワルガキ達が生み出す喧騒に、俺は自然と笑ってしまう。

 

それが癪に触ったのか、俺の喧嘩相手から舌打ちが聞こえた。

 

オーライ、待たせちまったな。

 

さぁ、始めようぜ!

 

こうして俺のスラムでの日々は過ぎていく。

 

この日の稼ぎは100ドル。

 

俺は10人と喧嘩して、一度も負けなかったのだった。




本日は4話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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