目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第47話『ホーク、伊達を激励する』

side:ホーク

 

 

ノンタイトルマッチを1戦こなしてから1ヵ月、俺は再び日本にやって来た。

 

目的は鷹村の世界ランク1位の奴との試合を見るためだ。

 

減量中じゃなけりゃステーキを食うのが主な目的だったんだけどな。

 

「ブライアン!」

 

今回も真理が空港まで出迎えに来てくれたか。

 

「よう、真理。」

 

俺は真理に手を差し出して握手をする。

 

俺に続いてミゲルも握手だ。

 

アメリカだったら頬にキスをする場面なんだが、生憎とここは日本だ。

 

ちっとは自重しなきゃな。

 

「ところで真理、藤井はどうした?」

「もう試合会場に詰めてるわ。」

「仕事熱心なこった。」

 

用意されていた車に乗り込むと、真理の運転で試合会場に向かう。

 

「来年にはアメリカに来るんだろ?」

「えぇ、もちろん行くわ。ミゲル、その時は頼むわね。」

「既に月刊ワールドボクシングファンの編集部には連絡してあるから安心しなさい。」

 

流石はミゲル。

 

仕事が早いぜ。

 

こんな感じで適当に雑談をしていると試合会場近くの駐車場に着く。

 

そして試合会場に入ると、俺達は伊達の控え室に向かった。

 

伊達の控え室前にいるスタッフに声を掛けると、慌てた様子で控え室に入っていく。

 

そして少し経つと、既にガウンを着て着替えを終えていた伊達…もとい英二が出迎えにきた。

 

「『よう、ブライアン。歓迎するぜ。中に入ってくれ。』」

 

英二に促されて控え室に入る。

 

すると、英二が所属する仲代ボクシングジムの会長がミゲルと握手をする。

 

そして二人は何やら話を始めた。

 

「『ははっ、オヤッサンも気がはえぇな。』」

 

仲代ボクシングジムの会長とミゲルが主に話しているのは、英二のスパーリングパートナーについてだ。

 

英二の目標はリカルド・マルチネスへのリベンジなんだが、そのリカルドとの試合に向けて入念な準備をするには日本のボクサーでは不足だと考えているらしい。

 

そこで前回の俺達の来日で縁を得た仲代ボクシングジムの会長は、ミゲルにスパーリングパートナーの紹介を頼んだんだ。

 

ミゲル曰く『伊達はスポンサーのバックアップが豊富だからね。スパーリングパートナーを探すのにそれほど苦労はしなかったよ。』との事だ。

 

ミゲルが英二はと言ったのには訳がある。

 

バンダム級を始めとした軽量級には、これまで多くの日本人ボクサーが世界チャンピオンになった実績がある。

 

だからフェザー級の英二にもスポンサーが付きやすい。

 

じゃあ、俺と戦う予定の鷹村はどうなのかというと、鴨川ジムを実際に見た事がある真理が言うには『芳しくない』そうだ。

 

過去の日本人ボクサーが重量級で世界チャンピオンになったのは1人だけ。

 

それもジュニアミドル級でだ。

 

鷹村の本来の階級はミドル級…つまり、日本人ボクサーにとっては未知の領域だ。

 

スポンサーが及び腰になっても仕方ねぇだろうな。

 

「『なぁ、ブライアン。また俺とスパーリングをやっちゃくれねぇか?お前とのスパーリング、俺は確かに成長した手応えを掴んだんだよ。』」

 

顔は笑っちゃいるが、英二の目は真剣そのものだ。

 

「『アメリカまで来て金を払ってくれるんなら、いつでも受けてやるぜ。』」

「『金?いくらだ?』」

「『30ドルだ。』」

「『30ドル…おい、オヤッサン!』」

 

仲代ボクシングジムの会長と英二が真剣に話始めると、ミゲルがこっちに戻ってきた。

 

「彼等は本気でアメリカでの合宿を考えているようだね。」

「その前に日本タイトルがあるじゃねぇか。」

 

俺がそう言うとミゲルが笑った。

 

「そうだね。本来なら目の前の試合、それも国内とはいえタイトルマッチを前にする話じゃない。だが、あのリカルド・マルチネスに本気で勝とうというのだから、このぐらいの自信は必要だろうね。」

 

その後しばらくして、英二が本格的にアップを始める時間になったので控え室を後にしようとする。

 

すると…。

 

「『ブライアン、お前には色々と世話になっていて悪いとは思うんだが、鷹村の応援をさせてもらうぜ。俺も日本人だからよ。』」

 

英二の言葉に俺はあえて笑みを浮かべる。

 

そして…。

 

「『構わねぇさ。でも、賭けるなら俺にしとけ。そうすりゃ、嫁さんにいいもんを買ってやれるからよ。』」

 

そう言って背を向けると、英二は大笑いをしながら俺達を見送ったのだった。




次の投稿は13:00の予定です。

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