目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です。


第49話『ホーク、世界前哨戦に向けて日本で調整する』

side:ホーク

 

 

英二の日本タイトル挑戦と鷹村の世界タイトル前哨戦を見た俺はアメリカに帰国せずに、そのまま日本に残って1ヵ月後の世界タイトル前哨戦に向けて調整をしていくとミゲルに告げられた。

 

その際に世話になる日本のジムは仲代ボクシングジムだ。

 

どうもこの事はミゲルと仲代会長が、英二の日本タイトル挑戦の日に話し合っていたらしい。

 

それで翌日、日本フェザー級チャンピオンに返り咲いた英二がジムに顔を出したんだが、俺やミゲルにダニーといった見知った顔を見ると驚いていた。

 

あ~、知らなかったんだな。

 

仲代ボクシングジムの会長が説明すると英二はニッと歯を見せて笑いながらリングに向かうが、仲代ボクシングジムの会長に慌てて止められていた。

 

「なんだよ、オヤッサン。ダメージはねぇから大丈夫だよ。」

「英二、ダメージは無くても疲労はしっかり抜け。」

 

英二はそう言われて1週間は俺とのスパーリングを禁止された。

 

思いっきり不満そうな顔をしてたな。

 

さて、そんなわけで仲代ボクシングジムで調整を始めたんだが、いつものアメリカからついてくるドキュメント撮影スタッフだけじゃなく、なんかやたらと日本人でビデオカメラを持った奴の姿が多いんだよな。

 

「アウェーの洗礼といったところだね。先日の試合で鷹村が左だけでKO勝利したのも影響しているのだろう。」

 

ミゲルがそう言うと納得がいった。

 

現在の日本のボクシング界には一人も世界チャンピオンがいない。

 

そんな時に鷹村が期待を匂わせる勝ち方をすれば、ここぞとばかりに日本のボクシング関係者が援護に出ても仕方ねぇか。

 

仲代ボクシングジムのスタッフが、外にいる連中がジムに入ってこようとしているのを止めようとしているんだが、連中は聞く耳を持たずにジムに入ってこようとしている。

 

「ちっ、ちょっと行ってくるぜ。」

 

そう言ってコメカミに青筋を立てた英二が、ジムに入ってこようとしている連中の所に行った。

 

なんで英二が俺達よりも苛ついているんだ?

 

「ホーク、我々はどうしても此処で調整をしなければいけないわけではないんだよ。もし嫌ならば別のジムに移ったり、アメリカに戻って調整をしてもいい。伊達はその事をわかっているから、彼等の所に行ったのさ。折角の君とのスパーリングの機会を失わないためにね。」

 

なるほどな。

 

その後、英二が外にいた連中を追い払うと、アウェーとは思えない良い環境で調整を進めていけたのだった。

 

 

 

 

side:鴨川

 

 

「小僧、出掛けるぞ。ついてこい。」

 

儂がそう告げると、小僧は首を傾げおった。

 

「会長、どこに出掛けるんですか?」

「仲代ボクシングジムじゃ。今そこでブライアン・ホークが調整をしておると、仲代のから連絡があった。」

「ブライアン・ホークがですか!?」

 

小僧が大声で反応しおったから、ジムの皆がこっちに振り向きおった。

 

鷹村は1週間前の試合の疲労を抜く為に休ませているのでジムにはおらんが、ジムにいる誰もが儂についていきたいと目で訴えておる。

 

「会長、私達も連れて行ってもらえませんか?」

「宮田か。少しぐらいなら増えても構わんじゃろう。」

「か、会長!俺も連れて行ってください!」

「俺も!お願いします!」

 

青木と木村も声を上げおったが、ちと遅かったな。

 

「ダメじゃ。貴様らは残って練習しとれ。」

「「そ、そんなぁ~!」」

 

出来ればあやつらにも世界レベルを体験させてやりたいが、今回は見送りじゃ。

 

「では行くぞ。」

 

小僧と宮田親子を連れて先方のジムへと向かう。

 

そして先方のジムに着くと、そこにはブライアン・ホークとスパーリングをする伊達の姿があった。

 

「鴨川会長、すみませんが先に始めさせてもらってます。」

「構わんよ。儂達は招待された立場じゃからのう。」

 

ふと、リングサイドに懐かしい男の姿を見つける。

 

向こうも儂に気付いたらしい。

 

儂は宮田に二人を任せると、奴の元に歩いていった。

 

「久しいな、ミゲル・ゼール。」

「あぁ、久しぶりだね、鴨川。」

 

儂もミゲルもリングの上でスパーリングをする伊達とブライアン・ホークを見ながら会話をしていく。

 

むぅ…ハイレベルなボクシングだ。

 

「今日は鷹村の為に偵察に来たのかな?」

「それで読み切れる程、ブライアン・ホークは浅いボクサーではなかろう?」

「ふっ、その通りだ。」

 

会話をしながらもリングの上の二人の動きを目で追っていく。

 

伊達が何度も仕掛けようとするが、その度にブライアン・ホークは速い出入りで逆に伊達を揺さぶっていく。

 

読みか?勘か?

 

いずれにしても、手強い男じゃわい。

 

儂はチラリと小僧達の方に目を向ける。

 

宮田親子はリング上の駆け引きについて会話をしておるが、小僧はただ見惚れておるだけじゃ。

 

まぁ、まだボクシングを始めて1年経っておらん小僧では無理もないか。

 

「今日は世話になるわい。」

「今日だけでいいのかな?よければ鷹村にスパーリングパートナーを紹介するが?」

「ありがたい申し出じゃが、うちのジムはまだそれほどに余裕がなくてな。」

 

1週間前、鷹村が素人目にも強い勝ち方をしたおかげで、うちのジムにも大口のスポンサーから声がかかる様になった。

 

おかげで資金繰りはだいぶ楽になったが、鷹村のマッチメイクに回す事を考えればまだまだ足りぬわい。

 

ブライアン・ホークとの試合結果次第では海外からスパーリングパートナーを呼ぶ余裕も出来るじゃろうが、逆に以前の様にマッチメイクにも苦労する状態に戻ってしまう事もあるじゃろう。

 

じゃが、鷹村はまだ若い。

 

たとえ挑戦に失敗してもやり直す時間は十分にあるわい。

 

…いかんな。

 

儂がこんな考えでは勝てる試合も勝てん様になる。

 

手形が付く程に思いっきり己の頬を張ると、小僧が慌てて儂の所にきおったわ。

 

「か、会長!どうしたんですか!?」

「何でもないわい。それよりも、ちゃんと見学をせんか!」

 

杖で小僧の頭を軽く小突く。

 

宮田親子を見てみろ。

 

あやつらは我関せずとリングの上に目を向けておる。

 

そしてリングの上の二人も、互いに駆け引きを楽しんでおるわい。

 

しばらく見学を続けると、伊達とブライアン・ホークのスパーリングが終わる。

 

そしてブライアン・ホークが一息入れている間に、小僧達にアップを指示したのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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