目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第57話『ジュニアミドル級世界タイトルマッチ前夜』

side:飯村 真理

 

 

共同記者会見が終わると私はブライアン達に同行して、彼等が滞在する一流ホテルに向かった。

 

ブライアンの発言に怒っていた藤井先輩も一緒に。

 

いつも通りにお酒目当て…だけとは思えないわね。

 

何が目的かしら?

 

ホテルのレストランに入った私達はそれぞれボーイに注文をしていく。

 

ブライアンが日本ではあまり見ないチップを払うと、ボーイは笑顔で離れていったわ。

 

そのタイミングを見計らっていたように、藤井先輩がブライアンに話し掛けた。

 

「ブライアン、一つ聞いてもいいか?」

「あぁ、構わねぇぜ。」

 

そう言いながらブライアンは水を口に含む。

 

藤井先輩は煙草をくわえたわ。

 

それを見て思い出す。

 

お酒も煙草もやらないのはプロスポーツ選手として当たり前…と学生時代の私は思っていたけど、実際にはそうではなかった。

 

たとえば角界ではタニマチとの付き合いで大酒を飲む力士は当たり前にいるし、焼肉屋で喫煙と飲酒をする野球選手の姿を見掛けた事もある。

 

そういったものを知ってしまった今、共同記者会見の時にとある記者が語った様に、スポーツが崇高なものとはとても思えないわ。

 

プロスポーツ選手だって人間。

 

様々な重圧の中で生きていくには、お酒や煙草といったストレス解消は必要なのでしょうね。

 

でもブライアンはお酒も煙草も興味無いみたい。

 

スラム時代から一度も手を出していないらしいわ。

 

手を出していても不思議ではないのだけど、そういったところは真面目なのよね。

 

真面目といえば女性との交際経験も無いってダニーから聞いたわ。

 

嬉しい反面、油断していると横から誰とも知らない女に奪われかねない。

 

十分に注意しておかないとね。

 

「聞きたいのはその…アメリカと日本では、ボクシングと他のスポーツの競技人口の比率がかなり違うだろう?やっぱり、金が関係していると考えているのか?」

 

ブライアンは少し考えるそぶりを見せてから話し出した。

 

「日本にそれなりの時間いるけどよ、ボクシング関係の何かがテレビで流れてるのを見たことがねぇ。メディアが使わねぇって事は金にならねぇからだろう?そしてメディアが使わなきゃ、ボクシングに興味を持ってねぇ奴等の興味をひくチャンスも減っちまう。そうじゃねぇか?」

 

そう言われて藤井先輩は不満気な顔をする。

 

「選手達が見た人を感動させる様な試合を、そして俺達記者が読者の心に訴える記事を書けば…。」

「見て貰えたらな。でもよ、興味がねぇ奴等にどうやって見て貰うんだ?」

 

結局はそこに行き着いてしまう。

 

興味を持って貰うには、やはりメディアの力を使うのが一番だと思うわ。

 

だけどメディアだって慈善事業ではない。

 

どうしてもビジネスが関わってくる。

 

当然の事ね。

 

でも日本人はそういった話を嫌う人が多いのよね。

 

何故かしら?

 

「まぁ、客を呼べる奴が出てくれば話は変わるんだろうけどな。」

 

ブライアンの言う通りに1人のスーパースターの登場で、業界が一新する現象が起こる事があるわ。

 

たとえばアメリカのバスケットボール界にあの背番号23が現れた時の様にね。

 

今の日本のボクシング界でスーパースターになれそうなのは…伊達さんかしら?

 

鴨川ジムの宮田くんも候補かもしれないわね。

 

幕ノ内くんは…彼のボクシングは日本人受けするでしょうけど、スーパースターって柄じゃないわね。

 

「客を呼べるか…鷹村はどうだ?」

「それはそっちの方がわかるんじゃねぇか?」

 

鷹村選手の情報を思い出す。

 

日本でも有数の建設業社である鷹村建設の子として産まれ、学生時代には不良になった。

 

そしてその不良時代に鴨川会長と出会い、ボクシングの世界へ。

 

選手としてデビューしてからは全ての試合をKO勝利…ブライアンと似てるわね。

 

でも、二人には全く違う所があるわ。

 

一方は裕福な家庭に産まれながら不良に。

 

そしてもう一方は食べる為に喧嘩をするしかなかった。

 

一見同じ様な更正、成り上がりに見えても、二人の境遇はまるで違う。

 

贔屓は否定しないけど、ブライアンに勝ってほしいと思うわ。

 

「はぁ…タイトルマッチ前日だってのにすまなかった。」

「気にすんな。」

 

鷹村選手とブライアンの違う所がもう1つあったわ。

 

それは人当たりの良さ。

 

ブライアンはファンサービスは笑顔でやるし、メディアへの対応もしっかりやるけれど、鷹村選手はそういった事に気を使っていた様には見えなかったわ。

 

日本人にはボクサーは孤高ってイメージがあるのかもしれないけど、そういった事も日本であまりボクシングが流行していない理由の1つかもしれないわね。

 

「さぁ、話はここまでにして食おうぜ。飯が出来たみたいだからな。」

 

その後、和やかな雰囲気で食事を終えると、タクシーに乗って家路についた。

 

明日がタイトルマッチでなければ、ブライアンの部屋に泊まってもよかったのだけどね。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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