目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第58話『黒金の鷹vs日本の鷹』

side:ホーク

 

 

セミファイナルである英二の日本タイトル防衛戦が始まった。

 

この様子だと直ぐに終わるな。

 

アップを終えた俺はガウンを羽織る。

 

すると、係員が呼びにきた。

 

「では、行こうか。」

 

ミゲルが先導して花道の前に着く。

 

ちょうどその時、大きな歓声が響いてきた。

 

「どうやら英二が勝ったみたいだね。」

「頼んだぜ、ホーク。ブックメーカーでお前の勝ちに全財産突っ込んだんだからな。俺がガールフレンドとマイホームに住めるかはお前に掛かってるんだぜ。」

 

ダニーには大学時代から付き合っている彼女がいるんだが、その彼女とは既に婚約していて、帰国したら式を挙げる予定になっていた。

 

そんな大事な時に全財産賭けるなんて、ダニーはギャンブラーだな。

 

「オーライ、ダニー。だけどよ、そんな賭けばかりして彼女に愛想を尽かされるなよ。」

「ハッハッハッ!勝つってわかってる賭けは賭けじゃねぇよ。」

 

そこまで信頼されちゃあ応えねぇとな。

 

「『ホーク選手、スタンバイお願いします。』」

 

係員の言葉に続いて俺の入場曲が流れ始めた。

 

さて、行くか。

 

 

 

 

side:鷹村

 

 

漸くこの時がきたぜ。

 

レフェリー、御託はいいからさっさと始めやがれ!

 

ゴングが鳴るとガードを上げてオーソドックスに構える。

 

こいつとの試合が決まってからのジジイの説教は、どこかいつもと違ってた。

 

うちのジムからは一人も世界チャンピオンが出てねぇからな。

 

ジジイに自信が無くても仕方ねぇ。

 

なら、俺様が証明してやる。

 

ジジイのボクシングは世界に通用するってな!

 

そして…こいつに俺様の名前を刻み込んでやる!

 

先ずは耳にタコが出来るぐらい言われた左だ!

 

左、左、左!

 

スウェーやダッキングで器用に避けやがる。

 

しかも俺様に対してノーガードでだ。

 

ちっ!

 

左から右に繋ぐワンツーを打つと、あいつが後ろに一歩下がる。

 

踏み込んで追い、左、右と打って誘導する。

 

そして…コーナーに追い込んだ。

 

もう逃げ場はねぇぜ!

 

右ストレートを振り抜く。

 

俺様の右がコーナーに突き刺さ…!?

 

なんだ!?

 

一瞬膝が抜けたのを踏ん張り、左フックを打つ。

 

!?

 

また天井の照明が見えやがる!

 

何をくらってんのかわからねぇ!

 

くそったれが!

 

歯を食い縛りパンチを打ち続けるが、俺様のパンチは一発も当たらねぇ。

 

だが、反撃してくるあの野郎のパンチは確実に俺様を捉えていった。

 

「落ち着けぇ、鷹村ぁ!」

 

ジジイの声が聞こえた俺様は、落ち着く為にガードを固める。

 

だがガードの上でもお構い無しに、あの野郎は殴り続けてきやがる。

 

調子に乗んな!

 

右フックを打つと、俺様は尻餅をついていた。

 

…なんだ?

 

なんで俺様は尻餅をついてんだ?

 

「鷹村ぁ!」

 

ジジイの声に反応して立ち上がる。

 

ファイティングポーズを取ると、レフェリーがやれるか聞いてきやがった。

 

当然だろ!

 

止めるんじゃねぇぞ!

 

試合が再開すると、あの野郎はノーガードで歩いて近付いてきやがる。

 

その姿が俺様の神経を逆撫でする。

 

…舐めやがって!

 

「落ち着けぇ!ダメージが抜けるまでガードに撤するんじゃ!」

 

…ちっ!

 

ジジイの指示でガードを固める。

 

あの野郎はまたガードの上からでも構わずに殴ってくる。

 

たまに打ってくるボディーがうざってぇ。

 

こんなのでダウンする程、俺様の腹筋は柔じゃねぇ!

 

「鷹村くん!残り一分!」

 

八木ちゃんの声が聞こえた。

 

爪先に体重をかけてダメージが抜けたのを確認すると反撃に出る。

 

ジャブ、ストレート、フック、アッパーの全てを打つが悉く避けられる。

 

それが癪に触り、次第に大振りになってしまう。

 

そこを狙われ、カウンターでボディーを殴られた。

 

一瞬息が詰まって動きが止まったところを横から殴られる。

 

膝が震えた。

 

ロープに飛んでしがみつき、ダウンを拒否する。

 

すると1ラウンド終了のゴングが鳴った。

 

あの野郎は目の前まで来ていたのにあっさりと手を止めて、悠々とコーナーに戻っていく。

 

その後ろ姿がまた癪に触り、俺様は拳を握り締めた。

 

 

 

 

side:ミゲル

 

 

「どうかね、鷹村は?」

「いいもんを持ってるな。でもオーソドックススタイルがなんか馴染んでねぇ感じがする。それと思った以上にタフだ。鷹村をKOするには少し時間が掛かりそうだぜ。」

 

私もホークと同じ印象を持った。

 

鷹村は世界でもトップクラスのパンチを持っているが、それ以上に驚異的な打たれ強さを持っていた。

 

生まれ持ったものか、あるいは彼の怒りの心故か。

 

どちらにしても、今のままならホークの敵ではない。

 

今のラウンドだけで、彼は何発もボディーブローを受けた。

 

ホークは鷹村の驚異的な打たれ強さを考えて、冷静にスタミナを奪う作戦に切り替えたのだ。

 

あれほどの姿になる減量をして、どれだけのスタミナがあるのか理解しているのかな?

 

鴨川は気付いていないだろう。

 

おそらくは3ラウンドでスタミナが切れるだろう。

 

4ラウンドは持つまい。

 

鷹村。

 

君は敗北を知るだろう。

 

だが、それは決して無駄にはならない。

 

何故なら君は世界最強のボクサーとの戦いを経験出来るからだ。

 

それは間違いなく君の成長の糧となるだろう。

 

ただし…君の心が折れなければの話だ。

 

鴨川、君が判断を間違えない事を祈っているよ。

 

鷹村が壊れる前に試合を止める判断を間違えない事をね。




本日は4話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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