目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第62話『釣り船幕ノ内』

side:一歩

 

 

鷹村さんの世界挑戦の日から1週間が過ぎた今日は、宮田くんが僕の家に初めて働きに来る日だ。

 

いつもよりも早く起きると母さんに笑われてしまった。

 

ご飯を食べて外で待っていると、そわそわしてシャドーをしてしまう。

 

「来たぜ、幕ノ内。」

 

勢いよく振り返ると、そこには宮田くんがいた。

 

「おはよう、宮田くん!」

「あぁ。」

「長靴とか準備してあるからこっちで着替えて!」

 

宮田くんが着替え終わる頃になると母さんもやって来る。

 

「宮田 一郎君ね?初めまして、一歩の母です。」

「…どうも。」

「お客さんもほとんど常連の人ばかりだから、あまり固くならなくてもいいわよ。従業員も私と一歩の身内だけだし、少しずつ慣れていってね。」

「はい、よろしくお願いします。」

 

宮田くんが頭を下げると、母さんはニコニコと笑っている。

 

やっぱり宮田くんがカッコいいからかなぁ?

 

「それじゃ一歩、一郎君に仕事を教えてあげてね。」

「うん!任せてよ!」

 

大きな声で返事をすると、母さんは船の準備に向かったのだった。

 

 

 

 

side:宮田

 

 

「それじゃ、先ずはクーラーボックスを船に運び込むよ。氷が一杯入ってて重いから気を付けてね。」

 

そう言うと幕ノ内は一気に4つを持ち上げて、軽快に運んでいった。

 

俺も同じ様に運ぼうとするが持ち上げられない。

 

「あっ!無理しなくていいからね!膝とか腰を痛めちゃうから!」

 

…くそっ!

 

肩に2つのクーラーボックスを掛けて持ち上げる。

 

それでも幕ノ内の様に軽快には運べない。

 

「これを幕ノ内は小さい頃からやってたのか…。」

 

どうりでスポーツ経験の無いあいつが、あれだけの強打を打てるわけだ。

 

クーラーボックスの他にも色々と運び込むと、常連だという客がやってきた。

 

「おっ?社長、新しい従業員かい?」

「男前だねぇ。これは社長も嬉しいんじゃないかい?」

「もう、冗談はよしてください。」

 

幕ノ内の母親…社長が常連と和やかに話をしている。

 

客商売である以上は、俺もある程度は相手をしなければいけないのか?

 

案の上というべきか、常連に絡まれた。

 

「へぇ、一歩君と同じジムなのかぁ。」

「一歩君はどうだい?日本タイトルぐらいは狙えそうかい?」

「ちょ、ちょっと皆さん!やめてくださいよぉ!」

 

そんな会話をしていると船が出港した。

 

波に揺られるとたたらを踏む。

 

だが、幕ノ内はバランスを崩さない。

 

(慣れだけじゃねぇな。しっかりとシフトウェイトをしている。なるほど…これが強打を連打出来る理由か。)

 

勉強になる。

 

父さんの言った通りにここで働ける事になってよかった。

 

常連に絡まれなければな。

 

「宮田くん、ポイントに着いたから撒き餌をするよ。」

「あぁ、わかった。」

 

波に揺られる船上でも軽快に動き回るあいつの姿に対抗心が沸く。

 

幕ノ内…負けねぇぞ!

 

 

 

 

side:幕ノ内の母

 

 

「ふふ、男の子ねぇ。」

 

楽しそうに船を動き回る一歩と、その一歩を見て対抗心を燃やしている一郎君を見ていると微笑ましいわ。

 

少し前に一歩が普段はあまり見ないぐらい本気で頼んできたから、一体どんな子が来るのかと思っていたけど、思っていたよりもいい子だったわね。

 

それに最近は少し疲れていたから、彼が来てくれて助かったわ。

 

「それにしても…一歩がボクシングねぇ…。」

 

正直に言って、我が息子ながら想像出来ないわね。

 

「幕ノ内、釣った魚はどうするんだ?」

「今行くからちょっと待ってて!」

 

でもこの頃の一歩は毎日をとても楽しそうに過ごしている。

 

なら、応援してあげないとね。

 

後は彼女の一人でも出来れば安心なのだけど…。

 

そう考えて小さくため息を吐く。

 

「まぁ、その事は縁次第でしょうね。」

 

一歩…頑張りなさい。

 

母さんは応援しているわ。




本日は4話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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