目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第64話『来日するアマチュアボクシング世界王者』

side:伊達

 

 

「オヤッサン、日本タイトルの返上は待ってくれってどういう事だ?」

「あぁ、こんどうちのジムに来る予定のボクサーが関係してるんだ。」

「うちのジムに来る予定のボクサー?」

 

日本タイトルを返上してリカルド・マルチネスとの再戦を目指そうとした矢先に、オヤッサンから待ったが掛かった。

 

理由を聞いてみると、少し前にソビエトが崩壊したんだが、そこのアマチュアボクサーの一人がうちのジムに来るんだとさ。

 

それでそのアマチュアボクサーなんだが、俺と同じ階級の奴で、俺とは違うボクシング団体で世界チャンピオンを目指させるそうだ。

 

それでそのアマチュアボクサーに俺のベルトを継がせる事で箔を付けるそうだ。

 

「オヤッサンにそんなコネあったか?」

「付き合いは長いんだ。あるかどうかはわかるだろう?」

 

詳しく聞いていくと、うちのジムに来る予定のボクサーはアマで200戦して無敗の世界王者なんだが、そいつの事で日本のテレビ局とプロボクシング団体の間で、色々と話し合いが長引いているらしい。

 

オヤッサンも噂程度しか聞いていないそうだが、その話し合いが長引いている事で、日本の有望なアマチュアボクサーのデビューまで遅れているそうだ。

 

「まぁ、スポンサーと団体の意見が食い違うのは今に始まった事じゃないんだがな。」

「それで俺にまでとばっちりが来るのはたまったもんじゃないぜ。」

 

俺とオヤッサンは揃ってため息を吐いた。

 

それにしても…。

 

「アマチュア世界王者か…。」

「興味が出たか?」

「まぁな。」

 

200戦の経験があるなら、色々と引き出しは多いだろう。

 

ブライアンやイーグル程じゃねぇだろうが…スパーリングパートナーとしては悪くなさそうだ。

 

「それで?待たされる分、防衛戦とかの予定は入れてくれるんだろう?もちろん、ファイトマネーを奮発してな。」

「安心しろ。五倍のファイトマネーをふんだくってきたぜ。」

「ヒュー!そいつは豪気だ。」

 

これで愛子と雄二に良いもんを食わせてやれるな。

 

「ところでオヤッサン、うちに来る予定の奴の名前は?」

「ヴォルグ・ザンギエフだ。」

 

ヴォルグ・ザンギエフか…期待して待ってるぜ。

 

 

 

 

side:ヴォルグ

 

 

「…暖かい国だね、日本は。」

 

トレーナーのラムダと共に日本に降り立った僕は、お世話になる仲代ボクシングジムに向かう道中でそう呟く。

 

「ラムダ、仲代ボクシングジムはどういう所かわかるかな?」

「かつて世界挑戦をした事がある国内チャンピオンがいるそうだ。」

「かつて?」

「一度引退してカムバックしたらしい。」

 

詳しい事情はわからないけど、母さんの治療費が払えるなら問題無い。

 

「『コニチワー。』」

 

仲代ボクシングジムに到着した僕は、覚えたばかりの日本語で挨拶をする。

 

すると、髭を生やした貫禄のある人が近付いてきた。

 

「英語はわかるか?」

「少しなら。」

「オーケー。悪いがロシア語はわからねぇんだ。英語で頼むぜ。」

 

貫禄のある人だけど、どこか馴染みやすい雰囲気を持っている人でもある。

 

「俺はエイジ・ダテ。よろしくな。」

「エージだね。僕はヴォルグ・ザンギエフ。よろしくね。」

「エージじゃねぇ、エイジだ。」

 

少し難しい発音だ。

 

困っているとエージが苦笑いをする。

 

「まぁ、エージでもいいか。歓迎するぜ、ヴォルグ。」

 

そう言うと彼は手を差し出してきた。

 

エージ・ダテ。

 

日本フェザー級のチャンピオンだ。

 

彼と握手をすると、ニッと笑顔を見せてきた。

 

「さて、歓迎の挨拶代わりってわけじゃねぇが、時差ボケ抜きにスパーリングでもどうだ?」

 

ラムダに目を向ける。

 

「判断は君に任せる。」

 

…出来るだけ早くブランクを抜いておきたい。

 

「エージ、お願いするよ。」

「オーケー、それじゃ準備をしてくれ。俺は先に汗を流してるからな。」

 

そう言って彼は離れていった。

 

「悪くないジムだ。」

「うん、まだ来たばかりだけど、好きになれそうだよ。」

 

そう言いながら準備を始めると、エージのシャドウが目に入る。

 

「…かつて世界挑戦をした話は嘘ではないようだ。」

「うん、最大限の警戒をしてスパーリングをするよ。」

 

準備を終えた僕はリングに上がる。

 

そしてゴングが鳴ると、僕はエージとの初めてのスパーリングを始めたのだった。




次の投稿は13:00の予定です。

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