side:イーグル
4ラウンド目が始まるとブライアンは足を使い出した。
その速さは僕がスパーリングパートナーにした軽量級の選手をも上回り、即座には対応出来ない。
4ラウンド目は捨てる覚悟をする。
一刻も早くこの速さに慣れなければならない。
激しい出入りの中に緩急を混ぜられ、僕のリズムは何度も崩されてしまう。
その度にジャブとワンツーを打って修正していく。
4ラウンド目が終わっても対応の確信が持てない。
そろそろ勝負を仕掛けたいが、確信を持てない以上は5ラウンド目も捨てる覚悟をする。
その事を伝えるとダンも頷いた。
「主の好きにすればいい。だが、そう長くは持たぬ事を自覚しておけ。」
如何に鍛え上げてきたとはいえ、ブライアンのボディーブローを何度も受けてしまっている。
ダンの言う通りにそう長くは持たないだろう。
右拳に目を向ける。
『飛燕』に熟すために鍛えたリストがもたらした副産物のニューブロー。
これの為に1ラウンドから積み上げてきた戦略。
持ってくれよ…僕の身体。
◆
side:ホーク
4ラウンド目から足を使い始めると、試合は俺のペースになった。
鷹村との試合で一番印象に残っているのはあの4ラウンドの時だが、あれは俺のスタイルじゃねぇからな。
そう考えて俺は足を使う事を選んだ。
4ラウンド目は終始デビッドを振り回し、5ラウンド目にはダウンも奪った。
だがデビッドの目は死んじゃいねぇ。
何かはわからねぇが狙ってやがるな。
5ラウンド終了後のインターバルでミゲルもその事を伝えてきた。
おそらくは次のラウンドで仕掛けてくるってな。
さて…何をやってくるんだろうな?
◆
side:イーグル
6ラウンド目。
ブライアンのボディーが効き始めている。
動けても次のラウンドまでだろう。
だからこのラウンドで仕掛ける!
おそらくブライアンは察している筈だ。
だからこそいつも通りを心掛ける。
ジャブ。
避けられた。
ワンツー。
これも完璧に避けられた。
僕のパンチに慣れられたのだろう。
ブライアン相手に1ラウンドからずっと打ち続けていればそれも仕方ない。
だが、だからこそニューブローを打ち込めるチャンスだ。
足を使うブライアンに心まで振り回されない様に気を付ける。
1発、2発とブライアンのパンチをくらい足が震える。
まだだ!
まだ、僕は全力を出し切っていない!
6ラウンド目の1分が経過したタイミングで、一息吐ける瞬間が訪れる。
…ここだ!
ブライアンが予想通りに踏み込んでくる。
ジャブ。
避けられた。
想定通り。
ここで僕はストレートを打たずに、手首を捻って溜めを作る。
それが一瞬の間を作り、ブライアンへのフェイントになった。
あぁ…まるで世界がスローモーションになった様によく見える。
ブライアンが驚いて目を見開いている。
溜めを作った右拳を捻り込みながら打ち込む。
これが僕のニューブロー…コークスクリューブローだ!
◆
side:ホーク
やられた。
リングに膝をつきながらそう思う。
初めてのダウン。
だが、思ったよりも冷静な俺がいた。
「ブライアン!」
真理の声が聞こえる。
カウント7で立ち上がり構えた。
足元がフワフワしてやがる。
でも、頭は妙にスッキリしてるぜ。
「ホーク、やれるか?」
「あぁ、問題ねぇよ。」
レフェリーに返事をしながらデビッドに目を向ける。
今ならわかる。
全部あの一発の為だったんだな。
よくもまぁ、そこまで考えて試合が出来るもんだ。
俺には真似出来ねぇよ。
だけどよ、勝つのは俺だ。
行くぜ…デビッド!
本日は2話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。