目が覚めたらスラムでした   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


外伝・ライバル編:第3話『交錯する思惑』

side:鷹村

 

 

入場セレモニーも終わって、いよいよ試合が始まった。

 

リング中央で奴とグローブを合わせる。

 

いつもより大きく間合いを取り、ジャブを打って少しずつ調整していく。

 

一発、二発とジャブを打っていく中で、奴の目が俺を観察しているのがわかる。

 

昔の俺なら奴の目に苛立っていたかもしれねぇな。

 

左、左、左。

 

ジジイが教えたボクシングをしていく。

 

奴の身体にジジイが構えるミットのイメージが重なっていく。

 

そのミット目掛けてジャブではなく、左ストレートを強めに打ってガードさせたところで、前足にシフトウェィトする。

 

そこで気付く。

 

奴が右手首を捻っている事に。

 

思わず身構えて動きが止まったところに一閃。

 

奴の左で顔を跳ね上げられた。

 

更に角度とタイミングが違う左が続いてくる。

 

これが飛燕か…。

 

ジジイの助言で木村に再現させたものを何度か見たが、キレが別物だ。

 

こいつは慣れるのに時間が掛かりそうだぜ。

 

 

 

 

side:鴨川

 

 

「強かじゃな。」

 

パンチを打つことなく、コークスクリューブローの溜めを見せるだけで鷹村を止めよった。

 

その後も飛燕を軸にペースを握られておるわい。

 

「む?」

 

鷹村が距離を詰めようとしておる。

 

何をするつもりじゃ?

 

「飛燕を嫌ったか?」

 

たしかにクロスレンジ(近距離)なら飛燕に煩わされる事もないだろう。

 

パンチの威力とタフネスでイーグルに勝る鷹村に適した距離と言えなくはない。

 

だが、距離を詰めてどうする?

 

「…ボディーブローか。」

 

おそらく鷹村は拳一つ分の隙間から放つパンチを狙っておる。

 

鷹村の足腰ならそれでも十分にKOを狙える威力の一発を打てる。

 

決まれば一気に流れを掴めるじゃろう。

 

だが…。

 

「団吉なら気付くじゃろうな。」

 

このラウンドでクロスレンジまで距離を詰めるのは出来ぬじゃろう。

 

そしてインターバルに入れば団吉は助言し、イーグルに想定されてしまう。

 

そうなれば奇襲の効果は見込めん。

 

ならば…。

 

「もう一工夫必要じゃな。」

 

儂は鷹村に勝利を掴ませるべく、老いた頭を必死に働かせるのだった。

 

 

 

 

side:イーグル

 

 

1ラウンド目が終わりコーナーに戻る。

 

そして椅子に腰を下ろすとダンが話し掛けてきた。

 

「どうじゃ?」

「間合いとパンチを打つタイミングが噛み合い過ぎる。幾つかジャブを貰いそうになって冷や汗をかいた。」

「ふむ、想定通りじゃな。修正は出来たか?」

「あぁ、問題ない。」

 

だが疑問は残った。

 

1ラウンド目の後半から鷹村は距離を詰めようとしてきた。

 

彼のボクシングはミドルレンジを主体とするもの。

 

クロスレンジに持ち込んで何をするつもりなのだろうか?

 

「奴はワンインチパンチを狙っておる。」

「ワンインチ?」

「左様。鍛え抜かれた足腰を持つ者なら、拳一つ分の隙間さえあれば有効なパンチが打てる。」

 

ボクシングの常識では考えにくいパンチだ。

 

ダンの情報が無ければ、一時的に混乱していた可能性がある。

 

「ありがとう、ダン。」

「気にするな。これがセコンドの役目よ。だが、向こうのセコンドも儂が入れ知恵する事に気付いておるだろう。なら、更なる工夫を加えてきても不思議ではない。」

 

ワンインチパンチに加えて更なる工夫か…。

 

「覚悟はしておくよ。たとえダウンを奪われても気持ちが揺れない様に。」

「それでいい。主が己のボクシングを貫けば、自ずと勝利は掴み取れる。それだけの準備はしてきたのだからな。」

 

その通りだ。

 

なに一つ不足なく準備をしてきた。

 

後は勝つだけだ。

 

場内アナウンスが流れ、ダンがリングを下りる。

 

「奴の狙いがあろうと、戦略を変更する必要はない。一つ一つ、積み上げていくのだ。」

 

ダンの言葉に頷くと、ゴングと同時にリング中央へと進み出た。




次の投稿は13:00の予定です。

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