神話って色々あるけど、神様って大概やりたい放題じゃね?   作:水色絵具

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第1話

「返事がない。ただの屍のようだ。」

 

ペチペチと頬を叩く音に眼が覚める。

 

「って、オイ。誰が屍だ。」

 

とツッコンでから、あたりに気付く。

 

「……、どういうことだ?」

 

辺り一面真っ白な景色が広がる。

まぁ、その中に本棚やベット、TVにゲーム機など点在しているのだが…。

 

「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない。」

 

「いやだからなんだよ、さっきから。ってか、誰だよアンタ。」

 

よぼよぼの爺さんがさっきから変なセリフで問いかけてくる。

白いひげを蓄えた…、そう、まるでとある漫画に出てくる空の騎士にして先代の神。

それが絵画に描かれたキリストのような格好をしているのだ。

 

「我は神なり。」

 

今度はエネルらしい。

 

「いい年こいて何のコスプレだよ。」

 

「コスプレではない。本物じゃ。」

 

そういうじじいをつま先から頭の先までよく観察する。

うん、ただのコスプレだ。

挙句の果てに、そこのベットの上にはONE PIECEが山積みにされている。

 

「……。さて、俺帰りたいんだがここはどこなんだ?」

 

「だから言っておるじゃろ。ぬしは死んだのだ。」

 

「……。いや、だから帰りたいんだが?」

 

「周りの景色をよく見よ。こんな景色が下界にあるか?」

 

あたり一面、雲の上のような真っ白い世界。確かにこんな景色は有り得ない。ってことは、

 

「VR?」

 

かがくのちからってすげー。

 

「なんじゃ。そんなにわしが信用ならんか。」

 

「……。鏡見てから言えよ。」

 

いい年こいてオタクと化した爺さんがはっちゃけたようにしか見えないっての。

 

「ゴホン。まぁ、いい。どう思おうとぬしは死んだのだ。それは変わらん。」

 

バツが悪そうに咳き込む。

 

「そっかぁ。俺って死んだのか。」

 

まぁ、実は薄々気付いてました。だって、死ぬ前の記憶あるんですもん。

 

「即死がよかったなぁ…。」

 

28歳、フリーター。深夜のバイトが終わって朝帰り。

この冬の寒い朝、凍った水溜りにすってんころりん。道路の縁石にごっつんこ。

不幸だったのは即死ではなく、頭の痛みと血が流れていく感覚。冷えていく体と薄れ行く意識。

 

「全部覚えてんだよなぁ。」

 

「まぁ、それは運としか言いようが無いのう。」

 

当たり所が悪く死んでしまい、当たり所が悪すぎなかったからこそ即死ではなくゆっくり死んだと。

 

「まぁ、よい。おぬしにはチャンスをやろう。」

 

「ONE PIECEの世界に転生とかですか?」

 

「なぜ分かった。」

 

神じじいがめっちゃ驚いた表情を浮かべる。だが、自分の格好見てから言えよ。

 

「わしはのう、ONE PIECEが好きでのう。」

 

「なんか昔語りが始まった?」

 

その後、つらつらと遠い目をしながら語り続ける神じじい。

まぁ、神の癖してコスプレするような奴だし…。ってあれ?実は顔が似てるだけでコスプレじゃない?

 

「だから、エースが死んだときはショックじゃった。2日は寝込んだ。」

 

「はぁ…。」

 

早く終わんね~かな。マジで。

 

「しかし、ルフィが前を向いているのだ。読者である我々が俯いてばかり入られない。」

 

しらね~よ。いい加減にしてくれ。

 

「しかし、エース復活の希望を捨ててはいなかった。しかし、先のほんまでっかTVでのエース復活は無いとの作者の言を聞き、我は決めたのだ。」

 

「……。」

 

「エースが死ななかった世界を作ればいいのだと。」

 

「はぁ?」

 

ナニイッテルンダ、コノジジイ?

 

「ONE PIECEの世界に転生者を送り込み、エースの死ななかった世界へ分岐させてしまえばよい。」

 

「いや、何言ってやがる。」

 

右手をぎゅっと握り締め力強く語るじじいの目は希望に満ち溢れていやがった。

 

「わしは読者としてエースの死んだ世界を購読し、神としてエースの生存した世界を俯瞰する。そう、誰もが望むエースが生き残った世界を見ることができる。」

 

「ソウデスネ~。」

 

マジで?この流れだと俺がその役目させられんの?やだよ?

 

「その役目…。」

 

「ごめんなさい。お断りします。」

 

「なんじゃと~。」

 

やだよ、そんなの。めんどくさい。

 

「よし、不満か。転生特典を3から5にしてやろう。それでどうじゃ?」

 

「いや、そういう問題でもないし。他の人でどうぞ。」

 

そういうと神じじいは苦虫をつぶしたような表情を浮かべる。

 

「やっとなんじゃ。おぬしはやっと見つけた転生者なんじゃ。」

 

「どういうことだ。」

 

何か事情があるのか?

 

「他のあほんだらのようにハーレムや俺TUEEEEなどの俗物的な思考を持たない人間でかつ、」

 

「かつ?」

 

「ONE PIECEの世界でやっていけるだけのツッコミ力がある人間は。」

 

「オイ。」

 

やべ、ツッコンじまった。

 

「分かるじゃろう。この不可思議な現実に怯えるでも喜ぶでもなく、ツッコミを入れ続けるぬしの力をわしは必要としておるのだ。」

 

「ふざけんな。」

 

「決定事項じゃ。わしは覆さんぞ。」

 

最悪だ、このじじい。

頑として俺の意見を聞き入れる気が無いのは目に見えて分かる。

 

切り替えるか抗うか。いや、待てよ…。

 

「わかった。アンタは意見を覆す気はないのだろ。」

 

「そうじゃ。」

 

だったら、仕方ない。

 

「転生特典あったな。3つだったか。」

 

「5つでもいいぞ?」

 

いらね~よ。そんなに。

俺は平和がいいの。平穏に過ごしたいの。できればこのまま死ねればいいの。無理っぽいけど…。

 

「ひとつは、戦争のない平和な町に生まれること。二つはローのベポやチョッパーのようなペット枠がほしい。あ~、猫。俺猫好きだし。」

 

「フムフム。」

 

「あとひとつかぁ。じゃぁ、エリクサーがひとつほしいかな。いつ死んでもおかしくない世界だし。」

 

「ひとつでいいのか?」

 

「あぁ、そんなにいらないだろう。」

 

これでよし。転生するのは仕方が無いが原作にかかわらなければそれでいいのだ。

エースのことはしらん。ルフィが何とかするだろう。

 

「フムフム、よし。じゃぁ、これで転生させるぞ。」

 

そう言うと、俺の体が光の粒となって消えていく。

 

「頼んだぞ、エースを助けるんじゃぞ。」

 

しるか。俺は関わるつもりは無い。ざまぁみやがれ。

そう思いながら、俺は光となって消えていった。

しかし、俺は気付かなかった。あの神いや、くそじじいは紛れもない神であったことに…。

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

「フム、神を謀ろうなど千年早いわ。しかし、あの状況で神を謀ろうとは面白い。あやつを選んだことにまちがいわないようじゃのう。」

 

あの男ならばあの世界でもやっていける。あとは世界を変えるだけの意思と力を与えてやるだけだ。

あの世界は覇気など意志の力が大きく働く。チート能力なんてものでさえ思いひとつで大きく変わる世界なのだ。

 

「エースはロギア。ルフィはパラミシア。サボはメラメラを食べるまでは無能力じゃったし、あやつにはゾオン系を食ってもらおうかのぅ。」

 

それにペット。あやつは癒し兼転生特典の消費に使っておったが…。

 

 

「楽しみにしておるぞ。おぬしの選択を…。」


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