暑さへの耐性をお願いした筈が炎熱アンチになったんだが? 作:黒三葉サンダー
故にやや暴走がちにシナリオ爆走します(キリッ
すれ違い発生
「どうぞ。粗茶ですが」
「これはどうも。……って神様でも粗茶なんて言葉使うんすね」
「案外神様も俗物的なものなんですよ」
出されたお茶を啜りながら、ホッと息をつく。天界と呼ばれるくらいだからヤベェお茶かと思いきや、予想以上に普通のお茶だった。
あ、どうも。俺は────。死に経てホヤホヤの死人です。え?名前が読めない?そこは諦めてくれ。俺だって覚えてないんだから。
事は確か数時間前。友達二人と帰っている最中に暴走車が俺達の所に突っ込んできたのだ。その時反射的に二人を突き飛ばす事に成功したものの、肝心の俺が回避に失敗してグシャットされてしまった訳だ。
痛み事態は殆ど感じなかったので多分即死だったんだろう。
「はい。即死でしたね。ものの見事に」
「oh…ハッキリ言うんすね神様」
目の前でズズッとお茶を啜る女神様に苦笑しつつ、俺もお茶を楽しむ。
え?ショックじゃないのかって?
いやまぁショックっちゃあショックだよ。高校生活エンジョイ中に人生からリタイアですもの。そりゃ未練タラタラっすよ。それに友達の恋の行方もすっげぇ気になるし、皆で始めたゲームもまだまだこれから!って所でこれですもん。両親にも親孝行出来ないし、飼い猫のタマと遊んであげる事ももう出来ない。可愛い彼女とか作ってキャッキャウフフなリア充ライフすら遅れてない、というか彼女できたこと無いし!
そりゃ未練タラタラになるに決まってるだるぉぉぉ!?
「諦めてください。蘇生は私たち神様の間では禁則事項なんです」
「ですよねぇ……」
いつの間にやら用意されていた羊羹を美味しそうに食べる女神様を眺めながら机に突っ伏す俺。やっぱり生き返らせて欲しいなんて願いは叶えてもらえる訳ないよね。
くぅ!悪い春雪君!君に俺のお宝を貸す前にこんなことになるなんて思ってなかったんだ!せめて姫ちゃんと一緒じゃない時に俺の自宅からお宝を見つけてもらえると助かる!
「……えっち」
「ありがとうございます」
女神様にジト目で見られるものの、結果的に女神様の愛らしさに研きが掛かっただけなので合掌して感謝の言葉を述べるだけである。可愛いは正義。絶対不変の真理である。
「……ところで、俺っていつまでここに居ればいいんすかね?」
「?」
こてんと首を傾げる女神様。流石女神様、アザと可愛い。もう死んでもいいや。いやもう既に死んでたわ。
わっはっは!
「ギャグの才能は無いんですね」
「グサッときた!?」
予想以上にこの女神様容赦ねぇ!?人が気にしてる事をサラッと槍でぶち抜いてきやがった!
再びぐったりと机に突っ伏す俺。しかし女神様はそんな俺に目もくれずに羊羹を楽しんでいらっしゃる。
くそぅ……ほっこりした顔で羊羹食いやがって……可愛いじゃねぇか。
「ん。許可が降りたので、早速始めましょう」
「へ?何の話っすか?」
「確かに私たちは死者を蘇生させることは禁止になっています。ですが転生であれば上司の許可さえ降りれば可能なんです」
「え?じゃあ!?」
「ですが。元の世界への転生は許されていません。元の世界の住人を同じ世界に転生させてしまうと、その世界に歪みが生じてしまうんです。そしてその歪みは世界を狂わせていくんです」
「お、おう……とりあえず凄まじくヤベーイって事は分かったッス」
何がどうなるのかは分からないけど、よろしくない事になるのは直感した。だって世界に歪みとか歪みが世界を狂わせるとか絶対良くない問題じゃん!俺の我儘であいつらが不幸になるのだけは避けたいし、もうスパッと前の事は諦めるしかないなぁ……
「……よしっ!ばっちこい!」
「では遠慮なく。あなたには俗に言う転生特典というものが与えられます」
「あー、そういうの実際にあるんすね。物語だけだと思ってました。……え?てことは良くある『俺TUEEEE!』が出来るってことすか?」
「可能です。あなたが望むのなら」
マジか。あの手の主人公ってやべぇ力を貰って無双したり、くそうらやm……けしからんハーレム作ったりしてるよな。ならば俺も願えばそんな主人公に!?
……っと思ったけど。なーんかピンと来ないな。
「?どうしました」
「あー、いや、なんかいざ自分がそういう力を貰えるって立場になると、案外何にもピンと来るものがないんすよね。チート貰って無双とか美少女に囲まれてハーレムとか憧れはあるけど、自分の手に余る気がしてならないんすよね」
チート能力とか制御出来る気がしないし、ハーレムとか絶対無理。後ろから刺される未来しか見えない。
へ、ヘタレとか言うなし!慎重派なんだよ俺は!
「……因みにあなたに与えられる転生特典はあなたが救った命分、つまり二人分になります。良く考えて決めてください」
「アッハイ。でもなぁ……」
腕を組んでグヌヌと唸る俺。諸君はさっさと選べ!と怒るだろうが、いざこういう状況になると本当に思い付かないもんなのだ。しかし時間は有限(死者に時間もへったくれもあるのか?)。悩みすぎても余計迷うだけだし………
「あ、そうだ。俺暑いのが嫌いなんで、
「
……ん?なんか今ニュアンスが違ったような?だ、大丈夫だよね?
「えー、後は長生き出来る健康な体とかって大丈夫です?」
「……少々お待ちを」
今度は女神様が耳を押さえてウンウンと唸る。電波的な何かが神様達に通っているのだろうか?
テレパシー的なsomethingとか?
え?英語で言った意味?そんなもん勿論ないけど。
「……お待たせしました。上司いわく『面白そうだからおけ!』だそうです」
「神様ノリ軽っ!?しかも面白そうって何!?」
「上司は基本的にアホなので……」
心なしか女神様の顔に疲れが見える。余程相手が大変なんだな。どんだけよ上司。部下は労ってあげないとボイコットされますぞ。
「それでは最終確認です。一つ目の特典が
「ういっす。
女神様が書類にサラサラと書き込んでいくと、その書類はひとりでにフワフワと浮かび始め何処かへと飛んでいってしまった。上司のところだろうか?
……ん?
「すんません。さっきの書類に炎熱────」
「あ、そろそろ時間ですね。それでは善き人生を」
不穏な文字が見えた気がしたので女神様に聞こうとしたその瞬間、今まで座っていた床がスッポリと抜け落ちて俺自身も落ちていく!
「なんか不穏な文字がぁぁぁぁぁぁぁ──────」
しかしそんな俺の悲鳴も虚しく、俺の意識はブラックアウトしたのだった。
あれ?そういえば転生先って何処なんだろうか……
おまけ
「……行きましたね。それよりこれで良かったんですか?本来なら特典は3つでは……」
『ふっふ、彼は未練タラタラだったからねぇ。せっかくだから生前の彼のアバターの能力を仕組んでおいたんだよね』
「……本人の許可を得ずに何をしてるんですか」
『だって可哀想じゃん?あのゲームだってろくに出来てなかったんだよ、彼。同じゲーマーとしては同情するなぁ……』
「この駄神が……」
『上司に対して酷くない!?ねぇ!?』
「私の苦労も知ってください。それよりも彼らの行方を見守りましょう。彼が命を賭けて助けた人間達の行方を……」
もう、なんか後書きに書くことないんよね。
はっちゃけたいから作られたと言ったけど、それでも読めるようには作って────いきたいなぁ(願望)
あ、感想とか評価は書きたい人だけオナシャス!