桃色の二人、降車駅にて。 作:彩りを下さい(懇願)
知ってる?0が二倍になっても0なんだよ?(泣
0.桃色カップルと幸福な日々
「君の書く
そう言ってくれた、君は。今、隣には居ない。
彼女がそう言ってくれた。いや、彼女の笑顔だけで、何倍も助けられていたことを、彼女自身は知っているのだろうか。
僕自身、この夢を目指すことに疑問もあった。それこそ星の数程の人間の中で、夢を叶える一握りになれるなど考えられなかった。
それほど、自身に才能も努力もあると思い上がることは出来なかった。
本当にそうなれるのは、彼女のように。
裏では血の滲むような努力を繰り返し、それでも自らを奮い立たせ、表では目の眩むような笑顔を振りまき、その姿で全てを魅了してしまう。
そんな、素敵な存在だろう。
多分本人に直接伝えたとしたら、顔を真っ赤にして「そ、そそそそんなことないよぉ!?」なんて否定するんだろう。
想像すると、クスりと笑みが零れ落ちる。
ほら、こんなことでさえ、君は人を笑顔にする。
だからこそ、僕は今も
いつか、彼女と並び立てるように。
さあ、今日も全力で楽しもう。それが、僕が出来る最高のパフォーマンスなのだから───!
───ハイ、オッケーでーす!!
「…ふぅ。お疲れさまです監督」
「ああ、良かったよ! お疲れさん!」
オッケーサインとほぼ同時に監督に声を掛けられる。このドラマの撮影が始まってから、もう3ヶ月になるお陰で気さくに話をするくらいには仲良くなれた。
彼は新進気鋭と評判の若手監督であり、自分とは年齢もほぼ変わらないこと、また此処までに至った経緯にも他人の気がしないとのことで付き合いが早くなったのも理由の一つだろう。
「しかしなぁ…。お前も凄いな」
「? 何がです?」
「いや。これノンフィクションだろ? しかもお前と彼女の結婚までのラブロマンスとくれば、平常心で
監督は首を
「? 何故です? 僕は、今までの彼女との関係性に恥ずかしいことなんて一つもありません。事実として、今の僕があるのは彼女が居たからなんです。それを羞恥心という言葉で話せない理由になるなら、それは不義理になります」
「……お、おう。お前、本当にスゲェよ…」
ドン引きである。
彼女至上主義なのは知っているが、改めて直接聞くと参ってしまうのは仕方ないことだろう。
ふと、視線をずらせば、悶え続けている桃色の陰が一つ。
「…おい。お前の気持ちは良く分かった。だから早くそこの見るに堪えない状態の脳内外ピンク女子を早々に連れて帰れ。嫁のいる俺まで砂糖吐きそうだ」
そして、嫁のいない独身スタッフは既に耐えきれない
「……? よくわかりませんが、わかりました。帰るよ、彩」
「……っっ!? …っ!!」
「え、なんで脛蹴るの。痛いんだけど」
「もう! ひーくんのバカ!! 大好き!!」
「え、なんでバカ呼ばわり? あと僕も大好きだよ」
「え、あ。…ふへへー♪ 許す!!」
「なんか許された」
間の抜けた会話をしながら、現場を後にする二人は幸せそうだった。誰がどう見ても。
そして、その現場に残された監督は怨嗟の籠もった視線に貫かれた。早々に撤収させたとはいえ、独身スタッフにこんな思いを抱かせたのは監督が原因なのだ、彼自身も、よくわかっていた。
「──ああわかったわかった!! 晩飯は俺の奢りだ! さっさと撤収準備しやがれ!!」
そんな彼は頭の中で悪態をつく。
──あの『丸山 彩』と『