前田「さぁ、ここだよ。なかなかモダンな建物でしょ?」
戦兎/龍我「「…………」」
新世界にやって来て1ヶ月半くらい。
俺と万丈は、前田不動産の前田さんから紹介された格安アパートにやって来た。
『寿荘』。
鷹ノ台駅から歩いて10分。部屋は二畳の板間と六畳の和室。南向き。トイレと風呂は共同だが、賄い付きなんで、食事は作ってもらえるわけだ。
家賃は、ズバリ二万五千円!
しかも光熱費、水道代、賄い代込みで二万五千円!
安い!めっちゃ安いし!
……ただし、このアパートを紹介された時、こうも言われた。両手をだらりと垂らした前田さんから、
前田『出るんだ、コレが』
……と。
幽霊か妖怪でも出るというのか。
……まぁ、それはいい。前に会ったエグゼイドの世界にはお化けの仮面ライダーがいるくらいだからな。万丈が『命燃やす先輩』とか呼んでる奴。体脂肪みたいに言うんじゃないよ筋肉バカ。
……しかし。
龍我「……なんかボロくね?」
戦兎「築何年なんだ…?」
蔦に覆われた、古びた灰色の壁。えんじ色の屋根。窓にはステンドグラスが嵌め込まれている。玄関は木製の観音開きで、ここにもステンドグラスがあしらわれていた。
……なんつーか、映画のロケにでも使われそうな『大正ロマン風』の造りだ。てかいかにもその頃に作りました〜的な古さを感じる…。
龍我「大丈夫かここ…」
戦兎「……ま、まぁ、格安だしな……」
「おや、前田さん」
前田「やぁ、一色さん。お久しぶり」
玄関から竹箒を持った甚平姿の男が出てくる。子どものラクガキのような、どこかとぼけたような顔だ。
一色「おや、新しく入る人達かな?」
前田「今日は下見。桐生戦兎くんと万丈龍我くんだよ」
戦兎「どうも、はじめまして。ここに住んでる方ですか?」
一色「そぉ。もう十何年になるかねぇ。アタシは一色黎明。作家やってるんだ。よろしく」
戦兎「はい、よろしくお願いします」
龍我「うっス」
戦兎「ちゃんと挨拶しなさいよ…」
そして俺達は、前田さんの案内で部屋にやって来た。
龍我「……お、外から見たよりいい部屋じゃん」
万丈がそう言ったが、俺も同感だ。
南向きの大きな窓。その上部に埋め込まれたステンドグラスの、色とりどりの光が畳の上に落ちている。窓からは前庭が見え、様々な花が美しく咲き誇っていた。
戦兎「……あぁ。いい部屋だ」
どこか、心が安らぐ部屋だ。
ずっと戦いに身を置いてきた俺達を、この場所は癒してくれる…なんとなくだが、そんな、気がした。