桂馬えもん 天理と神のみぞ知るセカイ   作:夢回廊

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第1話

「……ん? ここどこ?」

 

 気がつくと見知らぬ場所に立っていた。あれ? おかしいな……俺はさっきまで漫画を読みながら家に帰っていたはず……

 何だこの真っ白な空間は。いや、ちょっと待て。これってまさか……

 

「残念じゃったのう。人生これからという時に死んでしまうとは」

 

「…………」

 

 いつの間にか、目の前にお爺さんが立っている。そして『俺が死んだ』という言葉……理解が追いつかない中、頭に1つの仮説が思い浮かぶ。まさか……

 

「……あの、すみません。貴方ってもしかして神様ですか?」

 

「そうじゃが?」

 

 うわっ、マジか。やっぱり異世界転生じゃん。まさか俺が当事者になるとは思っていなかった。そうか、俺死んだのか……

 

「ドッキリ……じゃないですよね?」

 

「信じたくない気持ちは分かるが紛れも無く現実じゃ。お主はつい先ほど信号無視のトラックに轢かれて死んだ。

 漫画を読みながら横断歩道を渡っている時にな。信じられんと言うのなら遺体を見せようか? かなり凄惨なことになっておるが」

 

「……やめておきます。自分の体とは言え、そんな物を見せられたら吐きそうですし」

 

 凄惨って、俺の体はどれだけ惨いことになっているんだ。ミンチより酷い状態とか? ……やめよう。想像したら悲しくなってきた。

 

「まぁそう悲観するでない。お主をここに呼び出したのは、好きな世界に転生させてやろうと思ったからじゃ」

 

「…………」

 

「……どうしてそんな微妙そうな顔するんじゃ? 普通もっと喜ぶ場面じゃろう?」

 

「……あの、まさかとは思いますが、俺の死因って貴方のミスじゃありませんよね?」

 

 異世界転生って、大抵神様が主人公を間違って死なせたりしてるだろ? 俺の人生が終わった理由もそうだったら今すぐここで泣くぞ。大人げなく大号泣するぞ。

 

「それは無い。言い方は悪くなるが、お主の寿命が短かっただけじゃ」

 

「……そう、ですか」

 

 寿命か……ミスよりは納得出来るけど、やっぱり泣きたくなってきた。せめて死ぬ前にもう一度親父やお袋に会って、一言でも話したかった……

 

「あ、現実世界に蘇生させるのは無理じゃ。神様の世界にも色々決まり事があるのでな。こればかりは諦めてくれんかの」

 

「…………」

 

「だからそんな泣きそうな顔するでない。実際にお主の世界で死者が蘇った事例は無いじゃろう? つまりはそういうことじゃ」

 

「……はい」

 

「悲しむ気持ちは分かるが、話を進めるぞ? 今からお主を、生前とは別の世界へ転生させる。要望があれば聞くぞ?」

 

「……その前に、1ついいですか?」

 

「何じゃ?」

 

「どうして俺なんですか? もっと不幸な人生を歩んだ人とか、生前凄まじく苦労した人とか、俺なんかよりも報われるべき人間がいるんじゃ……」

 

「あ、それは大丈夫。ワシの暇潰しじゃし。人間界をず~っと眺めるのも暇なんじゃよ。たまには何か違うこともやりたくなるもんじゃ」

 

「…………」

 

 それで良いのか神様。そんな適当で大丈夫か神様。

 

「良いんじゃよ。ワシのことは置いといて、転生したい世界を言ってみなさい。完全な異世界でも良いし、お主が知っている創作の世界でも構わんぞ?

 ただ、完全一致の世界ではなくパラレルワールドじゃから、多かれ少なかれ違いは出るじゃろうな」

 

 さらっと心を読まれた。いやまぁ、神様ならそれくらい出来ても不思議じゃないけど。

 

「……いきなり言われても」

 

 正直、自分が死んだことのショックが大き過ぎて頭が回らない。

 だからといって神様に任せて、世紀末の世界に飛ばされた挙句即死するのも嫌だし……

 

「迷っているようじゃの。それならお主が死ぬ直前に読んでいた漫画の世界にしたらどうじゃ?」

 

「え? 確か『神のみぞ知るセカイ』……」

 

「そうそう、それじゃ」

 

「…………」

 

 死亡直前の出来事を思い出す。俺は神のみの最終巻を買って、家に帰る道で読んでいたはずだ。

 その時の内容も覚えている。桂馬が過去から帰還し、ちひろに告白した場面だったはず。

 天理が好きだった俺としては、そのエンディングが予想外で……そこから記憶が途切れている。多分トラックに轢かれたからだろうな……

 

「……そこで良いです。少なくとも、転生した直後に殺されることは無いでしょうし」

 

 もちろん原作をむやみやたらに引っ掻き回すつもりも無い。そんなことをして桂馬達が酷い目に遭うのもアレだし……

 

「分かった。じゃあ次は特典じゃな。お主が知る作品の主人公が持つ能力から1つだけ選ぶと良い」

 

 出た。異世界転生のお約束、神様から貰えるチート能力。

 

「主人公限定なんですね」

 

「他のキャラクターまで含めると色々めんどくさいんでな。そもそもワシの暇潰しじゃし、沢山の特典をやるというわけにもいかんのじゃ」

 

「はぁ……」

 

 とは言っても、やはりいきなり言われると思いつかない。主人公に絞るとしても、反則級の力を持つキャラクターは沢山いるし……

 

「迷っているようなら、主人公の中でも有名かつ応用が効く能力をワシの方で選んでおくが……」

 

「それで良いです」

 

 この際何でも良い。『神のみ』世界なら余程のことが無い限り死ぬことは無いだろうし。

 もちろん悪用するつもりも無い。俺TUEEEとかどうでも良い。

 

「よし。後、くれぐれもいきなり強い能力を使って『原作の問題全部解決! はい平和!』なんてのも無しじゃぞ? ワシの暇潰しとして、色々楽しませてほしいからの☆」

 

「…………」

 

 ウインクしながら条件追加するなよ神様。と言うか爺さんのウインクって……まぁ、俺としてもそんなリスクがあり過ぎる行動を取るつもりは無いが。

 もしそんなことをして歴史が修正不可能な勢いで歪んだら責任取れないし。

 

「それじゃあ早速転生させるぞ? 覚悟は良いな? ワシは出来ておる」

 

「えっ、ちょ、待って下さい。まだ心の準備が――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

 ……周りがよく見えない。それどころか、体もまともに動かせない。辛うじて音は聞こえる。状況を判断する為にも、耳を澄ませて……

 

「やったな、麻里! 元気な男の子だ!」

 

「うん……うんっ……! 頑張ったよ、私……!」

 

 男性の声と女性の声が聞こえる。前者はともかく、後者は聞き覚えがある。具体的には『神のみ』のアニメで……嫌な予感がする。まさか、この体は……

 

「桂馬もよく頑張ったな……! ほ~ら、お父さんだぞ~?」

 

「…………」

 

 ……よりによって主人公の桂馬に転生とか、何考えてんですか神様。

 それどころか赤ん坊からスタートだなんて、何の罰ゲームなんですか神様……!

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