「えいっ!」
「ひゃっ!?」
「あははっ! 天理ちゃんに命中ですわ!」
「……お姉ちゃんの仇」
「わぷっ!?」
俺達が舞島東小学校に入学して1ヶ月が経った。香織は未だ怪しい素振りを見せていない。やはり悪魔とはまだ出会っていないのだろうか?
それと同時に、ドクロウが少しずつ表情豊かになってきた。俺や天理達と過ごし、学校の授業を受けているお陰か、日常生活に必要な常識等もほぼ身に付けてくれた。
今日は日曜日。うららからのお誘いがあったので、以前リミュエルと遭遇した時に『雲固めガス』で作った雲の遊び場で天理達と雲合戦をして遊んでいる。
もちろん『ウルトラストップウォッチ』で俺達以外の時間を止めた状態だ。あの時は『マジックドーム』で油断して酷い目に遭ったからな……
「……はぁ」
「ん? どうした美生。もしかして、楽しくなかったか?」
「ううん、そうじゃないけど……今日は結がいないなって」
「あー……」
先週は一緒に遊んでいたが、今週は結は白鳥家に来ていない。確かに幼稚園時代と比べると、うらら達と顔を合わせる機会が若干減っているような気はする。
だが結の母親の束縛が牙を剥くのは流石にまだ先だろうし、単純に五位堂家の仕事が忙しいのが理由……だと思う。断定は出来ないが。
「寂しいかもしれないけど、結には結の都合があるからな」
「……うん。それは分かってるけど……」
口ではそう言っていても、やはりつまらなさそうな表情は消えない。内心では結と遊びたくて仕方ないのだろう。
とは言え数ヶ月単位で顔を合わせていないならともかく、1、2週間くらいの期間であるなら……まぁ、ひみつ道具を使うことは無いか。
あまり俺がひみつ道具でお節介を焼いて、美生達が原作と比べて我儘な性格になってしまうことは避けたい。
いや、ひみつ道具があるならすぐに使って不満を解消したいという気持ちは俺も理解出来るし同感ではあるが、原作キャラの性格が極端に歪むような結果になってしまうのは不味いしな……
「美生ちゃん! そこに立ってないで、うららと一緒に天理ちゃん達をやっつけましょう!」
「え? あ、うん!」
1対2で劣勢となり、痺れを切らしたうららから呼ばれて美生が走って行く。とりあえず、うらら達と全力で遊べば美生の悩みも少しは晴れると思いたい。
丁度2対2となったので人数的にも公平だろう。戦力としてはドクロウがいる分、天理側が明らかに有利だが。さて、俺は審判でも……
「ケイちゃんもこっちに来てー!」
「お兄ちゃんは私達のチーム」
「それだと3対2じゃない! 卑怯よ!」
「隙あり。えいっ」
「うひゃっ!? やったわね! えいっ!」
「……外れ。えいっ」
「うららガード!」
「わぷっ!? ひ、酷いですわ美生ちゃん!」
「これぞチームプレイよ!」
「どこがですの!?」
「えいっ」
「ひうっ!?」
(あ、美生ちゃんがニヤついてる間に、ドーちゃん……じゃなくて、由梨さんが美生ちゃんに雲玉投げつけてる……)
「もー怒った! 2人共覚悟しなさい! えいえいえいっ!」
「えぇっ!? う、うららは味方なのに! ひゃっ!?」
「仲間割れ? えいっ」
「「きゃっ!? やったな~! えいえいっ!」」
「ゆ、由梨さん……うららちゃんと美生ちゃんも、落ち着いて……」
「お姉ちゃんは後ろにいて。私が2人を仕留めるから」
「天理ちゃんは黙ってて!」
「天理は黙ってて!」
「ひゃうっ!? け、桂馬くぅん……」
「…………」
……等と考えていたら、いつの間にかドクロウ対うらら・美生のバトルマッチが始まっていた。天理が完全に置いてけぼりで、俺に助けを求めている。
アワアワしてる天理可愛い……じゃない。天理が困ってるんだぞ! 助けないとだろ! ようし、天理とチームを組んで、ヒートアップしてるドクロウ達を雲塗れにしてやるか!
「……天理! 由梨達は話を聞く気が無いみたいだし、一緒に由梨達を雲だらけにしてやろう!」
「あ……う、うんっ!」
こうして俺は童心に帰るつもりで天理とタッグでドクロウ達に挑み、見事に全員が雲だるま状態になるまで雲合戦に熱中した。
……たまにはこういうのも良いな。3年前の冬、爺さん達が雪合戦に夢中になった気持ちが分かった気がした。
え? ひみつ道具で無双したのかって? いやいや、ちゃんと実力で挑みましたよ。そこまで大人げないことはしないって。
「えいっ」
「ぶはっ!?」
「桂馬君!」
「油断大敵だよ、お兄ちゃん」
「よそ見してるとこうですわ!」
「あうっ」
「ナイスうらら!」
「……え、えいっ!」
「きゃっ!?」
「わ、私だって……桂馬君の味方、だもん……!」
「天理……」
「やったわね天理! このーっ!」
「由梨さんも覚悟~!」
「例えお兄ちゃんが相手でも、手を抜かないからね」
「望むところ!」
「「あははははっ!」」
「えへへ……♪」
「……ふふっ」
(……最近、ドクロウもよく笑うようになったな)
保護したばかりの時と比べても、ドクロウは目に見えて嬉しそうな表情を見せることが多くなった。
肝心の記憶はまだ戻っていないようだが、家でも学校でも、ドクロウは楽しげに話すことも増えてきている。
この調子なら、何とか香織編までにドクロウの記憶が復活するかもしれない。このまま日常の幸せでドクロウの心を満たしてあげれば……!
「ご馳走様でした!」
「ご馳走様」
「……ご馳走様」
「お粗末様でした」
お兄ちゃんと一緒に暮らすようになって、もう3ヶ月近くが過ぎた。過ごしやすかった日も終わり、少し暑い日が多くなってきた。
そのせいか、今日の夜ご飯は冷たいうどんだった。麻里さん……お母さんが作ってくれるご飯は、いつも美味しい。思わず笑顔になってしまうくらいに。
「桂馬、ドクロウ。扇風機だけで大丈夫か? 暑くて寝づらかったら、いつでも言うんだぞ? 最近は油断するとすぐ熱中症になるからな」
「大丈夫。扇風機で十分涼しいから」
「……私も大丈夫」
私が寝ている部屋は風通しが良く、窓を開けて扇風機を使っていれば十分涼しい。少なくとも、寝苦しいということは無い。
それはお兄ちゃんも同じみたいで、この前も『これくらいならひみつ道具を使わなくても眠るのに困らない』と言っていた。
「なら良いけど、暑かったら我慢せずにすぐ言うこと。分かった?」
「「うん」」
お兄ちゃんやお父さん、お母さんと軽くお喋りしながら、私は部屋に戻り明日の準備を整えて寝床に入った。早く眠らないと、またお兄ちゃんに無理矢理起こされちゃう。
それに学校もあるし、寝坊するとお兄ちゃんだけじゃなくてお母さんからも叱られちゃうから、ちゃんと決められた時間に寝るようにしている。
(……毎日が、楽しい)
お兄ちゃんと初めて出会った時と比べても、私の心は最初よりずっと軽くなった。明るくなった。温かい気持ちで一杯になった。
あの時は、本当に怖かった……何もかもが分からなくて、心の中は真っ暗闇で……それでいて、辛くて……苦しくて……
だけど、今は違う。目を閉じれば、お兄ちゃんが思い浮かぶ。それだけじゃない。お姉ちゃんも、お母さんも、お父さんも……
一緒に過ごしてくれる人達の顔が、すぐに浮かび上がってくる。こんなこと、あの時の私では……あり得なかったと思う。
(……お兄ちゃん、お姉ちゃん)
お兄ちゃんとお姉ちゃんの顔を思い浮かべていると、どこか安心する。でも、そろそろ寝ないと……ずっと考え事をしていたら、また寝坊しちゃう。
私は色々と考えることをやめて、眠ることに集中する。こうしていれば、自然と意識が沈んで行って……いつものように、夢の中に……
『……な、何だアレは!?』
……え? 何、これ……どこ? 暗くて……苦しくて、辛くて……まるで、あの時の心の中……
『全員始末してやる……! 我々が地獄の――――』
『させない……! これ以上、お前達の好きに――――』
わ、たし……? どうなって……それに、この人達……いや、
『悪魔の恥さらしが! だが、これで終わりだ……!』
い、嫌……やだ……! どうして……どう、して……!
『まさか……お前達、人間の欲を――――』
どうして……
『パパ! ママ!』
『ッ!? どうして……ここは危険だ! 今すぐ――――』
『……あ、ぁ……あぁっ……あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
やだ……やめて……やめてやめてやめて……!
『あ、がぁ…………ッ!?』
『ど、ドクロウ!?』
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて……!
殺すのは嫌……! 死ぬのは嫌……! 戦うのは嫌……! 何もかも……嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!
『このまま
誰か……誰か私を解放して……! この苦しみの連鎖から、助けて……! お願い……! 助けて……助けて助けて、助けて……嫌……あ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!
『そこまでです!』
『なっ!? お、お前達は――――』
「……ドクロウ! ドクロウ!」
「う、ぁ……んうっ、あぁ……っ!」
「大丈夫か!? ドクロウ!」
「……嫌ぁっ!?」
「うわっ!?」
「はぁはぁ……ゆ、夢……?」
「良かった、目が覚めたか……大丈夫か? 凄くうなされてたぞ?」
「……お兄、ちゃん」
目を開けると、見慣れた顔が広がっている。私を覗き込んでいるお兄ちゃんの顔……その安心感で、さっきまでの絶望が和らいでいく。
「何か怖い夢でも見たのか?」
「…………」
今の夢……いや、違う。今のは……私のトラウマ。それでいて、
お兄ちゃんやお姉ちゃん達と一緒に過ごしたお陰で、私を蝕んでいた闇が温かい気持ちで抑え込まれて……それで闇が消滅する直前に、夢という形で……抑え込まれた闇が、私の中で爆発したみたい……
「……っ」
手で頬や首に触れると、汗を大量にかいていることに気がついた。その手も、まともに動かせないほど……恐怖で震えている。今でも、夢……
でも、それではダメだ。私は……
「……お兄ちゃん」
「どうした? やっぱり、まだ怖いのか?」
「……私、全部……思い出したよ」
「……なっ!?」
「失っていた記憶を……自分が何者なのかを……!」
常に持ち歩いていた『球』をお兄ちゃんに見せる。今まで真っ黒だったはずの球が、最初にお兄ちゃんが見せてくれた球と同じように……光り輝いている。
「…………」
(悪夢を見たショックの影響か、心の闇が完全に取り払われたせいか、理由は分からないけど……そうか。ドクロウ、ついに記憶を……!)
「……お兄ちゃん。私と一緒に……あかね丸に来て」
すぐにあかね丸の
「……分かった。行こう!」
お兄ちゃんはポケットから『マッドウォッチ』を取り出し、いつもやって見せてくれているように、私達以外の時間を止めて……いや、ちょっと待って。それだと、
「時間を止めておけば、堂々とひみつ道具を使ってもバレない。後は『どこでもドア』を使って……」
「……待って。ここで時間を止めたら、今からお兄ちゃんと話してもらいたい人の時間まで止まっちゃう……かもしれない」
「え? あ、そうか。
(となると、マッドウォッチじゃなくてウルトラストップウォッチで時間を止めた方が良いか……ここでマッドウォッチを使って、地獄にいるドクロウを時間停止の対象外にして時間を止めると、リミュエルの時のような騒ぎになりかねないし。
地獄にいるドクロウからすれば、急に地獄の時間が止まる訳だからな。しかも原因は不明。これで慌てるなという方が無理な話だ。最低でも、ドクロウが俺を信用してくれていることを地獄にいるドクロウに理解してもらう必要がある。でないと、ひみつ道具についてを説明する前に俺が敵とみなされたら面倒なことになるし……
だからこそウルトラストップウォッチを使えば、地獄にいるドクロウの時間停止を任意のタイミングで解除することが出来る。
「……!」
どうして……いや、お兄ちゃんが球を持っているということは、未来から来ているはず。つまり、既に私の
……ううん。知っているからこそ、あの時も私を保護してくれたんだ。でないと、今から思い出してみても……私が記憶喪失であることを、球が教える訳が無い。そんな機能、球には存在しないはずだから。
「……お兄ちゃんは、私が今からしようとしてること……
「……うん。そのことも後で説明するから、とにかく渡航機の部屋に行こう!」
(渡航機も知ってるんだ……流石お兄ちゃん、未来から来てるだけのことはあるね)
ドクロウが悪夢にうなされている時はどうしようかと思ったが、何とか目が覚めてくれて良かった。それどころか、まさかこのタイミングで記憶が蘇るとは……
一応、球が点滅していなかったから、
ドクロウの話を聞いた後、俺はウルトラストップウォッチで自分達以外の時間を止め、どこでもドアで渡航機の部屋にやって来た。
ドクロウが『私がしようとしたことを知っているの?』と聞いてきたが、ここは肯定しておいた。もしかすると『
ただ、流石に『原作』のことは話せないが……そこはリミュエルに伝えた話をアレンジして誤魔化すしかない。
(……これが渡航機か。原作と比べても、特に違ったところは無さそうだな)
「この部屋、本当は球を使わないと来られない場所なんだけど……お兄ちゃんのひみつ道具だと、そんなこともお構いなしなんだね」
「そのこともちゃんと話すよ。よし、俺達が持っている球をここに……いや、ちょっと待った」
「……どうしたの?」
「先にやっておかないといけないことが……え~っと、あったあった」
俺は思い出したかのようにポケットから『ヒミツゲンシュ犬』を取り出し、同時に紙とペンを取り出す。
このポケット、何故かある程度の日用品も収納されていて地味に便利なのだ。これも神様が気を利かせてくれたお陰だろうか?
そんなことを考えつつ、俺は既存の秘密に加えて新たな秘密を紙に書き、ヒミツゲンシュ犬に食べさせた。書かれた内容はこうだ。
『俺が転生した存在であること及び俺が持つ原作知識について。ただし俺が信頼に値すると判断し、自らこれらのことを
正直、転生したことまで紙に書かなくても良いのではないかと思ったが、やはり警戒するに越したことは無い。それに俺のことだから思わぬミスを犯す危険性もあるので、きっちり明記しておいた。
特に『原作知識』については絶対に他人に漏らす訳にはいかない。とは言え、普通の人間が『この世界は漫画化されたことがある』と聞いても『何言ってんだこいつ』としか思わないだろう。
だがサテュロスや
「この紙をこいつに食べさせて……よし、出来た」
「何それ?」
「あ、この道具? ヒミツゲンシュ犬と言って、紙に自分の秘密を書いて食べさせると、その秘密を永久に守ってくれるんだ」
「お兄ちゃんの秘密……? もしかして、ひみつ道具のこと?」
「それもあるけど今回は違う。後でドクロウに話すことと関係するんだけど、これから俺が話す内容は……信頼出来る人以外には、絶対に伝えられないことだから」
「……!」
俺の言葉にドクロウの顔つきが真剣になる。『魔法事典』についてを話した時はキョトンとしていたが、流石は記憶を取り戻したドクロウだ。ある程度察してくれたらしい。
(これで転生や原作知識についての細工は出来た。後は渡航機の時間を動かせば……)
俺はウルトラストップウォッチで渡航機に触れ、渡航機の時間停止を解除する。こうしておかないと、球を置いたところで渡航機が起動しないからな。
今度こそ準備を整え、俺とドクロウは渡航機に自らが持っていた球を設置する。すると渡航機が起動し、原作通りドクロウ(骨)の姿が映し出される。
『……』
「……?」
『……』
「あの、向こうの私?」
『……』
「……お兄ちゃん。これって……やっぱり……」
「……そう。向こうのドクロウの時間も……いや、地獄全体の時間も止まってるんだ」
「……っ!」
(お、お兄ちゃんの道具って、そこまでの影響力があったんだ……! 道理で、無暗に他の人に話さない訳だよ……)
案の定、渡航機に映し出されたドクロウ(骨)は、何かをしている様子のままで動きが止まっている。『○×占い』のお陰で事前に知っていたとはいえ、本当に人間界以外の時間も止めてしまうのか……
となると、リミュエルの手当てをした時の地獄も……こんな感じで止まっていたんだろうな。
「……でも、このままだと向こうの私と話せない」
「大丈夫。今から向こうのドクロウの時間を動かすから」
「どうやって? まさかどこでもドアで地獄に向かうとか……?」
「いや、もっと簡単な方法がある。えっと……あった。『これ』を使えば良い」
「赤い鞄……?」
「これは『取り寄せバッグ』と言って、離れた所にある物を何でも取り出すことが出来るバッグなんだ。
取り寄せられる範囲は地球上に限らず、それこそ遠く離れた宇宙の物や別次元の物、やろうと思えば地獄に存在する物を
もちろんそんなことをしたら地獄の連中にひみつ道具の存在がバレかねないから、普段は絶対にしないけど……時間が止まってる今なら大丈夫」
「そ、そんなことまで……!? でも、
「いや、今回は少し違う使い方をする。このバッグがどんな所にも繋がる性質を利用して……こうすればっ!」
「あ……!」
俺は右手にウルトラストップウォッチ、左手に取り寄せバッグを握り、左手でバッグを開いて右手を突っ込み、ウルトラストップウォッチでドクロウ(骨)に触れたことを確認したらすかさず右手を離してバッグをポケットにしまう。
渡航機の映像を見ていたドクロウは目を見開いている。そりゃそうか。いきなり分身の傍に変な
『ストレートホール』や『どこかな窓』を使っても良かったが、前者は少し大袈裟な気もするし、後者は小さすぎてウルトラストップウォッチの出し入れが出来ないと考えたのだ。
いや、どこかな窓については『ビッグライト』や『スモールライト』を併用するという手もあるが、やはり取り寄せバッグが一番手っ取り早い。
『む……んん!? 我が分身!? それに隣の少年は……』
ドクロウ(骨)が俺とドクロウ(人間)を見て驚いている。どうやら彼女はたった今、自身の時間停止が解除されたことに気がついていないらしい。それだけではなく、地獄の時間が止まっていることも気がついていないようだ。
マッドウォッチではなくウルトラストップウォッチを使ったお陰で、ドクロウ(骨)は俺が狙っていた通りの反応をしてくれた。これならリミュエルの時のような騒ぎになることは無いはず……多分。
「……なるほど。お兄ちゃんがこの鞄を使った理由が分かったよ」
「理解して貰えたみたいで良かった」
先程話した取り寄せバッグの説明と、渡航機に映し出されているドクロウ(骨)の映像だけで、ドクロウは俺が何をしようとしていたかを全て把握してくれたようだ。やはり記憶復活後のドクロウは頼もしいな。原作の香織編でも桂馬の心強い味方だったし。
『……こちらからは連絡が取れず、お前に万が一のことがあればどうしようかと思っていた。だが、無事な姿を見られて……心底安心した』
「……うん」
(万が一のこと? このまま通信が来なかったらヤバかったってことか?)
『……そこの少年』
「あ、はい」
『我が分身を守ってくれてありがとう。本当に、何とお礼を言えば良いことやら……』
「いや、まぁ、事情は既に知ってましたし……」
『事情……そうか。なら、私のことも……』
「はい。駆け魂隊の室長ですよね?」
『おぉ、そこまで知っているとは……』
だからこそ、俺はドクロウ(骨)に……こう名乗る。傍から聞けば訳の分からないことを言う奴だと思われるかもしれないが、悪魔であるドクロウなら……!
「……初めまして。俺は
「……え?」
『……何だって!? 転生……!?』
今回の取り寄せバッグの特殊(?)な使い方は『南極カチコチ大冒険』のオマージュです。