桂馬えもん 天理と神のみぞ知るセカイ   作:夢回廊

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第6話

(さて、これで爺さん達が死ぬ未来は回避出来たはずだ。後は駆け魂だな……)

 

 外に()()をしておいたとはいえ、相手は駆け魂……古悪魔(ヴァイス)だ。いくらひみつ道具が悪魔相手に有効でも、実際にこの目で確かめないと安心出来ない。万が一、俺が駆け魂を逃がして別の人間に憑りつくようなことがあれば大変だ。

 

「……行ってしまわれるのですか?」

 

「え?」

 

「まだ、聞きたいことが……」

 

「…………」

 

「……どうして、私達を助けてくれようとしたのですか?」

 

「…………」

 

「貴方はさっき、未来での惨劇を回避することが目的だと言ってくれましたよね? 実際に、貴方は私や香夜子さん達の……命の恩人です。

 ただ、どうしても分からないことがあります。貴方が、私達を救わなければならない……何か重大な理由や、決定的な何かがあるのですか?」 

 

「…………」

 

「それとも、何のメリットも無いにも関わらず……私達を、救って下さったのですか?」

 

「…………」

 

 そう、だよな。普通……疑問に思うよな。いきなり謎の子供がやって来て、唐突に怖い未来を見せて……

 挙句『お前達を救いに来た』だなんて言い出せば……爺さん達からすれば『どうして?』と思うよな。

 でも、流石に『転生したと思ったら原作主人公に憑依してしまったので代わりに救いに来た』なんて話せる訳が無い。いくら何でもふざけてると思われるよなぁ……さて、どうするか……

 

「……ただの気まぐれだよ」

 

「「……!」」

 

「俺が『助けたい』と思ったから助けた。ただそれだけだ」

 

 結局、こう答えるしか無かった。原作のように、エルシィやドクロウを高校で活動出来るようにしてもらったり、女神の保護を協力してもらいたい等の言い訳も考えたが……

 そう伝えれば、多分『いやいやお前の力で何とか出来るだろ。未来見えるんだから』と追及されてしまうだろう。

 実際にさっき『タイムテレビ』で未来の映像を見せたばかりだもんなぁ……それに、言い訳として言ったところで……

 

「「…………」」

 

「いや、そんな綺麗な感じじゃない……俺のエゴだ」

 

 これはあながち間違いでも無い。俺は、原作の桂馬が関わり、尚且つ味方だった人間は可能な限り助けるつもりだが……それ以外の人間には、極力関与しないと決めている。

 実際、うらら達の事件が原作に一切描かれていない、物語の裏で起きた悲劇だとしたら……俺は間違いなく、助けようとは思わなかっただろう。

 それ以前に、原作からかけ離れた歴史を作りたくないというのもある。ただでさえ『○×占い』で『俺が桂馬と同じ方法で事件を解決しても、原作と同じ歴史にはならない』という結果が出ているのだ。

 下手に原作と無関係の人間に手を出して、原作知識がまるで役に立たないほど歴史を歪めてしまうのは避けたい。

 ……まぁ、それを言ったら俺が桂馬として転生した時点で、既に原作とかなり違う歴史になってるけどさ。

 

「……エゴ」

 

「そう。だから、爺さん達はそんな重く捉えることは無いんだ。俺が勝手にやっただけのことだからな」

 

「……そう、ですか」

 

(……子供が見せる表情とは思えない。何か、他人には言えないような物を……背負っているように見える。だが、ここで追及しようとしても……きっと、教えてくれないだろう。なら、せめて……)

 

「……最後に、1つだけお尋ねしても良いですか?」

 

「…………」

 

「貴方は、一体……何者なのですか?」

 

 原作の桂馬は一応名乗っていたが、どうしようか……爺さんは10年間、ずっと桂馬の味方として裏で動いてくれた人間だし、信用出来ると思って良い。

 ひみつ道具のことを教えるわけにはいかないが……まぁ、名前くらいなら大丈夫だよな?

 

「……桂木桂馬。さっきも言ったが、少し不思議な超能力が使えるだけの……しがない子供だ」

 

「「桂木、桂馬……」」

 

「……じゃあな。爺さん、香夜子さん達との時間を大切にしてあげろよ? そして香夜子さん、爺さんや正晴さんと仲良くな?」

 

「……もちろんです。肝に銘じ……おや?」

 

「はい。悪魔を呼び寄せないほど絆を深め……あら?」

 

「「…………」」

 

((いなくなった……さっきみたいに、姿を消して……?))

 

「……桂馬君、でしたか」

 

「えぇ。私もはっきり聞きました」

 

「……香夜子さん」

 

「……はい」

 

「「あの子には……改めて、お礼をしないといけませんね。ふふ……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、確かこの辺りに……あったあった」

 

 俺は爺さん達の前で『透明マント』を被った後、()()を施した場所へ向かった。爺さん達の問題を解決しても、まだ駆け魂が残っている。

 恐らく香夜子に憑りつこうとしたところに俺がやって来て、心のスキマを埋めた。となると、行き場を失った駆け魂は空を漂っているはず……そう考えた俺は、香夜子の部屋に入る前に……

 

「……これを設置しておいたんだよな」

 

 部屋から少し離れた場所に佇む『四次元ペットボトル』を見る。ボトルの中に何でも吸い込んでしまう道具だが、元々は大長編『ふしぎ風使い』の悪役が使っていた道具で、厳密にはドラえもんが出した道具では無い。

 勾留ビンが無く、そしてビンを使えるエルシィ達もいない以上、駆け魂を捕まえるにはひみつ道具の力を頼るしか無い。

 ただ吸い込むだけの道具なら他にもあるが、この四次元ペットボトルは相手が霊体でも問答無用で吸い込んでしまうのだ。

 ○×占いの結果を信じるなら、駆け魂もこの道具に吸い込まれるはず。予め『タイム虫メガネ』で駆け魂がどこからやって来るかも確認しておいたので、ボトルの設置場所も完璧だ。

 

「どれどれ……やっぱり、そのままじゃ見えないか。俺、まだ協力者(バディー)じゃないもんな」

 

 中を覗いても、何も見当たらない。正確には、万華鏡を動かしたような黄色い光景が広がっているだけで、駆け魂らしき物はどこにも無い。

 

「一々『これ』を使わないといけないのも面倒だよな……」

 

 俺はポケットから『正体スコープ』を取り出す。大長編『創世日記』に登場した道具で、このスコープで覗けば、あらゆる怪奇現象を完全解明出来る。

 この道具越しに見れば、駆け魂はもちろん原作の桂馬が認識出来た超常現象を、今の俺でも確認出来るのだ。さっきタイム虫メガネを使った時も、この道具を併用して駆け魂を見つけ出した。

 

「えーと……うわっ!? 目の前にいたのかよ!?」

 

 スコープで覗いて見ると、レンズ一面に映し出された駆け魂が視界に飛び込んできた。恐らく四次元空間からの脱出を試みているのかもしれないが、もちろん不可能だ。

 俺がペットボトルから出してやらないと、中に吸い込まれた物は自力で脱出することが出来ない。事前に○×占いで調べておいたので確かな情報だ。

 

「暴れるなって。どうせお前は原作でもエルシィに捕まえられるんだ。ビンの中か四次元空間の違いだし、潔く諦めろ」

 

 駆け魂が何やら喚いているが、そんなことは無視してボトルをポケットにしまい込む。とりあえずこの駆け魂は俺が保管しておき、いずれ知り合うであろうドクロウやエルシィ達に処理を頼むつもりだ。

 もちろん俺が自分で地獄に送還しても良いが、わざわざサテュロスに俺の力を見せつけるような真似をするのもアレなので、あえて保管することにした。

 

「今回の事件はこれで解決……だよな?」

 

 後のことは俺が特にフォローすることも無いだろう。エルシィやドクロウが舞島学園で活動出来るようにすることは、ひみつ道具を使えば何とかなる。

 女神の保護についても、下手に爺さんが匿うより俺が匿った方が安全だ。その気になれば、地球を飛び出して遠い宇宙や別の次元(パラレルワールド)へ避難させることも出来るからな。

 さっき爺さん達から『助けた理由』を聞かれた時、エルシィ達や女神を理由にして言い訳しなかったのも……自力で何とかしようと考えていたからだ。

 

「よし、部屋に戻って寝るか……ふわぁ……」

 

 うらら達の不幸は回避出来たことを確信し、俺は目を擦りながらどこでもドアで自室に帰る。

 時間は既に夜11時。両親は、白鳥家に向かう前に『グッスリガス』で眠らせておいたので、俺がいないことで騒ぎになっている心配は無い。

 それよりも、俺自身の眠気がそろそろ限界なのだ。やはり3歳の体の影響は大きい。現状確認の時は昼寝していたお陰で眠くなかったが、今日は緊張していたせいでロクに昼寝も出来なかったからな……

 その気になれば『眠くならない薬』や『睡眠圧縮剤』で睡眠時間を削ることも出来るが、やはり眠れる時は寝ておくに越したことは無い。

 

「パジャマに着替えるのもめんどくさい……おやすみ……すぅ……」

 

 ベッドに入り、そのまま目をつぶる。すると、さっきまで緊張していたせいか……猛烈な勢いで睡魔が襲ってくる。

 これでしばらくは何の事件も起きないはずだ。次はドクロウとの出会いや香織が起こす事件だが、それは後4年も先のこと。その間はゆっくり天理と遊んだり、仲良くなろう…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思っていた。ここから4年間は、特に何も無く天理と日常を過ごすものだと思っていた。

 でも、現実は違った。俺はどこかでヘマをしでかしてしまった。多分、いや、間違いなく。そうでなければ、こんな状況にはならないだろう。

 

「ねーねー! ケイちゃん! うららを宇宙に連れてってー!」

 

「美生、おっきくなりたいー!」

 

「あ、あの……結は、その……」

 

「…………」

 

 ……どうしてこうなった。




 シリアスは一旦終了! やっと日常編です。
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