桂馬えもん 天理と神のみぞ知るセカイ   作:夢回廊

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第7話

 ……ありのまま、今起こったことを話す。

 俺は白鳥家の事件を未然に防いで安心していたら、目を輝かせたうらら達に囲まれていた。

 何を言っているのか分からないと思うが、俺も分からん。

 

「宇宙ー! 宇宙に行きたいですわー!」

 

「背を伸ばしてー!」

 

「うぅ……」

 

「…………」

 

 俺は現在、3歳のうらら・美生・結に……いや、正確にはうららと美生の2人にグイグイ引っ張られている。一体何故こうなってしまったのかというと、事の始まりは数時間前に遡る――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……よく寝たな……」

 

 子供の体はすぐ眠くなってしまう。眠気と戦いながら深夜まで行動するのは、ひみつ道具無しでは至難の業だ。

 その分寝つきと寝起きは大人と比べ物にならないほど良く、悪夢さえ見なければ毎朝気持ちよく目覚めている。

 今日は休日だが、やはり子供は早起きだ。午前7時だと言うのに、頭がスッキリしている。前世では休日なんて昼過ぎまで寝ていたというのに……

 

「「――!? ――」」

 

「……ん? 何か外が騒がしいな……」

 

 幸い夕べは私服のまま寝てしまったので、少しボサついた髪だけ整えて部屋から出る。するとどうやら、両親が玄関で誰かと言い合いになっているようだ。

 何かあったのだろうか? まさか何かの事件が? いやでもこの時期はうららの両親が死ぬ事件くらいしか覚えが……

 

「あっ、桂馬! アンタこれどういうこと!?」

 

「そうだぞ! どうして俺達に黙ってたんだ! 立派なことをしたのに!」

 

「お、お父さん、お母さん? 何の話…………ん?」

 

「おや、桂馬君。およそ半日ぶりですね」

 

「意外と近くに住んでいらっしゃったんですね」

 

「おぉ! 君が娘を助けてくれた桂馬君か!」

 

「…………」

 

 ……おいちょっと待ってくれ。え? 何で爺さん達が? 何故に? いや待て待て整理させてくれ。何で爺さん達がここに? 俺何かやらかしたか? いやそんなはずない。自宅を特定されるようなヘマは……

 

 

『桂木桂馬。さっきも言ったが、少し不思議な超能力が使えるだけの……しがない子供だ』

 

 

 そういえば俺、爺さん達に名乗ったな……いやいやいや! 名前だけだぞ!? いくら何でもそれだけですぐ特定されるわけが……

 

「息子が恩人……本当なんですか?」

 

「はい、お宅の息子さんには本当に助けられました」

 

「幸い、桂馬君が名前を教えてくれましたので、是非お礼に参ろうかと……」

 

「娘の恩人とあらば、白鳥家の総力をかけて探し出しますよ! 意外と近くにいらっしゃって安心しました!」

 

「……あ゛」

 

 そうだよ! 爺さんは確か原作でも桂馬の代わりに女神の宿主達の住所を探し当ててたじゃないか! 迂闊だった! と言うよりすっかり忘れてた!  

 白鳥家の……権力? とにかく、それっぽい力を使えばそりゃ特定されるわ! 原作知識持ってて初っ端からこれかよ!? 俺の馬鹿ぁっ! 

 

「……今の御二方の反応で、おおよその判断がつきました。桂馬君のお父様とお母様は、貴方の超能力をご存知ありませんね?」

 

「御二方には、あえて『うららが車に轢かれそうになった所を、貴方が手を引いて助けてくれた』と切り出してみましたが……どうやら、私達の対応は正解だったみたいで何よりです」

 

「……いや、まぁ、そうだけど」

 

 正晴が両親とあれこれ喋っている間に、爺さんと香夜子が俺に対し小声で話しかけてくる。

 確かに両親にはひみつ道具のことを話していないが……そんなことより! 俺、昨日言ったよな? あくまで俺のエゴだから重く捉えなくて良いって。

 仮に恩義を感じたとしても、深夜の間に住所特定からの朝一訪問とか行動力あるってレベルじゃないだろ!?

 

「すみません、少々強引な手段を取らせていただきましたが……」

 

「……改めて、お礼を言いたかったんです。私や正晴さん、そしてお義父様を救っていただいたことを……」

 

「…………」

 

 2人の真剣な顔に、何も言えなくなる。冷静に考えれば、いくら俺が『気にしなくて良い』と言ったところで、すぐに切り替えるのは無理な話ではある。

 実際、俺も爺さん側の立場になってみれば……確かに『不思議な力で自分を救ってくれた命の恩人』と思ってもおかしくは無い。

 もしくは『助けてもらったのは嬉しいが、得体のしれない力を持つ怖い奴』……爺さん達は前者、か?

 

「一応、正晴には本当のことを話していません。いくら何でも証拠が無ければ信じないでしょうから」

 

「何とか嘘の話を作りましたが、正晴さんを騙すのは……少し、胸が痛かったです……」

 

 それはまぁそうだろうな。俺が目の前で実践してみせた爺さん達はともかく、いきなり『私達、超能力を使う少年に助けられました!』なんて話してもなぁ……

 多分『親父、ついにボケたか……』とか『俺が寂しくさせたせいで香夜子の精神が!?』と思われるだけだろうし。

 

「ですが、その……1人、信じてしまった子がいて……」

 

「信じてしまった子……」

 

 まさか……うららか? うららだな? 間違いなくうららだよな? 原作でも桂馬の宇宙人設定を信じたレベルだ。超能力なんて話を聞いて興味を持たない訳が無い。

 というかうららに話したのかよ! 『ヒミツゲンシュ犬』の力を信じるなら、超能力の正体がひみつ道具であることはバレないはずだけども……

 

「孫が是非会いたいと言ったので、どうか一緒に来てくれませんか!?」

「娘が是非会いたいと言ったので、どうか一緒に来てくれませんか!?」

 

「孫と娘以外完全一致でハモるな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……まさか客として来ることになるとはな)

 

 俺は結局、爺さん達の怒涛のお辞儀ラッシュに根負けし、再び白鳥家を訪れることになった。

 両親は正晴の『どうか息子様にお礼をさせて下さい!』という、これまた怒涛のお辞儀ラッシュで納得していた。

 いくら名門家の名前を出しているとはいえ、初対面の人間にあっさり息子を預けて良いのかと思ったが、誘拐にしては堂々とし過ぎてるので逆に疑わなかったらしい。

 

(にしても、昨日会ったばかりの得体の知れない少年を娘、孫に会わせるかね……一応名の知れた家だよな?)

 

 車の中で聞いた話だと、うららには俺のことを直接話した訳ではなく、爺さん達が俺のことを話していると、偶然トイレで起きて来たうららに聞かれてしまったらしい。

 誤魔化そうとも思ったが、どうせならお礼ついでに俺とうららに仲良くなってもらおうという結論に至ったという。

 そこは普通に誤魔化せよと言ったら、満面の笑みで『貴方なら、うららの良いお友達になってくれそうだと思ったんです』と返された。

 う~ん、原作を見る限り、爺さんの人を見る目は確かなんだろうけど……信用され過ぎるのも考え物だな。

 

「着きました。どうぞ」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 使用人……で合ってるよな? それらしき人に扉を開けてもらい、一先ず車から降りる。目の前には相変わらずデカい屋敷……前世でもこんな所に来ることはまず無かったな……

 

「お父様~! お母様~! お爺様~!」

 

「……!」

 

 なんて考え事をしている内に、元気な女の子の声が聞こえてきた。原作より更に小さいが……間違いない。こいつがうららか。

 3歳にしては明瞭に話しているのは白鳥家の教育の賜物なのかね? その辺りはイマイチ分からないが。

 

「わぁ~! この子がお母様達が言ってたちょーのーりょくしゃですの!? 初めまして! 白鳥うららですわ!」

 

「「っ!」」

 

「……初めまして。桂木桂馬だ」

 

 おい爺さんに香夜子さん。うららに黙ってるよう言い聞かせ……いや無理か。3歳児だし。

 仮にしっかり話し合っても、興奮したり驚いたりすればどこかでボロが出るよな。でもそこまで心配することでも無いか。子供が唐突にそんな出鱈目なことを言ったとしても……

 

「超能力? 違うぞうらら、恩人だ! まぁ、桂馬君がうららの近くに偶然居合わせた奇跡は超能力と同じくらい凄いけどな!」

 

「え? おんじん?」

 

「そうだ。ほら、桂馬君にお礼を言いなさい! 『ありがとうございます』って!」

 

「んぅ……あ、ありがとうございます……?」

 

 とまぁこんな感じで、普通なら本気にされないわけだ。正晴もうららの発言を特に気にすることも無く、単に言い間違えたと思ったのか訂正して頭を撫でてるだけだし。

 うららが少しお礼を言いづらそうにしているのは、多分俺が『超能力者』と聞いたうららと、『恩人』と聞かされた正晴の認識のズレかもしれない。

 

「「……ホッ」」

 

 対する爺さん達2人はめっちゃ動揺してたな。うららの超能力発言で動きが止まったと思ったら、今度は露骨に胸を撫で下ろしてるし。

 爺さんも香夜子も、そういう表情や動揺を隠すことは上手そうだけどな……俺の勝手なイメージだけど。

 

「……正晴。私達は桂馬君を部屋に招くから、お前は車を車庫に戻して来てくれるかい?」

 

「分かった! それじゃ桂馬君、また後でな!」

 

 露骨に息子を遠ざけようとしている爺さんだが、当の正晴は事情を知らないせいか素直に車庫へ向かった。

 昨日、部屋にいなかったが故に除け者のような扱いだな……とりあえず、心の中でごめんと謝っておく。

 

「さぁケイちゃん! うららとお部屋に行きましょう!」

 

「『ケイちゃん』?」

 

「そうですわ! 貴方のお名前が桂馬だから、ケイちゃん!」

 

「……じゃあ、俺は『うらら』って呼べば良いかな?」

 

「うん!」

 

 ……一応原作通りではあるが、『ケイちゃん』は確か原作の桂馬が『キララ星のケイ』と名乗ったことがきっかけのはず。まぁ、3歳と7歳じゃ考え方や思考も違うだろうし、特に気にすることでも無いか。

 俺はそのまま爺さん達やうららに連れられ、屋敷の中を案内されていく。この後、更なる想定外の出来事が待ち受けているとも知らずに……




 香夜子さんは主人公に対し、敬語かタメ口かで悩みましたが……
 非常に恩義を感じていますし、ただの少年では無いと認識しているので敬語でいきます。
 3歳児に敬語を使う成人女性という構図も中々シュールではありますが。

 正晴さんと桂一さんのキャラは捏造です。
 桂一さんは結局原作でほとんど描かれないままでしたし、正晴さんは正太郎さんと香夜子さんの回想で名前だけ出ていましたが、台詞は無かったような……
 見落としていたら申し訳ありません。

 ひみつ道具が全く登場しないまま終わるという事態。次こそは何とか……!
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