鎮守府裏の魚屋さん   作:ヴェルヌイ

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プロローグ


鎮守府裏の魚屋さん

 

ザザァァァァ………………

 

 

「…………………………」

 

 

ザザァァァァァァァ………………

 

 

「…………………………」

 

 

ザザァァァァ………………

 

 

「…………………………っ!!きたきたァァ!!?」

 

ここは広島県呉市の呉鎮守府………………………の近くにある魚屋の裏手にある堤防。ここで一人のおっさんが海中にいる何かと激闘を繰り広げていた。

 

「オラァ!!こいつぁでけぇな。ここらだと鯛か?タチウオの可能性もあるな。とりあえず、そらァァ!!!」

 

おっさんが竿を思いっきり引くと海上に少しだけ何かがその姿を現す。

そいつは縦に平たい身体に赤とピンク、そして薄い紫を帯びた色合いが特徴の肉食魚、『マダイ』だ。

 

マダイは海中に逃げようと潜ろうとするが、おっさんは無理やりリールを巻き逃走を阻止する。そして数十秒経つ頃にはマダイはその身体が宙に浮いていた。

 

「よっしゃ来た。70cmぐらいか?まぁ一時間でこの成果は上々だな。まだやるけど。」

 

おっさんはそう言いながらまた海へと竿を振る。約10mの場所に着水し、針は海中へと沈んでいく。今日は風は強いが波は穏やかな絶好ではない釣り日和、こんな日でも釣りをする人は大勢いる。それは人類の敵、深海棲艦が海に現れたせいで沖には漁船は出れなくなり、 こうして陸から釣糸を垂らす他ないのである。

 

それと同時に魚の物価は急上昇、メバルやまだ陸でも釣れるタイ等はまだ庶民的な値段だがマグロ辺りにもなると何倍にも値段が膨れ上がった。つまり命を賭けて沖まで行き、運よくマグロが取れれば膨大な富が入るのだ。それでも70cm程のタイでもそこそこ高い値が付くのでそこは漁師によって沖に出るか近海で獲るかは変わる。

 

まぁこのおっさんは漁師では無く魚屋なのだが。

 

「………………………………………」

 

 

ザザァァァァ…………

 

 

「………………………………………」

 

 

ザザァァァァ……………………

 

 

「………………………………………何の用だ?」 

 

「あ、ばれちゃった?いやぁ今日は休暇の日だからまたここにいるかなぁって来てみた。」

 

おっさんが振り向かずに背後に問うと、少女が答える。

 

少女は狐色の髪を黄色いリボンでツインテールにし、ちょうど前髪の分け目辺りからアホ毛が目立つ。

服装は白のカッターシャツの上から黒っぽいグレーを基調としたブレザーベストを羽織り、首元には黄緑色の紐リボンを着用。いつも着けてある手袋は今は着けていないようだ。

下もベストと同じ色のミニスカートに薄抹茶色のベルトを二重に巻き、黒のスパッツ、白のハイソックス、赤茶色のローファーを履いている。

 

「今何匹目?」

 

「まだ5匹目だ。」

 

「それって多いの?」

 

「まだノルマには達してないな。始めてから既に7時間経ってるから少ないほうかもしれん。」

 

「そっか。あ、そうだ。お店の方だけど…………」

 

「今日の手伝いは誰だったか。」

 

「黒潮、私の妹よ。売り上げの方もまぁまぁって言ってたわ。」

 

「それなら良かった。まぁ自営業だからいつ休むも俺の自由だがな。」

 

「それでも周辺の人達、ありがたいありがたいって言ってる。」

 

「俺の趣味の結果を売ってるだけだ。俺の趣味はあくまで釣り上げるまで、趣味をやって金も入るなんて一石二鳥じゃねぇか。」

 

「むぅ……………素直に喜べばいいのに。」

 

「素直に喜んでるさ。これが本音。」 

 

「やっぱり素直じゃない。」

 

「それで、本当は何しに来たんだ。まさか店の報告だけじゃねぇだろう?」

 

「ありゃ、それもばれてたか。」

 

少女は少しおどけてみせると、おっさんの隣に体育座りする。  

 

「鎮守府の中は娯楽なんて食事とお風呂しかないし、本とかは戦術書とかつまらないものばかり、だから「暇潰しに来たってか。」……正解。不知火は今日自主練するって言ってつれないし、黒潮はお店の手伝いだから暇でね。」

 

「おっさんが釣りしているところを眺める方がつまらんと思うが?」

 

「そうでもないわよ?流石にこのまま三時間は潰せないと思うけど。」

 

「まぁ減るもんでもないし見ていたいなら見ていくといい…………っと!!」

 

その時竿に振動が伝う。おっさんはばっと立ち上がり、リールを巻く。

 

「あ、なんか来た?」

 

「来てるなッ!おい、そこにタモがあるだろ!ちょい手伝え!」

 

「お駄賃は?」

 

「俺の釣りの見学料!」

 

「ちぇ、仕方ないか。」

 

少女は渋々立ち上がりタモを手に取ると海面に寄せる。

海面下には青い影が縦横無尽に動き回る。糸もそれに合わせて左右に揺れる。

 

「もうすぐ出てくるぞ…………ちゃんと掬えよ?」

 

「分かってるって…………………来た!!」

 

「今だ!」

 

「そぉぉい!!」

 

おっさんが竿を上に上げた瞬間、魚の姿が海面に躍り出る。それを少女はタモで掬い取る。

タモの中で暴れる魚はさっきと同じマダイだった。

 

「またマダイか。こいつってこんなにかかるっけ?」

 

「タイって街の魚屋で1500円で売ってたわよ。だからかなり運がいいんじゃないの?」

 

「そうか。ならこのままカサゴでも狙ってみるか。」

 

「いや、それは無理でしょ。前高級魚って言ってたじゃん。」

 

「冗談だ。まぁ釣れれば嬉しいがな。」

 

「そっか。まぁ頑張ってね。カサゴが来たら黒潮に買っとくよう言っとくわ。」

 

「じゃあカサゴが釣れたら予約品にしといてやる。」

 

「ありがと。じゃあそろそろ帰るわね。」

 

「また暇な時に来い。メバルでも釣れたらプレゼントしてやる。」

 

少女はもう一度礼を言うと鎮守府へと走っていった。

 

 

余談だが、その日の釣果の中にはカサゴが一匹入ってたらしい。




少女の名前はまぁお察しの通りやっと会えた!さんです。文でバレバレだと思うけど。

活動報告で助手さんも募集してます。
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