鎮守府裏の魚屋さん   作:ヴェルヌイ

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イワシングをしてみよう

「おはようございます!駆逐艦朝潮、以下5人集合しました!」

 

「そんなに硬くなくていい。気軽におっさんとでも呼べ。」

 

「いえ、今からものを教えてもらう身、そんな無礼な物言いはできません!」

 

「うぅむ、陽炎どうすればいい。」

 

「無理ね。朝潮は真面目なのが取り柄で妹にさえも敬語なんだから。私は朝潮がタメ口きいてるところなんて見たことないわ。」

 

「マジか。畏まったのはあまり好きじゃねぇんだけどな………………」

 

おっさんの前に並ぶ6人の女の子達、朝潮は自分の妹達とともにおっさんに見事な敬礼を見せた。

苦笑いするおっさんの後ろではこれまた苦笑いする少女、陽炎がいる。

 

何故こんなことになっているかと言うと、陽炎が鎮守府の食堂へ前話で購入したカサゴを持っていった際に朝潮がそれを見つけ、陽炎がおっさんの事を話すとどうやら興味を持ってしまった様だ。

 

そして朝潮がそれを妹達に話した結果、その妹達も興味を持ってしまったのだ。

ちょうど今日全員休暇を取れたということで陽炎が話していたおっさんの所に来てみたらしい。

 

「そうだ、朝潮」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「釣りのやり方を教えてほしいんだったな。」

 

「はい!是非!」

 

「じゃあその堅苦しい態度を柔くしたら考えてやる。」

 

「っ!?」

 

「おじさん、それ無理なやつ。」

 

「やればできる。」

 

「いやだから無理だって。」

 

「えーと、むむむむむむ……………………」

 

 

結局『店長』で妥協した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ仕方ねぇ。今日はイワシングでもしてみようと思ってたからな。」

 

「イワシング、ですか?」

 

「あぁイワシングだ。まぁ詳しい事言っても分からねぇと思うから簡単に言えばイワシ釣りだ。群れん中に餌ぶちこめばえらい釣れるぞ。」

 

おっさんはそう言いながらちっこいワームを先に付けろ竿を振る。

前回とは違い、遠くに投げるのではなく、近い場所に着水した。

 

「とりあえずこれ見とけ。竿持ってくる。陽炎もやるか?」

 

「いいの?じゃあやってみるわ。」

 

「分かった。ちゃんと見とけよ。」

 

「は~い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、先に色々準備はしといたから、後は餌を付けろ。このワームだな。ちょっとキモいと思うがまぁ頑張って付けろ。」

 

おっさんはそのまま海の方へ向いたまま振り返らなくなった。

ワームが入ったタッパーの中には60匹程のワームがうねうねと蠢いていた。

 

「うわっ!?なんですこれ!?」

 

「き、気持ち悪い!うちの提督よりキモい!」

 

「きゃっ!?噛んだ!?」

 

「ねぇおじさん、あれ大丈夫?」

 

「問題だらけだな。そもそも餌を付けれなきゃ釣りすらできんぞ。っと来た。」

 

「もう5匹も釣ったの?随分早いわね?」

 

「今日はどうやら餌の活きと運がいいらしい。」

 

「ねぇ!陽炎!これどうすんのよ!」

 

「ハイハイ、私じゃ無くておじさんに聞いて。私も見たことはあってもやったことはないんだから。」

 

朝潮の妹達が気持ち悪いと騒ぐなか、長女の朝潮はおっさんの後ろで左手で竿を持ちながら敬礼をした。

 

「店長、できました。」

 

「おっ、あの様子だと明日の朝までかかるかと思ったが、案外早かったな。」

 

「いえ、この程度の任務、こなせなければ朝潮形ネームシップの名折れです。」

 

「(ネームシップ?一番艦ってことか。)そうかそうか。じゃあそんな優秀な奴の妹ならさぞワーム程度には負けないだろうな。」

 

「「「「「カチンッ!!」」」」」

 

その時きっと漫画か何かであれば額に青筋ができるであろうと言うほど朝潮の妹達の心に火が着いた。

 

「大潮っ!アゲアゲで参りますっ!!」

「言ったわね!この程度深海棲艦に比べればどうってことないわ!」

「あらあら、そのわざとらしい挑発、本気にしますよ?」

「本気、出す………………」

「こんぐらい余裕よ余裕!!」

 

「皆さん!そんなやる気に満ち溢れて…………………私も本気で取り組まねばいけませんね!」

 

「…………………どうすんの、これ。」

 

「知らん。やる気があるのは良いことだ。」

 

その後1分で付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ、20匹目。」

 

「店長、全員餌の取り付け完了しました!」

 

元気よく報告する朝潮の後ろでは妹達がバケツに汲んだ海水で手を洗っていた。

 

「よし、じゃあ横に1mずつ間開けながら糸垂らせ。そんで割とバクバク来るから目ぇ離すなよ?」

 

「了解しました!皆さん聞いてましたか?」

 

「大潮、聞いてませんでした!」

 

「聞いてないのは大潮だけ。他の全員は聞いてたわ。」

 

「じゃあ大潮さんだけもう一度私から説明しておきますから皆さんは先に始めてください。」

 

朝潮がそう言うと、大潮以外の妹達は海へと糸を垂らす。すると朝潮の説明が終わる頃には、4番艦の荒潮の竿に振動が来る。

 

「な、なにか来たわよ!」

 

「おっ、じゃあとりあえず思いっきり引き上げろ。」

 

「こ、こうかしら?えいっ!」

 

荒潮が可愛らしい掛け声と共に竿を振り上げると糸の先には艶の良い50cm程の青物が…………………

 

「ってこれサバじゃねぇか。」

 

「えっ?」

 

針にかかり、今はおっさんの手の中でびちびちと暴れまわる魚はイワシではなくサバであった。イワシングではたまに小さなサバやサンマ等が釣れる事があるが、はっきり言って50cmもあるサバがかかる事は滅多にない。

 

「俺でもイワシングでこんなデケェサバは釣ったことがねぇな。流石朝潮型、優秀な奴の妹も優秀なんだな。」

 

「ふふ、褒めても何も出ませんよぉ?」

 

「抜かせ。ガキに求めるもんなんぞない。」

 

「ふふふ~」

 

「他の奴らは釣れたか?」

 

「私はまだ、でも………………」

 

「店長!釣れました!」

「釣れました!気分アゲアゲです!」

「なんだ、簡単じゃない。」

「案外、できた…………」

「やっぱり余裕ね。」

 

陽炎を除く全員の竿の先には10cm程のイワシが一匹ずつ釣られていた。

 

「流石だな。それで陽炎、一回上げてみろ。」

 

「え、うん。分かったわ。」

 

陽炎は言われるままに竿を上げる。すると先には20cm位のイワシが食いついていた。

 

「あれぇ?振動なんて来なかったけど?」

 

「たまにある。てか海中に目視できる位いるのに釣れないのはおかしいからな。3~5分毎に上げるといい。」

 

「分かった。じゃあやってみる。」

 

そう言って陽炎はまた餌を付け、海中へ糸を垂らした。

 

「さぁ、今から競争だ。誰が釣果No.1だろうな?制限時間は6時までだ。じゃあスタート。」

 

競争の一言で全員の目がギラリと光ったような気がした。

 

 

ちなみにNo.1は24匹で大潮だった。




作者はイワシングすらやったことありません。
「これは違うよ!」と言う意見があればドシドシ言ってください。
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