「あれ?おじさん。今日は店にいるんだね?」
「あぁ、今日は波が高過ぎる。釣りしても何も掛からんだろうな。」
「ふーん。」
「それで、今日は何の用だ。」
「あっそうだ。今日は司令にカレイを買ってこいって言われたのよ。」
「そうか。ちょうどいい。マガレイなら釣ってきたぞ。青森まで行ってきた。」
「青森!?ここ広島よ?随分遠くまで行ったわね………………」
「新幹線だけでかなり時間かかった。」
「でしょうね。」
このおっさん、実は5日前から急に存在を消しており、何の報告も無しに青森まで出掛けていたのだ。一応出発時に店番に言ってから出たのだが、その駆逐艦は「忘れてました!」と屈託の無い笑顔で報告した。
「それで?そのマガレイ?ってのを見せて。」
「あぁ別にいいが金はあるんだろうな?」
「え?うん。5000円位貰ってきたけど。」
「まぁ魚買うならそんぐらい持ってこさせるわな。」
「えっ?もしかしてマガレイって5000円もするの!?」
「んなわけ無い。そもそもマガレイなら兵庫や島根でも釣れる。値段を言えばうちじゃあ1尾につきデカさや重さ関係なく700円だ。」
「そっか。ならよかった。じゃあ7尾貰える?」
「あぁいいぞ。と、言いたいところだが既に先客が買っていっちまってな。今は6尾しかいねぇ。」
「えー?じゃあ6尾で。」
「すまねぇな。お詫びにこいつを持ってけ。」
おっさんはそう言うと店の奥に行くと大きな発泡スチロールを持ってきた。
「………………………えぇと、これは?」
「青森でたまたま釣れたんでな。マジで運が良かったんだな。天然物は絶滅したと思ってた。」
おっさんはそう言うと発泡スチロールの蓋を開ける。するとそこには約1.4m程の魚がいた。
「こいつは最近養殖で食えるようにはなってきたんだが、如何せん天然物はもはや絶滅したと錯覚するぐらいに釣れない。だから競りにこいつを出せば15万位だと思う。」
「高っ!?そんな物貰えないって!!大体値段分かってるならこれを競りに出せばいいじゃん!!」
「いや、いい。この店は別に経費も全然かかってねぇし、今の売り上げで生活費含め充分だ。それにな、」
「………………それに?」
「お前は何度もここに来ては商品買ってくだろう?つまりお得意様な訳だ。まぁいつもの礼だ。ガキなんだから素直に受けとれ。」
「あ、あ、あ………ありがと。ありがたく貰っとくわ。なんか恥ずかしくなってきたわ。もう帰る!」
「あっ、おい待て!金を払え!」
結局4200円払った。
「司令、帰ったわ。」
「おぉ、帰ったかってなんだそのデカイの。」
「いつもの礼だって。そういやこの魚の名前聞くの忘れてたわ。」
「えっと、こっちのちっさい発泡スチロールがカレイだな?じゃあこっちはっと。」
「ひえー、相変わらず大きいわね。で、この魚の名前は?」
「………………………………こいつは。」
「司令?」
「こいつはクエじゃないか!!」
「うおう!?いきなり大声挙げないでよ!!」
「こいつは滅多にお目にかかれない高級魚だぞ!?それも大将達が行くような高級料亭でしか見られん!!それが何故うちに…………………」
「さぁ?おじさんによると青森行って偶然釣れたって。」
「そんな馬鹿な…………………」
結局鎮守府の皆で美味しくいただいた。
そういや陽炎がいる鎮守府はまだまだ小さく、最大で重巡しかいません。間宮さんと伊良湖はいる。
おっさんがクエの事を絶滅したみたいに見ないと言っていますが、おっさんの体感です。