ダンガンロンパ短編集 作:弾丸 論破
はい。書きました。どうぞ。タイトル調子のってるとか言わないで!日本語だと語呂が悪くなっちゃうから!仕方なくだから!
The future that could have happened 1
最初に仕事としてこなした時、自分が人間として大切な物を失ってしまった、そう感じた。その日の夜は眠ることができず、無機質なベッドのなかで、何かを押し殺すようにずっと泣いていた。
でも二回目は、一回目と同様謎の喪失感は感じたが、涙は流さなかった。そして、三回、四回と繰り返していき、いつしか両の手の指では数えられないほど繰り返した頃、私は何も感じなくなっていた。
それは、もう「私」は普通の人間ではない、ということを心が理解したということだったのだろう。
こうして、何かが壊れた生活を続けていたある時、私は仕事に失敗した。ほんの小さなミスが致命傷となり、私は処分されることになった。
だが、処分される寸前で助けられ、私はもう戻ることはないと思っていた普通の生活に戻ることができた。だがその時既に、私は私ではなくなっていた。
周りの大人たちは、私を救った気になっていたのだろう。でもそれは間違いだ。体だけ救われても、私の心は囚われたままだった。普通に生活している時や、ふとした瞬間に考えてしまう、『わたしはみんなとは違う』と。
だけど、
ある年の春、私は高校生になっていた。転入、という扱いで特別に入学を許可されたのだ。高校どころか中学にすら通っていなかったというのに、よく入れたものだ、と自分でも感心する。
だが、既にクラスのみんなは一年以上を共に過ごしてきていて、友人関係などは構築された後である。当然馴染むことなどできずに、一日のほとんどを一人で過ごしていた。
(なんて、退屈なんだろう………………)
一年前とは真逆の世界で生きている自分に猛烈な違和感を覚えることも多い。周りは騒がしく、だけどそのなかで一人だけ静かに過ごしていると、時折虚しくなってくる。
(これなら、あの頃の方がまだ
そんな馬鹿げたことすら頭をよぎっていた、そんな時だ。
「よう、元気かハルマキ!」
「………………」
最初は自分に話しかけられたとは気付かなかった。学校で話しかけられることなんかほとんど無かったし、なによりハルマキ、なんて呼ばれたことなんて一度たりとも無かったからだ。
「おい、ハルマキ?無視は良くねーぞ!」
僅かに声のトーンが上がったことで、ようやく自分に話しかけているのだと気が付いた。
「………………は?」
なんだ、この男は。紫色の髪を前後に逆立て、上着を袖を通さず肩に羽織っている、一言で言えば妙な格好をしていた。
だが、そんなことは大した問題ではない。この男はなぜいきなり話しかけてきたのだ?
「………なに、あんた?何か用なの?」
「おっ!ようやく答えてくれたか、ありがとな!」
「答えになってないんだけど?」
「んー?別に何か用事って訳じゃねーんだけどよ…あれだ、急にお前と話したくなったんだよ」
「………意味不明だね。からかってるなら邪魔だからもう話しかけないでくれる?」
私はそういって彼から目を逸らそうとして、
「じゃあよハルマキ、今からオレがとびっきり最高な話をしてやるぜ!」
前の席の椅子を借りてきて、向かい側に座り込んだ彼と、再び目があってしまった。思わず顔をしかめてしまう。
本当に何なんだこの男は?私は話したいことなんて別にない。というか………
「ハルマキってなに?もしかして私のこと?」
「おう、春川マキだから、ハルマキ、だ。良い呼び方だろ?」
いや、どこが?そんな食べ物みたいな呼び方のどこが良いのだろうか。
「………全然良くないよ。その話ってのも興味ないから。それに、私と話しても楽しくないと思うけど?」
「まあとりあえず聞けよ!話っていうのは宇宙のことなんだけどな………」
「………………」
宇宙なんて興味ない、とは言葉にならなかった。何故なら、こんな心の底から、邪な感情を感じない笑みを向けられたのなんて、覚えてないくらい久しぶりだったから。
私は放課後の間ずっと、彼の宇宙の話を聞いていた。
『キーン コーン カーン コーン』
「おっと、もうこんな時間か、わりいハルマキ、長く喋っちまって。用事とか無かったか?」
「………別に大丈夫だよ」
「そうか、そりゃ良かった。…んじゃオレはそろそろ帰るとするか。また明日、色々教えてやるよ!」
そういって、相変わらず眩しさすら感じる笑みを浮かべて去っていく彼の背中を見ていると、不思議な感覚が襲ってきた。あの時のような、正体不明の悪寒ではない。でも、決していい気分になる物ではない。
「………ちょっと待って!」
我に返ると、私は彼を呼び止めていた。
「ん?なんだ?」
きょとんとしながら此方に振り返る彼。あれ?なんで私は呼び止めたんだろう………いくら考えても分からなかった。だがここでなんでもない、というのは通じないだろう。
何を言うべきか少し考えて、一つ思いついたことをそのまま口に出す。
「あんたって、名前なんていうの?」
ああ、と彼は思い出したように声を出した。
「そういや名乗って無かったな。オレとしたことがうっかりしてたぜ。オレの名前は百田解斗だ」
「百田、解斗………………」
「おう、宇宙に轟く百田解斗、って覚えてくれ!」
つーか、同じクラスだってのに覚えてなかったのかよ、と苦笑交じりにぼやいている彼だが、嫌味を感じるものではなかった。
………相変わらず変なやつだな、と冷静に評価する一方で、少しだけ可笑しく感じた自分がいたこともまた事実だ。
とにかく、これが私と彼ーーー百田解斗の、最初の出会いだった。
次の日から、私は彼、百田と毎日他愛のない話をするようになった。と言っても、私から話しかけることは全くなく、毎朝学校にいくと「おはようハルマキ!」、昼休みになると「ハルマキ、一緒に飯食おうぜ!」、放課後には「ハルマキ、こんな話知ってるか?」と、宇宙関係の話をはじめる。
何で私なんかに何度も話しかけてくるんだろうか?と不審に感じたのも一度や二度ではない。
彼はやや言葉遣いが荒いものの、明るく人当たりの良い性格でクラスの中でも人気者だったし、私以外にもいくらでも友達や話をする相手などいそうなものだったし、現に彼が一人でいるところなど見たことがなかった。
そして今日も、彼はいつものように誘ってきた。
「ハルマキ、食堂行こうぜ!」
「私、今日は弁当持ってきてるから………」
「えー、じゃあ購買でなんか買ってくるから先食っててくれ!」
「は?なんで待たなきゃ……あ、ちょっと………」
私が返事をしたときにはもう教室の扉は閉じられていた。
(…返事ぐらい聞けっての)
初めて言葉を交わしてから、二週間が経っていた。すぐに飽きるだろうと思っていたが、まさかこんなに長続きするとは、正直意外だった。何が楽しいのかは分からないが、少なくとも楽しんでる風に装っているわけではないことは分かっている。
これまでの人生で、相手が嘘をついているかどうか、こちらに悪意を持っているかどうか位は見破れるようになっている。彼からはそういった感情は読み取れなかった。
(ほんと、物好きな人間もいるもんだね………)
机の横に掛けてあった鞄から、赤色の包みにくるまれた弁当を取り出して広げる。箸を取りだし弁当の蓋を開け、卵焼きとミニトマトの間に鎮座しているウインナーを掴み口に運ぶ。
「………………」
一人で静かに食べる昼食は、彼と話す前にもずっとしていたはずなのに、何故だかとても息苦しく感じた。何故だろうか。彼と話すようになってから、ふとした時によくこういう感覚によく襲われるようになった。
そしてその感覚は日を重ねるごとに強くなっていく。自分自身の感情がコントロールできないというのは、少し前ならば考えられないことだ。
「ねえ、ちょっといいかな?」
「!………なに?」
深く考え込んでいたため、目の前に近づいてきていた彼女にも、声をかけられるまでまるで気がつかなかった。
目の前の少女は金髪でセミロングの髪に音符を模したヘアピンをしており、グレーの瞳をこちらに向けてきていた。
「急にごめんね?私は赤松楓って言うんだけど、春川さんって今お話できる?」
第一印象としては、優しそうな雰囲気を持っているな、という感じだった。目にも悪意は宿っておらず、むしろこちらを気遣うような、大袈裟に表せば『慈しみ』に溢れている。
さらにどこかの
「別に大丈夫だよ。それで何の用なの?」
「ありがとう、あのね、春川さんって今日は百田くんと一緒にお昼ご飯を食べないの?」
「はあ………?」
思わず不機嫌そうな声になってしまう。その聞き方だと、まるで私が毎日彼と昼食を共にしているというような………いや、あながち間違ってはいないけれども。
「………別に、毎日一緒ってわけでもないからね………。それがどうかしたの?」
そう、別に毎日一緒なわけではない。二週間前はずっと一人で食べていた。嘘はついていない。
「あのね、その、春川さんさえ良ければ、お昼一緒に食べない?」
「あんたと?…なんで?」
口に出してから、少し辛辣すぎたかと思ったが、彼女は気にする様子もなく、だってさ、と強い口調で続けた。
「一人で食べるよりも、二人で食べる方がおいしいでしょ?」
「………」
何人で食べても味は変わらないだろうが、確かに自分自身が百田と一緒に昼食をとるようになってからその時間が他の時間と比べると退屈ではないと感じるようになっていたので、何も答えることができなかった。
すると彼女はその沈黙を否定と受け取ったのか、何かを考え込むような表情をした後、決意したように口を開いた。
「……実はね、春川さんが転校してきてからずっと一人で過ごしてたのを知ってたんだ。でも、私は話しかけることができなかったの。よく分からないんだけど、何だか怖かったんだ。すっごく失礼なことなんだけどね。」
「………別にいいよ。というか、仕方ない所もあるから、気にしないで。」
転入した時は、周りに自分のことを知られることが怖くて、必要以上に敵意を振り撒いていた。普通の人間である彼女からすれば、触れたことのない
「でもね、春川さんが百田くんと話すようになってから、怖いって感じることが段々なくなっていって。それで、お友達になりたいな、って思ったんだ。」
「私が、怖くなくなった………?」
「うん、こうして話してみたら、普通の女の子だったもん!」
普通。私は、普通に戻ることができているのだろうか。もし戻ることができているのだとすれば、それは少なからず彼のお陰、なのかもしれない。
「ご、ごめんね、やっぱり怖いなんて駄目だよね…?本当に私、なにいってるんだろ………」
「……赤松、だっけ?名前。」
「………え?」
ハイライトが消えて、落ち込んでいた彼女の瞳が驚いたようにこちらを見つめ直す。
「名前。友達になるんなら、あんた、呼びじゃおかしいでしょ?」
こちらを見つめる瞳に揺れる感情が、驚きから喜びに変わっていく。自分らしくないことを言っている自覚はある。でも、この気持ち………言葉にはできないけど、この感情にだけは、素直にありたい、そう思うことができているのも、癪だけど、百田のお陰だろう。
彼女は嬉しそうに口を開く。
「赤松じゃなくて、楓、って呼んでよ。名字だとなんだか他人行儀な感じがしてモヤモヤするから!私も春川さん、じゃなくてマキちゃん、って呼ぶから!ね、いいでしょ?」
少し前の私なら迷いなく断っていただろうお願いだ。でも、今の私は、微塵も嫌な気分にはならなかった。
「悪いハルマキ、めちゃくちゃ遅くなった!って、あれ?赤松じゃねーか、どうしたどうした、いつの間に仲良くなったんだよオメーら!」
「………百田、あんたどこいってたの?食堂とは逆の方から帰ってこなかった?」
「うえっ!?お、オメー鋭いな………実は、購買がもう売り切れてたもんで、外に出てコンビニで買ってきたんだよ!」
「………なんでそこまでして教室で食べようとするの?バカみたいだね」
「というかマキちゃん?そんなに百田くんのことを気にしてたの?」
「………!!!けほっけほっ!」
「ああっ、ごめんねマキちゃん!大丈夫!?」
「は、ハルマキ!そういうときは息を止めるといいんだぜ!?」
「百田くんそれはしゃっくりの時だよ!!」
「………はあ、はあ、楓、あんたね………!」
「!お、おいおい、ハルマキが下の名前で呼んでる、だと………!!?お前らいつの間に付き合ってたんだ?」
「!!!!!ゲホッ、ゲホッ!!」
「う、うおお!?大丈夫かハルマキーーー!!??」
「百田くん、節操のない冗談は控えようね………?マキちゃんはピュアなんだから………」
「………………っ!!!」
「うおっ、急に身体中に悪寒が………!?」
その日の昼休みの教室には、そんなはちゃめちゃな一幕が広がっていたとか。
いくつか創作設定がありますが二次創作ということで、大目に見ていただけると幸いです。
もしかしたら続編でるかも。やる気次第だけど。今このシリーズが3話出てて大体600UAということは、1話当たり200人が読んでくれてるんですよね。嬉しい限りです。これからも細々と書いていくので、よろしくお願いします。