東方九心猫   作:藍薔薇

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東方儚月抄
月面戦争


「……紫様、もう一度言ってください」

「二度手間は嫌いよ」

 

 突然、紫様が荒唐無稽なことを言ったもので、思わず聞き返してしまった。

 紫様はスキマから引っ張り出した扇子をパッと開いて口元を隠し、私を静かに見つめてくる。私はため息を一つ吐いてから天井を見上げ、その先を突き抜けたところにあるものを思い浮かべ、指先を上に向けた。

 

「月に攻め入る、と言いましたか? もしかして、あの空に浮かんでいる月じゃあないですよね?」

「そう言ったじゃない。月面戦争よ」

 

 ……本当なのかい。そこは聞き間違いであってほしかったよ。はぁ。

 月面戦争ねぇ。なんか、輝夜と永琳あたりが月の何かじゃなかったっけ? あんなのがゴロゴロいるところに攻めるって、大丈夫なのかなぁ? ……まぁ、無理ならしないか。多分。

 

「で、貴女には幻想郷の妖怪達を訪ねて回ってほしいのよ」

「そりゃまたどうしてですか?」

「当然、戦力よ。最近の幻想郷は数が増えたし、それに伴って強力な妖怪が多くなっているわ。頭数を集めれば侵攻なんて容易いでしょう?」

 

 そう言われてみれば、最近会った強力な妖怪が何人も思い浮かぶ。吸血鬼のレミリア・スカーレットとか、亡霊の西行寺幽々子とか、鬼の伊吹萃香とか、花の妖怪の風見幽香とか。私なんかと比べても明らかに突出した妖怪。強いって凄いね。印象に残ってる。どうでもいいけど。

 とはいえ、いくら強力な妖怪だとしても、……いや、強力な妖怪だからこそ気になることがある。

 

「協力してくれますかね?」

「そこは貴女次第よ」

 

 力が強い妖怪は、得てして我が強い。自分本位。自己中心主義。自分の意見を無理矢理押し通せるのだから、そりゃそうだよね。だから、こちらがいくら頼んだところで首を縦に振ってくれるとは思えなかったのだ。

 そこを私次第と言いましたか。おいおい、丸投げかよ。私みたいなただの化け猫一匹が何言っても聞いちゃあくれない気がするんですが……。はぁ。

 

「もう藍は動いてくれているわ。何処に行って誰を尋ねるかは私が指示するから、貴女も出なさい」

「はい、分かりました」

 

 命じられたし、しょうがないか。やってみて無理でした、でもいいから言われたことを熟すとしましょうか。

 

「ところで、藍は何処に行ってるんですか?」

「今日は妖怪の山の天狗よ」

「……へぇ、妖怪の山ですか」

 

 帰りに迷い家に寄り道して橙と顔を合わせるんだろうなぁ。仕事のストレスには癒しを求めるものよ。きっと。

 ……まぁ、私にはそんなものないけどさ。はぁ。

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