私は晴天の青空を見上げ、しかしこんな晴れやかな天候には似合わないため息を吐いてしまう。やっぱり面倒臭いなぁ。藍はどうして喜々として出来るのか、これが分からない。はぁ。
とはいえ、命じられたのならばやらなければならない。それが式神の悲しい性よ。文句はいくらでも出るけれど、やるだけやって早く済ませよう。そうしよう。
そんなことを思いながら顔を前に戻し、目の前に広がる一面の向日葵を眺めた。……あーあ、来てしまったよ太陽の畑。無論、風見幽香に事前の連絡なんてしていない。
間違っても向日葵を傷つけないよう慎重に進み、幽香が住んでいる小さな一軒家に辿り着いた。窓から中を覗こうかと思ったが、いなかったら帰るのだし扉を叩くことにする。勝手に覗き見して印象落とすのはどうかと思うしね。まぁ、悪くなるほど印象があるかどうか怪しいところだが。
「開いてるわ」
「そうですか。では、お邪魔します」
扉を叩いてすぐ返事が来たので、私はすぐに中に入らせてもらう。
椅子に座って何やら難しい題名の本を読んでいた幽香が私に気付き、栞を挟んでからパタリと本を閉じて顔を上げた。見透かされているような気分がしたが、そこは気にせず笑顔浮かべてやり過ごす。嫌だけど。
「そこに座ってなさい」
そう言って幽香が指差した椅子に腰を下ろし、サッと部屋を見回す。机、椅子、本棚、衣装棚、その他諸々……。これと言って何かある、といった雰囲気を感じさせない、何処にでもありそうな部屋。強力な妖怪であるが、以前行かされた紅魔館とはまるで真逆である。
そんなことを思ったところで、カタリとティーカップが置かれた。ふわりと紅茶の香りが漂う。……流石に、あの時みたいな沸騰寸前でも瞬間氷結でもなかった。よかった。
「で、私に何の用かしら?」
「月の都に行って珍しいもの、凄い技術なんかを見つけてほしいんです。紫様曰く、それらを盗み出して幻想郷に持ち帰り、停滞しつつある妖怪の生活向上を目指したいとか。貴女のような強力な妖怪ならばそのくらい容易いことだろう、と」
手短に用件を話すと、一つため息を吐いてから紅茶を口にした。それに合わせて、私も紅茶を一口。おぉ、美味しい。
そしてティーカップを置いた幽香は、私を怪訝そうな目で私を見詰めてきた。
「貴女、本当にあの紫の式神だったのね」
「気にするところそこですか?」
「あの胡散臭い新聞にも真実が載ることがあったのね……」
何て酷いことを言うんだ……。新聞とか全然読んでないから何処の誰が書いているかなんて知らないけれど、それを聞いたら泣いてしまいそうな気がする。どうでもいいけど。というか、情報元が怪しい感じがするとはいえ、いつの間にか私が紫様の式神であることは周知の事実になっていたんだ。へー、知らなかった。
おっと、話が逸れている。私が話を戻そうと口を開こうとした時には、幽香は既に窓の外へと目を向けていた。
「月の都、だったかしら? 興味ないわね。私は今のままで充分よ」
「そうですか」
まぁ、そんな感じはしてたよ。